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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
21/378

20 不注意でした

 3ヶ月ほどした時に全生徒の学力テストの試験の結果で、なんと私が1位です!

 ついつい書いてあることにそのまま答えを書いてしまいましたので、満点という結果に。


「私のシノアでしたら、当然の結果ですよ!」


 エルナはさも当たり前のように他のクラスの人達にも受け答えをしていますが……止めて下さい!

 これにはAクラスや特にSクラスの方から、私が不正をしたとか難癖が来ました。

 Bクラスのみんなは、当然の結果と思っていたので、むしろSクラスに勝ったとか我がことのように喜んでます。

 あんまりうるさいので、最下位で良いですと言ったら、さら馬鹿にしてるのかと騒ぐので、Sクラスの6人と教師陣の見てる前で再試験まで、させられましたよ。

 手抜きしょうとしたら、「適当に間違えたらダメですからね?」とエルナから、先に釘を刺されましたよ……あの娘は、私の心が読めるのかしら?

 仕方ないので、全力と言っても知っていることを書くだけなので、どんなに問題を変えても同じ結果ですね。

 時間が有る時にお屋敷や図書館の本も全て読破しましたので、入れないお城の資料室の本からの問題じゃないと知らない問題は無いですから。

 しかし、私のこの記憶力はどうなっているのでしょうか?

 一度聞いたり見たりしたことはほとんど覚えているとか、今度エレーンさんに聞いたら教えてくれるかな?

 それにしても早く帰って、ダンジョンに行きたいのに酷い仕打ちです!

 アイリ先生は私に必死に「断り切れなくて、ごめんなさい!」と言ってますが……。


「私のダンジョンに潜る時間が減ったから、先生へのお土産が減りますからねー」と、言っておきました。


「そんな――――!」とか言って半泣きしてますが、こういう時の為に色々と賄賂を渡しているのに仕事をしない罰です。


 私は知っているんですからね……ドロップした宝石などをあげていたので、最近は羽振りが良くなって、地味に良い物を身に着けてますから、他の先生にも妬まれていることもね。

 この間なんか、ダンジョンに行く時に高級バーで、高そうなドレスを着てワインを片手になんかしてましたので、店員を買収して聞いたら……。

 ここ最近の常連で、男性の品定めなどをしているらしいのです。

 学園の時は、地味な感じなので気づきにくいのですが、綺麗な服を着てちょっとお洒落をすると中々の美人になるのですよね。

 かなり化けてますが、私には鑑定もあるし雰囲気でばればれですね!


「その……どのくらい減ってしまうのですか……」


 減る量を聞いて来るとか何か高い買い物でもしたのでしょうか?

 ほとんど毎日あげているので、正直に言って教師の給金などとっくに超えているはずですが?


「再試験で、8日も時間を取られたので、10日間はお土産無しですねー」


「嘘ですよね? シノアさん……嘘と言って下さい!」


「私が今まで嘘とか言ったことがありますか?」


 勿論、そんな事はありません!

 いつもうまい具合に丸め込んで、嘘でも正しいと思わせているだけです。

 最近は真実と嘘を良い感じに混ぜて、ちょろまかしているだけですが……なんか成功すると楽しいので止められないのです!


「先生……もうすぐ受注した服の支払いがあるの……10日も無しだとお金が足りなくて……」


 ……換金をすれば結構な金額になるのに足りないとはどういうことですか?

 一体いくらの服を注文したのやら……生徒に援助を求める教師とか良いのでしょうか?

 ちゃんと貯金をしていれば、かなり持っているはずなのに、この分だと毎晩のように散財をしているのでしょうね。

 どうして、私の周りには何か欠点のある残念な人が多いのでしょうか?


「それは、どんな服で、いくらするのですか?」


「……それは……」


「正直に言わないと助けませんよ?」


「パーティー用の特注のオーダードレスで、下着から全て一式のセットなのです……」


 そんなのどこに着ていくのですか?


