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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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66 我が儘な暴君


 朝から、ゴタゴタしていましたが、今日はいい天気なので、たまに街の散歩をするのも悪くないですね。

 いま気が付いたのですが、こんなにまったりと昼間から王都を歩くのは久しぶりです……後ろの暴君さえ居なければ……。


「中々良い匂いがしますね。シノアちゃん、あの串を5本ぐらい買って来て!」


「うちも食べたいので、欲しいのですが……シノアちゃん、ダメですか?」


「おっちゃん、その串を10本下さい」


「まいど! お嬢ちゃんは可愛いから、1本おまけしておくぜ!」


「嬉しい事を言ってくれますねー。はい、じゃ、これで」


 受け取ると横から、しっかりと10本奪ってステラさんに餌付けをしています。

 残った1本は美味しいな……。


「シノアちゃん、あの飲み物が飲んでみたいから、特大で買って来て」


「うちも飲みたいので欲しいです……」


「お姉さん、そのジュースを特大で2つ下さい」


「君みたいに可愛いお嬢さんにお姉さんだなんて言われると、おばちゃん嬉しくなってしまうよ! あの子達の分とは別に普通のをサービスしとくね」


「お姉さん、ありかとう!」


 当たり前のように受け取って飲み干しています。

 お風呂上りじゃないのに、シズクに教えてもらったポーズで一気飲みとか、周りの視線が痛いです……。


「シノアちゃん、あそこのテラスみたいなところで出しているあの白いのが食べたいので、ちょっと寄り道していこうね」


「うちもあの白いふわふわしたのが食べてみたいです……すごく行きたいけど……」 


 ……さっきから、商業区に入ってから進んでないじゃん!

 匂いにつられてあれを買ってこい、これを買ってこいばっかりで、私はパシリですか!

 しかも、食べた後のゴミを次の物を買ってくると渡して来るし……自分で食べた物のゴミぐらい始末して下さいよ!

 まあ、その辺に捨てないだけましですが……私は、ここに奢りに来たのですか!

 しかも、私の行きつけのカフェに行きたいとか、あんな所に行って私の知り合いと思われたら、次から私のツケ払いになってしまいますよ!


「あのさ……これじゃエレーンさんのお店に行く前に日が暮れてしまいますよ。順番に全店舗制覇とかしたいのでしたら、今度にして下さいよ」


「むむ……あの白いのが食べてみたかったのですが、仕方ありませんね。明日にでも私を食べに連れて行くのですよ?」


「出来たら、うちも連れて行って欲しいです……」


 明日は学園に行くんですよ!

 これじゃ伝票を押し付けて消えるエレーンさんの方が遥かにましです!

 もしも、亡くなっていなかったら、両親に娘さんの躾がなっていませんと言いたいです!


「最初に言っておきますが、エレーンさんのお店は高級店ですから、静かにしてないと迷惑が掛かるので大人しくして下さいよ!」


「何を怒っているのか知らないけど、エレーンさんのお店はそんなすごいところなのですか……昔から、食べ物にはうるさかったのですが、ついにお店まで始めるとか想像していませんでしたよ」


「シノアちゃん、わかりました! エレーンさんのお店の御馳走まで我慢します!」


 ……私の話は通じているのでしょうか?

 一緒に来たセリスには、ギルドの方に報告に行ってから来るように頼みましたが、私がギルドに行けば良かったです……セリスだったら、上手く説得して連れて行ったんだろうね……。

 もう疲れてきたので、無視してさっさと進む事にしました。

 お店には丁度ラウルさんが居たので、事情を話して奥に通してもらいました。サテラがこの匂いがする物が食べたいとか言い出すし、もう勘弁して下さいよ。

 ラウルさんが用意させようとしたので、飲み物だけにしてもらいましたが、2人からは文句言われまくりです。

 これから、お話をするのに食べながらとか失礼になると言って渋々納得してもらいましたが、ここで食べたら、お金がすごい勢いで減ってしまいます!

