35 要望は計画的に
本日からエルナがメイドをしてくれるのですが、二度とこんな事は言わないと後悔しました……。
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、エルナ……どうしたのですか?」
「今日から3日間はお嬢様の専属メイドですから、失礼の無いようにしていますよ?」
「えっと、約束はしたけど、そんな呼び方は嫌なので普通に呼んで下さいよ」
「駄目です。鬼メイドから、きつく言われていますので、絶対に変えません。そんな事より早く着替えて下さい」
一体、昨日は何を言われたのでしょう?
軽く威圧しながら、言っているのですが……逆らうのがなんか怖いです!
「わかりました……では、着替えますから待っていて下さいね」
「お嬢様は、そこにお立ちになられれば良いのです。私が着替えを致しますので、宜しいですね?」
「えっ……自分で着替えるから別に良いですよ……大体、エルナがいつも望んでる事だし……」
「確かに望んでますが、返事は、『はい』しか受け付けません。逆らうのでしたら、お仕置きをしなければいけなくなるのですが、どうしますか?」
しっかりと認めてますね。
お仕置きって、朝からアレですか……仕方ないですね。
そのまま言われた通りにしていますが、何故かカミラまでメイドの格好をして、エルナの背後で申し訳なさそうに待機していますよ。
朝食の時も私の横にずっといるんだけど、サラさん達は笑っているか、似合っているとか言ってますが、ここでまたお言葉が……。
「お嬢様、そのような食べ方ははしたないので、行儀よく食事をしないと、後でお仕置きをさせて戴きますからね?」
「えっ……いつもは、これで良いのに……そんな堅苦しい食べ方は、私には無理ですよ……」
あんな上品な作法なんてした事がないしめんどいから、無理ですよ!
「嘆かわしいです……早速ですがしっかりと教えてあげますからね?」
「ちょっと、カミラも何か言って下さいよ! これでは、私の方が罰ゲームではないですか!」
「シノア……じゃなくて、お嬢様が望んだ事なので、私には何も出来ないのです。出来れば巻き込まれたくないので、話を振らないで下さい……」
そう言うと目を伏せていますので、助けてくれなさそうです……。
「レートさんもサラさんもおかしいと思いますよね?」
「娘の新鮮な姿が見れて楽しいと思うよ?」
「エルナちゃんがメイドとか、中々可愛いですから、後で私にも貸して下さいね!」
これが楽しいとか私は間違っているのでしょうか?
「そう言えば、セリスの姿が見えませんがどうしたのですか?」
「セリスさんは、3日間は私がずっと付くので、リンに従っていますよ? お嬢様の希望と伝えていますので、ご了承されています」
エルナの、味方は遠ざけましたとの宣告を受けて仕方なく諦めました……。
その後、手をばしばしと小さな杖みたいな物で散々叩かれて、食事をしましたが……作法なんて知らないですよ!
それから、学園に行く時も2人共後ろに控える形で付いて来ます。
シャルム達は、「朝から、面白い物が見れて楽しい」とか言ってますが、私の気分は最悪です!
どうして優勝したのに罰ゲーム紛いな目に遭うのですか?
しかも……昨日はズタボロにされるし、シズクからは弱者の烙印を押されるし、私に良い事なんて何もありません!
学園に着いてからは、お願いだから普通に接して欲しいと頼みましたが、却下されました。これ以上はの変な噂は勘弁して欲しいので……。
「学園では、普通に接してくれたら、エルナの言っていた御褒美を休み時間にあげますが、どうしますか?」と、交渉したら。
「絶対ですからね! でしたら、帰るまでは普通にしますので、約束ですよ?」
簡単に譲歩しましたよ……ちょっとエルナにも誓約魔術とか使いたくなってきましたよ。
きっと、アイリ先生みたいに、自分の欲望に対しては簡単に負けそうですね。
普通に接してくれるので、昨日の出来事も話してくれましたが、ほとんど愚痴ですね。
大体、主なのですからもっと強気で行けは良いのに、幼い頃からの刷り込みでどうしても逆らえないそうです。
学園での様子は、リンさんに買収されたシズクが監視するらしいので、私が更に買収しておきました。
基本的には私のお願いが最優先にされるようなので、昨日の件もあり、見逃してくれるらしいのです。本来なら、先に聞いた任務を必ず遂行するとの事です。
ちょっと、気になったのでいつもこんな事をしているのかと質問をしたら……。
「たまに頼まれて、あっちこっちに偵察に行ってます! 私は、家事をするよりこっちの方が合っているみたいですし、楽しいです!」
どこに行っているのやら……危険な事だけは止めて下さいよ。
「学園はいいとして、あまり危ない事はダメですからね?」
「大丈夫です! 頼まれる依頼は、学園の様子かお屋敷の警備ぐらいです! お屋敷に忍び込んでいた者を捕まえた事もありますよ!」
ちょっと、そういう事は相手が暗殺者とかだったら、危ないでしょうに!
