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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第三章 いばら森の来客

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25.アレクと魔女

「――アレク……さん」


 レゼフィーヌは顔を上げた。


 (一体何の用だろう?)


 レゼフィーヌが身構えていると、アレクがゆっくりと口を開いた。


「レゼフィーヌ嬢、そんなところでどうなさったのですか?」


 口調は丁寧だが、その表情は険しく、黒い瞳は冷たい光を放っている。


 (この人……シルムの従者よね。どうも表情が読めないわ)


 レゼフィーヌは警戒しつつも、完璧な令嬢スマイルを浮かべ、丁寧に頭を下げた。


「いえ、なんでもありませんわ。それでは私はこれで失礼します」


 レゼフィーヌはすました顔を作ってその場を去ろうとした。


「待ってください」


 アレクはレゼフィーヌの逃げ道をふさぐように後ろの壁にドンと手をついた。


 アレクと壁に挟まれるような形になってしまったレゼフィーヌは思わず目を見開く。


「っ……」


 レゼフィーヌは女性としては背が高いほうであるが、アレクはそんなレゼフィーヌでも見上げなくてはいけないほど大きい。


 しかもアレクは顔立ちは整っているものの、普通の女性ならば身震いしてしまうほど鋭い眼つきをしている。


「何ですか」


 レゼフィーヌは心臓が掴まれたような気持になりながらも果敢にアレクを睨み返した。


 レゼフィーヌが身構えていると、アレクはレゼフィーヌに顔を近づけ、耳元で低く囁いた。


「あなたがどういうつもりかは分かりませんが、殿下を傷つけるようなことは私が許しませんからそのおつもりで」


 ――傷つける? 自分が?


 レゼフィーヌは信じられない気持ちでアレクの言葉を受け止めた。


 森で穏やかに暮らしていたレゼフィーヌの心にいきなり踏み入ってきてかき乱しているのはシルムのほうなのに、なぜ自分がそんなことを言われなくてはいけないのか。


 レゼフィーヌの心の中に怒りの炎がめらめらと燃え盛る。


 レゼフィーヌは意志の強い双眸でアレクを睨み返すと、フンと鼻を鳴らした。


「それならご心配なく。そのようなことを言われずとも、私は何もしませんし、殿下にはそのまま帰っていただきますわ」


 レゼフィーヌは力強い声で言い返すと、小さく腕を振った。


 壁についていたアレクの手が、魔法によって勝手に逆方向へ折れ曲がる。


「のわっ!?」


 アレクが焦っていると、レゼフィーヌはアレクの腕の中から脱出し、余裕の笑みを浮かべた。


「それと、レディーにそのような扱いをするのはマナー違反ですわよ。以後お気を付けくださいませ」


 レゼフィーヌはにっこりと笑うと、軽やかな足取りで自分の部屋へと戻っていった。



***


 アレクが去って行くレゼフィーヌの後ろ姿を見送っていると、キィと小さな音がして部屋のドアがゆっくりと開いた。


「ア~レ~ク~!」


 シルムが部屋からひょっこりと顔を出し、恨みがましそうな顔でアレクを見つめている。


「シ……シルム殿下」


 アレクが後ずさりをする。


 まさか二人でいたところをシルムに見られていたとは思ってもみなかった。


 シルムは腕組みをして部下に詰め寄った。


「僕の騎士が、どうして未来のお妃様を口説いているのかな?」


 シルムは顔は笑顔だし口調も優しいが、目が怖い。


 アレクは慌てて首を横に振った。


「誤解です。口説いてなどおりません。ただ少し、彼女の真意を確認したくて――」


 アレクが慌てて目をそらすと、シルムは不満そうな顔で「ふぅん」と言った。





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