 一応しっかりと貯め込んでますが、私は貧乏性なので、いくらなんでも湯水のように使うのは気が引けるのですよね。

 使う時は必ず次の収入がある事を確認してから、必ずプラスになるように使っているので、コツコツと貯まっているのです。

 たまにカフェでエレーンさんと遭遇すると必ず払っていますが、後日にラウルさんが私をお店に招待してくれて、謝罪されながらここの料理をいただいています。

 何でもエレーンさんは、古い時代のお金しか持っていなくて、現在の通貨は全てお店に与えてしまっているので、以前はラウルさん達が定期的に支払いに行っていたらしいのです。私が来た頃から既に支払い済みだったので、店員に聞いたら、胃袋がおかしい妹さんがいつも支払っていると言われたそうです。

 ちなみにこの事を知った頃に、飲み物が甘くないからいまいちなんだけど食べる物は良いから我慢していると、店長に聞こえるように言ったので、それ以後、私が来る度にジュースの糖分の濃度が上がって行きました。

 私としてはマナ回復に丁度いいのですが、およそ人が飲めない飲み物になってしまったので、今度は味覚がおかしい妹さんになっています。

 実は私のランク上げというのは口実で、謝罪がメインだったらしいのです。

 世の中は、趣味で好きな事をしまくる人が正しいのかも知れませんね……。

 しばらく待つとエレーンさんが来ました。いつもと服装が違うのですが、どこかで見たような……。


「シノアちゃん、無事にステラと会えたみたいですが、私の作った試練部屋はどうでしたか? 2人も久しぶりだけど随分と見た目が幼くなりましたね?」


「最初の部屋から、私だけ苦労しました。次の部屋の悪魔は勝てませんでしたよ」


「エレーンさん、お久しぶりです! 私が奮闘したので事なきを得ました。あの悪魔はシノアちゃんの奴隷になりました!」


「お久しぶりです、エレーン様! うちは……何もしていないけど、シノアちゃんに拾ってもらいました!」


「取り敢えず、2人は話が長くなりそうなので、私が先に話をしてもいいかな?」


 私が先に話をしないと絶対に長くなって脱線しまくるから、2人は後回しにして適当な事を言ってここに置いて行けば良いと判断しました。

 特にサテラは話を捏造して、自分をアピールするに決まっています。

 

「仕方ないわね……ここは主としての顔を立てて、大人しくしてあげます」


「サテラは相変わらずですね。あとですが、ステラとの約束は果たしていますので安心して下さいね」


「エレーン様、ありがとうございます! うちを助けてくれて、あの子達を保護してくれて感謝しています!」


「その話は後でします。まずはシノアちゃんとお話をするので、2人はお菓子でも摘んで待っていてね」


 エレーンさんの言う事だと素直に聞いて、出て来た色んなお菓子を大人しく食べていますよ……私が言っても絶対に聞いてくれないのに……。


「あの……ちょっと聞きたいのですが、お姉ちゃんは2人を素直にさせる技能でもあるのですか?」


「意味が良くわからないのですが……あー、ステラはともかくサテラですか。この子達には手を焼きましたからね……特にありませんが、敢えて言うのであれば、生まれた頃から知っているだけですから。他人に言えない事なら100個ぐらいはあるかも知れませんね」


「ちょっと! エレーンさん! 私の過去などシノアちゃんに話さないで下さい! もう忘れて下さいよ!」


「今はシノアちゃんと話しているのに、口出ししてくるとは、つい話してしまいそうですね? いつまで経ってもあれが治らなくて、私は大変でしたよ?」


「済みません。二度と口出しはしないので、それ以上は止めて下さい」


「確か治らないあれって……」


 ステラさんが言い終える前に口にお菓子を詰め込んでいます。手の動きがまったく見えませんでした。


「姉さんはお馬鹿さんなのですから、無理に頭を使って思い出してはいけません」


 今にも殺しますと言わんばかりの目が怖いです。

 ステラさんは、黙ってコクコクと頷いています。


「大人しくしているのでしたら、シノアちゃんに対して威厳が保たれると思いますよ?」


 すごく知りたいのですが、今度は私の方を見ています。目が絶対に聞くなと言っています。

 あの暴君のサテラが大人しく静かにしています……いま質問したいけど!

