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05-01『よるのうた』12/31

 やっぱり昨日の最後のくだりはやめて、タケヤ君が無事に鬼を倒して、めでたしめでたし、ってことにしておいてください。


ー完ー


 『ヒノデ村恒例! 年末デスゲーム祭り』エンディングテーマ曲『The Life of My Dream』(日本語訳:未詳)


一番

 ♪〜緊急事態を告げる鐘が鳴り響くなかー村の方角から炎が上がりーキガシラは必死に村へと走る(バックコーラス:村へと走るー)

   遅れて続く、アカガワと、いつものようにおとぼけのタケヤー(中の人はいつものタケヤー)

   途中の道に横たわるのは戦闘班副長が率いていた第二班四名の死体ー(登場してなかった副長含むー)

   思わずタケヤは、うわあああああ死体だ! と叫ぶー(最初っからデスゲームって言ってんだろ、死体ぐらいでるわいー。あと、お前は叫んでばかりだなー)

   だってデスゲームデスゲーム言ってるけど、デスゲームが始まってから死体なんてなかったじゃないかーあの焼死体は村につく前だしー(うるせえ、バックコーラス様に口答えするなー)

   死体の前に跪くキガシラー紅蓮の炎が彼の憤怒の表情を浮かび上がらせるー(ここからはしばらくシリアスー)


[間奏]

   「キガシラ隊長…」

   「判ってるアカガワ。そうじゃない。殺されたことに怒ってるんじゃない」

   「…誰が殺したか、判ったんですね」

   「あぁ、この刺し方はイタチだ。奴が殺った。奴は何処だ!」

   「ねえ隊長にアカガワさん、さっきからイシガキハカセが居ないんだけど?」

[間奏終わり]


 ♪〜タケヤが喋ったからシリアスは終わりー、イシガキハカセは今回あんまり意味がないからオミットしてんだよ、空気読めー(読めー)

   でも何故とアカガワは問うー、イタチが鬼なのか、でもそんな事がありうるのかー(のかー)

   正直判らないと前置きして、キガシラは答えたー。おそらく戦闘タイプの鬼は最初から死んでいた、いや見回りの連中が発見した時には死んでいたんだー(なんだってー)

   たぶん見回りより先にイタチが発見し、鬼を殺したー(イタチが鬼を殺したービックリだー覚醒前の鬼はうまくやれば一撃で倒せると言ってたよねー美しく保たれる整合性ー)

   鬼の体はグチャグチャで確信できなかったがーあれもイタチの刺し方に近いー(グチャグチャだったんじゃ、この死体を見るまで気が付かなくても仕方ないー美しく保たれる整合性ー)

   ねえねえ、死体の前で立ち止まってるより速く村に戻った方がいいんじゃないですかと言ったタケヤがキガシラにぶん殴られるー(やーいやーい)

   アカガワが言ったー炎の紅に照らされ、彼女の銀髪が赤銅に見えるー。イタチが鬼と接触した時に何かがあった? 鬼を殺した時に鬼が移ったんだと閃くタケヤを二人は無視するー(牛鬼かよーyo! そんな現象があるならゲームが成立しないだろがよーよーyo!)

   鬼との接触。イタチは鬼と話して何かを知ったんだろう。それが奴を殺戮に走らせた。でも何がー(でもなにがーもなにがーなにがーにがーがー)

   キガシラは吠えたー咆哮でその身が一回り巨大化したように見えたーいや実際に奴の体は軋んでいるー(マッスルマッスル!)

   どちらか、ひとつだとキガシラは言ったー、奴は殺戮を楽しんでいるか、あるいは俺を殺戮を阻止する為の防衛戦に誘いこもうとしているかー(かー)

   キガシラは決めたーこの殺戮は囮だーイタチの目標は鬼と同じ、村の中心部にある「炭焼小屋」だ鬼との接触でイタチは「炭焼小屋」の何かを知ったんだー(だー)

   俺は炭焼小屋に向かうとキガシラは言ったー、アカガワ、お前は村人が避難している集会所に行け。弟もそこに居るだろう。もし、俺の読みが間違ってて、イタチが村人を襲い続けても防衛のプランは組んであるから村長代理の指示に従えばいい(キガシラはあくまで戦闘班班長ーコマンダーじゃないー司令官が戦場に立つわけねーだろー、判ってんのかタケヤー)

   アカガワは首を横に振るー自分もイタチの狙いは炭焼小屋だと思うーイタチを止めない限り、弟に安全は来ないーキガシラは頷くー判った一緒に来いとー(そして二人は駆け出すー)

   あの僕はどうしたらいんでしょうか? (あーら、まだ居たのねタケヤ君ーどっちでもいいから好きにしたらいいよー、えーなんとなく二人に着いてくことにしたのーへー)