「実は金貨100枚もするのです……50枚は前払いしてあるのですけど……」


 高い服ですね。

 実用性のある防具とかなら考えますが何の効果も無い服に私なら、そんなに払えませんね。

 大体、毎日散財しているので、どの道足りなかったと思うのは、私だけでしょうか?


「アイリ先生、今月は夜の外出をしないと約束をするのでしたら、ここに大金貨がありますよ?」


 アイリ先生は真剣な目で大金貨を見つめています……ダメな大人ですね。

 生徒に援助してもらう先生とか……私が学園を卒業したら、破綻しそうですね!


「どうして……夜の外出禁止なのですか? 私は……」


「隠しても無駄です。先生が毎晩のように高級バーに通っていることは知っています。丁度良いので、私が再試験させられた腹いせに先生にも罰を与えます!」


「そんな! お願いします! あそこに通うのが毎日の楽しみなの!」


「じゃ、これはあげませんよ? アイリ先生がちゃんと他の先生を説得していれば良かったことなので、仕方ありませんよ?」


「だって……他の先生は今度も驕ることで説得出来ていたのですが……Sクラスの筆頭のユリウス殿下がどうしてもというので……どうしょうも無かったのです」


 ユリウス殿下?


「殿下って、この国の王太子なのですか?」


「シノアさんは最近来たばかりでしたからね。彼は第3王子なのです」


「でも、この学園では、権力を振るうのは禁止でしたよね?」


「権力を行使した訳では無いのですが、わかっていても断りにくかったのです……」


 うーん、それなら仕方ありませんか。

 この国の王子の権力がどれ程の物かわかりませんが、一介の教師のアイリ先生には酷な案件ですね。

 それはそれで、お仕置きはしないと私の気分が晴れませんので、バーに行くのは禁止しておきましょうね。


「分かりました。今回だけは助けてあげますので、早目にこれで支払っておいて下さい。お釣りはクラスのみんなに何か美味しい物でも買って、自分の評価でも上げて下さい」


「ありがとう! シノアさんは私の女神様です! 愛していますよ!」


 この国にはちゃんとした女神様がいるのに。聞かれたら天罰が下りますよ。


「でも、今月は学園が終わったら、自宅謹慎してて下さいね。店員はすでに買収してあるので、行ったら直ぐに私に知られると覚悟しておいて下さい」


「ううっ……シノアさんのいじわる……」


 こんな寛大な処置をしたのに意地悪とか言われましたよ?

 これはもうお仕置きしないと絶対に反省をしないと認識しました。


「先生、ちょっと手を出してください」


「なに? これで良いの?」


 先生の手のひらにマナで模様を描いて『オウス!』


「えっ!? 何をしたの?」


「アイリ先生にアルコール禁止の誓約魔術を掛けましたので、私が解除するまで、お酒は飲むことは出来ません」


「シノアさんは誓約魔術が使えるのですか!? 解除するまで、飲めないなんて酷いです!」


「私のことを意地悪とか言った罰ですよ? 飲んでも良いけど一口でも飲むと味わった分だけ激しい腹痛に襲われます」


「そんな! でも、そんな使い方は初めて知りましたが、本当なのですか?」


「一般的には、奴隷にする目的でしか広まっていませんが、本来は用途に応じて色々な枷を掛ける魔法なんですよ? 試しにここに50年物のワインがあります。飲んでみますか?」


「50年物! そんな高級なワインはすごく高いのに……ちょっと飲んでみたいけど……」


 本来は相手にも了承させないと駄目なのですが、今のアイリ先生は私にお金を貰っている負い目があるので、私にはアイリ先生に限ってですが、簡単な事なら拘束が可能なのです。

 これが負い目など感じずに当たり前の事と思っていたら成立しないのですが、それはそれで、反省をしていないのがわかるので、次からは絶対に助けないけどね!

 さて、どのくらいの腹痛に襲われるか見てみたいので飲ませてみますか。

 一度、体験すれば痛みによっては飲めないでしょ。


「はい、一杯どうぞ」


 さりげなくグラスに少し入れて渡したら、香りとか嗅いでからゆっくり飲んで味わってますよ。

 私はいつもラッパ飲みしてますから、雰囲気とかまったくありませんが!