「シズク、私の見ていない所で、本当に危ない事は止めて下さい。ダンジョンでは常に見ているので安心していますが、1人の時に貴女に何かあったらと思うと心配になります」
「お姉様が私を大切に思ってくれている事は知っていますので、危険な事は絶対にしません。風の魔術で、お姉様が作った睡眠ポーションを気化させて相手の空間に流しているだけなのです。戦闘はしていませんので、安心して下さい!」
そう言えば、何本か欲しいと言われて渡してましたね。
何に使っていると思ったら、そんな事に利用していたのですか。
「公爵様なので、他の派閥の方からのスパイとかたまに紛れ込んでいますよ? 私は、お屋敷の皆さんはほとんど知っていますので、知らない人だけ調べて捕まえているだけになります」
「シズクって、そんなに記憶力が良かったのですね」
「元々の記憶力は良かったのですが、職業を忍者にしてからは、全体的に記憶力が上がりましたので、会話なんかもはっきりと思い出せます。最近捕まえた人達は、ヴァレンタイン家の謎のデザイナーの情報を得る為みたいです」
謎のデザイナーね……目の前の少女と思う人は、まず居ないでしょうね。
「それで、捕まえた人達はどうしているのですか? まさかとは、思いますが殺してはいないでしょうね?」
「私に殺意でも無い限りは殺しませんよ? 駄目そうな人は騎士団に引き渡していますので、多分処刑されていると思います。一応、見込みの有る人で運命を選んでもらって、、こちらに所属したい人達は、そのままこちらに雇っています。いまでは、私の部下が何人も出来て、一応ですが私が棟梁を務めています!」
13歳の子に使われるとか、よく納得しましたね?
ろくでもない人なら私も罪悪感は感じませんが、シズクって、スパイが処刑されているとわかっているのに冷静です……。
そして、更に殺す事に躊躇は無いのですね……。
それにしてもどんな人達が従っているのでしょうね?
「よくシズクに従いましたね……それなりに出来る人達なのでしょう?」
「勿論、最初は納得なんてしませんので、私から試合で1本取れたら、そのまま帰す約束です。相手が納得するまで続けるので、最後にはみんな倒れています」
まあ……余程の強さが無いと、シズクから試合で1本取るとか無理ですからね。
この子は詐欺みたいな回復能力があるので、体力なんて底無しに近いですから、まともに戦うとか無謀です。
刀の速度も速すぎるし、余程速度に特化していないと、あんなの見えませんよ。
「負けた時は、どうなるのですか?」
「自分から切腹するか、屋敷に忍び込んだ罪で処刑されるか、騎士団に連行されてから処刑されるか、私の配下になるかになります」
配下になる以外は死亡ではないですか!
大体、切腹って……シズクの知識に有った侍とか言う職業の人が、自分でお腹を切り裂いて処刑人に首を刎ねてもらうとか、恐ろしい文化ですよね?
そんな事をするぐらいなら、さっさと首を刎ねられた方がましなのです。シズクの世界では英雄視される美学らしいのですが……向こうの世界の人は勇気がありますねー。
「シズクの配下以外は、死刑ではないですか……」
「大抵は、試合をしたら、みんな私の配下になりたいと言い出しますので、私が『雫組』を作って纏めています!」
生き残る道がそれしか無いから、ほとんど強制的ですよね?
しかし、本格的な組織になっていますね……。
「私が指導した人は、たまに忍者になれるので、皆さん頑張っていますよ? 私が知っている忍者の訓練を毎日やっています!」
えっ!?
あのわけのわからない訓練を毎日ですか……気の毒に……私が作った謎の増進薬で、馬鹿みたいに高くなる植物を毎日ジャンプしたり、呆れる長さの布を地面に付けずに走るとか色々ありますが、シズクじゃあるまいし、無理なのでは……。
一体、何人いるか知りませんが、教わる人を間違っていると思いますよ?