 まあ、ここで聞くよりも後日に聞けば良いので、いまは後回しにしましょう。


「良かったら、どうなったのか教えてくれると嬉しいですね」


「お話ししますが、てっきり私を通して見ていたのかと思っていましたよ?」 


「実は少し前から見る事が出来なくなってしまったのです。なので、外にいる時はたまに見ていますが、ダンジョンなどに入ってしまったら、わからないのです」


「えっ!? どうしてなのですか?」


「こないだ私が勝手に能力を解放した時に、ちょっと嫌われてしまったらしく、加護の関渉が閉ざされてしまったようなのです。どうも彼女の権限は私と同等みたいです」


「ノアがですか!?」


「ちゃんと代わりに賄賂を贈ったのに、足りないのかダメだったみたいです」


 私じゃあるまいし賄賂とか言ってますが。そんなのいつ貰ったの?


「いつの間にノアと会ったのですか?」


「会ってはいませんが。転移能力を追加した時に魔石をあんなに渡したのに、つり合いが取れなかったのかな……」


「あれ、ノアへの賄賂だったのですか?」


「確証は無いのですが、シノアちゃんの能力を解放するには一定数の魔石が必要だと思うのです。最初の頃は曖昧にしか見えなかったのですが、以前に魔石を遊びで投げていた時に純度の高い物が消えて、曖昧だった技能がはっきりと見えるようになったのです」


「エレーンさんには私の事がそんな風に見えていたのですか?」


「あの時は、私が遊んでいると思ってあんまり警戒していなかったので、その場で能力を解放してしまったのでしょうね。今では、シノアちゃんの事は普通の鑑定出来る範囲でしか見る事が出来なくなってしまったので、完全に警戒されてしまっています」


「私としては、まだ使える技能があるのでしたら解放して欲しいぐらいです」


「なので、今回はあのゴーレムなんて中々良い賄賂と思ったのですが、シノアちゃんのレベルが、子爵の事件は別にして、あまり増えていませんが、どうしてなのですか?」


「あー……その事もあるので、ついでにお話しします」


 エルナが希望したので殆どエルナが倒してしまった事と、カミラが魔法以外は私より強くなってしまった事を話して、悪魔と契約して名前と力を上げてしまったと話したら驚いていましたね。


「あのエルナという子にあげてしまったのは構いませんが、眷属の子が短期間でそこまで強くなるとは……確かあの子にはそれほど強くなる素質はありませんでしたからね。技能の複製能力も初めて聞きました。私の潜在能力解放の代わりかも知れませんね」


「潜在能力解放?」


「私には、触れた生物に眠っている能力を一度だけ覚醒させる事が出来るのです。ステラとサテラが一つだけ魔法を昇華させているのは私が覚醒させたからです。本来は魔術を昇華させるには、素質も問われますが、長い年月と深い理解が必要です。なので殆どの者が到達できません」


「仮にですが、それで私の能力を解放できたりしますか?」


「無理ですね。警戒する前でしたら可能だったかも知れませんが、今は曖昧に見えていたものすら見えないので、覚醒させるものが無くなっているのてす」


「先ほどから、曖昧に見えていると言っていますが、それはどういう事なのでしょうか?」


「不確かに読み取れる能力は、その者がいずれ習得出来る能力なのです。必ず習得出来るとは言えないので、ちょっとした未来視みたいなものです。私はその見える範囲の能力を強制的に覚醒させる事が出来るのですが、もう1つ条件にかなり純度の高いマナの結晶が必要になります」


 するとエレーンさんは、私が習得出来る能力を知っているのですね。

 聞いてみたいけど、答えてくれるかな……。


「もしかして、私のこれからの能力も知っていますよね?」


「知っていますが、答えると更に警戒されてしまうし、知らない方が成長する楽しみになると思いますよ」


 気になりますが、どうせノアが解放してくれないと使えないのですから、知るだけ無駄ですよね。

 それにしても、手に入れた魔石の使い道が私の能力の解放の為の経験値のようですから、いつでも解放してもらえるようにせっせと集めておく必要がありますから、魔物を狩らないといけませんね。

 

「次に眷属の子の事ですが、魂を直接強化しているような事らしいのですが、私にはわかりません。しかし、短期間でそこまで強く出来るのでしたら、シノアちゃんの能力を解放した方が早い気がしますが……」


