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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
終章 それからのふたり

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56. 希望の花

 レゼフィーヌがあきれていると、部屋にノックの音が響いた。


「シルム殿下、レゼフィーヌ様、お客様がいらっしゃいましたよ」


 アレクの声だ。


「ああ。通してくれ」


 シルムが返事をすると、ゆっくりとドアが開いてアレクとエマ婦人が入ってきた。


「エマおばさま!」


 レゼフィーヌが目を輝かせて立ち上がる。


 レゼフィーヌとエマ婦人が会うのは数か月ぶりだった。


「まあまあ、レゼ、元気にしていたかい」


「ええ。でもおば様が居なくて寂しかったわ」


 エマ婦人と抱擁を交わしたあとで、レゼフィーヌは改まって尋ねた。


「でも今日はどうしてここに?」


「レゼフィーヌ、実は私、セント・ローズ魔法学園で教鞭をとることにしたのよ」


 エマ婦人が笑顔で答える。


「そうなの? じゃあ、いばら城にはもう住まないの?」


 レゼフィーヌの問いに、エマ婦人は笑顔で首を横に振る。


「いえ、あの城には転移の魔法陣を張っていつでも帰れるようにしてあるよ。だから平日に学園で教鞭をとって休日にはゆっくり城で過ごす暮らしにしようと思っているんだ」


「素敵、別荘みたいだわ!」


「別荘なんて贅沢なものじゃないさ。第二の家といったところだね。だからレゼ、お前もいつでも帰ってきていいんだよ」


「ありがとう、おばさま」


 固く抱擁を交わすレゼフィーヌとエマ婦人を、シルムとアレクも優しいまなざしで見つめた。


 四人で懐かしい話をいくつかした後で、レゼフィーヌたちは、出来上がったばかりの新しい魔法学校の見学に出かけた。


「わあ、大きな建物だねえ」


 エマ婦人が魔法学園の建物を見て見てため息を漏らす。


 目の前の巨大な神殿を思わせる白亜の建物はエマ婦人が今までに見たどの建物よりも荘厳で立派だった。


 さすがはセレスト国の威信をかけて建設した魔法学園だけある。


 これからこの学園は、何人もの素晴らしい魔導士や魔女を排出していくに違いない。


「見て、おばさま。庭も素敵でしょ?」


 学園の前面にある芝生の広がる庭には、美しい薔薇の花が植えられている。


 これはレゼフィーヌの指示で植えたものだ。


 見た目に美しいだけでなく、いざという時の防犯装置の役目も果たしている。


「ここで初等部から大学院まで幅広い年齢の人たちが学び、一流の魔法使いたちが研究することになるのね」


 レゼフィーヌがうっとりとつぶやく


 その目には、芝生でくつろぐ学生たちの姿がありありと浮かぶようだった。


 エマ婦人はそんなレゼフィーヌの姿を見て、懐かしい気持ちにかられた。


 初めてエマ婦人の城に来た時も、レゼフィーヌはこんな風だった。胸にいつも夢や希望を抱いていて、好奇心に目がキラキラと輝いていた。


 あの頃とレゼフィーヌはちっとも変っていない。


「そっか。それがあんたの次の夢なんだね」


 エマ婦人が笑う。


 レゼフィーヌはとびきりの笑顔でうなずいた。


「ええ」


 キラキラと差し込むまぶしい太陽の光が薄桃色の薔薇の花びらを照らす。


 魔女になるという夢を叶えたレゼフィーヌの、新たな夢がそこには広がっていた。


 例え王妃になっても学園の理事長になっても、レゼフィーヌが立ち止まることはない。


 その胸に夢と希望の花が咲く限り、レゼフィーヌの冒険は終わらないのだ。




【完】




 



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