47 勧誘ですか?
海から戻ってから、久しぶりに学園に登校しています。
大変な事件が発生しましたが日常が戻って来てくれて良かったです。
海の家で、意外と儲かったので、バイトをした皆さんの懐はかなり潤っているみたいですね。
何人かの生徒は、私の事をマスターとか呼ぶのですが、学園では勘弁して欲しいです。
来年からは、臨海教室ではなく海に出稼ぎのアルバイトに行くと思う人がいそうですね。
3日間はお休みだったので、減った食材を色々と買い物していたのですが、その間にお屋敷にクロード先輩達がシズクに弟子入りしに来たのには驚きました。
事件の時に魔法陣の前にいるシズクにコテンパンにされて、その剣を習いたいと言っているのですが、速さに特化したシズクでは戦闘スタイルが違うような?
まあ、エルナの練習相手に丁度良かったので、適当に指摘しながら2人を相手にしているみたいです。
あの刀の速度に慣れるだけでも得る物はあると思いますからね。
後は、オリビアがサラさんに何か話をしていましたが、何の話をしていたのでしょうね?
ちょくちょくお茶をする機会が増えたので、エルナと何か高度な言い争いをしていますが、どうも会話ではオリビアの方が1枚上手みたいだし、2人を見ているとお嬢様としてはオリビアが勝っていますね。
彼女と話をしているとこの国の内情が結構整理されていきますから、中々の情報を持っているようで助かります。
以前にラウルさんがこの国の現状と言っていましたが、どうも知っている内容とかなり違う状況みたいですね。
学園には、しばらくの間はダンジョンに籠る事を告げて攻略再開です。
転移のポイントを51階層にしてこなかったので、入り口から行く事になったのですが、変な人達が待ち構えていましたよ。
「黒の暴風の面子だね。ちょっと話があるからついてきな」
何ですかこの人は?
知らない人に付いて行くなと習わなかったのでしょうか?
あちらは私達の事を知っているたいですが、付いて行く理由が見当たりませんね。
「遠慮します。私は、知らない人に言われて黙って付いて行く事はしませんし、大勢でいきなり囲ってくる人達はさらに信用出来ません」
「いいから黙ってついて来ればいいんだよ。それにあたしらの事を知らないなんてね」
良くわかりませんが有名な人達なのでしょうか?
「シノア、この人達はクラン『暁の旅団』の方達です。50名を超えるメンバーを保有していて、現在ダンジョンの93階層まで、攻略しています」
カミラからの補足情報ですがよく知っていますね。
これまでもこの手の事は勝手に調べてくれていたのですが私の子守りもしなくてはいけないので、更に調べ物が増えそうです。
私が調べればいいのですが、はっきり言って他人の事なんてどうでもいいんですよね……私は親しくなった人以外には興味が持てないので、どんなに偉い人でもただの通行人にしか見えません。
「そっちの娘の方があたしらをちゃんと知っているね。わかったら、大人しく付いて来な」
だからなに?
私には意味がわかりませんが?
一つだけ言える事は、関わり合いになりたくありません!
「改めて言いますが遠慮します。理由も無しに付いて行く必要がありません」
それに1人だけ見覚えのある人が混じっています。私達の所に魔物を引っ張って来て、私が足を固定したやった馬鹿がいます。
私達の行く先に陣取っていたのは、この人達なのですから、私にとっては敵と認識しました。
何時かの失敗はしたくないので、ここで攻撃してきたら、必ず殺しますよ。
「可愛くない小娘だな……あまり手荒な真似はするなと言われているんだが」
最初に声を掛けて来た小娘の保護者らしい人が何か言っていますが、殺しても良いですよね?
「では、どうする気ですか? そっちがその気でしたら、私は手加減などしませんよ? 来るのでしたら殺す気で来て下さいよ?」
私がそう発言すると同時に『ヘキサグラム・シールド』を自衛の出来ないキャロに付けて、『フレイム・ロンド』の火球を展開します。
この魔法は対象を定めないと待機させる事も出来るので、自衛にも便利なのですよね。
それにいまの私なら、かなりの数の火球を同時に出せるので、囲っている奴らに全て攻撃可能です。
ただ、ここで使ったらとんでもない事になるけどね!