「ノアは楽しんでいるだけですから、私が楽をしないように出し惜しみしているだけです。魔術に関しても、ノアの気が向かないと私に使える魔法が増えないのです。もっと気軽に使えて便利な魔法が欲しいのですが、質問した時に却下されてしまいました」


「あの子とお話が出来るようになったのですか?」


「カミラにお願いしてノアが納得したら、夢の中で会ってくれますが、何か減っていくらしくて簡単には会ってくれません」


「私も一度ぐらいはお話がしてみたいのですが。仮死状態になる薬をもう一度だけ飲んでみませんか?」


 えっ……あれ飲むと1日の間は入れ替わってしまうので、何をしでかすか分からないので怖いんですよね。

 シズクの事は結果的には良かったのですけど、あとの事は確か謝ってばかりだったような……。

 それに、ノアはカミラを生き返らせてくれた時に、私と入れ替わって存在するだけで対価を支払わなければいけないみたいな事を言っていたので、恐らくですが、1日も入れ替わるのは本来はまずいのではと思います。

 エレーンさんのお願いでしたら、飲んでも良いと思うのですが、ノアが何と言うか分からないので申し訳ないのですがお断りしましょう。


「ノアから、本来は入れ替わる事自体で何かが減るらしいので、極力避けるように言われていますから、済みませんが、辞退する事にします」


「それなら仕方ありませんね。これ以上は嫌われたくないので、止めておきます。それにあと1本しか無いので、無視されたら意味がありませんからね」


 無視ですか……ノアなら敢えて眠ったフリをして相手にしないかも知れませんね。


「それにしても、あの者はよくシノアちゃんの配下になりましたね。私がお願した時は詰まらないから辞退すると言われてしまったのです。あそこで待っていれば興味が湧く者が現れると言ったら、それならば構わないと言って、進んで引き受けてくれたのです」


「アルカードの事ですか。倒す事は出来なかったのですが、私に興味を持ってくれたらしく、名前と力をくれたら配下になってくれると言うので、使えない力だったからあげてしまいました」


「いくつあげたか知りませんが、名前まで求めるとは余程興味をもったようですね。シノアちゃんは悪魔についてどのくらいまで知っていますか?」


「ラウルさんに見せてもらったギルドの文献に契約を重視すると書いてありました。後は人の心に付け込んで契約で魂を奪うとかですね」


「概ね合っています。下級や中級の悪魔は確かに魂に関わる契約をさせようとしますが、上級以上になると、個体によりますが、求める物が変わって来ますので、上手く付き合えばこれほど頼りになる存在はありません。私も古い個体とは何体か力を上げて契約していますが、名前を求められたのは2体だけです」


「名前に意味でもあるのですか?」


「彼等は特に決まった名を持ちませんので、人々が畏怖の対象として呼んでいる名前が主流ですが、名付け行為を行うと名前を与えた者が生きている限りは決して裏切らない配下になります。当然ですが、本人が望まなければ主従関係は成立しないので、ただ名付けても従ったフリをしていつか裏切られるでしょうね」


「そうなのですか……私の場合は面白そうだからとの事です。それに倒したわけじゃないですからね。こちらは手札を全て使ってしまったので、次に攻撃されたら、私は死んでいましたからね」


「あの個体はかなり変わっていますので何とも言えませんが、シノアちゃんに興味が湧いたみたいですから、ちゃんと契約しているみたいなので心強い味方になりますよ」


「現状で、私達の中で最強なのですが……サテラが余計な事を言うから戦力外になってしまいました」


「ちょっとだけ言わせてもらいます。シノアちゃん。余計な事と言いますが、あいつがいたらダンジョンの敵なんて全て排除してしまうから為にならないと思うのです。エレーンさんもそう思いませんか?」


「まともな警告なので良いですが、サテラの言う事は尤もですね。せっかくなので最後まで自分達で突破した方が良いと思います」


 エレーンさんの話の流れだったら、普段の戦闘に使えるようになると思ったのに無念です……面白いとか言っていた癖に……。


「次は61階層でしたよね? ちょっと汚い所ですけど頑張って下さい」


「汚いって聞いたら行きたく無くなってきたのですが……全面沼地とかですか? そんな所でしたら飛べる魔法が欲しいです」


「死霊の都市だったと思いましたが。中には強い個体がいるので、普通だと苦戦しますが、いまのシノアちゃん達でしたら問題は無いかと思います」


「またアンデットですか? まさかボスはうざい奴では無いですよね?」


「シノアちゃん達の実力だと、まともなボスなので大丈夫ですよ。あれは例外です」


 どちらにしても腐っているから、食材にならないので焼き払って進むのが良いかな?