「これ、すごく美味しいです……こんな上品なワインは初めてです……口に広がる……ん!? お腹がなんか……痛い! 凄く痛い!」


 なんか感想を述べてましたが魔法が発動したらしく、うずくまって苦しんでますね。

 職員室じゃなくて、良かったですね。

 もうお腹の痛みで回りが見えてないようですが、スカートとか捲れて悲惨な体勢でお腹を抱えて痛みに耐えてますよ。


「お願い! シノアさん! この痛みを止めて下さい!」


 泣きながら懇願していますが、かなり強力な痛みらしいですね。


「そんなに痛いのですか? どなん具合に痛いのかを教えてくれたら、今回は止めてあげますよ?」


「酷いです! もの凄く痛いのに!」


「痛いだけでは、わかりませんねー? そろそろ私は行きますので、頑張って耐えて下さいねー」


「も……ものすごくトイレに行きたくなるぐらいの痛みです! もうこれ以上は許して!」


 なるほど。

 腹痛を与えるとしかわからなかったのですが、要するにお腹を壊してしまって、トイレに行きたいけど解決しない状況が続いているのですね。

 これは、女性には耐え難いですね。

 どのくらい続くのか放置したいのですが、ちょっと気分が晴れたので、今回は止めてあげますか。

 模様を描いた手のひらに触れて、今回は治まるように念じると痛みが止まったようですね。


「はぁはぁ……すごく苦しくて、痛かった……ワインはあんなに美味しかったのに……」


 先生、取り敢えず服を整えて涎とか垂れているので、直した方が良いと思うけど?

 あんなに激しく痛がって暴れているから、良い感じに衣服が乱れているので、誰かが見たら私が襲ったと思われてしまいますよ。

 何となく私の心にアイリ先生を無茶苦茶にしようと語り掛けてくるのですが。実行したくなって来ますね。


「しくしく……解除するまで、飲めないなんて……私の唯一の楽しみが……うぅ……いつ解除してくれるのですか……」


 ちょっと泣きだしてしまいましたよ!

 でも、かえって私の心が満たされるのですが、何故なんでしょうね?

 もっといじめたいのですが、仕方ありませんね。


「大丈夫ですよ。アイリ先生が10日間だけ我慢出来たら、解除する時にこのワインもあげますから頑張って下さいね」


「ぐす……本当にそのワインもくれるのですか?」


「私は嘘は言いませんよ?」


「分かりました、10日間だけ我慢します……」


「恨むのでしたら、この発端になった事件を恨んでくださいね? 再試験とか無ければアイリ先生は安泰でしたのに残念ですねー」


「そうです! これまでも色々と奢ってあげていたのに、みんなが一丸となってくれれば問題は無かったはずです! もう奢らないから!」


 他の教師に奢っていたりもしてたのですか。

 アイリ先生は気づいていないみたいですが、他の授業の先生にもちょこちょこと賄賂を渡しているので、上手い具合に奢らさせられていますよ。

 学園長のエレノアさんは、サラさんの愚痴を聞くついでに高級ワインで買収済みです。10日に1本ぐらいの頻度で進呈していたのですが、今月はありませんと言ったら、すごくがっかりしてましたね!

 まだ月が変わったばかりですから、先は長いですね。

 考古学のフリークさんは、私がこの世界の歴史を知るのに都合の良い色々な書物を持っていたので、読ませてもらったお礼に、髪で悩んでいたので錬金魔術で偶然出来た育毛増進薬を渡してましたが、次回は無しにしたら生徒に土下座までして許してもらおうとしてましたけど、却下しました。

 レシピとかは教えてないし、いくら成分を研究しても無駄です!

 一つだけ絶対に私にしか用意出来ない物があるので、製作不能ですからね。

 髪の毛の悩みは意外と他の皆さんも多かったので、何人かに渡してましたがどうなるかなー。

 余り気にしていなかった錬金魔術なのですが、色々と調合を繰り返している内に訳のわからない物から使える物まで色々と作れるようになりました!