その時は、エルナの権力で誤魔化すしかありませんねー。
流石に驚いていますがどう出るかな?
「シノアさん、何をしているのですか!」
おや、受付のうざい娘が来ましたね。
「だって、この人達が先に絡んで来て、私達を脅すから、弱っちい小娘としては、このぐらいの自衛はしないと怖いのですよー」
「シノアさん達が弱かったら、殆どの人がもっと弱いですよ! お願いですから、その魔法を止めて下さい! それを使ったらこの辺りが瓦礫になってしまいます!」
「あれ? この魔法を知っているのですか?」
「知っています! その火球が最後に爆散する所を見た事があります!」
ほほー、ちゃんと知っていますね。
泣きながら止めてと言っていますが、また上司に何とか止めて来いとか言われたのでしょうか?
知らない内に私達の担当になっているみたいですが、考えてみると可哀想な子ですね。
絡んで来た人達は、話を聞いてビビッています。
「済みませんが魔法を中断して下さい。身内の者が失礼を働いた事は私が代わりに謝罪致します」
綺麗なお姉さんが来ましたね。
雰囲気的にもかなりの手練れと思いますがどれどれ。
名称:レイリア
種族:エルフ
年齢:147
職業:魔法戦士
レベル:95
技能:上級剣術 中級精霊魔術 上級風魔術 中級体術 中級魔術耐性 初級状態異常耐性 気配感知 危険感知 魔力感知 魔力索敵
固有能力:
先生、強いです!
エルフなので、年齢と見た目が違いますね。
どう見ても20代の綺麗なお姉さんです。
「お姉さんは、この失礼な人達の上司とかなのですか?」
「誰が失礼な奴だ!」
「メル、貴女は黙っていなさい。私がクランのリーダーを務めるレイリアと申します」
「私は、シノアと申します。貴女達は、人を呼ぶ時に大勢で威圧して呼びつけるのが常識なのですか?」
ついでに魔法はキャンセルしましたが警戒だけは怠りません。
シズクには、怪しい動きをしたら殺さずに無力化するように念話で伝えています。
「それについては、深くお詫びします。貴女達とお話がしたいので、メルにお願いしたのです。心配だったので、気になって様子を見に来たのですが、こんな事になっているとは思いませんでした。申し訳ありません」
私のような小娘に頭を下げるなんて、この人は良い人です。
「レイリアさん、こんな奴らに頭を下げる必要なんてありませんよ! あたしらの事も知らないなんて、そいつらは……」
「貴女は、黙っていなさいと言いましたよね? いつも最初に連れて来た人達が怯えていたのはこんな事をしていたのですね。貴女達は当分は拠点の掃除でもして反省していなさい」
「そんな!」
このアホの独断だったみたいですが、どうしましょうね?
私としては、早くダンジョンに行きたいのですが。
着いたら、適当に拠点を作ってからお昼にしたいのに時間が無駄に過ぎて行くなー。
「改めて、お話がしたいので、如何でしょうか? 私達の拠点で、謝罪の意味も込めて、お食事などしながら、時間を頂けると幸いです」
ふむー、この人からは悪意みたいな物を感じないので悪い人ではないですが、ここまで折れているのですから、断るのも失礼ですね。
仕方ありませんので、代わりにしっかりと食べさせて貰いますか。
「わかりましたが私は食べる物にはうるさいですよ?」
「うちの食事担当の者の腕は中々ですから、大丈夫です」
「では、付いて行きますか」
お姉さんを先頭にアホ共が付き添っていますが、先ほどのメルとかいう小娘だけは睨みながらブツブツ何か言っています。
まあ、着いたらしっかりと掃除でもしてると良いのですよ。
短気を起こしてシズクに足でも斬られれば良かったのにね!
