第363話 次のお客様(ナメナイデ!?)
シャルルはふらふらと帰っていった。
ルルニエの扱いだがスーリの意図がわからないこともあって奴隷のまま対応することになった。お見合い大会には出ずに薬を作ってもらう。問題があればエルフの国からなにか言われるだろう。
私自身は全く疲れていないけど、そろそろ私が休まないと皆休みそうにない。
家臣は慌ただしくしているし、お菓子が足りなかったといえば屋敷から爆速で持ってきてくれたからね……シャルルは帰っちゃったけど。
仕方なく休もうと思ったのだけど……ミィアとエルストラさんとラズリーさんがやってきたので対応する。大人モード見せたもんなぁ。
「おめでとう!祝いだ!」
「ありがとうございます」
「しっかし、ちゃんと大人だな。身体は辛くねぇか?」
ミィアはぶっきらぼうだけどやはり優しい。
なにかにつけてお祝いをくれる。
名前を笑ったりすると喧嘩になるらしいけど、今のところ私はそういう部分を見たことはない。
「やっと痛み無く歩けるようになりました」
「痛みがあったのですか?!」
エルストラさんが飛びかかって来た。エルストラさんの前で言うことではなかった。
いつもよりも素早く、かつ丁寧に全身に触れられた。尻尾でもあるとでも思ったのか背中にお尻までわさわさと。くすぐったかったから両手首を掴んで止めたところに――――ラズリーが近づいてきて髪を退かして首筋をベロベロ舐めてきた。
「ひゃぁ?!だ、大丈夫ですって――――な、舐めないで!!」
「とても興味深い………味は普通……普通?いや、比較対象が足りない。ポヨ令嬢、舐めさせて」
「やめろ馬鹿が!!」
「うぐっ」
私を舐めてきたラズリーはミィアに向かっていって討伐された。ナイスミィア。
ロープで拘束されて転がされたラズリーの横で第二次お茶会が始まった。
ミィアとエルストラさんは大人モードの私を見て純粋に心配でここまで来たらしい。ラズリーはお礼を持っていくと連絡していたから取りに来たのだろう。もしくは大人モードを見て加護だか恩寵が気になったのかもしれない。
リュビリーナは大人モードの私を見て気絶したらしい。セルティーさんはそもそも仲が良くないから来ていない。
「これ、水精石の純度高めのものです。ユース老先生の分もあります」
「蓋を開けてくれたまえ。せめて臭気を観測したい」
ラズリーは拘束されているのに偉そうである。
変人とは思いつつも、スーリとの戦いで見直していたのにこれだ。
「はい」
それなりの重さのあるお礼の品をジュリオンに持ってきてもらった。
「偉そうにすんなボケッ!」
「うぅっ……痛い……、暴力は良くない」
「うるせぇ!舐めんな!!」
床に転がされてしばかれているラズリーの前に置き、開けて見せる。
火の精霊石のように巨大な爆発が起きるわけでもなく、土の精霊石のように丘が生まれるわけでもない。水の精霊石は水が出るだけなので比較すれば危険ではないように思える。
今回スーリとの戦いで手助けしてくれた人へのお礼に持ってきたのだけど、水精石は純度が高めのものを集めてもらった。
品質は中程度だけど、高純度・高品質の水精石は動かすのが怖い。
水精石自体がかなり珍しいものなのでそもそも市場に殆ど出回らない。そのため貴族にとってもかなり価値があるものとなる。リヴァイアスではその辺に落ちてることもあるのにね。
できる限り衝撃を与えないように慎重に、もう一箱開けて見せる。
軽い衝撃程度では問題ないはずだけど……学園での爆破は忘れてない。めちゃくちゃ吹っ飛んだからね…………そーっとそーっと……。
「爺の分は吾輩が届けよう。爺は王宮嫌いだからな」
「わかりました。お願いします」
ユース老先生にも直接渡したいが私も忙しいし精霊石は危険物に分類されるだろう。その点ラズリーはこういったものの取り扱う専門家だししっかり管理してくれるはず。
「婆やさんもありがとうございます。とても助かりました。これはお礼です」
「いえ、受け取れません。エィオース家の問題でもありました故」
ミィアの従者の筆頭格である婆やさん。彼女はエール先生を止めてくれた恩人だ。
スーリとの戦いの前にエール先生を完全に無力化できると手助けしてくれた。
「エィオース家?」
「はい。私めは風のエィオースの家の出……そしてエールもまた同じ系譜であります」
「エール先生が?」
エール先生は王都に戻って大人フリムのお披露目が終わってから情報収集に行っている。
本人にどういうことか聞きたいけどいないものは仕方がない。
「はい。風の名家で憎しみ合っている家同士で間でエールは産まれたため、エールには家名がありません。しかし間違いなくエィオースの問題です」
…………つまりこのお婆ちゃんは孫を止めるために戦闘に参加した。だけど家のことだからと褒美はいらないと。
でもここは……。
「じゃあミィア」
「おう」
「彼女を私の元によこしてくれたミィアにお礼です。水の精霊石を詰め合わせたものです。手助けしてくれた方々にはこれらをお渡ししています。ありがとうございます」
頭を下げて箱を渡す。
今度は問題なく受け取ってもらえた。
「役に立ったなら良かった。ただまぁ侯爵当主がそう簡単に頭を下げるなよ」
こういう物は普通家臣が渡すものであって当主が渡すようなことはない。
下級貴族が上級貴族に渡したりする場合は普通にあるが少なくとも侯爵当主である私がやすやすと頭を下げるものではないと教わっていた。
「いえ、エール先生は私にとって大切な人です。取り戻すことが出来たのは彼女の尽力の賜物ですから……そのためなら頭を下げることを厭いません」
素直に感謝している。
エール先生は私にとってなくてはならない人だ。シャルルを助けてからというもの私の傍でずっと支えてくれた……私にとって姉のような人。
「大切にしろよ」
「はいっ!」
明日……小説5巻発売日、胸がざわつく思いです。
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