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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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53 無駄に凝っている物


 放置されてから、どのぐらいの時間が経ったのでしょう……少なくとも夜にはなっていると思います……。

 現在、真っ暗な部屋の中で、お尻丸出しで床から生えてる壁に固定されています。静か過ぎて、すごく怖いのです……。

 少し前に通路の方にマナの流れを感じたので、必死に助けを呼びましたが、気付いてはくれませんでした……。

 この体になってからはマナに敏感になっていますから、翡翠眼を使い続けていれば離れた位置のマナの流れも察知出来るので、ここに続く通路ぐらいでしたら人の気配はわかるのですが……。


 問題は、この部屋です。

 シノアがシズクさんの世界の知識も使って防音室にしてあるので、音が全く漏れないのですが、どうしてこんな作りにしたのか理解出来ません。

 シノアが居なくなってからしばらくすると、彼女のマナの反応が無くなって、薄っすらと光っていた明かりが無くなって暗くなるのです。他の者が明るくするには、入り口の宝珠にマナを流さなければいけないのですが……扉は私のお尻の方角ですから、簡単な魔法でマナを飛ばす事も出来ません……。

 翡翠眼を使えば暗闇でも見えない事も無いのですが、半端に見えるので却って怖いのです……。

 何とか破壊しようと試みたのですが、この壁は私が攻撃の魔術を使おうとすると私のマナを吸収して、硬度が上がるとか無駄に凝っています!

 しかも、壁が受けたダメージが私に返って来るので、あり得ない痛みを体験させてもらいました……私が唯一使える近接用の風魔術の『ウィンド・ブレイド』で斬られるとあんなに痛いなんて……この魔法を人に使う事になったら、躊躇ってしまうかもしまいません……。

 その時の痛みと驚きで、思わず粗相をしてしまいました……見えないのですが入り口に水溜りが……誰かに助けてもらいたいのですが扉を開けたら、お尻丸出しにお漏らしを見られるという屈辱なのです!

 今日の事は決して忘れません……絶対にチャンスがあったら、仕返しをすると心に誓いました。

 シノアは気付いていないのですが、土魔術だけでこんな凝った壁は普通は作れません。

 建物などを作る時には他の魔法を組み合わせる事に気付いてますが、イメージで作り出している魔法は『クリエイト・ウォール』だけでは出来ません。

 シノアは無意識の内に使っているので気付いてはいませんが、他の魔術とは別にこの壁のように特殊な構成をするのに特に重要なのは誓約魔術なのです。

 約束で縛ると考えているようですが、実は無機物の物にも適用されるので、付与に近い事が出来るのです。

 自分の事は色々な魔術は使えるけど半端などと思っていますが、使える魔術の組み合わせ次第では、強力な固有魔法を生み出す事が出来るのです。

 この事を教える事は出来るのですが、教えると……絶対にろくでもない事を考えるので教えていません。

 真っ当な良い子だったら、教えても良いのですが……いまのシノアには、美味しいネタが増えたと考えるでしょうね……。


 もう一つだけ多分脱出出来る方法があるのですが……私には勇気がありません……。

 その方法とは、痛みに耐えて上半身を斬り落として、壁の裏に回って下半身を回収して急いで治療して繋ぐという荒業があります。

 私は、心臓の代わりにある核さえ失わなければ、首を刎ねられても死にませんが……自分で斬り落とすとか無理です……。

 流石に首を刎ねられてしまうと核と繋がりを無くしてしまうので、シノアに治してもらわないと行動不能になりますが、体の一部なら痛みに耐える事が出来れば不死なのでなんとでもなります。

 この体の最大の欠点である痛覚が恐ろしいのです……受けた痛みの最大の激痛が治るまで常に維持されるとか普通に拷問とかされていた方がましなのです。

 ノアさんに一つだけ痛みを回避する方法を大変な対価を支払って教えてもらいましたが……この方法は代償が大きい事と私の切り札になるので、簡単には使えません。

 なので、自力での脱出は諦めて大人しくしていますが、1人で暗闇に閉じ込められるのがこんなにきついとは思いませんでした。

 もし、私が捕まったりして、地下牢などに幽閉などされたら、とても耐えられる自信がありません。

 たった半日で、もう心が折れかけているのですから……いまの私は、折檻を受けてもいいので、とにかくここから出たいと思っています。


 あの恐ろしい拷問漫画の影響のせいで、最近のシノアの嫌がらせのレベルが上がって来ていると思います。

 ノアさんの仮想空間に散乱して落ちているので、読んだ事があるのですが、シズクさんが読むには内容が過激すぎます。

 お蔭でシズクさんが演じている設定というのが理解出来ましたが、向こうの世界ではあれが普通なのでしょうか?

