42 過ち
僕は今まで常にトップである為に必死で努力してきた……第3王子などと言ってもこの国では、兄弟は後継者以外はただ血筋だけの存在だ。
我が王家は遥か昔に神と血を交えたので、その血を取り込む為にも他の貴族達が身内に引き入れようとするので、将来は王に成れなくても困る事はないがそんなのはただの種馬だ。
後継者の条件は最も武勇と政治力とこの国の事を考えているかで、兄弟が18歳になった時に女神様が指名する事になっている。
要するにこの国の後継者は僕が3年後に18歳になった時に選ばれる事になっているのだがいまの所は第1王子のレナード兄上が確実と言われている。
僕から見ても決して驕らない好感の持てる人柄だ。
第二王子のクロード兄上は、初めから王位には興味が無いらしく、将来は冒険者になって、旅がしたいと言っている。
僕は、王位に選ばれたいのでレナード兄上を超えるように努力をしてきたのだが……まさかの編入生に全てを塗り替えられてしまった。
聞く所によると地方の出の世間知らずだが、バレンタイン公爵家の血筋らしい。いまは隠居しているアリオス殿の孫との事だ。
つい最近見つかったと言われているが、所詮は田舎者と思っていたら、いきなり学年模試で満点で1位とか。あり得ないと思ったが、再テストを教師と僕らの前で行ったら迷うことなく全て書き込んでいくのは驚いた……。
かなり引っ掛けの問題などを入れて有ったので、前回のテストより難しいのに全て正解とか……天才としか思えなかった。
武術大会では、初戦で対戦したのだが……まったく当たりもしないし、反撃もしないで、ただかわすだけ。絶対に当てれると思う攻撃も寸前で当たらないし、向こうは息切れもしないで、まるで舞っているように見えるぐらいだった。
優勝候補と言われたクロード兄上も彼女には勝てなかった……。
最初の僕は小娘に負けるとか期待外れと言われたが、試合が進むにつれ彼女の実力があり過ぎると皆が納得していった。
しかも、彼女はそれ程の実力が有りながらSクラスへの変更を断った為に、僕らは名前だけの存在になって、学園の実質のSクラスは彼女達になった。
本人は、単にいまのクラスの人達と仲良くやっているので、離れたくないだけと言っているが世間の目は厳しかった。
それから、幾度となく彼女に試合を申し込んで挑戦したがまったく敵わなかった……むしろ差が開いている気がした。
彼女は既にダンジョンに潜っているし、しかも5人で45階層を突破して、先日50階層も新人の子を連れて突破したらしい。
普通は、熟練した複数のパーティーを組んで挑む所なのに、彼女達を見た冒険者達は自分達が苦労をしている敵を通りがてらに倒して行ってしまうそうだ。
彼女達は、黒の暴風と呼ばれていて、一時期は残り1枠に入れてもらえないかと交渉している者もいたが、全て断れらたらしい。
僕たちも挑戦してみたのだが、8階層が限界だった。
クロード兄上達が付いて来てくれたのだが、「これ以上は死ぬ危険があるから、出直した方が良い」と言われた。
無理をすれば9階層も行けるが、まずボスの部屋で敗北は避けられないとの意見だった。
クロード兄上も現在は25階層にいるが、ボスに挑む実力が足りないらしいので、鍛錬しているとの事だ。
たまに彼女にダンジョンでの戦い方のコツなどを聞いているので、効率良く戦えているらしい。
20階層のボスを倒せたのは、戦いに参加はしていないけど、ちょっと手伝ってもらったお蔭だと言っている。
彼女は、お願いをすれば学年やクラスに関係無く色々と教えてくれたり助けてくれるので、今では学園の人気者だ。
教師陣も頼っているぐらいなので、彼女を批判する者などは、一部の特権階級の貴族ぐらいしかいない。
学園で、時間がある時に僕の相手をしている時は、動きなどを指摘してくれるので少しは強くなれた気がするが、彼女の事は認めているのに納得出来ない自分がいるので、兄上のようには受け入れられなかった。
そして、臨海教室でも彼女のすごさを改めて実感してしまった。
僕らも教えてもらって、真似てみたのだがどうやったら、あれだけの魔術を行使しているのに作った建物を維持が出来るのだろう?
