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第三話【正しすぎる反応】

戦闘シーン書くの本当に苦手なので薄っぺらく感じたらごめんなさい。

読み応えのある描写書くの苦手過ぎる……

後半AIに文章化頼んだらめちゃくちゃ薄っぺらい文章が出来上がったのでプロットをどうにか人様に見せられるレベルまで書き上げました。今後AIの利用は感想を聞くだけに留めておこうと思います。

 癒月がロストとなった事件から、一週間が経った。

 事件当時、現場はひどく混乱していた。だが、DSIによる記憶改ざんの処置が完了した今、その混乱の記憶は人々の中から徐々に霧消していた。事件は、少し規模の大きな交通事故──それも「もう過ぎたこと」として、誰も話題にしようとはしなくなっていた。

 晴れ渡った朝。

 明日香は、変わらぬ足取りで登校し、教室へと向かっていた。

 廊下の角を曲がった先、女子トイレの扉が開き、一人の女子生徒が姿を見せる。

 あのときの、ダンス部の一人だ。事故の影響でしばらく休んでいたが、今日から登校したらしい。

「……あ、白崎さん……」

 明日香はごく自然な声で応じた。

「おはよう。もう体調は大丈夫なの?」

 彼女の問いに、女子生徒は何か言いたげに、じっと明日香を見つめ返した。

 ロストに巻き込まれた人間の記憶は基本的に消される。だが、原因に深く関わった人物には、ごく一部の“夢のような”記憶が残されることがある。

 彼女の中にも、ロストに襲われた記憶や、そこで出会った明日香の姿が、きっと朧げに残っているはずだった。

「……それはもう、大丈夫なんだけど……」

「それなら良かった。もうすぐチャイム鳴るし、教室戻ったほうがいいよ」

 明日香はそれだけ言うと、女子生徒の視線を振り切るように教室へと入っていった。

 すでに教室には癒月の姿もあった。ずっと欠席していた彼女も、今日から登校らしい。

 明日香は内心、ほんの少しだけ安堵し、自席に腰を下ろした。


* * *


 午前の授業が終わり、昼休みの予鈴が鳴る。

 給食は機材トラブルの影響で一時中止となり、今日からしばらくは各自で弁当を持参することになっていた。

 明日香も自宅で用意した弁当箱を取り出し、机に広げようとしたそのときだった。

 ふいに、彼女の視界に誰かの影が差す。

「明日香ちゃん、一緒に食べよ?」

 見上げると、癒月が弁当を抱えて立っていた。

 その様子に教室のあちこちから、不思議そうな視線が突き刺す。

 それも当然だ。

 明日香は普段、同級生と親しく接するタイプではない。

 挨拶や連絡程度のやりとりはするものの、雑談や共に行動することは滅多になかった。

 癒月も、どちらかといえば明日香と距離を取っていた側だった。

「……えっと。うん。いいけど」

「やった! じゃあ中庭行こうよ。今日、天気いいし!」

 癒月はぱっと笑顔を見せると、明日香の手を軽く引いて教室を後にした。


 中庭は風が涼しく、雲が日差しをやわらげていた。

 二人は壁際の空いているベンチに腰かけ、それぞれの弁当を広げた。

「明日香ちゃんのお弁当、おかずいっぱいだね」

「うん。……でも、ほとんど冷凍食品だけどね。田中さんのお弁当は……お母さんが?」

「そうそう。あー、またトマト入ってる。私トマト嫌いなのにー。明日香ちゃん食べてくれない?」

「それは駄目だよ。せっかくお母さんが作ってくれたんだから、自分で食べなきゃ」

「明日香ちゃん、真面目だなぁ。あ、私のこと“癒月”って呼んでいいよ」

 笑いながら言う癒月を見て、明日香の胸に、ほんの小さな温かさが灯る。

 ──誰かと一緒にご飯を食べるのって、沙夜以外だと……ほんと、久しぶりかもしれない。

 食事中、ふと明日香が尋ねた。