 シノアを真っ当な思考にする為に、常に一緒に居て真面目に接しているのですが、私の影響より他の方の感情が強すぎて、どんどん狡賢いというか悪知恵の働く傾向になっているのです。一体誰の思考なのでしょうか?

 優先的に読み取ってしまうのは、刻印をされているエルナ様なのです。表向きは良家の子女として振舞っていますが、本心は少し危ない方なので困っています。

 本当は、皆さんにこの事を伝えておけば良いのですが、制限が掛けられていて話す事が出来ないので、私が何とかするしかありませんが……せめて同じ眷属のセリスさんにだけでも話す事が出来れば協力が得られるのですが、彼女はシノアの指示には絶対に従うので。賛同してくれるかも別ですが……。

 

 そんな事を考えながら目を閉じて諦めていると、背後にわずかに風を感じます!

 部屋の明かりは点いていないのですが、扉が開いた事は間違いありません!

 でも、どうして明かりを灯さないのでしょうか?

 この部屋に入るには、シノアを除くと解除キーを仕込んである武器を持っている事が条件なので、入れる人物は限られているのですが……。

 壁の後ろにマナの流れを感じるので、誰かが居るのは間違いありません。

 この暗闇の中では、何も見えないと思いますが……わ、私のお尻が丸出しなので、すごく恥ずかしいです!

 いつまでも反応が無いので、こちらから声を掛けるしかありませんが、誰なのでしょう?


「済みません。私の後ろに居るのは誰なのですか? それに真っ暗なのに、どうして明かりを点けないのでしょう?」


 反応がありません……それどころか私のブーツを脱がして足に何か嵌めていますが、一体何をしているのですか!


「どなたか知りませんが何をしているのですか! もしかして、シノアですか? 悪戯なら、いい加減に止めないと本当に怒りますよ!」


 もう、蹴とばしてしまおうかと思ったら、先ほど嵌めていたのは足枷らしく壁に固定されているみたいです!

 私がもう何も出来ないと思ったらしく、お尻や足を撫で回しています。見えないので、怖くなって来ました……ここに入れるわけがないのですが、もしかして男性だったらと思うと……それだけは絶対に嫌です!


「誰なのですか! お願いですから、止めて下さい! こんなの酷すぎます……うぅ……嫌です……」


「ごめんなさいね。泣かせてしまうつもりは無かったのですが、つい悪戯がしてみたくなってしまって……」


「エルナ様……」


 私が泣きながら名前を呼ぶと、前に出てきてくれました。頭上に小さな球体の光が薄っすらと照らしています。

 

「シノアにこっそりと入った方が面白いと聞いたので、入る前に小さな光だけ作り出して扉を開けたら、いきなりお尻があるし、壁に小道具や色々と書いてあるから、ちょっと実行してみたのですが、少しやり過ぎてしまったようですね」


 一体、壁の裏に何がしてあるのでしょう……書いてある事がとても気になりますが、それを実行するエルナ様もエルナ様ですが……。


「ぐす……裏はどうなっているのでしょうか? それとそんな小さな明かりを作り出せたのですね……」


「私が唯一まともに使える聖魔術は『ライティング』しかありませんからね。マナの鍛錬の為に『ライティング』は毎日使っていますので、イメージの調整をしていたら好きなサイズの明かりの球体を作り出す事が出来るようになったのです。新たに作り出さなくても現在維持している物に更にマナを追加すれば、明るさも調整出来ますよ?」


 そのまま球体を部屋の真ん中に飛ばして、明るさを調整すると球体が分裂して部屋全体が昼間のような明るさになりました。普通は、ここまでする事は出来ないし、単純に光る球体しか生み出さないのですが、このような制御が出来るという事は、エルナ様の魔術の才能が高い証拠です。