そもそも壁を作り出すのが限界なのにどうやったら建物など作れるのか全くわからなかった。
彼女と同じクラスのカミラさんは、建物の中に風を循環させて空調を維持していたのには驚いた
聞いて見ると毎日マナを使い切る事で、マナの上限が飛躍的に増えるという事らしい。
それに暗くなるとエルナさんが『ライティング』の魔法を使って周りを明るくてらしているのだが彼女の作り出す光球の明るさもそうだがみんなが片付けて宿に帰るまで常に維持しているのにも驚きだ。
Bクラスの者達も、少し前から彼女に聞いてから始めているので、そこそこのマナを扱う事が出来るそうだ。
他の生徒や教師までもがそれを知ってその日から実践してるらしい。
彼女は自分から率先して教える事はしないが、聞かれたら答えてくれるので、教師もちょっと悩んだら彼女に聞いているぐらいらしい。
僕も負ける度に色々と質問しているが、彼女は僕にもちゃんと教えてくれるので、恨む事も出来ないし……クロード兄上とは違う意味で彼女には惹かれている。
だけど、このままでは3年後の選定で選ばれないのは確実だ。
そんな事は嫌だと僕のなけなしのプライドが叫んでいる……僕はどうすれば良いんだ?
夜に眠れずに悩んでいると彼女が宿を出ていく姿を見つけたが追いかけようとしたが追いつけなかった。
明け方に入り口で寝落ちしていると彼女が戻ってきたので、どこに行っていたのか聞いて見ると散歩していただけと答えたが少なくとも6時間は出掛けていたはず……。
次の日は砂浜の足跡を頼りに追ってみるがすぐに海の先に消えていた?
まさか……この暗闇の海に潜っているのか?
次の日も海の方で足取りが消えているので、浜辺で明け方まで待っていると、海から彼女が歩いてくるではないか。
しかも、何も着てないので思わず焦ってしまったが、朝日に照らされてこちらに来る彼女は綺麗だった。
回れ右をして立っているといつの間にか水着を着て僕に「何をしているのですか?」と、聞いてくるので、「君こそ、どうして海に入っていたんだ? しかも……」裸というのは聞けなかった。
「早く目が覚めたので、ちょっと泳いでいたのです」と答えたが嘘だ……僕は「夜中から出かけているよね?」と思わず聞いてしまった……これでは、監視していたのがばればれだ。
すると彼女はため息をつきながら「女の子を監視するのはよくありませんよ? しかも貴方は殿下と呼ばれる人なのですから、変な噂が立ったら良くないのでは?」と、言われてしまった。
だけど、僕はそんな事はお構いなく何をしていたのか聞いてみると、彼女は諦めたように海の魔物を狩っていたと教えてくれたが、こんな夜中にしかも水の中で可能なんだろうか?
僕がどうやってと尋ねると「戦い方は色々とあるんですよ? 初めから無理と決めつけていたら、倒せる物も倒せませんよ?」とだけ答えてくれた。
そんな彼女が収納から一振りの剣を出して、僕にくれたがこれは?
「その剣があれば、10階のボスに倍のダメージを与える事が出来るし、雑魚なら一撃で倒せます。後はクロード先輩に教えてもらって下さいね」
なんて事だ……彼女は僕が行き詰っている事まで知っていたのか……敵わないな……。
「私の行動の口止め料とは言いませんが、ユリウスが地道に努力している事は知っているので、これはそのご褒美と思って下さい。私は努力する人には協力は惜しみませんよ」
「大会の後も何度も、試合と称して、君に挑むというよりは指導してもらっている僕の事をしつこい奴と思わないのか?」
「貴方の事情は先輩からも聞いていますが、それでも自分の力で私に挑んでくるのは称賛に値します。大抵の貴族とか権力を持っている人は、それらを使って嫌がらせをしてくるのに、貴方はそれをしません」
「クロード兄上の受け売りじゃないけど、僕も自分の力で認めてもらいたいんだよ」
「それに王子であるのもそうですが、男なのですからプライドとか有って当然です。ましてや私のような小娘には負けたくないと思うでしょ?」
「かっこ悪いかもしれないけど、僕はそれでも君に挑むのを止めないよ」
「良いですよ? わかっていると思いますが、エルナは強くなりましたよ? 最初はユリウスより弱かったのですが信じられますか?」
「ああ、分かっている。去年まではクラスの模擬試合は、僕が勝ち越していたからね。でも諦めないよ」
