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先祖返り(※自称)の小公爵様が私を番だと言い張っている。  作者: 砂臥 環


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1/10

①婚約が決まった……ような感じになったそうで


「だだだだんっだんっ旦那様……!」

「どうしたセバス」

「あら珍しいこと、セバスさんたら焦ってらっしゃるわぁ」


パンを小さくちぎりながら母がおっとりとそう言うので、私もスクランブルエッグをフォークで掬いながら感想を述べる。


「『ダダダ・ダン・ダン・旦那様♪』ってリズミカルでなかなかいいですよね」


──それは、何の変哲もない朝だった。


あいにく詩的表現が得意ではないので、見たままを言うと。

窓の外からは朝の光と鳥の囀り。

ダイニングには父と母。

少し遅れて薬草園の世話をした後の私。

テーブルに並ぶのは、いつものようにサラダとハムと卵料理とパン。あと、まだ絶賛鍛錬中の兄達の為に用意された、大量のゆでたまご。


ちょっと騒がしくなったのは、やはりいつものように執事のセバスが新聞と朝イチに届いた手紙を父に渡してから。

感想としては『まあそんなこともあるよね』程度のことであり、むしろ思わぬセバスのリズム感の良さの方に気を取られる程。


「ここ、これが……!」

「手紙? ……こっここ、この印は!!」

「あらあら旦那様まで」

「『こっこここ』までいったなら、『コケコッコー』と続くと朝らしかったですよね」

「やだマージったら、うふふふふ」


思い返してもやはり、それは概ねいつもの非常に和やかな朝の風景であると言える。


食事を終えた私は、いつものように師たる賢者様の元へ色々教わりに行っていたため、この後何があったかは不明。

私が再びこの件に参加するのは、昼過ぎのこと。





「マージ、お前の婚約が決まった……ような感じになった」


家に帰るなり執務室に呼び出された私は、真面目な顔の父にこう告げられた。


「決まった……ような感じになったのですか?」

「ああ。 決まった……ような感じになった」


なんかこう、私の婚約が決まった……ような感じになったらしかった。


曰く、お相手は私と同い年の公爵令息……しかもご嫡男。

しかも由緒正しいどころか王家の縁、時下ますますご清栄のことと存じ上げるバンフィールド公爵家だそう。


朝のリズミカルなやりとりの手紙は先触れで、なんと公爵閣下が直々にやって来た模様。

先触れというよりただの直前予告でしかないのは、どうも『要件を伝えるだけなので、こちらがアレコレ気を揉んで用意せずに済むように』という意味での、高位ならではの配慮らしい。


「こちらからは断れない案件であることだけは理解致しました。 なにがどうなったらこんなトンチキ縁談の話になるのかさっぱりわかりませんが」


そんなやんごとなきお家の麗しきご嫡男と、それなりに歴史と金はあるがド田舎で、剣と鍬(くわ)を持ち土いじりをしながら平民と距離の近い暮らしをしているクームズ子爵家の末娘であるマージョリーこと、私。


縁談の申し出に閣下直々の来訪なのといい、怪しさ満載である。

しかし、真に怪しさ満載なのはここからであった。


「なんでもご令息が、お前が番だと」

「『つがい』?」

「言い張っているそうだ」

「『言い張っている』??」


『番』……それは魂で結ばれし相手。


──とかなんとか言われている、本能から強く惹かれ、執着する相手のことらしい。

『らしい』というのも然り。匂いで感知するようで、言い出すのは主に獣人だ。

人間である我々にはわからない……と、思う。多分。


「わかるものなんですか」という至極真っ当な私の問いに、父はアッサリ「知らん」と答えたけれど。

まさかの続きがあった。


「だがバンフィールド公爵家だしなぁ……閣下曰く、ご子息は『先祖返りなどと宣っている』と」

「『先祖返り』??」


紡がれたのは、新たなる怪しい単語。


この国の始祖たる王は竜人である──というのは国民の誰もが知っている超有名な話であり、常識と言ってもいい。

竜人の番が人間だったことが、我が国の興りなのだ。

とはいえ大昔の話であり、もう王族ですらほぼ人間である。精々魔力量が多い程度。


(先祖返りか~)


にわかには信じがたいが、由緒正しいどころじゃない王家の縁、バンフィールド公爵家のご子息なら……

ある、のかもしれない。

もしかしたら。


「でも『などと宣ってる』と仰ってたんですよね?」

「ああ……」


あるのかないのかは謎だが、父である公爵閣下にも信用されてないっぽいこの言い回し。

しかし閣下は何故か、婚約自体に反対はされていないご様子。


ウチは子爵家なので家格的に釣り合わないのでは──という疑問はあるものの、公爵閣下はそれにもお答えくださったそう。

父は「そのへんを詳しく説明すると長くなる」とカットし「別にいいらしい」と雑な一言で纏める。

詳しく聞いてもいいのだが、父はあまりにも格上の突然の来訪にぐったりしているし、私もお昼ご飯を食べてないのでまた今度にすることにした。


「ただ確かに家格差はある。 閣下はそのことやお前への配慮から『正式に申し込むと、もう決定になるので』と。『とりあえず会ってみてほしい』と仰ってらした」

「まあ相性とかありますもんね、わかりました」


つまりは『当人同士の判断次第』らしい。

ならばまさに『とりあえず会ってみる』一択。

まあ、どのみち断れないのだし。


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― 新着の感想 ―
実家のような安心感( ˘ω˘ )
わーい砂臥先生の新作だ! 砂臥先生の作品といえば、斜め上にポンコツな貴公子が魅力的ですが、今回も大物の予感…! 続き、お待ちしています!
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