16 お酒は偉大です
学園では、みんなと勉強?しながら、楽しく過ごしていますので、夜はダンジョンがメインとなってます。
みんなが眠ってからなので、深夜しか行けませんが、他の冒険者もほとんど居ないので、探索は捗ります。
受付やお店は閉まってますが、入り口だけはずっと開放されてますので、いつでも入れます……でも、ガラの悪い人達も居るので、たまにうざいです。
アイテムなんかは昼間にセリスに買ってもらってますので、用意はばっちしです!
今回はちゃんと帰還の宝珠も買ってあるので、無理はしないようにします。
11階層なのですが、ここは昆虫系の魔物になってますね。
セリスはちょっと気分がすぐれないようですが、どうしたのでしょう?
「セリス、もしかして調子でも悪いの?」
「いえ、大丈夫ですので気にしないで下さい」
「なら良いのですが、何か気になることが有ったら言ってね」
「はい、大丈夫です」
先ほどから、大丈夫ですしか言わないのですが?
私達はマナ切れ以外は体調とか常に変わらないので、病気とか毒すら効かない利点があるのですが?
唯一の弱点は痛みに対してだけで、受けた怪我が治らない限りはその激痛が続くという悪夢なのですが……。
もしかして、蟲が苦手なのかな?
そう言えばいつもなら接近戦で戦うのに遠距離攻撃の投擲の方が多いですね。
もう少し様子を見てみますか。
しかし、蟻も同じぐらいの大きさになると脅威ですね。
関節などの節目を狙わないと、毎回バルディッシュに多めのマナを込めていたら消費が大きいです。
一度、油断して噛まれたら、久しぶりに腕を噛み切られましたよ!
最近は、大きな怪我をしてなかったのに泣きそうでした……。
こいつらは大して強く無いのですが、地味に連携をして攻撃をしてくるのです。一匹に掛かりっきりになると、知らない間に背後とか囲まれているので、余り時間を掛けれないのです。
どうもセリスの動きがキレが無いというか精彩を欠く感じなのです。
今の戦闘でも、ちょっと怪我が多いみたいなので、これはいけませんね。
「セリス、今日はちょっと早いですが帰りましょう」
「どうなされたのですか?」
「ちょっと、セリスに聞きたいことがありますので、落ち着いた所に行きたいのです」
「私にですか? 戦闘でしたら……大丈夫ですよ……」
はい、何が聞きたいのか分かっていることを、もう自分で暴露してますよ。
絶対に蟲が苦手なんですね……。
最近は完璧なメイドさんをしていましたから、丁度良いので追及しましょう。
「取り敢えず、このままでは良くないので帰ります。良いですね?」
「はい……わかりました……」
何か私が責めているみたいなんですが!
なんというか……あの変態に怒鳴られてる時みたいになってますね……。
話をしている内に新手が来ましたが、これだけ倒して戻りますか。
「新手なので、これだけ倒したら必ず帰りますね」
「はい……ひっ!」
はい?
セリスが変な声を出すの初めて聞きましたが何が来たのかな?
ふむふむ、蟻じゃないですね。
でかい芋虫というか幼虫みたいなのが来ましたよ。
ちょっと気持ち悪いですね。
動きは遅いので楽勝と思いますが。
あっ!
セリスが固まってます!
しかも、震えているのですが!
これは……うん、もう戦えそうもありません。
ちょっと泣きそうなぐらい耐えている感じですよ。
早く消した方が良いみたいなので、魔法で焼き払いましょう!
「我は呼ぶ 灼熱の炎よ 我が敵を包め フレイム・ストーム!」
詠唱付きでマナを意識して込めましたので、中々の火力です。
どんな攻撃をしてくるのかは、次回に見るとして今回はこれで、おっけいです。
倒したら、見るからに涙目になってますが、安心してますね。
「さあ、セリス。帰りますからね」
「はい……」
これは……もう重症ですね。
帰還の宝珠で戻って、早目にお屋敷に戻ったのは良いのですが、どこでお話をしょうかな?
こんな時間ですし……そうだ!
ギムさんの工房なら、部屋も余っているし、どうせまだ飲んでるか酔いつぶれているかのどちらかのはずです。
そう予測して、行ってみるとやっぱり飲んだくれて寝ています。
ちょっと奥の部屋を拝借して、聞きたいのですが、話してくれるかな。
出来れば命令はしたくないので、話したくない時は15階層まで私が単独で突破するつもりです。
「私が何を聞きたいのかは分かるよね?」
「分かっていますが……あまり話したくはないのですが……」
「そうですか。では15階層までは私一人で行くので、ちょっとそれまでは留守番をしてて下さいね」
「待って下さい! 私なら大丈夫ですので、どうかお供にお連れ下さい!」
「この際はっきりと言いますけど、セリスは蟲とゆうか昆虫系は苦手なのですよね?」
「苦手というよりは……」
「特に最後の幼虫みたいなのには、完全にアウトでしたよね?」
「あ……ぅ……」
ちょっと、セリスがなんか、かわいいのですが!