付いて行くとそこそこ大きい建物ですねー。
中にいる人達をちょっと見ましたが、結構レベルの高い人達がいますね。
50階層の時には、レイリアさんぐらいの人達は居なかったので、高レベルの人達は93階層の攻略でもしてるのでしょうね。
ちょっとしたお部屋で一緒に食事をしました。私は遠慮無く食べたり飲んだりしたのですが、呆れるどころか楽しんでいるみたいですね。
「それで本題なのですが、貴女達を私達のクランにお誘いしたいのですが、一緒にダンジョンに挑みませんか?」
まあ、そんなお話しと思っていましたが、どうしましょうかな?
「どうして私達を入れたいと思ったのですか? 聞いた所によりますと93階層まで進めているそうですね」
「たった6人で、50階層まで突破してしまう人達を勧誘したいのは、私達のクランの強化の為にも当然の事だと思います。噂を聞いて少し貴女達のダンジョンでの様子を見させてもらいましたが、苦戦らしい事も無くあっさりと魔物を倒して行くのには驚きました。それに私達と違って撤退などせずに、初見でも必ずボスの部屋も突破して行くと聞いています」
いつだったか、見られているとは思っていましたが、この人達ですか。
「では、私達に魔物をけしかけたのはどういうつもりなのですか?」
「それについては、あの子に任せた私の責任ですので、申し訳ありません。貴女達が困っている所を助けて話を有利に進めるつもりだったみたいなのですが、まさか貴女が魔法で一掃してしまうとは思っていなかったらしいのです。申し訳ないと思いましたが、お蔭で貴女が強力な魔導士とわかりました」
なるほどねー。
てっきり殺すつもりかと思っていましたよ。
慌てて消えて行った気配はそういう事ですか。
「私だったから、問題無く経験値にさせてもらいましたが、あまり褒められたやり方ではありませんね。2回目の時は、こっちも嫌がらせさせてもらいましたけど」
「その時のお話も聞いていますので、ちゃんと謝罪をして話し合いをして来るように言ったのですが。悪い子ではないのですが、迷惑を掛けて申し訳ありません。私達は93階層に居たのですが、現地に居たメル達に任せていたので、同罪です」
うーん。
一応、ここのリーダーの方なのにこんなに謝ってばかりなで良いのかなー。
なんか私の質問の方が悪い気がしてきましたよ。
「私達の事をどのくらい知っていますか? 私は世間の評判とかまったく気にしていないから、関心が無かったのですが、ちょっと聞いてみたいのです」
「貴女達が公爵家の方で、シノアさんがリーダーを務めている突然現れた最短記録の攻略者と有名になっています。武術大会も見させてもらいました。特に貴女の魔法は先ほども見させてもらいましたが、私達の魔術師より強力そうですね」
これは、さっきの魔法が使える魔術師がメンバーにいるという事ですね。
あの魔法は、出せる火球の数でどれだけ魔力制御が出来るかわかります。あのアホ娘の驚きから言って初めて見たのでしょうね。
「これは、威嚇のつもりで使った魔法を選ぶのに失敗しましたね。出来るだけ私は魔法を見せないようにしてきたのですが、誰かあの魔法が使える者がいるのですね」
「私と一緒に組んでいる老師が使えますが、あんなに沢山の火球を展開しているのは見た事がありませんからね。あそこで使っていたら、あの建物が無くなっていたところですね」
最近は使ってなかったのですが、密集させるとそんなに威力があったのですか。
最後に爆散して魔物が弾けるので、素材とかぐちゃぐちゃになるから使えないと思っているのですよ。
どうでも良い時は、嫌がらせのような魔法なので使えるんだけどね。
「他にも『ストーン・ウォール』で、強固な建物を作って魔物を寄せ付けないようですが、普通はそんな事は無理だと思いますし、学園行事の海での事も聞きました」
「海の事を知っているという事は学園の所属で誰か貴女のクランに居るのですか?」
「それは、ちょっと教えられないのですが、学園の方にも情報網があるとだけ思って下さい」
後ほど、アイリ先生を使うか、エレノアさんに賄賂を進呈して、調べさせましょう。
教師陣にも、教えてくれたら特別にボーナスを出すとでも言えば、確実に調べてくれるはずです。
あの学園の実質的な黒幕は最早私と言っても良いですからねー。
「それと失礼な事とは思いますが、46階層から連れているその娘さんをどうやってこの短期間でそのレベルに成長させたのですか? ギルドの最初の登録時のレベルは失礼ながらかなり低かったのに、いまではどう見ても私達のところの中堅の魔術師と変わらない力を感じます」