「良い心がけです。どんな結果になってもその気持ちを忘れなければ、必ず良い事があると私は思います」
「いつか必ず君に認めてもらうよ」
「はい、頑張って下さいね。それでは、エルナが起きない内に戻らないとまずいので、行きますね」
そのまま彼女の後姿を見送った……。
彼女は全てを知っていたのか……それでも僕に付き合ってくれていたなんて僕はなんて……。
まだ僕は、つまらないプライドと王位を得る事しか考えてなかったんだ。
今日、彼女と話が出来て良かった。
勝つ事は出来ないかも知れないが、少しでも追いつけるように努力をしようと思ったら、久しぶりに心がすっきりした。
兄上が彼女を気に入っているのが、今なら分かる気がする。
翌日からは、素直に楽しむ事も出来たので、僕もちょっと探索をしてみる事にした。
僕の雰囲気が変わったのが分かったのか、同じクラスの5人もやれやれといった感じで付き合ってくれているが、オリビアだけは彼女を敵視したままだけどね。
特に僕を支持していた伯爵の娘のミヨナは嬉しそうだった。
この娘は伯爵が僕に幼い頃から付けた娘だが、いつも僕の跡をついてくる妹と思っている。学園に入った頃から好きに扱って良いと言われているが、そんな事はしていない。
両親から言い聞かされているのか、僕と同室でいつも隣のベットで寝ているので、自制心を保つのは一苦労だよ。
ふと、岩場は調べていたら、通り抜けれる所があるのに気が付いた。
わずかだけど、組み合わせに違和感が有ったので、それを辿っていくと魔法陣が有った。
こんなのは国では知られていないはずなので、興奮してマナを通して見ると使える事は分かった。どうするべきか皆と相談をすると、行き先だけ調べて報告をする事になったのだが、これが間違いだった。
まさか行き先が禁止されていた島とは思わなかったが、浜辺に出ると魔物が現れて、襲って来た。
何とか魔術が使える者で撃退しながら、洞窟に逃げ込めたが、魔法陣の近くはかなりの数の魔物がいて、僕らでは突破できそうになかった。怪我もしているので、この中で唯一聖魔術が使えるミヨナが頑張って癒してはいるが、例え万全な状態に戻っても抜けれるかどうかだ。
幸いこの洞窟には魔物が寄ってこないので安心なのだが、かと言って奥に進む事も出来ない。
こんな時だが、彼女が気づいてくれたら何とかなるのでは無いかと思うばかりだった・・・。
夕方になって、店じまいをしていたら先生達がユリウス達がいないと言うので、みんなで探してみたのですが見つかりません。
私もエルナとカミラとシズクを連れて、一緒に探してましたが、ふと岩場の方に複数の足跡がある事に気づきました……まさかゲートを見つけたのでは?
まずいですよ……あの島にはやばい物が封印されていると思います。まさか祭壇に行っていないでしょうね?
魔法陣の所で足跡が終わっているので、島に行ったのは確定ですね。
エルナとカミラには、戻って先生に伝えて欲しいと言ったのですが、私とシズクだけで行くと言ったら、絶対に一緒に行くと言って聞かないのです。仕方ないので行き先を教えましたが、それでも行くと言うので連れて行きました。これがとんでもない過ちになるとは、思ってもみませんでした。
何が有っても私の指示に従う事を条件に連れて飛んだら、魔物がいっぱいです!
夜は居なかったのにどこから湧いてきたのでしょう?
初めから戦闘態勢で来たので狩りまくっていますが、キリが有りません。
仕方ないので、エルナとカミラに私達の護衛を任せて、私の魔法とシズクで撃退していますが、ダンジョンと違って空からも襲ってくるので対処が大変です。
戦いながら人の気配を探ると、洞窟の方に反応があるので、応戦しながら向かいましたが、セリスが居ないのが痛いですね。
洞窟に行くと6人とも無事でしたが、ちょっと怪我が酷いのと回復をしていた子がマナ切れで疲労困憊と言った所ですね。
回復が出来るのが私とミヨナさんだけだったので、マナポーションで回復させてから、全員の治療とマナを回復させてから、魔法陣に向かうと大きな3つ首のドラゴンが3体もいます!
詠唱付きのは見せたくないので、仕方なく詠唱無しのライトニング・ボルトで牽制をして私とシズクが囮になっている内に魔法陣に行くように指示しましたが、一体だけエルナ達の方に向かっていきます。
攻撃は確かに当たったのに何で?と思ったら、あの一体だけ魔物なのに使徒です!