「なんで……今日、私に声をかけたの? 田中さんには、他にも一緒にいる友達がいるのに」

「今日、その子たち委員会で別だったから。一人で食べるくらいなら、明日香ちゃんと食べたいなって思っただけだよ」

「……でも。余計なお世話かもしれないけど、私と一緒にいたら、田中さんが変な目で見られるかも」

「いいの!」

 癒月は少し強い声で遮った。

「私が明日香ちゃんとご飯食べたかったの。それとも……明日香ちゃんは嫌だった?」

「そうじゃない。ただ田中さ」

「癒月」

「……癒月が嫌な思いしないかなって、思っただけ」

 明日香の言葉に、癒月はそっと卵焼きをフォークで刺し、彼女の口元に差し出す。

「え……なにこれ」

「卵焼き。良かったら食べて」

 戸惑いつつも、明日香は差し出された一切れを口にする。

「……美味しい」

「でしょ? お母さんの卵焼きは世界一なんだから!」

 癒月の笑顔に、明日香もまた、微かに微笑んだ。


 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、二人は教室へ戻る。

 その瞬間、クラスの空気が張り詰めた。

 癒月は何かを察して、明日香の隣に目を向ける。

 明日香が、自分の机の前で立ち止まっていた。

 机の表面には──黒のマジックで、悪意の言葉がいくつも書かれていた。

「……なにこれ。酷すぎる……」

 呆然と呟く癒月の横で、明日香は静かにお弁当箱を机の端に掛けると、すっと踵を返して教室を出ようとする。

「明日香ちゃん、どこ行くの?」

「職員室。監視カメラで誰がやったか確認して、落書きした人に掃除させる」

 淡々と話す明日香に、癒月は不審に思いながら聞き返す。

「……え?」

「私、こんなんじゃ授業に集中できないから。かといって、何もしてない私が掃除するのはおかしいでしょ?」

 明日香の言葉は、怒りも悲しみも見せない。ただ事実を述べているだけだった。

 癒月は何も返せない。

 正しい。でも……何かが、決定的に違う。

 動揺してる癒月を他所に明日香が教室を出ようとしたその時、教室の隅からひとりの男子生徒が声を上げた。

「待って……俺、見たんだ。あいつらが白崎の机に落書きしてるの」

 指さした先には、ダンス部の女子生徒たち。

 突如注目を集めた彼女たちは、露骨に動揺した。

「ちょっといきなり何なのよ! 変な嘘言わないで!」

「嘘じゃない! 本当に見たんだ。……怖かったんだよ」

「私も……見た……」

「私も……」

 口々に真実がこぼれ始める。

 明日香は無言で教室のロッカーからバケツと雑巾、クレンザーを取り出すと、それを女子生徒たちに差し出した。

「じゃあ、これ。責任持って消して。……早くしないと、先生来るよ?」

 ただ、それだけを淡々と。

 怒りも哀しみも込めず、感情を切り落としたように。

 女子生徒たちは不気味さに顔をこわばらせながらも、無言でバケツを受け取ると、机に書かれた落書きを消し始めた。

 誰も何も言わず、その場から動こうとはしなかった。

 教室の空気は、まるで冬のように凍りついていた。

 癒月もその場に立ち尽くし、何も言えなかった。

 ただ、目の前で机を見つめる明日香の姿を、呆然と見つめていた。

 まるで……感情という波が、まったく届かない場所にいるようだった。


* * *


 放課後。下校時間。

 淡々と帰る支度をする明日香を、癒月は心配するように見つめている。

 その明日香を見ながらヒソヒソと何かを話す二人の女子生徒がいるのに癒月は気付いた。

 癒月は静かに二人の所に行き、明日香に聞こえないように話しかける。

「ねえ、二人は明日香ちゃんと同じ小学校だったよね。明日香ちゃんって、昔からああだったの?」

「え、いや、そんないきなり言われても……」

