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第19話 ピクニック

「準備は出来ましたか?」


買い物を終えた翌日の朝、真剣な顔を作った私は、ちびっこたちを前にしてそう尋ねていた。


「「「あいっ」」」


そんな私に対し、ちびっこ達も真剣な顔でそう叫ぶ。

かなり力を入れて返事をしたせいか、返事がはい、ではなく、あい、になっていて私は思わず顔を緩めてしまいそうになる。

だが今は大切な確認中だ。

緩んだ気でいることはできない。


「では、確認していきます!」


そう私は決心すると、まず一人目へと目を向けた。


「ルーア!」


「はいっ!」


私の声にいい返事をすると、ルーアはよいしょと背中のリュックを地面におろして探り始める。


「ライアと、サーラと、マーサルと、そしてルイジ……せんせいのお弁当です!」


そして、ルーアがリュックの中から取り出したのは、お弁当箱だった。

私は、ルーアにせんせいと呼ばれたことで、緩んでしまいそうなった顔を必死に引き締めて頷く。


「うん。きちんと準備出来ていますね。合格です!」


「やったあ!」


私の言葉に、ルーアは飛び跳ねて喜び、そして直ぐにリュックの中にお弁当を入れ始める。


「ふふん」


またリュックを背負い直したルーアの顔は満足げなものだった。

想像以上にルーアはリュックを気に入っているらしい。

その様子を確認した後、私は次の精霊へと向き直り、口を開いた。


「では、次はライアです」


「はい!」


私に名前を呼ばれたライアは、緊張したような表情で、ルーアと同じようなリュックを地面へと下ろし、中を探り出す。


「全部冷えてます!」


そして、ルーアが取り出したのは冷えた飲み物だった。

水、果実で作られたジュース、そして私が熱中症対策のために作った特性ジュース。

それらを自慢げな地面に並べ、こちらへと突き出してきたライラに対して私は大きく頷く。


「うん。ライアも合格です!」


「やったっ」


その私の言葉に対し、ライアは喜びを露わにして小さな拳を握る。


「これでわたしはお弁当係だ!」


「わたしは飲み物係!」


そして、リュックを背負って喜びを露わにするルーアと一緒に踊り出した。


「ふふ」


その二人の姿を見て、私は思わず笑ってしまう。


今回、こうしてちびっこ達にお弁当や飲み物を持して、きちんと用意しているのは、昨夜ちびっこ達からある要求を聞かされたからだった。


ピクニックの荷物を自分達で持ちたいという。


実は以前、私はちびっこ達に対して大きなリュックを渡していた。

それは私たちと一緒に旅に出るに至って、渡しておこうと思っただけのものなのなのだが、ちびっこ達は想像以上に気に入ったらしいく、使う機会を伺っていたらしい。

そして今回のピクニックをリュックを使える好機だと判断したちびっこ達は、荷物持ちに立候補したのだ。


正直、リュックがここまで気に入られていたことに私は驚き、荷物を持たせてあげようかと考えたのだが、ちびっこ達に荷物を任せるには少し不安がある。

よって、こうして荷物点検をすることを条件に、ちびっこ達を荷物持ちに係にした、それが今までの経緯。


だが、張り切ってリュックの中に荷物を入れているちびっこ達の姿を見て、確認など必要ななかったかもしれない、と今更な思いを私は抱き始めていた。

うっかりな所があるから、少し心配し過ぎてしまったが、ルーアとライアを見る限り、何の問題もない。

一番心配だった二人が大丈夫なら、後も大丈夫だろう。


「では、最後シートを確認します!」


そう思いながらも、一人だけ確認しないというのも駄目だろうと思った私は、そう声を上げる。


「にゃうっ!」


「…………え?」


…… だが次の瞬間、予想もしないところから上がった返事に、私は言葉を失うことになった。

シートを確認すると声をあげた私に対し、返事をしたのはサラルだったのだ。

一瞬、何事か分からずサラルの方へと目を向けた私は、その背にいつのまにかサーラのリュックが背負われていたのに気づく。


「こら、サーラ…………え?」


その様子に、私はサーラが荷物をサラルに押し付けたのだと判断しかけて。


……だが、サーラも何か既視感のある、鞄のようなものを持っているのに気づいて、私は言葉を失った。


「……私も、用意して来たよ」


だが、そんな私の様子を気にすることなく、サーラは鞄を開く。


「…………え?ええ?」


そして、その中から大きな剣が取り出された時には、最早私は驚きを通り越して口をパクパクさせることしかできなかった。

だが、そんな私に気づくことなく、サーラは笑って口を開く。


「……マーサルから。護身用にって……」


……その瞬間、何故鞄に既視感があったのか、私は理解することになった。

そういえば、あの鞄はマーサルが持っていたマジックバックだ。

おそらく、マーサルはピクニックに行くにあたり、ちびっこ達に危険がないようにと考え、武器をサーラに渡したのだろう。

ちびっこ達とピクニックと聞いて、さらに胃が痛そうだった、マーサルの姿を思い出して私はそう判断する。

確かにちびっこ達が心配で、何か護身用のものを持たせようとするのは当然の反応かもしれない。


「……マーサルは、何をしてるの?」


……だが、そのことを理解しながらも、私はマーサルを許すつもりはなかった。


武器を子供に持たせるのは危ないなど、色々な文句がある。

だが、一番私がマーサルに対して言いたいのは、こんな治安の悪い場所で武器を見せつければ、もっと騒ぎが起こるという事だった。

胃痛に苦しむあまり、マーサルはポンコツ化してしまったらしい。

戻すには痛いお仕置きが必要だろう。

そう判断した私は、サーラへと笑いかけた。


「……サーラ、マーサルは?」


笑顔で威圧感を出す私に対し、サーラは一瞬ピクリと震えた後、無言で奥の部屋へと続く通路を指差す。


「サラル、ゴー」


「にゃうーっ!」


その瞬間、私はサラルに対して突撃命令を出し。


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」


次の瞬間、悲痛な悲鳴が宿屋の中響くこととなった………

更新遅れてしまい、申し訳ありません……

暑さのため、気力がどんどんと削られてしまっていました……

次回の更新は来週の日曜日、29日ににさせて頂く予定です……

申し訳ありません……

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