 一番の成果は7割の回復力があるマナポーションです!

 サテラさんの完全回復のと売っている最高のポーションと比べて色々と研究をしてみたのですが、完全回復になる為の材料はまだ私が知らない素材みたいです。

 暇な時間に色々と作っている内に錬金魔術が中級になったのも大きいのですが、この技能だけはもしかしたら作り続ければ上がるのかも知れませんね。

 他にも色々と手回しはしているのですが、王家の威光には勝てないみたいですね。

 それにしても……1期生の時からずっとトップだったユリウスとかいう人に「次は決して負けないから、覚えて置くように」とか言われましたが……どうしょうかなー。

 なんか手抜きとかしたくなくなりましたので、頑張って満点を取れば良いと思いましたよ。

 それから、Sクラスの6人がことあるごとに絡むようになってきて、また面倒なことになってきましたが、権力的な圧力はエルナが居るので無理なのですが、地味に嫌がらせをしてくるんですよね。

 意外なのはユリウスです!

 敵意というかライバル視はしているのですが、嫌がらせの類は彼といつも彼と一緒に居るミヨナという子だけはしてきません。

 他の4人がめんどくさいことを言ってくる時に遭遇すると「実力を示せば良いだけだ」と言って、仲裁もしてくれます。

 ちょっと気になったので、聞いてみたら「実力で、手に入れた物で無ければ意味がないから、次は必ずトップになってみせる!」と。

 王子なのに意外と努力家ですね。

 普通でしたら、生意気な小娘とか言って、見下すのにね。

 再試験の後にSクラスの最下位の方と入れ替える話が来たのですが、丁寧にお断りを入れたのがさらに気に障ったらしく、特に入れ替わる予定だったジュリアさんからは、情けでSクラスにいる人などと噂されているせいで、目の敵にされています。

 彼女は伯爵令嬢なので、ある程度の地位の家ですから、後で変なことにならなければ良いのですが……。


 さらに失敗してしまった事を考えながら、エルナの相手をしていたら、ついに一撃をもらってしまいました!


「ついに私の剣がシノアに届いたわ!」


 考え事をしていたので、いまのは無しに……なんて言えませんね。

 技能に並列思考とかあるのに複数の思考が出来ないとか意味無いよ!

 それにしても、中々の動きでしたがいまのエルナはどうなっているのかな?



 名称:エルナ・バレンタイン


 種族:人間


 年齢:15


 職業:魔法剣士


 レベル:20


 技能:中級剣術 初級弓術 中級護身術 初級聖魔術 初級衝撃耐性 初級物理耐性 中級料理人 気配感知 威圧 痛覚遮断


 固有能力:(?の刻印)

 


 えっ!

 サラさんと訓練してるだけとしか聞いて無いのにレベルが倍になっているし、技能が増えてます!

 剣術も中級になっているし、何よりも私が一番欲しい痛覚遮断なんて持ってます!

 私のレベルは現在43ですが、それは疲労とか知らないから延々と狩り続けられるからですが……訓練でレベルって上がるのですか?

 シズクが前衛で活躍してくれるし、セリスが遊撃とサポートをしてくれるので、私は効率良く魔法で撃破してるから、レベルの上りも早いのですが……。

 おかしいです……何かやっていたに違いありません……。


「私の負けは認めるけど、エルナはどうやって強くなったの?」


「勿論、お母様と剣の修行をしていたからですよ?」


「剣の練習だけで、レベルってあげられるのですか?」


「ちょっと森で稽古を付けてもらっていただけですよ?」


 王都の外ですか……検問が厳しいから、出入りは時間が掛かるはずなのですが……。


「検問を通るのには、時間が掛かるのに外にですか?」


「お母様が護衛の騎士を連れて一緒に騎士団の通路から出入りしていたから、正門は使ってませんよ?」


 そんな通路が有ったのですか……しっかりと権力を使って顔パスとかやりますね。

 恐らくは、その護衛の騎士とやらもサラさんに逆らえない弱みでも握られているに違いありません!

