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先祖返り(※自称)の小公爵様が私を番だと言い張っている。  作者: 砂臥 環


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2/11

②見合いってなんだっけ


そんなワケで、数日後。

私は王都に行った。

迎えに来た公爵家の馬車に乗り、お隣の辺境伯領の神殿から転移陣で。


バンフィールド小公爵、アーチボルド様との初対面に指定されたのは貴族御用達のカフェ。

王都の一等地にある上、パーティーができそうな広さに煌びやかな内装。

客はいない。多分貸切。

公爵家のタウンハウスでないのは私が萎縮しないようにとの配慮らしいが、ド田舎子爵令嬢にこれは充分萎縮するのでは。


まあ幸いなことに、私はあまり物事に動じないタイプらしいので、問題はないけれど。

父にも『お前の心臓には毛が生えている、しかも剛毛』と褒められるくらい。(※実際は褒めてもない)


そもそもド田舎子爵領からここ王都に来るのに、公爵家の豪奢な馬車と高額な転移陣を使用して来たのだ。

今更萎縮もへったくれもないな、と中に入る。


店員に案内されると、小公爵様は既にいた。

彼は艶やかな黒髪に碧眼、スラリと手足の長い長身の美青年……まあ公爵閣下を見たらしい兄から『とんでもねぇイケおじ』と聞いていたので、それくらいは予想していたけれど。


「……初めまして」


スマートな仕草で席を立ち迎えてくれるも、ぶっきらぼうな挨拶と不貞腐れたような表情。

明らかに渋々といった感じだが、こちらは格下。失礼にならないよう丁寧に挨拶する。


「僭越ながらお目通りを賜りました、クームズ子爵家が子女、マージェリーでございます。 バンフィールド小公爵様にはご機嫌麗しゅう」


すると──


「……くっ!」


小公爵様は胸を抑えながら崩れ、地面に膝を着いた。


「持病かなにかですか!? お薬などは──」

「近寄るな!」


苦しんでいるようなので咄嗟に介抱しようと近付くも、強い口調で制止される。

跪いたままの彼と目が合うと、激しく顔を背けられた。


「はっ、もしや」


──私の体臭が??


なにか匂いが気になるような仕草に感じ『比喩として田舎臭くとも田舎の香水スメル(※肥溜め臭)はしない筈だが』とは思いつつも、慌てて自身を嗅ぐ。

だが彼は「違う!」と強く否定した後、躊躇いがちにこう付け加える。


「君はとてもその……馨(かぐわ)しい」

「かぐ……?」

「ああっ小首を傾げるな! あと私に素敵な笑顔を向けるな! 眩しくて目が潰れる!!」

「……オゥ……」


あまりに聞きなれない単語の羅列に、謎の外国人のような反応しかできずに立ち竦む。

その間に復活したらしき小公爵様は、苦しげにゆっくりと立ち上がった。


誰に言うでもなくこう宣いながら。


「私は誇り高きバンフィールド家の男……本能になど屈しない……!!」


(これは……本当に『先祖返り』の可能性があるのでは)


立ち上がった長身の彼の影がゆらりと私を包み、ハッと我に返る。青い瞳にキッと睥みつけられ、思わず小さく身構えた。


しかし──


「今日は来てくれてありがとう!」


がばりと勢い良く下げた頭と共に、出てきたのはこの言葉。


「あ、お招き頂き」

「だが私はこれにて失礼させて貰う!! ゆっくりしていってくれ!」

「えっ」


物凄く早口かつ明瞭な声で、投げ付けるようにそう言うと、彼はくるりと踵を返しその場を後にする。


「小公爵さま……!」


当然追いかけようとしたが──


「お待たせ致しました小公爵様から予めご注文頂いておりました当店自慢のスペシャルアフタヌーンティーセットでございます!」

「どうぞこちらに!」


入れ替わる様にやってきた給仕がやはり物凄く早口かつ明瞭な声で、私の行く手を遮った。

同時に案内してくれた店員の手によって引かれる椅子。

その動きは素早さに反してあまりに流麗であり、鮮やかな連携プレー。

揃いも揃った鉄壁の営業スマイルには『いいからとりあえず菓子でも食っとれ』という、そこはかとない圧。


それはさながら『おもてなし』との名を借りし要塞……流石は王都一流。


(これが貴族御用達の店……!)


なんか違う気もしたが、兎に角今はそう感服するよりない。


実際、流石は王都一流。

店員は私が席につくと、さりげない話術と自然な仕草でお菓子をサーブしてくれるだけでなく、なんか凄い高い位置から華麗に茶を注いでくれた。

素晴らしいホスピタリティと接客技術。

折角なので、小公爵様が戻ってくるのを待つ間、遠慮なく舌鼓を打つことにした。





──しかし『本能になど屈しない』……などと吐かしていた割に。


(アレが本能からなら、既に大分屈していたような気が)


特に異性にモテたことのない私も、あの美丈夫に異性として猛烈に意識されていたことくらいは流石にわかる。

どうしたいのか、まではわからないが。


『当店自慢』の『スペシャル』だけあって、アフタヌーンティーセットは豪華なだけでなく味も素晴らしく美味しかった。

だが、いつまで経っても小公爵様は戻って来ず。


暫く経ったあと、彼の従者らしき人がやってきて手紙と花束を渡された。


謝罪と礼から始まる手紙の内容を要約すると、『刺激が強いので、まずは文通からお願いします』とのこと。

どうやら交流する気はあるらしい。

正直、意外。


食べきれない分をお土産に持たされ、私は王都を後にした。


往復およそ2時間(※ほぼ辺境伯領神殿までの馬車)。

滞在1時間(※うち、対面5分。残りはほぼ従者が来るまでの時間)。


見合いってなんだっけ、という疑問が凄い。



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― 新着の感想 ―
「君はとてもその……馨かぐわしい」 「かぐ……?」 「ああっ小首を傾げるな! あと私に素敵な笑顔を向けるな! 眩しくて目が潰れる!!」 「……オゥ……」 この部分が私のつぼにはまりまくり、笑い転げて…
おもしれー男( ˘ω˘ )
 猛烈なツンデレと言えないこともない…かな?
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