「よくあんな事をしてますね……」
「お蔭でかなり御庭番が増えたので、楽しいです! サラさんがちゃんと給料も出しているし、私の作った制服も支給してありますので、好評ですよ!」
最近、屋敷の庭の手入れをしている人が増えていた理由がわかりましたよ!
レートさんやサラさんも認めているとか、適応力が高いですね。
ただのシズクの趣味と知ったらどうなるのやら。
本当は今日からダンジョンの続きを再開したいのですが、エルナをなんとかしないと、これでは私の罰ゲームが続きます……勝ったのが私なのに……。
これは、帰ったら本日でお終いにしないと、3日も続いたら精神的に私が疲れますよ。
学園では、優勝した私をみんな持て囃してくれますが……昨日、ぼこぼこにされたから、まったく強くなった気になれません。
私が悩んでいるのに、アイリ先生はとってもご機嫌なようですね……そう言えば、特別手当とやらが入ったはずですよね?
「アイリ先生、何か良い事でも有ったのですか?」
「昨日、すごく綺麗なネックレスを見つけて、つい買ってしまったのです! これなんですが似合ってますか?」
「綺麗ですね。とっても似合っていると思いますけど高そうですね?」
「ちょっと高い買い物でした。迷いましたが、臨時収入が2件も有ったから購入しましたよ!」
臨時収入ね……特別手当と私に賭けて勝った配当金でしょうね。
前回のドレスといい、無駄に高い物をすぐに買うとか、一体いくらしたのでしょうね?
「それは、良いとして、特別手当で、私達に御馳走してくれるのはいつなのですか?」
「あっ!……え―っと、ちょっと後でも良いですか? いま手持ちが無くて……」
約束を忘れて自分の欲しい物を優先するとか、いつもながら楽しい人ですね。
私にいくら賭けていたか知りませんが、私の懐がかなり増えたので、結構な配当金のはずなのに持ち合わせがないとか、そのネックレスはそんなにしたのですか?
「アイリ先生……私達に奢るまでは質素な生活を命じます。高い物を買ったり食べたり飲む事も当然禁止です」
「なんで!? ちゃんと約束は守りますのに酷いです! せっかく買い込んだ良いワインも飲めないですよ! お願いですから、取り消して下さい!」
なるほど……高級ワインでも沢山買って、お値打ち物も手に入れたのでしょうね。
ワイン大好きのアイリ先生らしいですよね。
「高い物では無ければ飲む事は可能なはずですから、問題無いですよ? ただ、アイリ先生が高いと認識していたらダメですけどね」
「たまにしか飲めない物なので、無理です!」
「では、早めに奢って下さい。私がいつも行くカフェで、みんなに食べ放題とかいいですね!」
「無理です……もう給料日まで、ぎりぎりの計算なので……そうです! シノアさん、お金を貸してくれるか前借させて下さい!」
確かにアイリ先生の雇い主になりましたが、早くも借金の申し込みをするとか計画性が無さすぎです。
「一応は教師と生徒なんですが、アイリ先生には威厳とか無いのですか? 前にそんな事を言ってましたよね?」
「そんな物は、シノアさんに支配されているので、既にありません! 表向きは他のみんなの前で保たれればもう十分です!」
この人、開き直りましたよ!
どんどん駄目な人になって行く気がするのです。自分の欲望に忠実な人は楽しいですね。
堕落させたのは私ですが、ちょっと懐が厚くなっただけでこれなのですからね―。
真面目だったのに、人って変われば変わるものですね。
「仕方ありませんね。私が立て替えておきますので、借金にしますね? カフェテリアのマスターに話は通しておきますので、安心して下さい」
「ありがとうです! 私のシノアさんは優しいですから、助かります! それで、今日行きますか? 早くさっきの禁止を解除して欲しいです!」
なんか私のとか言っていますが違う意味でエルナに近いですね。
私は、貸すと言っただけなのにもう解決したと思っていますよ?
前回と違って、今回は借金なのにわかっているのかな……。
確か貯金の半分を賭けたとか言っていたのにどれだけ使ったのでしょうね?
まさかとは思いますが手に入った分だけ全て使ってしまったのでは?