何となくいじめたくなってきましたよ。
「先ほどは見苦しい所を見せてしまいましたが、次からは大丈夫なので……」
「いいえ、ダメですね」
「しかし……」
「理由が分からない以上は同じことになるのは目に見えています」
「……」
「私はこんなことで命令はしたくないので、無理矢理に聞こうとは思いません。セリスから話したくないのであれば無理強いはしません」
黙って俯いてしまいましたよ。
まさかこんなことで気まずい思いをすることになるとは……。
「3年ほど前です、私が奴隷に落ちてしばらくしてからなのですが……」
セリスが話し始めましたので、取り敢えず話せる範囲だけ聞いてみましょう。
「元々は、自分たちの都合の良い聖魔術の使い手が欲しかったので、私を回復用の奴隷にしたようですが、当初は逆らってばかりでした」
「そもそも、誓約魔術で縛られると、どのようになるのですか?」
「どんな命令にも従いたくなる様になり、自ら死ぬことも出来ません。命令に逆らおうとしたり、主に害をなそうとすると胸が苦しくなります……丁度令呪が心臓の辺りにあるので締め付けられる感じです」
「きっと、その令呪が心臓と繋がっているのでしょうね」
「私も最初の頃は、誓約に縛られながらも反抗はしていたのですが……彼の仲間には蟲使いが居て……彼女に執拗に拷問を受けたのです」
「蟲使い?」
「蟲を使い魔にして操る職業があるのですが、私を動けない状態にして、徹底的に蟲に蹂躙させていたのです」
何それ?
私も昔に森で蜘蛛の魔物に捕まって、その子供に体のあちこちから喰い付かれて餌になった事があります。
一思いに頭から食べてくれればいいのに、手足から少しづつ食べられた時は最悪でしたよ。
「狭い個室に大量の蟲と一緒に閉じ込められて、ありとあらゆる方法で責められました……特に幼虫のタイプには卵とかも植え付けられたりして……そんな事をしばらく受けたら、もう逆らう気力も無くなってしまって……後は言われたことを素直に聞く状態になっていたのです」
それはちょっと酷すぎますね……普通に考えてもかなりのトラウマになってしまいますよね。
「私の体の中に常に幼虫のような物が居たので、私が少しでも逆らったりするとわかるように体内で活動するのです」
「ちょっと、その蟲使いとやらはどこに居るのですか? 許せませんので消してしまいましょう!」
「いえ、あの時にシノア様が殺してしまったので、もう居ませんが……私の事は軽蔑しないのですか?」
「どうして、軽蔑しなければいけないのですか?」
そんなことを言ったら、私なんて、ただのモルモットでしたよ?
「私は、汚れ切っています……あの町で私を知っている者はどんなことでもする奴隷以下と思っているはずです……して無いことを探す方が難しいぐらいです……」
「セリス、貴女は私の大事な身内なのですから、そんなことを言う者が居たら決して許しませんよ!」
「私は、あの惨めな生活から救い上げてもらって、浮かれていたのです……心に、こんな欠陥があること忘れていました……シノア様の従者失格です」
「いくらセリスでも自分を貶めることをいうことは許しませんよ? 二度と言ってはなりません!」
「私は……」
「私はセリスのことが好きですよ? それではいけませんか?」
「あ、ありがとうございます……私も嬉しいです……」
「私も過去はろくでもないので、もう過去のことは忘れましょう」
セリスは、そのまま私の胸で泣いてます……こんな時なのですが、可愛いと思ってしまったのは内緒です。
背中を摩りながらこれからのことを考えると、慣れて……克服してもらいたいのですが……とてもそんなことは言えません。
より詳しい事を聞くわけにはいきませんが、相当な酷い目に遭ったのでしょうね。
慣れるのはちょっと不可能と思いますので……克服させると言ってもどうやってすれば……。
私だったら、食材にして食べてしまうとか……蟲を食べる……美味しいのでしょうか?
蟻とか堅そうだし、芋虫というかあの幼虫を……煮込んで……何となく気持ち悪そうですから、ダメです。
まったく美味しいイメージが沸きません!