 学園長のエレノアさんも色々と弱みを握られていて逆らえないみたいですが、普段は色々と優遇もしてもらっているので、完全に頭が上がらないと愚痴っていましたからね。

 レートさんも押しに押されて婿入りをさせたとロイさんから聞きましたが……。

 しっかりと手回しをするとか恐ろしい人です。

 あれ?

 何となく私に似ているような……気のせいですね!


「それで、森で剣の指南を受けながら魔物も狩っていたのですよ?」


「エルナ様、私も御一緒に行っても良いとの話は大丈夫なのでしょうか?」


 えっ?

 カミラが御一緒にと言ってますが……まさか!


「カミラ、それはどういうことなのかな?」


「エルナ様がシノアのテストに合格したら、一緒にダンジョンに行きましょうとお誘いを受けたのですが」


「エルナ……」


「大丈夫よ! カミラも一緒に騎士団の弓が上手い人に習って、一緒に森に行っていたので、魔物と戦えるわ!」


 勝手に約束をして……カミラの能力を見ると



 名称:カミラ・セイルーン


 種族:人間


 年齢:15


 職業:弓術士


 レベル:16


 技能:初級弓術 初級風魔術 初級体術 初級護身術 中級裁縫 気配感知 危険感知  


 固有能力:収納



 後衛職ですが地味にレベルもあげてますね。

 カミラって、収納持ちだったのですね。

 仕方ありませんね。


「カミラはダンジョンに挑むのは本気ですか? もしかしたら、死んでしまうかも知れないのですよ?」


「私は、貴女達と一緒に居たいの……足手まといにならないように頑張るから連れて行って欲しいのです。もし死んでしまうようなことが有っても後悔は致しません。それに私には、時間が……いえ、なんでもありません」


「シノア、お願いなので連れて行きたいの。彼女のことは私が守ってみせるから、お願い!」


 うーん、どうもカミラには何か事情がありそうなのですが……エルナは知っているみたいです。現状では、セリスに2人の護衛に回ってもらえば問題有りませんからね。

 正直、前衛ならシズクが1人でこなしてしまうので、私はもっぱら魔法がメインだし、セリスも私達の支援と遊撃に徹していますから、安定しているのですよね。

 2人には回復が必要かと思いますが、セリスがいるので、死なない限りは問題は無いはずです。


「分かりました、5人でダンジョンにいきましょうか」


「シノア、ありがとうね!」


「本当に良いのですか?」


「大丈夫です。現在、私達は39階層に居ますが、2人の準備が出来たら、16階層ぐらいから行ってみましょうか」


「シノア達って、3人なのに39階層に行っているの!?」


「3人って……もう1人は、もしかして、その子ですか? 私達より年下だと思うのですが?」


 まあ、普通はそう思うよね。


「シズクは私達3人の中で、一番強いよ。魔法しか勝てる気がしませんねー」


「この娘がシノアさんより強いのですか? 教師より強いシノアさんが負けるなんて、想像が付かないのですが……」


「うん、事実よ。私も見たことがあるけど、シノアが模擬戦で全敗してるのをね」


「お姉様、早速皆さんと行くのですか?」


 シズクは、メンバーが増えることは、歓迎のようですね。

 そのうちにシズクの記憶に有った何とか戦隊とか言い出しそうですね。


「それは、明日からにします。取り敢えず、私達は40階層のボスだけ狩って来ますので、準備をしていてねー」


「やっと、シノアと一緒に戦えると思うと嬉しいわ!」


 一緒に戦うのが嬉しいとか、御令嬢としてはおかしいのでは?

 私の知っている御嬢様というのは、花でも見ながら優雅にお茶を飲んでいるイメージなのですが?