「よく調べていますし、ここに案内される時に先ほど感じた視線は鑑定している者がいたみたいですね」
「失礼とは思いましたが、見れる者に見てもらいました。貴女ともう1人の方はわかりませんでしたが」
私とセリスは見えないとして、カミラは鑑定偽装しているし、エルナ達は対策はしていませんからね。
キャロの方はギルドの登録時の情報を知っていれば、僅かな期間でこのレベルですから、驚きますよね。
まあ、大した事ではないので、教えても構いませんが。
「キャロには、46階層から50階層のボスまで可能な限り単独で倒させて、ほとんどの経験値を集中させただけです。魔術の才能があったから、私の知っている遠距離の魔術をどんどん教えました。後はマナポーションを沢山用意すれば、倒させるだけですから、面白いぐらいに上がりましたよ?」
マナポーションの飲み過ぎでトイレばっかし行きたがるので、最初の内は茂みの一部を壁で囲ってさせてましたが、効率が下がるから途中から命令してオムツ着用で無理やり戦わせました!
しかし、普通の人がマナポーションを飲むとほぼマナに変換されるので、そんなに尿意など無いはずです。飲ませ過ぎたとは思いますが、気分なのかな?
そう思うと、私は用を足さないので便利ですね。
最近は、マナの自然回復力で賄えるので、セリスがたまに使う程度ですね。
「そうでしたか……皆さんはよく納得されましたね。普通でしたら少しでも自分が強くなりたいのでそんな事はしません」
「このパーティーは、シノアの言葉が絶対なので、誰も疑問に持ちませんよ?」
「そうです! お姉様が黒と言ったら、何色でも黒くして見せます!」
エルナの言っている事は良いとして、シズクの発言は恐ろしいですよ!
「魔術を貴女が教えたと言いましたが、普通は仲間内でもあまり教えたりはしないのです。失礼ながら、彼女が使っていた魔法は、お金を積まれたぐらいでは習得が出来ない物です」
キャロに使わせていた、『アース・ミーティア・ランス』の事かな?
あれは中々便利な範囲攻撃魔術ですからね。
もし、戦争とかになったら、串刺しの死体の山が作れますよ。
数を減らして、密度を高めれば防御の高い鎧でも貫けるので、素晴らしい魔法です。
「鉱石の槍を複数展開させる魔法の事ですか?」
「私の知り合いが1人だけ使えましたが、誰にも教える事無く亡くなりました。術者の制御次第では驚異的な魔法です。教えたという事は、貴女も使えるのですね」
キャロに教えたと言ったということから、当然ながら私も全て知っていると言ってるのと同じですからね……今度からは、教えたとか言わないようにしましょう。
「使えますが、私は仲間が強くなれるのでしたら、可能な限りの事はしますよ?」
「そうなのですか……そんな事を聞いたら、ますます貴女が欲しくなりました。改めてシノアさんにお願いしたいのですが、どうでしょうか? 貴女達なら、即戦力なので93階層からでも問題は無いと思います」
いきなり93階層に行けるのは魅力的ですがどうしましょうね。
レイリアさんが私達の実力でも問題無いという事は戦えると思っても良いと思いますが……私の魔術の知識も魅力的なのでしょうね。
「せっかくの申し出なのですが、私達は6人でどこまで行けるか試しているので、今回は辞退させて頂きます。私達をそこまで評価してくれた事には感謝します」
さっさと100階層に行きたいのですが、キャロをレベルもそうですが私の指示無しで判断が出来るように育てたいので、気長に行きましょう。
言われた行動はするのですが、私が何も言わないとどんな魔法を使えば良いのか迷っています。流石に最近まで普通のメイドさんでしたのに戦闘をさせているので、仕方ありませんね。
海に行っている間にセリスに色々と教えてさせながら、戦術書みたいな物を渡したら、しっかりと読破してしまったらしいので、今回は好きなようにさせてみましょう。
「そうですか残念です……」
突然扉が開いて、さっきのアホ娘が怒りながら立っています。
「貴様ら! レイリアさんがお願いしているのに断るとかあり得んだろう!」
「メル! 盗み聞きなどして掃除はどうしたのですか!」
モップを片手にバケツを持って、家政婦みたいな恰好をしているので、威厳の欠片もありませんね。
「ちょっと戦力になると思って誘ったのに断って、調子に乗るなよ!」
それは、貴女の事ですよーと言ってやりたいですね。
そこそこレベルはありますが、クランの威光を使っているだけなのでは?