 もし、魔術をメインに鍛錬すればかなりの使い手になれると思いますが、残念な事に適性が無いので、使える魔法が少ないのが惜しまれます。


「食事にも来なかったので、厨房で残っていた物ですが、見繕って持ってきましたから、解除するまで食べていて下さいね」


 そう言うと何故か部屋に1つだけ置いてある机を私の前に運んで来てくれて、持ってきたバスケットの籠を置いてくれました。

 

「ありがとうございます。ずっと放置されていて、時間の感覚がわかりませんでしたので。エルナ様のお気遣いは嬉しく思います」


「ちょっと時間が掛かると思いますのでゆっくりと食べていて下さいね。それとちょっとだけ我慢してもらいますが……」


「我慢とは、なんなのでしょうか? そんなに時間が掛かるのでしょうか?」


 籠の中の物を頂きながら尋ねましたが……なんとなく解除方法が理解出来ました……。


「あのね……お尻を100回叩くと解除される仕組みになっているみたいです。壁に数字があるのですが、叩くと多分減っていくと思います? どのくらいの強さで叩けば良いのでしょうか? ちょっと軽く叩いてみますね?」


 やはりそうでしたか……いつかシノアのお尻を気が晴れるまで、叩いてみたいです。

 そう言うと私のお尻を軽くぺちぺち叩いていましたが段々と威力が上がって来ています……地味に痛いのですが……。

 音がしっかりと聞こえるところで止まりましたが……まさかいまので数字が減ったのでしょうか?

 もしそうだとするとこの威力で残り99回になりますが絶対に腫れ上がりますよ!

 聞きたくは無かったのですが確認をしておかないといけません。


「済みませんが……もしかして、今の強さで数字が減ったのでしょうか?」


「はい、そうみたいなので、食事をしながら、ちょっと我慢して下さいね」 


 そう言うと叩き始めましたが、これを食事をしながら耐えるのは難しいですよ!

 下手に回復をさせたりすると不自然なので、治癒する事も出来ません!

 せっかくエルナ様が私の為に持って来てくれたのですから、食べないわけにはいきませんので、何とか痛みに耐えながら食べていますが……これは、どんな罰ゲームですか!

 どうしてシノアのする事は、お尻叩きになるのでしょうか……きっかけはシズクさんの行動ですが、何故か私達の間では、何かしたときのお仕置きが必ずこれなのです。何とかならないのでしょうか?

 30回ほど叩いたところで、一旦止まりましたが、すごく痛いです……エルナ様の手前もあるので痛いなどと言う事も出来ません。


「ちょっとお尻が赤くなってしまったのですが、一言も痛いとか言わないけど、大丈夫でしょうか? それにしてもカミラって、食べるのが速いですね?」


「なんとか大丈夫です。食事の方は普段と変わらないと思いますが、どうかしましたか?」


「籠に一杯あったのですが……最近のカミラは、食欲が旺盛ですよね?」


「そんなにあったのですか? お腹が空いていたので、気付かずに食べてしまったようです……」


 先ほどから、無駄にマナを消費していたので、つい気付かずについ食べてしまいました……皆さんの前では、なるべく以前と同じぐらいの食事量にするようにしていたのですが忘れていました。

 食べる量を考えないとマナが全快するまで食べてしまうので、シノアと同類とか不自然に思われてしまいます……そんなに沢山有ったのでしたら、疑問に思われるのは当然かも知れません。


「それに間違えて持ってきたのですが、飲まないと思っていたワインも空のようです。いつから酔わないようになったのですか? 以前は、こんな物を1本も飲んだら、酔いつぶれていましたよね?」


よく見たら、ワインでは無くウォッカとか書いてあります……こんな物を飲んだら、以前の私でしたら一口で倒れていましたね……やたらとマナの変換率が良くて気持ちいいと思っていましたが、どうやって誤魔化しましょう……。


「シノアに付き合わされていたので、多少は飲めるようになったのです……」


「そうですか……」


 私の目をじっと見ていますが信じてはいませんね……目が信じていませんと言っています。

 そして、私のお腹周りを触り始めましたが……一体何を?