むしろ私まで、不味かったらトラウマになりそうです!
そんなことを考えていたら不意に声が掛かりました。
「カフェテリアで、会った奴に頼めば記憶をいじれるんじゃなかったか?」
「えっ!?」
「済まん。聞くつもりは無かったんだが……動くに動けなくて聞いてしまったんだ……寝たふりをしてようかと思ったんだが、ついな……済まんな」
「ギムさん、このお話はご内密にお願いしますよ」
「御見苦しい所を……申し訳ありません」
「勿論、分かっているよ。嬢ちゃんも今までよく頑張ったな」
ギムさんの言葉を聞いたら、また泣いてしまいましたね。
きっと、いまの彼女が本来の姿なのでしょうね。
そして、ギムさんに提案してもらったように、エレーンさんに頼めば何とかなるかも知れませんね。
問題は、エレーンさんが手助けしてくれるかですね。
ギムさんには有ったことを色々と相談していたので、記憶を消す技能も話したことがありました。そんなのは聞いたことがないがありなんだろうな……と思っていたそうです。
取り敢えず駄目元でで相談をして見るだけしてみましょう。
「学園から帰ったら、ちょっとエレーンさんに相談してみますか」
「わしも行っても良いか? ちょっと会ってみたいんだが」
「構わないと思います。ギムさんの存在も知っていたようなので、もしかしたらですが……今も見ているのかも知れません」
「そうなのか? なら、いま呼んでもダメなのか?」
「エレーンさんにお願いするには対価が必要なのですよ……しかも、珍しい食材限定なのです」
「ふむ……なら、わしが何か考えておこう」
「何か良い物がありますか? 大抵の物は全て食しているとのことなので……用意出来ない私は、何も聞けないのですよ」
大体、エルナ達と出会う前まで世間のことも何も知らなかった私に用意させることは厳しすぎますよ!
「甘い物に目が無いみたいでしたが、ギムさんはそっちの方面も嗜む方なのですか?」
「わしは、酒とつまみしか知らんな」
期待が薄そうです……。
「だかな、シノアと同じだとしたら、酒もかなり行ける口と思うぞ。お前、この前にわしのとっておきを美味しいと言って1本飲んでしまったではないか」
「あれですか、なんかすごく美味しかったのですよねー。もっと飲みたいのですがどこにも売ってないのですよ」
「あれは、その辺では販売してないからな。とにかく何か用意はしておくので、今日はそのままこの部屋でもう寝るといい、わしはもう少し飲んでから眠るとする」
「じゃ、今日はこのままセリスと寝ましょうね。エルナが起きる前には戻るけど、このまま1人にはさせられないしね」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、いまはご一緒させて頂きます。言ってなかったのですが私はシノア様の近くにいると心が落ち着くのです」
「そうだったのですか、今度からはなるべく近くに居るようにしましょうね」
翌日、授業が終わってから3人でカフェに行くと居ましたよ。
テーブルの上さえ見なければ、優雅にお茶を嗜む御令嬢に見えるのですが……残念です。
私がそんなことを考えていると、こちらに来るように手招きをしています。
こんにちはーと声を掛けながら近づくと、いきなり立ち上がって、私の頬をつねって、足が着くぎりぎりまで持ち上げられてます!
「おねぇひゃん! 痛いでひゅ!」
「シノアちゃん、何か失礼なことを考えていましたね?」
何故ばれたのでしょう!
確か、読心術は無かったと言っていたのに!
しかも、つねられているだけなのにすごく痛いです!
まだ手足を斬られた方がましなレベルです!
どうして!
「私は、心は読めませんが感情は読み取れるのですよ? シノアちゃんなら、分かるよね?」
なんということでしょう……私は、確かに相手の感情を何となく感じられるのですが、エレーンさんのことはわからないのに……向こうは私のことがわかるようです!
「ごめんなひゃい!」
「まあ、思った程度なので、このぐらいで許してあげますね」
やっと放してくれましたがまだ痛いです……ちょっと涙目になってますよ。
「お姉ちゃん、凄く痛かったのです……」
「当然ですよ? シノアちゃんは痛みに慣れていそうだから、肉体と一緒に霊体を直接お仕置きしてあげたんだからね」
何それ!
そんな攻撃方法が存在するのですか!
ちょっと聞きたいです!