「私らも、そこまで白崎さんの事知ってるわけじゃないし……」

 二人は顔を見合せて何とも言えない顔をするが、「ただ……」と何か言いたげに口を開く。

 その話を聞き終わって後ろを振り返ると、明日香の姿が見えなくなっていた。どうやら先に帰ってしまったらしい。

「あ、ごめん急に話しかけちゃって! 私も帰るね! じゃあまた!」

 バタバタと鞄を背負って慌てて教室を出ていく癒月に、二人は気圧されながらも手を振る。

 見送りながら、二人はぽつりと呟く。

「……白崎さん程じゃないけど、田中さんも変だよね」

「うん、あの白崎さんの異様な面を見ても、話しかけようとするんだもんね」

 癒月が出ていった後の教室は、静かな静寂に包まれていた。


 玄関で慌てて靴を履き替え外に出ると、少し先を歩いてる明日香を見つけて癒月は全力で走り出す。

 そこまで距離は遠くなかったので歩いてる明日香にはすぐに追い付いた。

「明日香ちゃーん!」

「……え、癒月?」

 息を切らしてぜえはあしながら息を整える癒月を見て、明日香は困惑した。

「どうしたの? そんなに急いで」

「どうしたのじゃないよ。帰るなら一言声掛けてくれても良いじゃない! 私も一緒に帰りたかったのに」

「え……だって、癒月友達と話してたし。それに今日部活でしょ? 準備してないけど大丈夫なの?」

 制服姿で鞄を背負って、帰る支度が済んでる癒月を見て、明日香は疑問符を浮かべる。

 癒月はああ、と言うように明日香の質問に答えた。

「辞めたの、部活」

「え?」

「部活辞めたの。だから放課後は空いてるし、明日香ちゃんと一緒に帰れるよ」

 あっけらかんという癒月に、明日香は驚く。

「……確かダンス部ってダンス甲子園に出場決まってなかった? それが終わったら三年生は引退って聞いた気が」

「良いの。まだ半分くらいしかフリ出来てなかったから修正は可能な段階だし、引き継ぎもちゃんとやったから」

 癒月はダンス部が活動してるであろう体育館の方へ視線を向けて呟く。

「正義という言葉で誤魔化して、人の事を制裁する人達と一緒にいても、病むだけだから」

 それはどこか突き放した、寂しさを含んだ声だった。

 悩みに悩んだ結果なのだろう。寂しさはあっても、表情は吹っ切れたようなスッキリした顔だった。

 自分で考えて決めたのなら、外野がこれ以上言うのは野暮ってものだ。

 明日香は静かに歩き出す。

「癒月は強いね」

「え? どうしたの突然」

 同じように歩を進めながら疑問符を浮かべる癒月に、明日香は静かに微笑む。

「逃げる勇気があるのは、強いって事だよ」

 その言葉には裏表のない、居心地のよい安心感があった。

 やっぱりあの部活の子達とは違う。どうして自分は、今までこんな優しい子と距離を取ってたんだろう。

 癒月がそう思った時、さっき話してた二人との会話を思い出した。


『白崎さん、四年生の時に転校してきたんだけど、その時から物静かというか、何にも興味を示さない子でさ。その、一部の子達が見下してるとか、スカした嫌な奴って思って一時期いじめられてたのよ』

『でも今回みたいに怒りもしないし泣きもしない。ただ我慢してるだけとかじゃなくて本当に普通の人みたいな反応が無いの。気にせず先生にも告げ口するし。だから皆気味悪がっちゃって』

『そんな時にね、白崎さんに妹がいるって事を知った子がいたのよ。それでいじめてた子達が妹に何かしたら白崎さんも怒るんじゃないかって話してたのを、白崎さんが偶然聞いちゃったんだって』

『それ聞いた白崎さんめっちゃ怒ってものすごく暴れたんだって。両方の親が出てくるレベルで大騒ぎになったんだよ。まあいじめの証拠とかもあったから喧嘩両成敗って事になったって聞いたんだけど、その一件があったから、うちの小学校の子は皆白崎さんに近寄らないんだよね……』