二番

 ♪〜炭焼小屋は通称でーその姿に炭焼小屋を思わせるものは一切ないーデザインを極力廃したデザインのーせいぜい二階建てぐらいの低く丸いビルに見えるー窓の類はなくーたった一つの入り口の扉は破壊されていたー(二人は急いで炭焼小屋の中に突入したー、あータケヤも来たっぽいんで三人かー)

   臨戦態勢、しかも敵の存在を確信しているキガシラに一切隙はなかったー壁自体が白く発光する何処に続くか判らない湾曲した長い廊下でーキガシラはイタチに隙をつかれたー(あら大変ー)

   キガシラが持つのは異形の剣ーイタチが構えていたのも異形の剣ーイタチの重い突きがキガシラの右肩を貫くー骨が折れるなんて生ぬるいもんじゃなくー木っ端になった骨と肉が飛び散りー白い廊下を血に染めたー皮と僅かにのこる肉だけが、ぶらぶらと右腕を肩につなげているーこれは痛いよーだって突きが当たった時にー動物が車に轢かれた時と同じ音がしたもんー(またしばらくシリアスー)

[間奏]

   「イタチぃ! てめえ!」

   「まあここに来るよねえキガシラ隊長」

   「ふざけんなよ、どういうつもりだ!」

   「きみたちは判っていない」

   「あぁそうだ。こんな村で毎年何も判らず殺し合いだ。だからどうした! なぜ殺した!」

   「そうさ、きみたちには何も判っていない、何もかもがだ! この村の存在意義、鬼の正体! 何もかもがだ!」

   「狂って、世迷い事をほざくだけか!」

   「理由があるんだよ、すべてに理由が。5日の後に必ず死ぬ定めの鬼が何故この村に送り込まれる? 炭焼小屋をなぜ鬼は目指す? なぜ炭焼小屋を目指さず、ただ殺戮を繰り返す鬼もたまに来る?」

   「てめえ、ぶった斬ってやる!」

   「不可能だね。きみの斬撃もその怪我じゃ知れてる、所詮はXX仕込みで超越的なものじゃない。XX? 結構結構、崇高な理念じゃないかハハハ、知ってるかキガシラ! 炭焼小屋を目指さない鬼はどうして俺達を殺戮するか!」

   「時間稼ぎかイタチ! 俺が失血死するとでも思ってるんじゃねえだろうな!」

   「教えてやるよキガシラ! 奴らは俺達が憎いんだ。鬼にとって最後の希望である、この炭焼小屋を掌握するよりも、憎しみの感情が強い! だから殺す、単純な話じゃないか」

   「あ? あんな化け物連中に恨みを買った覚えなんざねえよ!」

   「そうさ。ないだろうよ。俺にも村の誰にも。でも鬼は俺らを憎んでいる。5日の命をかけてでも俺達を根絶やしにしたがっている」

   「何をほざくと思えばとち狂ってるだけか!」

   「簡単なんだよ、実に簡単なんだよ! ただとてつもなく悪趣味で慈悲に満ちた仕掛けがこの村だ! 薄々気がついてるんじゃないかキガシラ! きみはどうしてこの村から脱出しようとしない?」

   「だまれ!」

   「コートの連中は確かに強力さ。だがなキガシラ、数年にわたり鬼と戦い生き延びているお前が、然るべき計画を立てれば脱出も可能だろう。キガシラ、お前はもう何年、鬼を討伐している?」

   「だまれ!」

   「だまるのは貴様だキガシラ! 俺はこの炭焼小屋の謎を解く!」

   「行かせるか!」

[間奏終わり]

 ♪〜軽く構えて繰り出すイタチの突きー初手のダメージがデカすぎてー致命傷をくらわないように剣をいなすのが精一杯のキガシラー剣と剣が火花を散らすが血を吹き出すのはキガシラだけー(だけー)

   うまく躱して腸は守るがそれでも脇腹は弾けるー隙がないときはもはや動かぬ右腕を突きいたぶり、隙を誘うー激痛で隙が出れば容赦ない突きが飛ぶー(さすがにこれはタケヤじゃなくても戦闘に介入できないー)

   ここまでだとイタチは叫ぶータケヤにも判るこの惨状ーもはや血達磨のキガシラは廊下の壁にもたれかかり、倒れないのが精一杯ー(あれあれよく見たら、ちょっと腸もやられてるー)

   

