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エピローグ 不穏

ガージフ目線です!

「くそ!」


花が舞う広場で浮かれる民衆達、その姿を見て私、ガージフはそう吐き捨てた。

こんな状況は本来ならばあり得ないはずのものだった。

何せ私の計画がうまくいけば、これで私の目的は果たされていて、こんな光景などあり得なかったはずなのだから。

そして実際に私の計画は途中まで何の問題もなく進んでいて……


「何でこんなことに……途中までは全て滞りなく進んでいたはずなのに……」


……だからこそ、私は苛立ちを隠すことができなかった。

私の計画、それは決して不完全でも穴があった訳でもなかった。

……しかし私の計画は中断された。


「……何であんな女が!」


そう、聖女と呼ばれる女の存在によって。


私の頭に彼女が魔力を散らしていた時の光景が蘇る。

人間は神獣どころか、精霊と比べても微々たる魔力しか有していない。


……なのに、あの聖女は神獣の素材を完璧に使いこなし、神獣の中でも強力な個体が集まったことによって生まれた変質魔力を完璧に浄化してみせた。


「何なんだあの女は!」


そしてそんなこと、あり得るはずが無いことだった。

確かに人間なら変質魔力を浄化できてもおかしくはない。

けれども、あんな多量な変質魔力をあの短時間で浄化できる魔力や魔力制御力は本来人間には絶対に持てないはずのものなのだ。

だから私は聖女と呼ばれる存在を知りながらも、人間である限り決して気にする必要はないと思い込んでいた。


……それこそが、このあり得ない程の失態に繋がるなど思いもせず。


「くそっ!何であんな存在が……それにリヴァイアサンも!」


そして、私の計画を潰したのは聖女だけではなかった。

私の頭に聖女が変質魔力を浄化する場に割り込もうとした私を足止めした神獣の姿だった。

あの時の自分は足止めに来た、その言葉の意味は今ならばわかる。

つまり、リヴァイアサンはあのルイジアという女が魔力を浄化させることを確信して私の足止めに来たのだ。


……今更気づいてももはやどうしようもないのだが。


「この私が、このガージフがこんな失態を……あの負け犬が!主に手も足も出ずにボロボロにされたことを忘れたのか!」


今、私にできることはただ自身を邪魔した聖女とリヴァイアサンに復讐を誓うだけだった。

……いや、それがただ憎しみを抱くことで主に与えられる失態に対する罰から気を逸らそうとしているだけでしかないことを私は分かっていた。

ここまで酷い失態は、最悪主に殺される可能性さえあるのだから。

何せ彼の方を必ず見つけるとそう誓ってこの国を切り捨てることを決意したのにもかかわらず、その成果は、彼の方の魔力を感知しただけで……


「……まてよ」


……しかし、その思考の途中で私は違和感を感じて思考を止めた。

そう、確かに私は彼の方の魔力を感じたのだ。

それはちょうど聖女が変質魔力を散らしていた時で探る暇がなく、頭の片隅に追いやられていたが、確かに私はその時魔力を感じていた。


「……あの女が、魔術を発動していた時に私は彼の方の魔力を感じたのか?」


ーーー そしてそのことを認識した私の頭にある推測が浮かんだ。


それは普通に考えれば到底信じられない推測だった。


「……これは案外否定できないのではないか?」


………だが、その推測よりもただの人間があれ程の魔力を有していた事実の方が異常であることに気づき、私は今までの暗い表情から顔に笑みを浮かべる。


「ふ、ふははは!これは面白い!この可能性が正しければ私の失態も許されるに違いない!」


……それは憎悪が溢れんばかりに込められた笑いだった。


そしてその私が笑う遥か上空には、いつのまにか不穏な雲が立ち込め始めていた……

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