「どうやってそんなことが出来るんですか?」
「はぁ……シノアちゃん、何でも聞けば教えてくれると思っていたら大間違いですし、今日は違うことを聞きに来たんでしょ?」
そうでした、いまはセリスのことが重要です。
「初めましてと言いたいんだか……あんたとはどこかで会ってないか?」
「さあ? どうなんでしょうね?」
「いや……あんたはあの時に助けてくれた人だな」
「えっ! エレーンさんが助っ人の方なのですか?」
「そんなことは忘れましたから。今日は他の用事なのでしょ? ないなら、帰りますよ? 伝票はもうシノアちゃんに付けてあるので、ここに支払いに来ただけになってしまいますよ?」
ちょっと!
また私に付けられてますよ!
早く本題を言わないとまた転移して居なくなってしまうから、本当に支払いだけになってしまいます!
「もう単刀直入に聞きます! セリスの精神的なことをお姉ちゃんの力で何とか出来ないでしょうか?」
「どうして私に出来ると思ったの?」
「前に記憶がいじれると言ってましたよね?」
「出来るけど、その子はね……あと大事な物が捧げられていませんね?」
そう言って手を差し出してます……。
私はギムさんの方を見てお願いしますと頼んだら……。
「まあ、取り敢えずあんたは酒も行ける口だよな?」
結局、酒ですか!
駄目だったらどうするんですか……。
「私は美味しい物なら、何でも行けます。ただ、お酒に関してもその辺で手に入る物では満足しませんよ?」
お酒も好きで良かった……だけどかなりの物じゃないとダメと言ってますが……。
「わしの秘蔵の一つだがこの『魔王殺し』で、どうだ?」
何か凄そうな名前ですね。
「それ、欲しいです! ずっと探していたのですよ!」
おおっ!
素晴らしい喰い付きです!
あれは、そんなに凄い物なのでしょうか?
「ふむ、これがわかるとは、あんたはかなりの通と見たが……そうか! だからダンジョンに居たんだな?」
「何のことだかわかりませんがそれを私にくれるのですよね?」
エレーンさんがあんなに必死になっている所は初めて見ましたよ。
ちょろいと思っていたのに、あの後からはまったくそぶりも見せなかったのに……。
「まあ、あんたにならあげても良いんだが、これでいくつ答えてくれるんだ? 色々と物知りみたいだが取り敢えずわしとは会っていることは認めるな?」
「うっ……仕方ありません。それは認めます。ですが答えるのは1人につき1回までですよ」
「もう少しと言いたいが、あんたにこれが通用するなら、わしにも当てがあるから何とかなりそうだしな」
そう言って酒瓶を渡すと早速味見してますよ。
「うん、これです! かなり籠っていたのですが出なくて諦めていたのですよね」
「それ、そんなにすごいのですか?」
ダンジョンのドロップアイテムなのでしょうか?
「この酒はな……実は度数80も有って、わしにもきついんだよ」
「えっ! それ普通は飲めるのですか?」
「もはや酒というよりは高純度のマナの塊見たいな物だな」
私が飲んだらどうなるのかな?
ちょっとだけ飲んでみたいです。
「昔、ある魔王に献上されて、酔って判断が鈍った所を倒されたのが名前の由来らしいが……神や魔王さえも酔うと言われている代物だ」
「そんなことで、倒される魔王とかアホですね。お姉ちゃん、ちょっとだけ私も飲みたいなー」
「ダメです。まあ、ちょっと気分が良いので香りだけ味わあせてあげます」
そう言ってちょっと香りを嗅いでみましたが……すごく飲んでみたくなってきました!
きっと、私にとってはマナの変換効率が良いのでしょうね。
私があんなに激甘の高カロリーの物を食べたり、度数の高いお酒を飲むのは、マナの変換率が高いからなのです。
「それで、何が聞きたいのかしら? 1人に付き一つだけ答えますよ?」
私のお願いは決まっています。
「セリスの記憶をいじれるのでしたら、嫌なことを忘れさせて欲しいのです。それが無理なら、心の負担を軽くする方法を教えて下さい」
「私は確かに人の記憶を少々ですがいじれます。そこのドワーフさんには忘却魔法を掛けておいたのに私のことを覚えていたのは驚きましたよ」
「なら、何とか出来るのでしょうか?」
「でも、残念ながら、その子に関しては私は一切の権限を持っていないので、不可能です」
「権限?」
「そうです、その子に関してはシノアちゃんしか関与出来ないので、むしろシノアちゃんなら、可能なのです」
私になら可能?
権限とは?
そうなると私は初めからその手段を持っていることになりますね。
そうなると方法は?
「では、その方法を教えて下さい」
「現時点では、向こうのシノアちゃんなら、調整が可能ですね」
「そうなると……一度、私が死んで入れ替われば良いのですね?」
「うーん……確かにそうなんだけど、もうお勧め出来ないかも知れません」
不死なのに死ぬのがまずいというのはどうしてなのでしょう?