「それなら、これからダンジョンで競いませんか? これから51階層に行きますが貴女も6人だけで、当然来ますよね?」
「受けて立ってやるよ!」
「いけません。貴女の実力で、6人のみの編成では危険です!」
「それでしたら、その子とレイリアさん達で、来てはどうですか? 私達の実力も自分の目で確かめられると思います」
「それなら問題はありませんが……では、私と残り4人をこの子と組ませてもらいますので、御一緒させていただきます。戻ったばかりなのですが休んでいる者を呼んだ方が良いですね」
どうも上の攻略をしていた人達は休暇中だったみたいですね……気の毒に。
「済みませんが少し待っていて下さい。すぐに集めますので」
「ふん! うちの最強メンバーがいればお前らなんて目じゃないんだよ!」
「貴女は、呼ぶまで便所の掃除を隅々までしてなさい! まったく問題ばかり起こすんだから……」
まあ、どこにでも苦労する人とお馬鹿さんが居るという事ですね。
先に行って休憩所で待っていると来ました。アホを除いてはレイリアさんと変わらないレベルの人達ですね。
「お待たせしました。紹介いたして置きますね。私は魔法戦士で、重戦士のグリムさん。魔導士のアニスとジークさん。ロイヤル・ナイトのシン。問題児のモンクのメルです」
「レイリアさん! 問題児は酷いですよ!」
「私はともかく、シン達にはしっかりと謝罪するのですよ……」
「レイリア、問題無いよ。噂の実力が見れるのなら、行く価値はあるからね」
何となくレイリアさんとは、親密そうな人ですね。
きっと彼氏だと思います。
「久しぶりに氷のエリアなら、わしらの魔法が有効だからな。アニスも問題ないだろう」
ふむふむ、氷のエリアなのですね。
おじいちゃんと孫娘みたいな感じですね。
アニスさんは、こくこくと頷くだけですが。
「俺は防御に徹しているから、メルが頑張って倒せよ?」
「グリムさんを盾にして、あたしが倒しまくるから問題無いよ!」
何となく、親子みたいな感じですね。
モンクというのは、身体能力で戦う職業みたいですね。
「私達の方は、ベルセルクのエルナと忍者のシズクとスナイパーのカミラとガーディアンのセリスと魔術師のキャロと職無しの私、シノアです!」
「お前、職無しなのか? 魔導士だと思っていたぞ」
もう、いっそ無しで通した方が面白いので良いのですよ!
「はい、ありませんよ? クリスタルで、調べると私の職業はありませんので無しです」
「表示されないなんて、普通いないのにお前、無職か! あれだけ魔法が使えるのに変な奴だな」
「本当の事なのです。シノアには適正職が存在しません」
カミラがすかさずフォローしてくれます。どうして無いのか知っているからねー。
「まあ、無職の力を見せてあげますよ! では、行きましょうか」
挨拶も交わしたので、こんな物でよいでしょう。
揃ったところで51階層に転移して、扉を開けるとどこもかしこも氷の世界ですねー。
一体どうやって作り出しているのか知りたいです。
おや、エルナとカミラとキャロは、なんか震えていますが?