名称:サーベント・ドラゴン
種族:海竜
レベル:169
技能:ウォーター・ブレス 中級水魔術 中級風耐性 上級水耐性 初級魔術完全無効 再生 威圧 気配遮断
固有能力:魔淵王ディープシーの使徒 範囲獣魔支配
ちょっと、この一体だけレベルも高すぎます!
ライトニング・ボルトは、初級の範囲の上位なのですが完全無効とかあるので、効いて無いのですね。
しかも技能も適度に持っているし、固有能力に魔王の使徒とあります。
確か主が滅びると使徒の能力は無くなるはずなので、魔王が生きているのは確実です。
魔物が的確に襲ってくるのは、この使徒の魔物が指示しているからなのだと思われます!
何とか向かおうとしましたがエルナを庇って、カミラが噛みつかれて、魔物の群れの中に!
エルナ達は立ちすくんでいますが今はそれどころではありませんので、とにかく魔法陣に向かうように指示しましたが言う事を聞いてくれません!
「私が指示したら、どんな事が有っても従うと約束したよね?」
「でも、カミラを助けないと! このまま私だけ逃げるなんて出来ません!」
「必ず私が助けますので、早く行って下さい!」
「でも!」
気持ちは分かりますが沢山の魔物がいるしサポートも無しでは、純粋な剣士のエルナでは太刀打ちできませんよ。
仕方ないので、エルナごめんね。
彼女の頬を叩いて言い聞かせました。
「いまのエルナ達では私の足手まといにしかならないのです! 私が単独の方が後顧の憂いなく戦えます。私の事を信じてくれるのでしたら、今は耐えて逃げて欲しいです。時間が無いからもう行きますが、早くこの島からみんなを連れて脱出する事がエルナの仕事です」
「ごめんなさい、取り乱してしまって……必ず二人で戻って来て下さい」
「シズク。貴女の力で、みんなを守って下さい」
「お姉様……わかりましたが届けた後に私も救出に向かった方が良いのではありませんか?」
(カミラは、既に助けていますので、私も直ぐに向かいます。ユリウス達の安全を優先して下さい)
(どうやって、助けたのですか? カミラお姉ちゃんの気配は遠ざかっていますが……)
(いつか見せた分身体に指示してありますので、あちらもまずいので急いで下さい)
(わかりました。お姉様、御武運を祈ります)
「シズクには向こうに戻ったら、転移陣の封鎖をお願いします。学生や教師では、ここの魔物は手に負えません。時間がありませんので、お願いします」
「必ず送り届けますので、お姉様は為すべき事をして下さい」
そう言って魔法陣の方に向かってくれましたが密かに分身体を作り出して、カミラを救出はしているのです。
1体だけに限定すれば私より3割レベルが低いですが戦闘可能な分身を作れるようにはなっていました。これは流石に見られるわけにはいけません。
急いで洞窟に行くと、瀕死のカミラがいますが下半身がありません……あの時に食いちぎられてしまったようです。
現在、私が使える最高の回復魔術をずっと使ってますが生命維持が限界です。
いまの私に失った体を再生出来る魔術は使えません。
エルナに約束はしたのですが私は、どうすれば良いのでしょう……。
「シノア……もう良いよ。助からないのはどう見ても分かるから、私を置いて行って……」
「ダメです! 私はエルナと約束をしたのです、2人で必ず戻ると!」
「ちょっと話を最後に聞いてくれるかな……」
「最後とか言わないで下さい!」
「私は、エルナ様の派閥の下級貴族なんだけど、いつも優しいエルナ様に憧れていたの……そんなエルナ様と友達になれたシノアには感謝してるよ……私、学園を卒業したら、知らない貴族の人に嫁ぐ……いえ、身売りする事が決まっていて、学園に居る間だけが自由だったの……私は妾の子だから、兄だけが優遇されていたの……兄からも迫害を受けていたし……あの家では、私は人として扱われていなかったの……」
「何ですかそれ? カミラは私の大事な友達ですよ! 戻ったら、私が懲らしめてあげますよ!」
「だから泣かないで……こんな私に楽しい時間をくれて、ありがとうねシノア……」
「まだ、これから楽しい事はいっぱいありますから、諦めないで!」
私は、泣いているの?