もしも、そうなら、貯金も減っているので逆に散財しているはずです。
後ほど質素倹約な生活をさせて、反省させないとお金の価値観がまずいですよね……。
いまは、私と一緒に食事に行った事などないのですから、食べ放題を後悔したくなるほどに心行くまで堪能させてあげますからね!
「ちょっと今日は早く帰りたいので、明日にしましょう」
「それじゃ……私は今日は飲めないじゃありませんか! 酷いです! 目の前にあるのに飲めないとか拷問ですよ!」
一度、本当に拷問とかしてあげれば、禁酒の方が良いと思うかと。
アイリ先生を縛り上げて、昨日私が打たれたように鞭で打つと面白そうなのですが……。
「私の都合で明日にするので、先ほどの禁止事項は解除しますから、好きなだけ味わってください」
「ありがとうです! 実は、今日届くので楽しみにしていたのですよ! しばらくは毎日飲めるので楽しみです!」
非難したり感謝したりと忙しい人です。
そんな良い物を飲み続けたら、今までの物に満足出来なくなって、後で自分が困るとは思わないのでしょうか?
一度向上した味覚などは、中々下げる事が出来ないので大変ですよ。
それにしても直ぐに感情がころころと変化するから、この人は最高ですね。
学園でアイリ先生のダメっぷりを堪能してから帰ると、リンさんにエルナのメイドの件は本日で終了しますと伝えたら。
「本日と言うのは明日の朝までで、良いのですね?」
それだと、次の日になっていますので、エルナが納得しませんよ。
「いえ……もう今から終わりにしょうかと……」
「私も最後にもう少しだけしたい……教えたい事がありますので、今夜一晩だけはお貸し下さい」
ここは譲れませんと目が言っていますね。
何をするのかは大体は想像できますが、仕方ありませんのでもう一晩だけ耐えてもらいましょう。
「わかりました。エルナにお話をしておきますね」
「カミラ様は、連れて行ってください。エルナ様に巻き込まれて、少々不憫ですから」
「自分から、付いて行ったと思っていましたが?」
「本人は一緒に指導を受けますと言ってますが、エルナ様がそう仕向けた感じがします。きっと2人なら、自分の注意が減ると思っているのでしょう」
まあ、カミラも居たら、加減されるでしょうね。
それがわかっているとなると今晩は大変な事になるかと思いますが、なんとか納得の行くように話して、私に被害が及ばないように説得しておかないとごねるに決まっています。
「と……いうわけなので、エルナのメイドさんは今晩でお終いにしますが……リンさんの要望を断り切れなかったので、申し訳ありませんが、今夜だけリンさんと2人で過ごして下さい」
「シノア! じゃなくて……お嬢様、昼間とお話が違うではありませんか? しかも、2人きりとは、私を見捨てるのですか?」
「どうしても、リンさんがこれだけは譲れないと言うので……頑張って耐えて来たら、エルナの希望を叶えると約束しますよ?」
「それは、私が勝った時の御褒美なのでしょうか? 当然ですが毎日ですよ?」
たまにで良いと思っていたのですが毎日ですか。
「わかりました。それで、エルナが納得するのでしたら、お望みのままにします」
「ありがとうございます! お嬢様の為にも頑張って耐えてきます!」
とても嬉しそうですね……脳筋は取り消しますが、残念お嬢様は継続のようです。
結局、私が勝ったのにエルナの要望を聞いて、謎の躾をされただけですね……理不尽な気がするのですが……。
「それでは、リンさんが話が終わったら来るように言ってましたので、早く行った方が良いですよ」
「今からですか……愛の為に耐えるのも試練なのですね……では、行ってきますね!」
餌を与えたら、喜んで行きましたね。
相変わらずですが愛とか重い事を言っています。
エルナがこの家を継いだらとんでもない事になるのではと思えて来ました。
「では、私はもう良いのですね?」
「ええ、リンさんにも言われているので、カミラは私と居て下さいね」
エルナが居なくなると解放されたか安心したような表情をしていますが、出会った頃に言っていた敬愛とかもう思っていないですね。
この屋敷での行動を見ていたら、幻想を打ち砕かれたのでしょう。
学園での麗しきお嬢様は、ただの演技ですよ。
「正直、見ているのも辛かったし……2人に板挟みにされてもどうしたら良いのか困っていましたが、エルナ様に加勢をしたら、その分話が長くなると言われていたので、見ているしか出来なかったのです……」
「そんな事より、今朝は、私を見捨てましたね?」
問題が解決したと思って、安心していますが私は忘れていませんよ!