向こうのパーティーはアニスさんが身体強化と何か唱えてますね。
「シノアは寒くないのですか?」
「少し寒いと思いますが耐えられないほどではありません」
着る物も無い状態で、森に居た頃に比べれば、いま着ている服装で十分に問題有りませんね。
「セリスさん、皆さんの体温を保つ魔法はありましたよね?」
「昨日、試しておきましたのでありますが、これの方が良さそうですね。『ウォーム・リジェネート!』」
セリスが唱えると暖かくなって来ましたね。
パーティーメンバーの体温調節の魔法なのかな?
それにしてもカミラって、何でそんな事まで知っているのやら……セリスに教えたのは私だけど、効果は知らなかったのですよね。
この階層の事も何も調べていなかったのです。カミラが事前に調べてくれるから、問題無いと思って、いつも丸投げです。
「暖かくなってきました。セリスさん、ありがとうございます」
考えて見たら、キャロは上に着ているのは、シズクが作ったローブだけなので、一番寒かったのでしょうね。
この中でシズクが平気だったのは、自分の周りの風の温度を調整出来るからみたいです。
「セリス、その魔法は更新しないといけないのですか?」
「いえ、私が止めない限りは継続可能です。マナの消費も僅かなので問題はありません」
「では、お願いしますねー」
「シノア、どのように戦いますか? 詠唱はまずいかと思いますし、魔法の方もどこまで使うのですか? あと、私の弓の方は普通に攻撃した方が良いですよね?」
「そうですね……いや、ここは全力で行きましょう! セリスには全体のサポートをお願いするとして、ガンガン行きましょう! カミラも力を使っても良いですよー」
「カミラの力って、何なのですか?」
エルナが質問して来ましたが、固有能力が増えたので試したいとは言えませんからね。
「ちょっと弓を改造したので、強くなったのですよ。そうですよね?」
「えっと……そうです。私の弓の威力が倍増したのです…………いいのでしょうか……」
私は、まだあの能力がどんな物か見ていないので、把握しておきたいのですよ。
それに半端に実力を示すよりわかり易く見せてしまった方があのアホ娘には丁度いいと思いました!
そのまま2組で進んでいると氷で出来たゴーレムとか狼の集団が来ました。結構いますね。
「まずは、私達から倒しますね」
そうするとジークさんの魔法で先制攻撃をしてから、グリムさんで、相手を抑えつつレイリアさん達が倒して行きます。
アニスさんは、見守っているだけですがグリムさんに時折回復をかけながら全体を見ている感じです。
中々バランスの取れたパーティーですね。
「こんな感じだけど、次は貴女達の実力を見せてもらいますね」
「どうだ! 結構な数が居たが楽勝だっただろ!」
「貴女は黙っていなさい! 気を悪くしたら、ごめんなさいね」
「まったく気にしていませんので、大丈夫ですよ。子犬が吠えていると思えば良いのですから」
「誰が子犬だ!」
全員から、笑われてますが皆さん理解していますねー。
次に遭遇したのがさっきの集団と巨体の巨人が混じっています。
「フロスト・ジャイアントは、協力して倒した方が良いかと思います」
「大丈夫ですので、見ていて下さい。キャロ、先制攻撃は譲りますので、貴女の最大の攻撃をしなさい。エルナとシズクは雑魚を始末して下さい。カミラは丁度いいから、でかい的に全力で、当てて下さいね」
「全力ですか?」
「どのくらいの威力か知りたいから、倒れない程度にマナを残す感じでお願いします」
「……かなりオーバーキルの威力になると思うのですが知りませんよ」
そんな威力になるの?
まあ、面白そうだから、良いでしょうー。
「お姉様はどうするのですか?」
「なら、私もたまには斬り込みますか」
久しぶりに収納から、デスサイズを出したのですが名前が変わっています?
名称:ノア
効果:闇属性 籠めたマナに比例して威力を増加させる 刈り取った生命力をマナに変換する
状態:?の許可無き者以外には呪いを与えるか生命力を奪う
……あり得ない進化をしています。
名前が何故かノアになっています。
生命を刈り取るとか奪うとか物騒になりましたね。
バルディッシュに変えようと思ったら、ありません!
今頃になって気づいたのですがサテラさんからもらった武器もいくつか消えています?
もしかして、私の収納には穴でも空いているのでしょうか?