いまでどんな事が合っても、もう泣けなかったのに……ダメです……もう……こんな事になるなんて……連れてこなければ……もっと詠唱を増やしてマナを籠めれば……。
「んー、もうその子は死んでるよ?」
えっ、分身体が話しかけて……というかその口調は。
「ノアなのですか?」
「もう見ていられないから、この分体を借りて喋っているんだよ」
「お願い、ノアなら助けられるよね?」
「んー、いまの僕には死者蘇生は出来ないですよ?」
「この子は私の大事な友達なの! 無理でも助けて!」
「その子の感情は良かったから、助けてあげても良いんだけど死んでしまったからね。まだ魂なら、留まっているけど?」
「そうだ……セリスのように眷属としてなら、生き返れないかな?」
「んー、いまなら、眷属としてなら、可能だけどお勧めはしません。既にセリスだけでも例外なんだよねー」
「お願い! カミラを眷属として生き返させて!」
「あのさー、確かセリスの時だけでもかなり悩んでいたのに今度は友達を下僕にするのかい?」
「下僕って……」
「言って置くけど眷属なんて言っているけど、主の奴隷になるのと変わらないよ? セリスはそれを承諾して、眷属になる事を受け入れたんだよ? 知らなかった?」
「セリスはそんな事は一言も言わなかった……」
「仕方ないねー。この最だから、教えてあげるよ。他の自称神とか魔王の使徒は不老になって力を与えられてレベルが固定されるんだけど、力を返還すればもらった時の状態に戻るんだよ。ギムのおっちゃんに聞いていない?」
「そんな話をしてたかも……だから、ミリアさんより、おじいちゃんは歳を……」
「だけど僕らは、眷属に力を与えてないでしょ? 不老不死と言えば聞こえは良いけど主に対して絶対に逆らう事が出来なくなるし、元に戻る事も出来ないので、完全に生ある者の輪から外れてしまうんだよねー」
「……」
「そして、僕らが滅びたりすると同時に存在を維持出来なくなって消滅しますー」
「……」
「前に君も言っていたよね? セリスがもしかしたら手に入れる事が出来る未来を奪ってしまったと?」
「それは……」
「セリスの時は、本人が望んだけど、この子は何も知らないまま君の下僕に永遠になってしまうけど、それに耐えられるのかい?」
「私は……」
「この子は今まで苦労してきたみたいだけど、もしかしたら、このまま眠らせてあげた方が良いかも知れないよ?」
「それでも私は助けたいの……」
「一つだけ言って置くけど、これは後々に君に取ってマイナスになるんだよ? それでも良いのかな?」
「それでも助けられるのだったら、私は後悔はしないよ……もしカミラに恨まれたら、どんな事をしても償うから……だから、お願いだから助けて欲しい……」
「もう仕方ないなー。今回だけだからね?」
「ノア、ありがとう! それで、どうすれば良いの?」
「僕に体の支配権をしばらく譲ってくれれば、その子を助けて、ついでにあの使徒も狩るよ、どの道いまの君には強敵だし、ここで回収しておきたいしね」
「どうやって、ノアに譲れば良いの?」
「僕に体を渡すと思って眠れば良いよ。目が覚めたら、全て終わらしておくから、カミラとエルナ達になんて説明するか考えていてね」
「わかったので、後はお願い……」
そして、私は意識を手放すと眠っていった……。
もう……あんなに目の前で泣かれてしまったら、僕が悪者みたいじゃないか。
取り敢えず、この子を眷属にしてしまいましょう。
核を植え付けて、失った体を再生してから、起こしますか。
「んー、カミラだっけ? 目覚めなさい」
「ここは……私は死んだはずなのに……」
シノアの声で目を覚ますと目の前にはシノアがいるのですが少し雰囲気が違います
それに瞳の色が変わってます。
「んー、僕が分かるかな? 君はさっき死んでしまったけどシノアが泣いて懇願するから、僕の眷属として復活しましたー」
「シノアが? それに眷属って……」
「んー、僕はシノアのもう一つの人格で、一応ノアと名乗っています」
「シノアの別人格?」
「そうです。君は死んでいたので、了承を取って無いけど今日から、人を辞めてしまいましたー」
「えっ!?」
「時間が無いので、取り敢えずあの魔物を処理しますけど、君にはシノアの分身体を護衛に付けて置くから、私に近寄ってくる雑魚を倒してください」
「分身体?」
「ほら、君の後ろにいるよ」
「えっ!? シノアが2人に?」
「質問は時間が残っていたら、後で聞くので今は、僕の指示に従ってねー」
「分かりましたが私には周りにいる魔物を倒せるだけの力は無いので、牽制ぐらいしか出来ませんが……」
「んー、大丈夫です。君は僕の眷属になった時に色々と能力が上がりましたので、あの程度なら倒せますよ? 君の弓の特性を強化する力があるはずです」
「……何となく分かります」
「うんうん、わかったみたいだね? ちょっと大きな魔術を使うので僕は無防備になるので、援護よろしくねー」
そう言って、彼女ノアの背中に4枚の黒い翼が現れて飛んで行きました……シノアはもしかして、女神様なの?