今朝から、私の助けを全て無視しましたからね!
ちょっと罰とかお仕置きでもしないと私は気分が晴れません!
カミラにお願いでも聞いて貰って、それを私の報酬にでもしないと面白くありません!
「えっ!?」
「私は、カミラの事を大事な友達と思っていたのに裏切られましたよ……こっそりとお願いされた、お漏らし対策のアイテムまで、みんなに内緒で作ってあげたのに……みんなに話してしまいそうですね……」
「止めて下さい! シノアには、すごく感謝しています! あれのお蔭で履き替えなくても済んでいますから……そうです! 私も何かお願いを何でも聞きますから、それで帳消しにして下さい!」
自分から、言い出しましたね……どうやって話を持って行くか考えてましたが手間が省けましたよ。
「ふ―ん……何でもと言いましたね? では、ベットの中で私がする事に決して逆らわないと誓って下さい」
「えっ!? まさか……」
胸を押さえて後ずさっていますが、理解したみたいですね。
「そのまさかですよ。いまさら、嫌とは言いませんよね? これで堂々と出来るので、私は嬉しいです! ちょっと癖になっていたけど、カミラがエルナに拘束されないと出来ないので好きな時に出来るようになりましたよ!」
「えっと……他の事では駄目なのでしょうか?」
「えっ……カミラの嘘つき……何でもお願いを聞いてくれると言ったのに……やっぱりみんなに話してしまいそうです……」
「わかりました! もうシノアの好きにして下さい! その代わり絶対に約束は守って下さいよ!」
「ありがとう! これからも困った時はいつでも協力しますから、何でも言ってね!」
やっぱり人の弱みを握るのは楽しいですね。
こういう時に使うとあっさりと要求を呑むので、タイミングは大事です。
本人同意で、けしからんクッションを手に入れました!
「せっかくここに居られるのに何か思っていたのと違います……」
どんな夢を抱いていたかは、知りませんが現実というのは、残酷なのがお約束なのです。
カミラからは直接お話を聞いていませんが、セリスとシズクに調べてもらったので、カミラの事はある程度把握しています。
学園の卒業までには、何とか出来るように手を回しておかないとね。
カミラと話し終ってから工房に行くと、ギムさんがまだ例のドレスを調べてます。知らない人が見たら怪しい光景です。
「難しい顔をしていますが、そんなに悩む物なのですか?」
「シノアか、これの素材がまったくわからないんだよな……」
「ただの露出の多いドレスなのでは?」
「このドレス……いや、もう防具と言っても差し支えない装備だぞ」
そう言って、ギムさんがドレスをその辺に立て掛けてあった剣で斬ろうとすると。
「ちょっと!? 何を!」
すると触れる手前で手が止まりました。せっかく貰ったのに駄目ですよ!
「いま、わしは本気で振り下ろしたんだがこれ以上は振り下ろせないんだよ。それと」
「自分で止めたんじゃないのですか?」
「『ファイヤー・ボール!』」
「燃えてしまうでは!……火球が消えましたね……」
「後は、わしの知っている上級魔術を近くで使おうとしたら、発動しなかったんだ」
ギムさんの技能に上級火魔術があるのは知っていましたが、ちゃんと使えたのですね。
「試したのですか?」
「恐らく魔法が無力化されてしまうんだ。お前さんのマナを意識して防御に回すと半減出来たりするのより上級装備……いや、剣も魔法も通じないとかこんな防具自体が存在したのかと驚いているよ」
「これ、すごいドレスですね」
「確か、お前さんを襲った子も同じような恰好だったのなら、初めから魔法防御などしなくても良かった事になるんだが……」
「なら、どうして魔法で防いでいたのでしょうね?」
「わからんが、友達になったのなら、次に会った時に聞いてみるんだな。これ以上は調べてもわからないから、返しておくぞ」
受け取りましたが、もしかして、間違えてくれたのかも知れませんので、次に会ったら聞いてみます。
全ての攻撃を無効化するとか私の理想的な装備ですが……これに頼るのは何か間違っていると思うのですよね。
ただ……ちょっと私が着るには似合わないと思うのです。
それにちょっと露出している部分が多いし、シズクにはエロ可愛いとか言われましたが、今後は似たような服を着て欲しいと言われそうです。