 物語の御嬢様の設定は嘘ですね。

 明日は学園がお休みなので、遅くなっても問題無いから、40階層のボスだけは倒しておきたい所ですね。

 二人をいきなり41階層から連れて行くのは流石に危険過ぎますから。

 36階層から39階層までは、ゴーレム系が多くて力押しの敵ばっかりと思っていたら、たまにガーゴイルなんかも混じっていて、地味に魔法を使ってくるんですよね。

 動きの遅いゴーレムなど、シズクの良い的です。

 敵が固いのにどうやってあんなにバッサリと斬っていけるんでしょうね?

 私も斬れないことはないのですが、バルディッシュにマナをちょっと込めないと弾かれてしまうのですよ。

 魔法の効きが悪いので、私も魔石だけ狙って攻撃をしていますが、物理的に爆破とかする魔法が欲しいです。

 セリスはガーゴイルの牽制とシズクの防御をしてもらっています。

 地味に魔法の弾幕が激しいと、流石に避けきれなくて被弾してしまうのです。

 しかし、あの子のすごい所は怪我とかしても動きは止まらないし、怯まずに魔物を倒してしまう所です。

 無理とかしないで欲しいと言ったら。


「ヒーローは決して諦めずに前に進むのです!」とか言いますが……向こうの13歳は勇ましいですね。


 なので、セリスにはシズクを優先的に支援と回復するようにお願いしてあるけど、私も目が離せません。

 シズクはあくまでもヒロインの子の設定で戦うので、思い込みって大事だなーと思いましたよ。

 何とかボスの部屋の前まで来たので、シズクを休ませて回復させましたが、何となくボスは厳しそうな気がします。

 やっぱり今日は戻ろうかと提案をしたら……。


「お姉様、行きましょう! 私は必ず勝利します!」


 絶対に引く気はなさそうです。

 入って見てやばそうだったら、帰ることを約束して入ってみると……やっぱしね。

 ボスはあの大きいタイラント・ゴーレムとかいう奴なんでしょうね……あからさまにゴーレムとガーゴイルが左右に並んで整列してますよ。

 ただ、きちんと整列しているので、雑魚は一掃出来るチャンスでもありますが。

 片方の列は、セリスに『シャイニング・イレイザー』を最大で撃ってもらえればかなり倒せますが反対側の列をどうするかです。

 私にも使えれば良いのですが聖魔術は初級のままで、私には使えないのですよね。

 何か直線で、ゴーレムを貫通出来る魔法があれば良いのですが下手に魔法を知っている為に使える魔法を探すのが大変なのですよね。

 おや?

 いつの間にか土魔術が中級になっていますね。

 ゴーレムなどの土とか鉱石の魔物を狩っていたから、上がったのかな?

 もしかしたら、私の技能上昇の条件は、関連する魔物などを狩ることが条件なのかも知れませんね。

 頭の中のリストを検索していると『アシッド・ブラスト』という範囲魔法が使えるようになっていますが、名前から言って爆破でもさせる魔法なのかな?

 土魔術なのですが、きっと硬い敵を爆破とかしてくれるに違いありません!

 最近は、魔力管理とかいう技能が増えたお蔭で、大体ですが自分のマナの量がわかるようになりましたので、以前のようにマナ切れで倒れるとことだけは無くなりました。

 使いたい魔法などを意識すると何回使えるか分かるという優れものです!

 ちょっと、この『アシッド・ブラスト』を意識してみると……はぁ?

 この魔法は、2回しか使えないのですか……マナを籠めたら1回で、倒れるかも知れませんね。

 取り敢えず、使ったらすぐにマナポーションを飲む事にして、使ってみましょう。


「ちょっと試したい魔法があります。片方の列はセリスの魔法を最大でお願いします。もう片方は私が担当しますが、効果が無い場合は撤退します。シズクは絶対に突撃はしてはいけませんよ?」


「了解致しましたが、私は的の大きいゴーレムの列で宜しいのですか?」


「うん、お願いねー」


「分かりましたが、お姉様はどんな魔法を使うのですか!」


「まあ、初めて使うので見てのお楽しみでー。もしかしたらショボいかも知れないからねー」


 さあ、付属していた詠唱を付けて使ってみましょう。


「我は求める 大地の力よ 我が前に立ち塞がる者に破壊の力を示せ アシッド・ブラスト!」


 うん、すごくごっそりとマナが持って行かれましたよ。

 いま、簡単な魔法を使ったら確実に倒れます!