まあ、ノアが何かに使ったと思います。お金とか物とか知らない内に増えたり減ったりしていますからね
これしかないので使ってみますが、形もなにか禍々しい形状になりましたね……。
これで、角とか翼とか有ったら、私は魔王とか名乗れそうですね!
「では、行きます。『アース・ミーティア・ランス!』」
以前よりちょっと槍の数が増えてますね。
暇さえ有れば、鉱石を作ってマナを空っぽにしてたらしいのですが真面目ですね。
いまの一撃で半数以上が串刺しなので、後は3人で滅多切りです。
エルナは、いつも通りの力押しで、シズクはサクサク斬っています。
私も久しぶりに武器なんて振り回しますがこれ恐ろしい切れ味です。
力を入れなくても、敵が何の抵抗も無く切れるのですがこれで、マナを少ししか籠めてないのにこの威力とは……。
しかも、敵を倒すたびに常にマナが流れ込んでくるので、これで倒していれば永久に狩れる気がしてきましたよ。
カミラには全力で魔弾の射手の力を乗せるように言ったら、フロスト・ジャイアントの上半身が一撃で吹き飛びました!
肩で息をしていますが恐ろしい威力です。
あれが本来は私がいずれ手に入れる能力だったと思うと、凄すぎる能力が私には眠っていたのですね
もう習得不可能ですが、私の魔法と同時にカミラが攻撃するなどすれば、かなり有効だと思いますよ。
「ちょっと、カミラの弓の威力がすご過ぎるのですが。私のくーちゃんもパワーアップして下さい!」
剣で、あんな威力が出たら恐ろしいですよ。
対戦相手を圧殺するつもりですか?
「カミラお姉ちゃんの火力が半端無くなりましたね! 必殺技みたいで、かっこいいです! 戻ったら、相応しい新しい衣装を作りますので、台詞も考えましょう!」
「いえ……それは、結構です……」
シズクが思い浮かべたイメージを読んだのですが、カミラが巫女みたいな格好になっていましたね。
「シノアさんは近接戦闘も得意だったのですね。カミラさんもすごいのですね……まさかフロスト・ジャイアントを1撃で倒してしまうなんて、思いませんでした」
カミラの評価が一気に高くなりましたね。
丁度良いので、私は控え目に戦いましょう。
いい隠れ蓑です!
交代しながら進んでいましたが途中から、それぞれの個人能力のお披露目みたいになってきました。
私が魔法を使わないので、見たいと言われましたから、『エアリアル・ニードル』で、敵を殲滅しまくっていました。そうすると、レイリアさんも使えるみたいなのですが、私の方が多く生み出しているので驚いていますね。
レイリアさんの方がレベルが高いのに私の方が保有マナが高いのもありますが、詠唱無しでもマナを多く籠めるか、無詠唱で複数同時に起動すれば、手数は増やしまくれるのですけどね。
マナの消費を無視すれば、連続で叩き込む事も可能ですが、一撃の威力を高めた方が効率的なので、確実に貫ける程度のマナを籠めて撃っています。
アホ娘の私を見る目が変わったので、ちょっと気分が良いです!
接近戦でも、一撃で倒すし魔法も撃ちまくれるのですから、私も強くなりましたよ!
多分……ですが。
取り敢えずは、無職の実力をしっかりと見せてやりましたよ。
それにどうせ私に職業が付くとしたら、ろくでもない名称が付くだけだから関係無いのですよ……。
休憩をしながら、広い所に出たので、『ストーン・ウォール』を基本にして、建物を作って本日はここまでにしました。
レイリアさん達もお招きしましたら、これだけ完璧な建物を作れる魔術師はいないので、褒めまくられました。
ちょっと冷えるので、シズクに温度調節を頼んだら、空気の摩擦で熱を……とか言って、快適になりました。私も風魔術は使えるのにこんな器用な事は出来ないのですよね。
流石にずっとさせる訳にはいかないので、暖房用に中心に風呂もどきを作って、高温の火球をぶち込んで、蒸気で室内を温めています。
食事の方も私が用意したので、喜んでもらっています。
アニスさんが収納持ちなので食料は持ってきていたようですが、まさかここまで普通に温かい食事が出来るとは思っても見なかったようです。
男性陣は、ステーキを作ったら、がっつりと食べるので、丁度良いので、沢山余っているクロコダイルの肉を食べてもらいましょう。
食後には、お風呂にも入れるので、他の皆さんからもぜひ来てほしいと頼まれました。
お風呂の中で、アホ娘のメルが頭を下げてきたので、まあ、寛大な心で許してあげました。
皆さんには眠ってもらって、一応、私が起きて番をしています。
今後の事を考えながら、ワインでもラッパ飲みしていたら、レイリアさんが声を掛けてきました。女の子があり得ない飲み方をしているとこをばっちし見られましたよ!