 出来ればキャロに倒させてレベルをあげたい所なのですが、アンデットに有効な土魔術って何が良いんでしょうね。

 話も一区切りついたので、後はサテラ達と積もる話もあるかと思いましたから、セリスも来た事だし帰ろうとしたら、昼食だけでも食べて行きませんかと言われたので御馳走になっています。ここの料理は本当に美味しいんですよね。

 流石は食道楽の名は伊達ではありません。

 当然ですが、サテラ達も御馳走になっています。やかましく食べています……エレーンさんはやれやれと言った感じで見ていますが、そこは甘やかさずにビシッと言ってあげて下さいよ。


「これはとても美味しい料理ですね! エルナちゃんのお屋敷の料理も美味しかったのですが、ここはさらに美味しいです!」


「うちもシノアちゃんに拾われて良かったです! こんな美味しいご飯が食べれるなんて眠ってて良かった!」


 こうして比べると、食べるペースはゆっくりでだらしない食べ方をする姉と食べる勢いは速いけど綺麗に食べていく妹……とても双子とは思えないです。

 顔の作りと姿は同じだけど、違いといえば髪の色が金と銀なのと圧倒的に違う胸だけです。

 サテラはステラさんの世話をしているついでに見えない速度でつまみ食いをしているので、食べ終わるのが2人同じなのです。減っているのに気付かないのかな?

 それから食後のデザートに出されたケーキを食べているのですが、当然のように気に入って、テーブルの上にあった物を殆ど食べてしまいました。エレーンさんの目が笑ってないのに気付いていませんね。

 後から聞いたのですが、私が来ると思っていつものカフェに頼んで、わざわざ取り寄せてくれたらしいのです。自分の分も余分にあったのに、それを全て食べられてしまったらしいです。

 ここのお店にもあるのですが、あちらの方が一枚上手らしくお菓子類は向こうで食べる事にしているそうです。

 あちらもエレーンさんが経営に絡んでいるそうですが、ここのシェフのリオンさんのお母さんが作っているけれど、レシピなどは絶対に教えてくれないらしく、必要と言われた材料だけ搬入しているだけとの事です。

 なので、例えエレーンさんでも代金を払わないと売ってくれないので、それを食べてしまうとか、私には無理です……何となく嫌な予感がしていたので、目の前に出してくれた物だけにしていたんですよね……後ほど、サテラとステラさんに神罰が下るに違いありません。


「2人ともいっぱい食べたみたいだけど、満足したかな?」


「来る時に食べ損ねた白いふわふわがこんなに美味しいなんて思いませんでしたので、沢山いただいてしまいました!」


「うちもこんな甘くて美味しい物を食べたのは初めてです!」


「良かったわね……」


 エレーンさんの投げやりな言葉を聞くのは初めてです!

 2人は喜んでいるけど、絶対にやばいですよ。

 ここは私に被害が及ばないように静かに傍観に徹していた方が正解ですね。


「エレーンさんのお店もわかりましたので、これからも食べに来ても良いですよね?」


「うちも食べたいです……」


「構わないけど、ちゃんとお金は払ってちょうだいね?」


「えっ!?」


「今日はシノアちゃんが報告に来てくれたので御馳走しました。普段はうちの子達が頑張って作ってくれているので、あの子達にも生活が懸かっていますから、当然ですよ?」


「お金ですか……この時代のお金なんて無いので……シノアちゃん! お金頂戴!」


 当たり前のように私に無心して来ましたよ!

 今でもお屋敷での食費の負担が増えているので、アクセサリーの類の収入から引いてもらうようにしているのに……サラさんはかなり儲けているので気にしなくて良いと言ってますが、お屋敷でごろごろして飲み食いしているのですから、私が申し訳ないのですよ!