「では、あれだけ食べたのにどうして、お腹がこんなにすっきりとしているのですか? 少しもお腹が膨れている感じがしませんね……」


 非常にまずいですよね……いくら食べても太らないのは、女性にとっては理想的な事なのですが、今の私は不自然過ぎます。

 私の場合は、眷属になった時の容姿がそのまま魂の記憶になっているので、この姿からは変化はしないのです。


「シノアが美味しい物を作るようになってから、私はちょっとお肉が付いてしまったので、ダンジョンでは頑張っているのです。今回は連れて行ってもらえなかったので、勉強の後に地味な運動と訓練をしていました」


「エルナ様は、お綺麗ですので、そのようには見えませんが、日々の努力をしているのですね」


「私よりも体形の良いカミラに言われてもね……むしろ聞きたいのですが、どうやってその体形を維持しているのですか? シノアから何か秘訣でも教えてもらったのですか?」


「そのような物はありませんが……申し訳ありませんが、体質としか答えられません……」


 私を見る目がさらに厳しくなりましたが……何か答えを間違えてしまったのでしょうか?


「よくわかりました。カミラが私に嘘を吐いている事は明確です。これはシノアの言う通り溜まった鬱憤の発散を兼ねて罰を与えないといけませんね?」


 どうして、いまの会話でそうなるのてすか!

 だからと言って、不老不死になったので、姿が変わらないとは言えません!

 いっそ食べた物は全てマナになっただけと言いたいですが、そんな事を言ったら、どんどん追及されてしまいます!


「私は、嘘など吐いていません! エルナ様、信じて下さい!」


「もう一度だけ聞きますが、どんな事をしているのですか?」


「本当に特に何もしていません……」


「わかりました。カミラが素直になるのが早いか解放されるのが先か、実行するしかありませんね?」


 そう言うと後ろに回って、お尻を撫でています。


「あの……エルナ様?」


 次の瞬間に強烈な痛みが襲ってきます!


「きゃん!!!」


「あら? 可愛らしい声ですね? 先ほどまでは声など出さなかったのに……もっと聞きたくなってきましたよ?」


 いきなり強く叩かれたので、思わず声が出てしまいました。まさか……いまの威力で残りの回数を叩くつもりですか?

 エルナ様の本気で叩かれたら、もう拷問レベルの痛みです!

 既にお尻の叩かれた場所が燃えるように痛いのです!

 こっそりと少しだけ癒して痛みを軽減していますが、半端に治しているので、お尻が全体的に痛いのです。

 私が聖魔術が使える事はまだ知らない筈なのですが、癒さないとこの痛みが継続するので、とんでもないのです。


「今の威力で叩かれるのは、すごく痛いので、お願いですから、先ほどぐらいに下さい……」


 ちょっと涙声で訴えました。お優しいエルナ様なら、手加減をしてくれるはずです……。


「私は、素直に答えるまでは手加減などしませんよ? それに先ほどは言いませんでしたが、また少し粗相をしているみたいですね。終わったら、掃除をしておかないとシノアに怒られますよ?」


「そっ、それは……お願いですから見なかった事にして下さい!」


 あまりの痛みにまた少し粗相をしてしまったようですが……最近になって思うのですが、感度が良いというか……生き返る前よりも漏らしやすくなっているのです!

 こんな事が出来るのはシノア以外に居ませんので、私の体質を変えているに違いありません!

 最初に出会った会った頃のシノアはこんな悪戯とか人が嫌がるような事は絶対にしなかったのに、一体誰の影響でこんな事をする子になってしまったのでしょう?

 常にシノアの側に居るのに私の影響がまったく反映されないのはどうしてなのでしょうか?

 私って、存在が薄いのでしょうか……。

 残りの痛みに耐えた後に、自分の粗相の始末をしなくてはならないとか酷すぎます!

 今日、ノアさんにお願いして、何とかシノアにお灸を据える方法を教えてもらいます!

 その後、ずっと叩かれ続けられました。私が何も言わないので、本当に手加減無しで叩かれ続けました……。

 壁が消えると、気分の晴れたエルナ様も一緒になって掃除を手伝ってくれたのですが……かつて憧れていたエルナ様と自分のお漏らしの始末とかあんまりです……。

 考えたくはないのですが、エルナ様のこういう所がシノアに悪影響を与えているのかも知れません。

 そのまま、お風呂に誘われたのですが、断って早く1人になって癒したいのが本音です。

 勿論、断る事など出来ないので、痛みに耐えながらしっかりと入らせてもらいましたが、エルナ様は嬉しそうです……遠慮したのですが念入りに洗われたので、さらに痛かったです……。



