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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第三章 ティアと母シェルリア
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    5話 出立と道中



「陛下、それでは行ってまいります。」

「あぁ、くれぐれも気をつけて。」


 月日が過ぎるのは早いもので、あっという間にファンベルツィアに向かう日になった。


 案の定テオドール大公は、私に父と母の話をしてくれた翌日から、一瞬も姿を現さなかった。


 ……これはたぶんの話だが、どこからか、彼が私に父たちの話をしたのがバレたため、父に直々にシメられたのであろう…。


 ご愁傷さま。



 今回は外交ということで、そこまで仰々しい隊列を組んで向かうわけではない。

 王族としての品位を保ちつつ、外交に相応しい馬車。

 最小限の護衛騎士たちと共に国境へ続く道を行く。



 王都を出た先には、農地やのどかな町並みが続く。その様子は整備が整っており、清潔感が感じられるものだ。



 実はここ……私の領地である。



 国王陛下直轄の領地である王都を、グルリと囲む形で存在する私の直轄の領地は、鉱石の産出から農業、漁業、林業まで盛んな豊かな土地である。


 7歳の誕生日にプレゼントされたこの領地は、最初こそ私が管理するなんて無理だ、と思ってはいたが、周りの手も借りつつ様々な政策を練っていった。

 直に領民の声を聞く機会はあまりとれていなかったが、領地管理者の者と連絡を取り合い、困ったことはすぐに解決できるようにしていた。

 のどかな景色が自分のしていたことが、間違ってはいなかったのだと感じ、嬉しく思った。



 我が領地を過ぎ去り、国境までに挟む領地も過ぎ去り、景色はあっという間に国境付近の森へと変わった。



「あら、お客様じゃない?」


 森の中に複数の気配を感じ、一人でポツリとつぶやいた。



 その時、ガタン!!と馬車が揺れた。


「あらあら…」


 バタバタと慌ただしい外の音に耳を傾ける。


「殿下!狼藉者です。馬車の中から出ないでください!」


 仕方ない、緊急事態だ。

 今日は大人しくしていろと出立する際にアルにも言われていた。


「まだかしら…」


 少し時間がかかっているようだ。

 天下のリゼアイリア騎士団がなんという体たらく。


「はぁ…。暇だわぁ〜」


 おや?外の音が止んだわね。


「殿下。お時間を取らせてしまい申し訳ありません。」


 外から声をかけられたため、こう返した。


「リゼアイリアに祝福を…」


 一応ね。まさかとは思うけど……


「………。」


 無言……。

 先程、私に声をかけた騎士と思わしき人物は私の言葉に何も答えなかった。 

 否、答えられなかったのだろう。

 

 なんせ彼は()()()()()のだから。



 私は、愛剣を手にし、馬車の扉を足で勢いよく開けた。


 目の前には倒れている騎士たちと、剣を構えている顔を隠した男たち。


 暗殺者……つまりはお客様だ。


「わたくしを襲おうなんていい度胸ね。」


「で…殿下……、」


 腕から血を流し、座り込んでいた騎士が微かに声を上げた。


「あなたは、ゆっくりしていなさい。……今寝てる奴らはよぉく覚えてなさいよ!回復したら訓練をつけてやるわ。まったく!!」


 それだけ言うと問答無用で覆面軍団に斬りかかる。


「私のことを誰だと思っているの?」


 ダンスのステップを踏むように…軽やかに、次々と首をかっていく。

 血を浴びることなど気にもとめず次々に仕留めていく。


 これが最後の一人…。


 タンッ!


「…さぁ、吐きなさい。誰の指示かしら?」


「あ、あ……あぅ…」


 怯えきった様子の男。


 まぁ、それもそうだろう。周りには今まで共にいた仲間たちの死骸が転がっているのだから。


「おい、お前。この私の騎士たちに手を出して、ただで済むと思うなよ?何か勘違いしていたようだな。この赤薔薇に楯突こうなんて。」


 ブルブルと震え、木のそばまでズリズリと下がっていった。


 ドスッ!


「さぁ、話しなさい」


 きっと今の私は真っ黒な笑みを浮かべているだろう。


 戦場を共にしたアルには、仇を取るときの私の笑みは人の恐怖を最高潮に高める死神の笑みだと例えられた。



「そ、それは………」





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