 それにしても……ここまで来ると戦闘以外ではただのごく潰しです。

 私は、お金は必要な物以外にはちょっと高いお酒に使うぐらいで、色々とお金儲けをして少しでも貯金を増やしているのに、悪魔がいますよ!


「何を言っているのですか? シノアちゃんにお金をもらったら貴女の秘密を教えますからね? ちゃんと貴女が働いたお金以外は受け付けません」


「そんな! では、昔のお金をいまのお金に換える事は出来ますか?」


「あの時代の硬貨でしたら純度が高いので、割り増しで交換して上げても良いですよ?」


「シノアちゃんにあげた物の中に箱があったはずですが、あれを返してくれませんか?」


「あっ……あれですか……もう無いですね」


「あれは、私の認証がないと開けれなかったはずですが、どうしたのですか!?」


「確かに開けれませんでしたが……箱を構成していた鉱石を理解出来たので、分解してしまいました。そして中にあった古い金貨は、既に色んな物に作り変えてしまったのでありません。特にオリハルコン硬貨は誰かの武器に融合されてしまいましたね」


「私がこつこつ貯めた全財産が!!! だったら……使った分は貰っても良いですよね?」


「サテラ……一度シノアちゃんにあげた物なのですから、もう貴方に権利は無いので諦めなさい。そんな理由で請求するのでしたら、私が許しませんよ?」


 エレーンさんが私に味方してくれるのは助かりますね。

 やっぱりケーキの件で怒りが爆発していたのですね。


「じゃ……姉さんのお金を出して!」


「うち、お金なんて持ってないよ?」


「どうしてなんですか! 私と同じ金額を孤児院に入れていたとしても、私と近いぐらいは持っていたでしょ!」


「だって……うちが持ってても仕方ないから、カエデさんに全部渡してたし……カエデさんが亡くなった後は娘さんのモミジちゃんに引き継いでもらって、お金の事は全部お願いしてました」


「じゃ、他に姉さんの収納には何か無いのですか? 私はシノアちゃんに全てあげてしまったので、返してもらった私服しか無いのですよ……姉さんは渡してないから何かあるよね?」


「えっと……衣服の類は今朝全てシズクちゃんに渡したし……ミスティルテインと防具一式以外の予備の武器防具は全てシノアちゃんに進呈したので、ポーションしか無いよ?」


「衣服はともかく……いつ渡したのですか……そしてポーションしか持ってないとか……そうだ! 神薬はどうしたの?」


「神薬って、エリクサーの事ですか? ……使い切ってしまったのでありません……」


「使ったって……お互いに5本もあったのに。あれを使うほど追い込まれた戦いは無かったはずですが……」


「味見したら美味しかったので……4本は普通に飲んでしまって……1本はサテラちゃんに貫かれた時に使って何とか一命だけは取りとめたのです」


「私の攻撃はともかく! 普通に4本も飲むとかアホですか! 瀕死の状態からでも復活出来る切り札なんですよ!」


「だって……美味しかったし……それにうちは基本的に前に出ないから、そんなに強い人と戦う事が少ないから大丈夫かなー? と思ったから……」


 そうなんですよね。

 確かに美味しいのですが、私も1本だけ飲んでしまったのでアホの仲間入りです!


「それじゃ……私達って完全にお金になる物が無いという事ですか……」


「うちらは仲良く貧乏人です! だから、シノアちゃんに養ってもらわないと無力な存在ですね!」


「何を気軽に言っているのですか! シノアちゃんからお金をもらう事を禁じられているのですから、もうここの料理や先ほどの甘いお菓子が食べられないではないですか!」


「じゃ、うちと一緒にどこかで働けば良いよ! サテラちゃんと一緒なら、うちは何でもするよ!」


「この私が今更働くとか……それに姉さんと一緒に働くとか。失敗した時の影響が大きいから嫌ですよ!」


「サテラちゃん酷い!」


「そうだ……シノアちゃんのダンジョンに付いて行って稼げはいいんですよね?」


 私の為にならないから、行かないんじゃなかったのですか?