 カミラとエルナが地下で戯れている間に、オリビアが話がしたいというので工房の一室に来てもらっています。

 実は、私の部屋は特に作らずに、工房に色々と用途別に確保してあって、寝る時だけがエルナの部屋と決められているのです。

 今一緒にいるのは、みんなと相談する為に会議部屋です。

 この部屋も転移室と同じように防音仕様にしてあるので、会話も外に漏れないようになっています。

 サテラは色々と見て回りたいとの事で、どこかに行ってしまいました。万が一、何かあっても私の中に戻るだけなので心配無用との事です。


「それで、私にお話しとは何でしょうか?」


 彼女からは、エルナと変わらない感情を感じますので、変な事にはならないと思いますが、ちょっと迷っているような感じもするのです。


「率直にお聞きしますが、シノアさんはこの国をどう思っていますか?」


「この国ですか?」


「そうです。不満などがあるのでしたら、それも教えていただきたいのです」


 いきなりそんな事を聞かれるとは思っても見ませんでしたが……ここは素直に答えておきますか。


「住み易い良い国だと思っていますよ。食べる物も美味しいし、ダンジョンで自分も鍛えられてお金も貯められるし、良い人達にも恵まれていますので、私は満足していますよ?」


「シノアさんは、書物を良く読んでいますので、歴史にも詳しいと思いますが、もしも戦争が始まったら、この国は生き残れると思いますか?」


 さらに斜め上の質問が来ましたよ?

 ちょっと意味がわからないのですが……オリビアの目が真剣なので、思っている事を言ってしまうと……。


「他の国の情勢がまったくわからないので、私にはわかりませんが……」


「では、質問を変えますがシノアさんから見て、この国の人材は強いと思いますか? 申し訳無いと思いますが、以前にシノアさんの事は調べさせて頂いていたので、鑑定持ちですよね?」


 私が鑑定を使える事は一部の人しか知らないのですが、どこから漏れたのでしょうね?


「その質問に答える前にどうやって私の事を調べたのですか?」


「シノアさんが学園に現れて活躍するようになってから、貴女の事を色々と調べてました。王都に来る以前の事も関わりになった方達から、気付かれないように話を持っていって情報を集めている内に、貴女が相手を見抜く力があると知りました。私の家……シュタイナー家は優秀な人材を探す役割を国から受けているのです」


 だから、旅館での言い争いで、エルナが襲われた事や助けた事も知っていたのですね。

 あの時は、何を比べているのかと思った程度でしたが、今考えれば、何故知っているのかを疑問に思うべきですよね?


「そうなると、私は見込みがあるという事なのでしょうか?」


「見込みがあるどころか、どうしても組み込みたい人材です。貴女がSクラスに来てくれたら、すぐにでも勧誘するつもりでしたが……思い通りにいかずに貴女に不快な事をする始末でした。あの頃の私はどうかしていました……」


「まあ、それは過去の事なので、もう言わないで下さい。私は、今が大事なので気にしません。そうですか……では、正直に言いますと、この国で強いと感じる人は一部を除けば殆どいませんよね? お城に強い使徒の方達が居るのでしたら話は別ですが、何人か使徒の方を見ましたけど、過去の歴史と比べるといくら今が停戦状態とはいえ……」 


 当時のサテラのレベル1200台だったのですから、当然それに近い者達が居ないと戦力とは呼べませんよね?

 あの時に力を貰ってもレベルが500近く有ったはずです。

 それに使徒では無いラウルさんがレベル500台なのですから、普通に考えれば使徒として力を得ている者はサテラに匹敵するレベルがあるのが普通なのですが、アルちゃんのレベル5000とかいうおかしな数字以外は見た事がないのです?


「もし……戦争になったら……この国の為に力を貸してくれますか?」


「えらく話が飛躍して来ましたが、戦争でもする予定があるのですか? それに私の力など大した事はありませんよ?」


「情勢については詳しくは言えませんが……シノアさんには、私達に無い知識があります。武術大会で見せてくれた魔法や私にくれた剣もそうですが、エルナの持つ大剣などは、シノアさんが作ったと聞きましたが、王宮の鍛冶師にも作る事は不可能です。それにユリウス殿下に渡した剣なのですが……詳しく調べたらとんでもない剣です」


 よく見てるというか調べてますねー。

 武術大会に武器の鑑定が遠目でも分かる者が居たのでしょうか?