 私の言葉と同時に砂嵐が巻き起こっていますが……もしかしてそれだけ?

 セリスの方は何体か倒せているみたいなんですが、私の方は全て動き出してこっちに来ますけど!

 これは、まずい!

 もしかして、目潰しとか攪乱に使うのだとしたら……ハズレの魔法ですよ!

 恐ろしくマナを消費したのに使えないですね。

 撤退を指示しょうと思ったら、何か動きがえらく遅いです?

 よーく見てみると……。

 近付いてくる時には、形が溶けているというか崩れまくっています!

 砂嵐が収まったら、半分以上崩れていた敵が爆散しました!

 ちょっと……これを生物に使ったらものすごくエグイのでは?

 爆散しないで、残っている敵も形が残っているだけで、もはや戦闘能力が皆無ですね……またもや普通に使えない魔法です!

 威力は申し分無いのですが恐ろしいですね。


「お姉様……もう突撃しても良いのでしょうか?」


「セリスの方の残りにも影響が有ったみたい。後はボスだけみたいなので、多分、良いと思うよ……」


 いつもなら、即突撃していくのに躊躇してますねー。


「砂嵐が収まっているから、大丈夫と思うのですが……ちょっと私も怖くて進みにくいのです……」


「シノア様、いまの魔法だけで全て倒せたと思いますが、恐ろしい魔法ですね……生物だったらと思うと……」


「私もこんな魔法とは知らなかったから……対人とかに使えないですよね?」


「お姉様……こんなのもらったら悲惨過ぎるのですが。ボスにも届いていたみたいで、こっちに向かってきてる様子が何か某アニメの巨人みたいです」


「もうちょっと、近づくまで待ちましょうか……」


 大型で腕が4本もあるので苦戦するかと思っていたのですが、片側の2本は崩れてしまって、片足を引きずりながら向かってきます。何か哀れですね。

 ようやくラインの所まできたので、攻撃を開始しましたが。

 強度が雑魚のゴーレムより落ちているので、攻撃がばんばん通ります!