これを聞いても、もう答えてくれないから、とにかく方法を聞く方針で聞きださないといけません。
「仕方ないですね……自分で死んで呼び出すのは流石にあの子も怒るだろうから、これをあげます」
そう言って小瓶をくれましたがこれは?
「それを飲むと1日だけ仮死状態になれます。なので、その間に解決してもらうようにしてね。これの対価の代わりに眷属の子の質問権とします」
ふむふむ、これを飲むと仮に死んだ状態になるので、入れ替わることが出来るということなのですね。
しかし……1日ですか。
向こうの私がどうやって解決するのか分かりませんが、時間が掛かることなのかも知れませんね。
こんな薬まであるなんて、世の中には色々な物がありますね。
2日後は学園がお休みなので、明後日に帰ったら試しますか。
ちなみに学園には8日通って、1日お休みになってます。
「それで、ドワーフさんは何か聞きたいですか? 答えられる範囲でしたら、答えますよ?」
「わしのことはギムと呼んでくれ。シノアのことも聞きたいんじゃが、あの時にあんたが使っていた剣を見させてはくれないだろうか?」
「私もエレーンで良いですよ。どうもギムさんには私の魔術の掛かりが悪いみたいなので、もう無理だと思いますから。これのことですか?」
そう言って一振りの大剣を出しました。
前に私が見たのと違いますね。
今回のは見てるだけで何か大きな力を感じます……まるで生きているような感覚が感じられます。
「そう、それじゃ!」
「はい、どうぞ」
ギムさんは受け取ると凄く真剣に調べてますね。
あの酔っ払いはどこにいったのでしょう?
「わしが知る限り最高の剣だ……まったくわからんがこの剣はエレーンが作ったのか?」
「それは、私の古いドワーフの友達が自分の全てをかけて作った物です……私の大事な最初の友達がね……」
「これを作ったのは、エルダー・ドワーフなのか?」
「あの娘は確かにエルダー・ドワーフと呼ばれる種族だったですね……その剣にはあの娘の魂が宿っているから、いつまでも共にあります」
エレーンさんが遠い目をしてますよ。
きっと、とても大事な方だったのですね。
最初の友達と言ってましたし、遥か昔に滅ぼされた種族と聞いてますが、エレーンさんはいつからここにいるのでしょう?
「素晴らしい物を見させてくれて、ありがとうな。質問が増えてしまうのじゃが、シノアにも作れるようになるのか?」
「私の友達を褒めてくれたギムさんにはサービスで答えますが、不可能では無いとだけ答えておきます」
「そうか、それだけ聞ければ満足だ」
「私は、てっきりもっと具体的な方法を聞いてくると思ってましたよ?」
「可能性があると分かれば、それを探すのも楽しみという物ではないのか? それに答えばかり聞いてしまっては、自ら前に進んだとは言えないと思うがな」
はぅ……答えばかり聞いている私には、ギムさんの言葉はまぶしいのですが……。
「シノアちゃん! 聞きましたか? どこかの言葉巧みに聞き出そうとする人とは大違いですよ!」
「一体、誰のことなのでしょうね……」
ギムさんのせいで、私の評価が一気に落とされてしまいました!
隙あらば何とか色々と聞き出したいのに……今後は難しくなりそうですが、ギムさんに貢がせれば何とかなるので良いかな。
「言っておきますが、シノアちゃんの質問はシノアちゃんが献上しないと答えませんからね!」
「えっ――――!」
「いま、ギムさんを利用して色々と聞き出そうと思っていたでしょ?」
こういう時だけ鋭いのですよね。
「そんなことはないよ……」
「さっきから動揺しているのがばればれなので、当たっているみたいですね。どうしてこんな悪知恵が働く子になってしまったのかしら……」
悪知恵とか、言われてますよ!
駆け引きと言って欲しいのですが!
「まあ、子供なんだから、そのぐらいにしてやってくれや。聞いた所によるとおまえさんの妹になるんだろう?」
「以前、ちょっと狡賢いことをしたので……仕方ありませんね。今回はこの辺でお開きとしましょう」
ギムさんのお蔭でこれ以上は言われなくても済みそうですが……元々の原因はギムさんなんですが!
「それじゃ、後は宜しくねー」
そう言って転移して行きましたよ……気が付けばちゃっかり全て食べ終わって、伝票だけが残ってます……別に良いんですが、世間の姉というのは妹に奢らせるのが普通なのでしょうか?
本当にお金を持っているのか疑いたくなってきましたよ。