取り敢えず、見えないとは思うけど陸地から見えないようにしないとね。
「我が周りを広域に包め ミスト・フィールド!」
これで、この島の周りは霧で向こうからは見えないはずです。
中々あの子の援護も良いですね。
僕に近づくのが早いのからちゃんと狙撃していますよ。
飛べる魔物も結構いますが結界を維持しながらは流石にいまの僕でも厳しいからね。
見られてもいいなら、遠慮なく殺せるんだけど。
では、これで、一気に狩れると願って、詠唱でも付けますか。
「我は望む 大気に潜む荒れ狂う力よ 全てを包んで我が敵に裁きの雷を与えん ライトニング・テンペスト!」
今の僕に使える範囲殲滅雷魔術なんだけど、まあまあの結果になってくれましたね。
ちょっと、マナの消費が多いけど、ほとんどの魔物が絶命してくれましたね。
雷撃系の魔術は飛んでる奴から、海面にいるのまで、等しく攻撃出来るから、一掃するのには良いんですよね。
おや、使徒の竜だけは、レジストしましたね。
取り巻きの2体は死んでいますがもうちょっとマナを籠めればよかったかな?
まあ、後はあれだけなので、やっぱり気持ちよく首を刎ねてあげないとね!
飛べない竜なんて、ただの的ですがこいつ再生が早いですね。
これは、一つでも残っていると再生を始めるので、やっぱり3つ一緒に斬り落とさないとダメかな?
しかも、図体の割りに動きが速いので、次の首を刎ねる頃には再生が終わっているとか、頑張りますね。
地味にブレスの範囲が広いので、うっとおしいです。
では、首を刎ねやすくする為にも動きを阻害しますか。
「星の戒めよ かの者に拘束の重しを与えん グラビティ・フィールド!」
おっ、抵抗してますが素早い動きはもう無理ですね。
指定した範囲に重力の檻を作り出す魔法ですが術者には影響が無いので中々使える魔法なんですよねー。
辛うじて動けるみたいですが、最早ただの的なので、さっさと付け根から3つとも切ってしまいましょう。
まあまあの抵抗でしたが、どうやら今の僕の力が分からないみたいなので、先ほどのシノアと同じと思っているんでしょうね。
使徒と言っても所詮は魔物と言う事かな?
実力がある者なら、僕のレベルがかなり上回っている事に気づきそうなんですがね。
こんなのにレベル100も与えているとは、美味しいですね。
シノアには言えませんがディーブシーには感謝したいぐらいです。
どこかに封印されているようですから、弱っているはずなので、もう少し力を付けたら、必ず倒して僕の力にしてしまいましょう。
さて、あの子の所に戻りますか。
何か驚いていますがどうしたのかな?
