6話 セルフィジア(2)
ロズマリン王城 王太子第一執務室
「ご機嫌麗しゅう。王太子殿下。」
サラッサラの空色の髪を耳にかけ、膝まずいている私と変わらないくらいの歳のこの人は……。
「カルム・フィアルトア公子。お久しぶりですわね。」
私が声をかけると顔をあげ、濃紺の瞳を細め、ヘニャリと破顔した。
その顔は父上のテルにそっくりで、血の繋がりって怖いなぁ…と思う。
え!?怖いでしょ!?
だってあのうるさいテルが増殖するのよ!怖いわ!!
「本当に久しぶりだねぇ、ティア。僕がいなくて寂しかった?」
うわ、めっちゃ上からですよ!?この人!!
まぁ、そういう人なんですがぁ…。
「ふふふ、お戯れを。カルム、今日はどうされたの?まさか、顔を出しに来ただけではないのでしょう?」
そっちがその気なら私だってやってやる!!
王女様らしい上品さを装い、思考を巡らせる。
「ご名答。…だって、最近、面白いことないんだもん。ティアの周りは興味がつきないからねぇ。」
「どうも。ですが生憎と面白いことは何もございませんのよ?」
あくまでも私は何も知らない、という体をとる。
その方が後々というか、色々都合が良いからね。
「またまた、僕が知らないとは思ってないだろうけどね。ほんと、上手いよねティア。」
カルムは楽しそうにクスクスと笑っている。
あーあ、まぁ、知ってると思ったけどね。
「ふぅ…。仕方ないわね……」
_______。
「ふ~ん。なるほどねぇ。……セルフィジアとリゼアイリアの関係は結構古いからね。ただ、今回のあちらの狙いはきっと君だろうね。ティア。」
このお茶、美味しいわぁ。
「ちょっと、聞いてる!?ティア!」
「………はい!」
「何、その間。」
キャー!ジト目で見るとか酷いです!私はか弱いレディです!
「自分の身長より長くて、重い大剣を振り回してる王女のどこがか弱いって?」
あら、失礼ねぇ。
「で?私が狙いだってことも分かってるわよ。今回、誕生祭に出席する王子がアホでバカだってこともね。」
そこまで聞いたカルムは、指を丁寧に組みその上に顎をのせるというイケメンポーズで口角をつりあげた。
「悪い顔してるわよ?」
昔っから、この人は悪いことを思い付くとこんな感じになるんですよ。
恐怖ですよ?
こういうとき、あぁ、やっぱり三大公爵家の人だな、と思う。
普段、馬鹿ばっかりしてても、三大公爵家を名乗るだけの実力を持っている。
だからこそ、三大公爵家は毎代親戚一同の中から実力者が選ばれるのだから。
実力さえあれば分家でも当主になることができる。
まぁ、いままでそういう例はほとんど、なかったけれどね。
「ティア、パーティーは充分注意した方がいいよ。一応、エスコート役を承っているけれど、あくまでもつなぎだからね。あ!ティアが僕の婚約者になるって言うなら………!」
カルムの端正なお顔の前に銀色の鋭い先端。
アルの剣がカルムの目の前につきだされました。
「やぁ、アルバート・クロイツ公子。僕はまだ、ティアと喋っているんだが。」
アルはピクリと眉をあげた。
「カルム・フィアルトア公子。ティア様にそれ以上お近づきになられませんよう。」
キラリと光った剣先を気にすることなく、カルムはにっこりと笑った。
「カルム、アル。やめなさい。アル、この部屋で緊急時以外の場合、私の許可なく剣を抜くことは許しません。カルム、彼はアルバートとして、私の側に居ます。彼をその名で呼ぶことは私への侮辱ととらえます。」
「「はい……。」」
わかればいいんですよ!!
もぅ!
喧嘩、よくない!!!