 来てくれる理由が金の為とか嫌過ぎるんですが……。


「次のエリアはアンデットばっかりだからお金になりませんよ?」


「私も相手にしたくない……そうだ! 姉さんを貸しますので露払いに良いですよ! ちょっとお馬鹿さんですが、聖魔術は結構使えますので、雑魚を寄せ付けない結界と雑魚なら簡単に処理できる『ターンアンデット』の魔法が有効です。役に立ったら報酬を下さい!」


「それだと働くのはステラさんだから、サテラにはあげませんよ?」


「姉さんの物は私の物なので、問題はありません。それに管理してあげないと無くすに決まっていますので、私が預かるのは当然です。姉さんも異存はありませんよね?」


 そして、自分が使うとか、やっぱりサテラの方が悪魔らしいですよ。


「サテラちゃんがそう言うのでしたら……うちは従います……ちゃんとうちにも買って下さいよ……」


 過去に何をしたのか知りませんが、ステラさんって不憫すぎます。


「サテラ……貴女ね。ちょっと我が儘が過ぎますので、しばらくうちの店で働きなさい。ちょうど1人地方に嫁いだ子が辞めたところなので、貴女をウェイトレスとして雇ってあげます」


「私が接客をするのですか?」


「このお店は朝から営業していますので、貴女は朝から晩までしっかりと働かせてあげます。もしも遅刻したりサボったりしたら、消えない程度に精神体にしっかりとお仕置きして上げます。痛覚遮断なんて無駄ですからね?」


「もう働く事が確定なのですか! せっかく自由を満喫しているに……」


「王都に来てからずっとだらしない生活をしていたのは知っているのですよ? 私の所に来るのかと思ったらずっと食べているだけらしいですからね」


「どうしてそんな事を知っているのですか? エレーンさんの気配はお屋敷の方には感じなかったのですが……」


「このお店のウェイトレスの服装は中々お洒落と思いませんか? 最近、シズクちゃんに頼んでおいた接客用の上品な感じの服が出来たのです。試作品の頃からサテラが居るのは聞いていたのです。たまに卸した服の様子を聞きに来てくれるので、サテラが何をしているのか教えてもらいましたが、まさかそんなダメな子になっているとは驚きました」


「シズクちゃんが私を売るなんて! 同志だと思っていたのに……」


「別に売っていませんよ? 屋敷で寛いでいるとしか聞いていません。いつも何か食べていると教えてくれただけです。明日の朝から必ず来るのですよ?」


「はい……わかりました……」


 いい気味です。

 これでしっかりと接客でも覚えて、心を入れ換えてください。

 まあ、つまみ食いでもして、お仕置きされる方が早いと思いますけどね。


「ラウルくん。欠員を確保しました。これからお店の接客の内容を厳しく教えてあげて欲しいので、連れて行ってください」


「畏まりました。それではサテラさんは私に付いて来て下さい」


「今からなのですか!? 聞きたい話があるので明日からにして下さい!」


「ヴァルザードに仕えるようになってしっかりとした子になったと思っていたのに、眠っていた間に元の手の掛かる子に戻ってしまった貴女と話すのは、反省してからで良いと判断しました。後で様子を見に行きますので、それまでにしっかりとルールを覚えていなかったら、お仕置きします。早く行きなさい」


「私の自由が……」


 ぶつぶつ言いながらラウルさんに付いて出て行きました。これでお屋敷での自堕落な生活をさせなくて済むので、食費が助かります。

 朝からごろごろして、食っちゃ寝ばっかりしていましたから良い薬です。


「あの……うちも働いた方が良いですよね?」


「ステラはシノアちゃんのダンジョンに付いて行くと良いでしょう。ただし戦闘には参加せずに防御と結界を張っているだけにしなさい。それに貴女を雇うと失敗の方が多そうで怖いですから……」


「わかりました! エレーンさんに言われた通りにします。最後の方が聞き取れなかったのですが、何でしょう?」


「気にしなくても良いです。貴女は貴女に出来る事を言われた通りに頑張るのですよ?」


 うーん。

 ステラさんは昔から変わって無いという事ですね。

 もしも、同じように働かせても、きっとお皿は割るし、こけて料理を台無しにしたりする未来が私にも想像できます。


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