「貴女は、寝なくても大丈夫なのですか? 先ほどは、寝てもこの建物は継続されると言ってましたよね?」
「勿論、問題はありませんよ。まあ、今は何となく飲みたくなったので、飲んでいただけです」
しかし、よく見るとスタイルの良い体をしていますね……変な気分になって来ました。
下着姿にマントだけ羽織っているのは、エロ過ぎる気がします。よくわからないのですが、最近の私は可愛い子とか綺麗な人に何かしたいという衝動に駆られるのです
昔は、何も思わなかったのにレイリアさんを見ているとすごく触りたいのです……。
これは、エルナの病気が移ったにに違いありません。
最近はカミラで遊んでいるので気分的には満足しているのですが、私も残念な子になりつつあるのかも知れませんね。
「私も少し頂いても良いでしょうか?」
「これは、きつすぎるので普通のを出しますね」
「その瓶はうちのドワーフの子が飲んでいるのと同じようですが、かなり強いお酒ですよね?」
「まあ、私に取っては水と変わりませんからね」
「若いのに酒豪なのですね」
調整して飲んだら、倒れた事がありますけどねー。
軽くお話をしながら、飲んでいたのですが、どうもこの階層からは、ボスは10階層置きになるそうなので、60階層までは氷の世界が続きそうです。
魔物が氷なので、食材に出来ないから、さっさと61階層に行きたくなってきました。
「こんな事を聞くのはなんですが、貴女は何者なのでしょうか? 先ほど15歳と答えてくれましたが、普通の人間がその年でこれだけの魔法を行使するなんて考えられないのです。彼女達の実力もそうなのですが貴女の存在は飛び抜けています。私もそれなりに実力はあると思っていましたが、私にはあれだけの風の槍を作り出す事が出来ません」
「増やすのは、ちょっとコツがあるのですよ。私は、ただの学生の小娘ですよ。ねぇー、カミラ?」
「そこは、気付いていても声を掛けないで欲しかったのですが……」
「いや、レイリアさんも途中から気付いていたけど、ばれてないと思ってずっと立たせているのもなんですから、声を掛けたのです」
「意地悪ですね……」
「私の事は、カミラに聞いて下さい。彼女は私の子守りをしているので、色々と知っていると思いますよ?」
「そうなのですか? 同じ学生の方と聞いていますが?」
「私は、何も知りませんので、ご期待に添えないと思います。シノアはちょっとひねくれていますので、真に受けない事をお勧めします」
そのままエルナ達の所に戻って行ってしまいましたが、ひねくれているとは酷いですね。
戻ったら、なにかお仕置きでも考えておきましょう。
「彼女は貴女が心配で、様子を窺っていたと思いますよ?」
「私のお目付け役を頼まれている見たいですが大事な友達です」
「しかし、魔力の制御方法だけでもあんなに変化はしないと思うのですが……一緒にいる間に確かめさせてもらいますので、今回はどのくらい滞在するのですか?」
「私の持っている甘味が切れたら撤退します。甘い物が食べれないのは、耐えられませんので」
「甘い物が基準なんて、やっぱり女の子なのですね。それでは、私も休ませてもらいますので、おやすみなさい」
前回の教訓があるので在庫は尽きないのですが、最短で突破して60階層までは籠りたいのですけど、レイリアさん達もいるので、どうしましょうかな?