 ユリウスにあげた剣って、人型に威力を発揮するだけなんだけど?


「ユリウス達が10回のボスで行き詰っていると、クロード先輩から聞いていたから、あげたけど。そんなにすごい剣とは思えないけど?」


「あれがすごくないと思うのですか……あの剣で斬った人型の魔物は、ほぼ一撃で倒せます。ボスのゴブリンキングなどは、数回攻撃したら、倒せてしまいました。本人はマナの消耗が激しくて、倒した後に倒れてしまいましたが、対人なら最強の剣と言えると思います。それに……この剣も常に持ち歩いていますが、最初からかなりの威力と硬度があり、長時間は無理ですが、より多くのマナを籠めると更に威力が増します。正直に言いますと元の宝剣より優れものです」


 無事に10階層は突破出来たみたいですね。

 まさか浜辺で私が戻って来るのをずっと待っていた時は驚きましたが、夜中に魔物を狩っていた事を黙ってもらうつもりであげたのですけどね。

 人型に大ダメージとか、普通に考えたら、人間にも適用されますねー。

 それは、ちょっとやばい物を作ってしまいました!

 マナさえ込めれば人型のボスにも大きな威力とか素晴らしいですねー。

 あの剣は偶然出来たのだけど、人型以外にはその力が発揮されないから収納の肥やしと思っていましたが、対人のみと考えたら使えますね。

 オリビアの剣は成長させるのが面倒だったので、私が最初にそれなりに使える状態にしてあっただけだけどねー。


「その事はどのくらいの人が知っているのですか?」


「エルナの大剣については、大会を見ていた者で目利きの出来る者は気づいたかもしれませんが、私とユリウス殿下の剣は、鑑定をした者と私と殿下しか知りません」


「まあ、他に教えないでくれると助かります。エルナの方は、どうにもならないですが、あの剣はどうせエルナにしか使えないので、問題はないでしょう。エルナはくーちゃんとか呼んでますが、中身はとんでもない代物になってしまいました。エルナ以外が使っても何も斬れないただの硬い大剣です。もしかして、私に武器を作らせたいのですか?」


「私には……そこまでのお願いは出来ませんが、貴女は目立ち過ぎたので、利用もしくは手に入れたいと思っている者が居る事を覚えておいて下さい。私も昔はその1人でしたが……目聡い者達が増えてきています」


「覚えておきますが、そんな事は不可能とだけ断言しておきます。そして、先ほどの問いですけど、私が国の為に動く事はありませんが、私が助けたいと思った者の為には動くとだけ言っておきます。当然ですがオリビアもその1人です」


「ありがとうございます。いまはそれだけ聞ければ十分です」


「これは、私が受けた警告なのですが、この世界では強くなる事が全てだそうです。おそらくは、オリビアはわかっているとは思いますが……」


 多分ですが取り決めた不可侵条約の期限が近づいて来ているのかも知れませんね。

 エレーンさんに聞いても適当に決めたとか言ってましたので、正確な期限はこの国の女神と政治の実権を握っている者達だけかと思います。

 可能でしたら、他の国の情勢も調べた方が良さそうですね……私にどれだけの事が出来るかわかりませんが、知り合いの人達の力にはなってあげたいと思っています。


「そうですね……私も少しでも強くなる為にもシズクさんが戻ってきているのですから、少し鍛えてもらってきますね。最近になってようやく少しぐらいはエルナの相手が出来るようになりました。この服がないとダメですが」


 そういえば、どこかで見た服装と思っていたら、武術大会でエルナが着ていた物の色違いです。

 反射とかいういんちきな付与がしてありますが、マナが自然消耗するから、私には不向きですけどね。


「シズクに習うのは剣だけにした方が良いと思います。他の鍛錬はちょっとおかしいので……その服は作ってもらったのですか?」


「時間がある時は、こちらで剣を見てもらっています。私は筋が良いと言われましたので、少しでも剣技を学びたいと思っています。シズクさんのこすぷれというものに付き合う事を条件に、エルナが大会で着ていた物と同じ物を作ってもらいました。私の剣がことごとく弾かれた理由がわかりましたが、こんな付与が可能なのですね……しかし、この能力を発動させるのに、最初の頃はマナの消耗が追いつかなくて大変でしたが、今ではそこそこ持つようになりました」