   何かの爆発が起きた。

   タケヤにはそうとしか感じられなかった。

   今でも確信は持てないが、あれは恐らくキガシラの叫びだったのだろう。

   無残にこそげ落とされて動けるはずのないキガシラの四肢が宙に舞った。

   イタチがキガシラにトドメを刺すために爆発物でも使ったかと、タケヤはその時は思った。

   でも違っていた。


   キガシラの斬撃がイタチを両断していた。右肩口から左太ももにかけての斬撃。異形の剣では叶うはずのない細い切り口をキガシラは成し遂げていた。

   元からただの命なき物体であるかのようにイタチは崩れる。キガシラも崩れた。だが苦悶する表情がある。命のある者の崩れだ。


   タケヤは慌ててキガシラを抱き起こす。

   「大丈夫ですか、キガシラさん! えーと治療したほうがいいんですよね」

   タケヤの物言いは取り立てて間抜けなものでもない。どこから治療すればいいのか判りはしないほどの大怪我だ。

   血を吹き出し、咳込みながらキガシラは応える。

   「構わん。この怪我じゃ長くはもたない」

   「そんな、キガシラさーん!」

   「うるせえよ、四、五日前にあったばかりの人間が死ぬぐらいで盛り上がるんじゃない」

   「でも、そんな」

   「まあいい。看取ってくれる人間が居るだけで充分だ。よしついでだ、この剣を形見で貴様にくれてやる」

   正直、タケヤはこの剣があまり好きじゃない。タケヤの表情を見てキガシラは言った。

   「この剣自体は良いものだ。コートの連中も持っているが、これはそうそう手に入るもんじゃない。あいつらが持ってるのは横流しの品かなんかだろう」

   「えーと、それじゃまあ一応いただいておきます」

   「へへへ。それにしても思ったより死なないもんだな。形見分けした後でまだ死なないんじゃバツが悪くて仕方ない」

   「…もしかして助かったりするんじゃないですか?」

   「馬鹿言え。血を流しすぎた。内臓もやられてる、この村じゃなくてもこんな状態から助けられる医療施設なんかねーよ」

   あ! とタケヤは気がつく。

   「ほら、イタチさんがこの施設に必死になってたってことは、もしかしてここには大怪我を治せるような」

   アカガワが首を横に振る。

   「まあ無理でしょうね。あっても使い方が判るとは思えない。探したいなら探せばいいと思う。でもその前にその剣を貸して」

   渡していいのかとキガシラの顔を覗きこむタケヤに、お前にやったんだからお前が決めろと答える。タケヤはアカガワに剣を渡す。

   アカガワは値踏みするように剣を見る。

   キガシラは笑う。

   「珍しいのは判るし、実際珍しい剣だが、そんなに気になるか?」

   キガシラには答えず、アカガワはタケヤに言った。

   「タケヤ君。もうちょっとキガシラ隊長の体を立てて、それじゃ心臓を圧迫する」

   「はいはい。こんなもんかな」

   「それでいい。それにさっきの体勢じゃタケヤ君まで突き刺しちゃうからね」

   「え?」

   イタチの突きにどれだけ無駄があったかタケヤは知る。アカガワの突きに比べればあんな突きは隙だらけだ。

   アカガワの突きがキガシラの心臓を貫く。キガシラは死んだ。

   言葉のないタケヤにアカガワは剣を返しながら言った。

   「本人も気がついてなかったけど、今にも死にそうな人があんな綺麗に喋れるわけないじゃない」

   服のポケットをゴソゴソ探し、アカガワは小さな鉄製の笛を吹く。

   「聞こえるかな」

   「ちょちょちょちょアカガワさん!」

   すぐに足音がし、赤い革のコートの連中が姿を現す。異形の剣に鏡の仮面。

   コートの連中に渡された赤い革のコートをアカガワは羽織だす。これもまた戦闘用なのだろう、留め具が多く装着には時間がかかりそうだった。

   黙って着替えていても、タケヤの質問攻めになると思ったのかアカガワは独り言めいた説明を始める。

   「付け足すことはあんまりないんだけどね。百戦錬磨だからキガシラは殺されたわけじゃないの。頑張って殺しあいなさい、でもあなたは強くてつまらないから殺します。これじゃ村人のモチベーションにかかわるじゃない。

    そうじゃないのよ。鬼対村人がルール。イタチが言ってたでしょ。「鬼と戦う村の鬼」じゃ破綻してる。あまりにキガシラは強すぎたから調査してみれば案の定だった。あの人、何年鬼を殺してたと思う?

    まあ、今年はイタチというイレギュラーが出てきたけど、本当は戦闘タイプとの戦いで見極めるつもりだった」

   コートを着用し終わり、アカガワは鏡面の仮面をかぶる。

   「イタチの死体を探りなさい、タケヤ君。コンテナの鍵はイタチが持ってるはず」

   「まってまって、アカガワさん! あの弟さんは何なの?」

   「知らない。ただの弟役」

   アカガワの鏡面の仮面がタケヤに近づく。

   「じゃあね、タケヤ君。あなたに合うことはもうないでしょう」

   アカガワとコートの連中は廊下を歩き出した(だしたー、思わず歌うの忘れてたー)


♯曲は終わり、暗転。数秒の後、村長代理の声がする。


「…とまあ、今年は死亡者8名、行方不明2名、戦闘経験者がほぼ全滅という、壮絶な結果になりましたが、生き残られた皆様、とりあえずおめでとうございます。

 正月は5日まで休みです。例年通りですな。農閑期なんでまあボチボチやっていきましょう。

 では皆様、よいお年を。

 ほら、タケヤ君、そんな死にそうな顔してないで、笑って笑って。来年、また頑張ればいいんですよ」


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