「ただいまー」
「お、おかえりなさいませ……」
「んー、どうしたのかな?」
「シノア……いまはノア様で、宜しいでしょうか?」
「んー、ノアで良いので、様で呼ぶのは止めなさい。シノアにも同じ事を言ったら悲しむよ?」
「では、ノアさんは……もしかして、女神様なのですか? 私を眷属にしたと言いましたし、あの圧倒的な力は……」
「残念ですー。近いけど、不正解です。それと君が知っている無能な使徒とは、内容が全然違うからね?」
「使徒の方が無能なのですか? 女神様に選ばれた英雄だと思っていましたが、違うのですか?」
「英雄ね……知らない事を良い事に、あいつらはいいように使っているね。君にはシノアを諫める役を与えたいので、これから言う事はよく覚えておいてね」
「シノアを諫めるのですか?」
「先ほども言いましたが君はもう人ではありません。シノアの為にだけ存在する下僕と言ってもいいよ。君の知っている使徒と違って、不老不死になったけど、シノアが存在している事が条件なので、シノアが消滅とかしたら、君も消滅しますー」
「私は人ではなくなったのですか? 使徒の方は力を返却すると元に戻ると聞いていますが?」
「んー、それなんだけど、この世界の自称神や魔王は単純に優秀な駒により大きな力を与えて下僕にしているだけなんだよ? 僕の場合は力は与えてないけど、永遠に固定されるだけです」
「英雄では、なくて下僕ですか……」
「そうですー。君達の憧れを幻滅させてしまったけど、それが真実です。あちらはレベルが固定されるけど、君の場合は固定されません。あいつらは、力の振り分け方次第ではいくらでも兵力を増やせるけど、僕の場合は眷属を作れる数が決まっているし、本来は作らない方が良いんだよね」
「では、私は……」
「んー、酷な事を言ってしまうと君を眷属にした事で、シノアは本来の力を減らしてしまいました。君に才能が有ればプラスになったんだけど、残念ながら、君に才能はありません」
「私がシノアの枷になってしまったのでしょうか……」
「まあ、シノアがどうなっても良いから君を助けたいと言うから、問題は無いよ。もしかしたら、後々に苦戦をするかも知れないかもね!」
せっかく生き返らせたのに、あんまりいじめるとシノアが怒りそうだから、役目を与えておきますか。
「君には次にシノアがどんなにお願いしても止めて欲しいんだよね。本当は君に命令をして徹底してもいいんだけど、そんな事をしたらシノアに嫌われちゃうしね」
「分かりました……」
「だけど、シノアのブラスになる者に関しては、能力次第では考えます。君にはその為の力を譲渡しておきましたー」
「私にですか?」
「そうですー。本来なら、シノアに解放される能力を君に譲りましたので、しっかりと自分の物にして下さいよ?」
「もしかして……先ほどの力は……」
「シノアに眠っている能力ですー。技能の方はいくらでも複製出来ますが固有能力に関しては、無理なのでもう君だけの力になりましたので、これで頑張ってくれれば、君を生き返らせた事が無駄にならずに済むねー」
このすごい力がシノアがいずれ手に入れる能力なのですか?
「特にその目はすごい使い道があるけど、マナを集中して意識しないと使えないように設定してあるので、普段は普通の目にしか見えません。これで、判断すると良いよ。その為の知識の一部も与えたので、使いこなしましょうねー」
これは……私には過ぎた力ですが……。
「僕は君に酷い事を言っている事は自覚しているので、シノアは責めないで欲しい。シノアがどうしても君を失いたくないと言うので、君を眷属にしたのは僕だし、せっかく生き返った君に勝手な事を言っているのだけど、シノアを支えてあげて欲しいのです。そして、強くなって下さい、眷属にした事を後悔させないようにね」
「いえ、私は本来なら、あの時に死んだ身ですので、助けてくれた恩人を責めるような事は致しませんので、安心して下さい」
「んー、今更だけど、人としての幸せは無い物と思って下さい。詳しい事は君の先輩にセリスがいますので、聞いて下さいね」
「彼女もシノアの眷属だったのですか?」
「まあ、彼女は僕が本人の了解を取ってシノアに独断で眷属にしたので、考えてみたら、今回の事を否定出来ませんね。もう少ししたら、シノアが目覚めるから、一緒に戻ると良いよ。そして、話を聞いてあげてね」
「わかりましたがシノアと入れ替わるのですか?」
「僕が表にいられる時間は、限られているんだよね。次に会う時まで、またね」
そのまま私にもたれ掛かって来ました。
「あっ、そうそう。シノアにこちらのゲートを必ず破壊するように言っておいてね? ここにはまだ用があるんだけど、今は実力不足なのでダメだからね。他の人間を近づけさせたくないので、帰りは泳いで帰ってねー」
「この距離を泳いで帰れるのでしょうか……私は自信が無いのですが……」
「んー、大丈夫ですよ。くどいようだけど君は人では無いので、少し欠点がありますが溺れてそのまま死ぬ事はありません。自分の体がどうなったかをついでに実感してみましょうー」
「今度こそ、さよならー」
そう言うと彼女は私にもたれて眠ってしまいました。
しばらくするとシノアが目を覚ますとの事ですが私は……。