「コスプレが条件とかえらい事を引き受けましたね……何も言わなければ、オリビアに似合う物を勝手に作って、着て欲しいと絶対に言ってきましたよ?」


「そうだったのですか……しかし、約束したのでどんな服でも着ますが、着ぐるみという物を何着も着た時はとても疲れました。この服の対価としてはお安いぐらいです。この屋敷で変わった服装でいる方達は、みんなシズクさんのこすぷれに協力しているのですね」


 ダンジョンで着た着ぐるみの試着者はオリビアでしたか……あの無駄に高性能な防具を……見た目さえまともだったらね……しかし、オリビアがあの着ぐるみを着ている姿を想像するとすごく笑えるのですが!

 好きで着ている人と何か約束して着ているかのどちらかですが、変なコスプレに限って使える付与がしてあります。絶対にワザとですよね?

 この前にお庭で掃除をしていた元アサシンの方は、サムライという人の服装で門の前で挨拶をしてくれたのですが、何故か職業まで侍になっていましたよ?

 まさかとは思いますが、服装とシズクの精神論だけで、あちらの世界の職業になれるとか……形から入れば何でも可能かなと思いました。最近になって、お屋敷の空気が変な方向に染まっているのですが、どうして誰も止めないのか不思議です。


「まあ……本人の趣味なので、好きにさせていますが、あんまり変な物はちゃんと教えてあげた方が良いと思いますよ? 知らないと思って調子に乗っていますからね」


「変と言いますか斬新的ですね。道場の方に行くと皆さん個性の強い方が多いですね。それと今ですから言いますが、私が潜入させておいた者が居たのですが、定期連絡が無くなってしまったので捕まってしまったと思っていましたら、シズクさんの配下になっていました」


 いつぞやにシズクが話していた間者の1人なのでしょうね。

 死ぬか配下になるしか道が残されていないので、死にたく無ければ配下になるしかありませんが、裏切ったりしないのがすごく不思議なのですよね?


「私がお話をしますので、オリビアが望むのであれば、戻れるように説得しますよ?」


「最初に声は掛けたのですが……恥ずかしいお話ですが、こちらの方が待遇が良いので戻る気はないと言われてしまいました。それに今では、私の剣の練習相手もしてくれるので、助かっています。彼女は我が家に古くから仕えてきた者の出なのですが、完全にシズクさんに惚れ込んでしまっているようなので意思を曲げる事は無理と判断致しました」


 誰かは知りませんが、一体何に惚れ込んでいるのでしょうね?

 あんな無茶な修行を言われた通りにこなしているのですから、みんなきっとマゾに違いありません。

 シズクに頼まれて刀を沢山作っていますが、きっと配下になった人達に渡していると思います。

 段々とお屋敷の警備体制が強化されていくので良い事なのですが……何かおかしい気がします……。

 

「シズクは、多分ですが工房の自分の部屋に籠っていると思いますので、そちらに最初に行くと良いですよ」


「何か製作中なのですね? それでしたら、何か差し入れをしてから道場の方に行くとします」


「では、これを持っていってください」


 私の収納に常時保存してあるケーキとジュースです。

 食事にも来なかったので、ちゃんとした物の方が良いかと思いますが、甘い物の方が喜ぶでしょうからね。


「催促したようで申し訳ありませんが、届けてきます。それでは、失礼しますね」


 明日までには、きっと仕上げて来るサテラの天使のコスプレとかいう服なのですが、どんな物になるのやら……サテラって、年長者なのに意外と軽い性格なので、面白がって着てくれると思います。とても恐れられた存在とは思えませんよね。

 それにしても、武器や防具に触れなくても性能がわかる人が居たのですね……適当に作った物を色んな人にあげてしまいましたが、そうなるとちょっと控えた方が良いと思います。後で、ギムさんにでも聞いてみましょう。

 防具に関しては、シズクが作っている物なので、何かあったら心配ですが、余程の強者でも現れない限りは大丈夫だと思います。謎の隠密集団とやらの人達のレベルって私達と変わらない人が結構いますから、注意すべきは完成された技能の持ち主だけです。



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