 私とシズクで滅多切りにして、セリスは『ホーリー・アロー』の魔法で攻撃してたら、その内に動かなくなりました。何となく、無抵抗の相手をボコボコにした気分です。


「お姉様、なんかボスを倒したのに全然達成感がありません……」


「取り巻きも追加で沸きませんでしたから、あっけなかったですね」


「うん。まあ、41階層にだけ行って帰ろうかー」


 これで良いのかと思うぐらいあっけなかったですね。


「しばらくは、エルナ達のサポートをしながら、2人を強くするので、41階層に来る頃にはもっと安定したパーティーになるはずです」


 36階層からは、ちょっと厳しかったからね。

 やっぱりメンバーは居た方が良いです。


「お姉様……私では、力不足なのですか?」


「シズクは強いけど、38階層でボコボコにされたの忘れたの?」


「あれは、ちょっと油断しただけです!」


「そうゆうことは、手足を折られて泣かなくなったら、言って下さいねー」


 一度、突撃したら魔法をもらって、吹き飛ばされた時にさらに殴られて、手足が折れて動けなくなりましたからね。

 何とか倒して駆けつけたら大泣きしてたのは、油断で済むレベルではありませんね。

 魔法で、シズクの周りの敵を先に倒してなかったら、この娘は死んでましたよ。


「二度とあんな醜態は晒しません!」


「そうならない為にもレベルの底上げはやっぱり必要ですねー」


「私もこの手の敵には魔法しか通用しませんので、もっと鍛えたいと思います」


「セリスは二人のことを思うと回復系の魔法に専念する事になると思うよ。私には使えないから多分中級だと思うけど、身体強化の支援系の魔法があると思う。使える?」


「私には、回復系と盾系の魔法しか使えません」


「私の知識の中にはセリスにも使える魔法があるんだけど。セリスの固有能力に私の加護や主従の譲渡なんて物があるんだから、教えられないかな?」


「セリスお姉さんには、お姉様の加護があるのですか?」


 あー、そう言えば、私やセリスのことは言って無かったですね。

 シズクには教えても良いかな。

 ボスもなんかあっけなく終わったので、時間もあるしね。


「ちょっと、シズクには私達のことを教えておくねー。私達はね……」


 飲み込みが早いというか、「お姉様達は、そうゆう設定なのですね! 私もお姉様に認められたら、ぜひ眷属にして下さい!」とか、言っているんですが……分かっているのかな?


「あのね、人間を辞めてしまうのですよ? シズクだって、将来は色々としたいことが出来たら、後悔するよ? それに成長も止まってしまうからね」


「お姉様! 私は素晴らしいことだと思うのですが!」


「セリスの時はノアが勝手にしてしまったのです。状況も状況だったので、仕方ないんだけど?」


「分かりました! 今度、ノアさんに会ったらお願いしてみます!」


 ダメです……良いようにしか取ってくれません!


「シズク、多分ダメだと思いますよ。私もあの時は誓約魔術で奴隷の状態だったのですが、貴女の場合は誓約魔術で支配したのですから、いずれ解放するつもりだったと思います」


「うーん……わかりました! とにかく、ノアさん会ったら聞いてみます!」


 ノアを出す条件を教えていませんが、これは絶対に死ねなくなりましたね。

 取り敢えず、セリスに能力についてわからないか聞いてみましょう。


「それで、セリスは能力についてわからないかな? 私には無いので、調べることが出来ないのですよー」


「シノア様から、力を受けとることが出来るとしかわかりませんが、以前、側に居てもらうだけでマナが分けてもらえたので、お互いにマナを分け合う能力ではないでしょうか?」


「以前……そうだ! ちょっと教えたい魔法を思い浮かべるから、私とキスしましょう!」


「えっ!?」


「キスですか! お姉様達はそういう関係だったのですね! ちょっとドキドキします!」


 シズクは何やら興奮していますが……何を期待しているのでしょうか?


「待って下さい!」


 なんか抵抗していますが、私の意志が優先されているので、されるがままです。

 伝えたい魔法をそのまま思い浮かべながら、キスしてみました!

 こういうことをするとすごく身近に感じるのか、私の一部と繋がった感じがするんですよね。

 しばらくして離すと、真っ赤になりながら「お、覚えれました……この3つですね」

 シズクも赤くなりながらも、「私のファーストキスもいずれお姉様に……憧れます!」とか言ってますが、この娘は向こうで言う百合とか言うのでしょうか?

 セリスは、シズクに向かって『ブレッシング!』『 ストライキング!』『 プロテクション!』


「これは? すごく力が沸いてきます!」


 シズクの体に薄っすらとオーラのような物が見えます。

 刀を抜いてみると刀身がマナに覆われて光ってます。

 この3つの魔法は聖魔術なのですが、私には使えないのですよね。

 一定時間の間だけ、身体強化と武器の威力アップとダメージ軽減の効果があります。

 これで、何か有っても多少のレベルの差は埋められるはずです。

 シズクが常にかけて欲しいと言ってますが、普段からこれに頼っていたら、セリスが不在の時に行き詰ってしまいますよ。

 なので、ボス戦とか敵の数が多い時だけにしますが、後はセリスの判断にお任せで良いかと思います。

 シズクは、「この魔法があれば、ゴーレムなんて余裕ですね!」とか、もう調子に乗ってますよ。

 何はともあれ、無事41階層までは到着しましたよ。



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[一言] 「そんなに痛いのですか? どなん具合に痛いのかを教えてくれたら、今回は止めてあげますよ?」 どなん→どんなではないかと 「シノア様から、力を受けるがこと出来るとしかわかりませんが、以前、側…
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