『なんていうか、どこに地雷があるか分からないってやつ? 触らぬ神に祟りなしって言うじゃん』


 今回机を落書きした子達は、明日香と小学校が違ったから知らずにやったんだろうとその子達は言っていた。確かに知ってたらやろうとすらしなかっただろう。

「明日香ちゃんはさ、昼休みの時どうして怒らなかったの?」

「うーん……怒っても何も解決しないし、癒月が怒ってたから私は別に良いかなって」

「それでもあんな冷静な正しい処理が出来るのは普通じゃないでしょ。私だったらショックで多分何も出来なくなるもん」

 そこまで話した時、明日香の鞄から電子音が鳴り出した。

 明日香は鞄を開けると中からスマートフォンを取り出し、電話に出る。

「……はい、はい。……分かりました。今六実通りの交差点付近です、はい。分かりました」

 電話を切った明日香の顔は先程の穏やかな顔と違い、緊張感のある顔だった。

「ごめん癒月、ちょっと用事が出来たから先に帰」

 明日香が言い終わるよりも先に癒月は明日香の手を掴んだ。

「……駄目だよ癒月。帰った方がいい」

「今の電話、でぃーえすあいって所からだよね。またロストが出たの?」

 癒月の有無を言わさない目を見て、明日香は癒月に誤魔化しは効かない事を悟り、はあとため息を着く。

「うん。癒月もロストになったから分かるでしょ? 危険だから帰って。親御さんも心配する」

「うちの親、今日は二人とも出張でいないから大丈夫。もしかしたら何か手伝える事があるかもしれないから、明日香ちゃん、お願い」

 どうやら癒月には何を言っても聞かないようだ。手を払って振り切ることも出来なくは無いが、それは居心地が悪い。

「……分かった。でも職員の人が駄目って言ったらすぐに帰るんだよ」

 明日香がそう言った時、遠くから黒いバンが走ってくるのが見えた。


 バンが止まった場所は少し離れた所にある中高一貫の男子校だった。

 DSIの現地対策班が規制線を張っており、立ち入り禁止のロープを何人かくぐって出入りしている。既に学校内の生徒や教師達は避難が済んでる様だ。

「今回のロスト、かなり大きいんです。現地対策班も援護してますがかなり苦戦してます」

「分かりました、ロストはどの辺に」

「中庭で飛渡さんが応戦してます」

「じゃあ上から応戦します。もう少しだけお願いします」

 明日香は校舎の中に入り、階段を登って狙撃出来る場所を探す。

 三階の廊下、窓からドラゴンのような姿をしたロストが暴れてるのが見えた。

「あれー? おねえさんどうやってここにはいってきたの?」

 明日香の前方、廊下の真ん中にフードを被って制服を着た一人の少年が立っていた。

 フードの中から青い髪が見えている。

 この学校の生徒だろうか。だが一般人の避難は済んでたはずだ。ここに人がいるのはおかしい。

 少年は風船ガムを噛み膨らましながら明日香をじっと見つめる。

 夕焼けに照らされたその姿が、この現場に不自然で明日香は身構えた。

「どうしてここにいるの? ここは危ないから早く避難して」

「あのかいぶつ、すっごくつらかったんだねえ」

 割れた風船ガムを口の中に戻し、再び噛みながら話し出す。

「いろんなひとにきずつけられて、いかりがたまって、ようやくはっさんできるとおもったらおさえつけられて、かわいそうだとおもわない?」

「……なに、何なの貴方。ロストのことを知ってるの?」

「いままでつらかったんだからさあ。おもうぞんぶんあばれさせてあげればいいじゃん。へたにてだしするとさあ」

 その時、瓦礫が壊れるような振動と音が響き、建物が衝撃で揺れる。

「誠司!」

「かいぶつのこうげきくらって、しんじゃうかもしれないよ?」

 少年がニヤリと気味悪い笑みを浮かべる。

 明日香は少年の横を走り抜け、非常階段のドアを開けて外に出た。

 非常階段を降り、別棟の建物に移動してベランダのある開けた場所に出る。

 そこからロストに向かって矢を放つと、ロストがこちらを向いた気がした。

 勢いよくロストが明日香の方に向かってくる。ベランダから隣の教室へ移動してロストの攻撃が届かない場所を探し走り出す。

 奥の教室まで辿り着いた時、ロストがベランダから教室へ飛び込んできた。

 がらがらと壁が崩れる音と共に土煙が舞う。

 モンスターを討伐するゲームに出てきそうなドラゴンの獰猛な目が明日香を捉えた。

 すかさず明日香は弓を引っ張り光の矢を放つが、大きい割に俊敏なドラゴンの動きを捕らえることが出来ない。

 次の瞬間、ドラゴンが旋回し、尾を振り抜いた。

 咄嗟に身体を引くも遅かった。視界が横に跳ねる。

 鈍く重い衝撃が全身を打ち、明日香の体は二階の教室から宙を舞った。

「──ッく……!」

 地面が近づいてくる。思考が、時間が、引き延ばされる。

 だが運命の女神は、わずかに彼女に微笑んだ。

 眼下、中庭に設置されたテント。日除け用の帆布が張られた、簡易の休息スペース。

 そこへ明日香の体が叩きつけられる。

 バシャッ、と裂けるような音とともにテントは崩れ、支柱が折れ、帆布が一瞬クッションのように沈む。

 そして明日香は帆布ごと地面に落ちた。

 胸に詰まった息が一気に押し出される。

「ッ……ぐ、あ……っ」

 体は痛む。肩に痺れ、肘を打った鈍痛がじわじわと広がる。

 だが、骨は──折れていない。

 両手に握っていた弓も、軽く擦れた程度で、破損は見られなかった。

 荒い呼吸を繰り返しながら、明日香は首を巡らせる。

 視線の先、崩れた柱の影に誠司が倒れていた。

 地面に散らばった瓦礫、赤く擦れた頬、呼吸に合わせて震える胸──その顔には苦痛が浮かんでいる。

「……せ、誠司……っ!」

 誠司は力ないうめき声を上げ、片手で胸を押さえていた。打撲だろうか。頭も強くぶつけたのか、額から血が流れている。

 誠司のそばに、誠司の武器の石である黒曜石が転がっていた。

 痛みに耐え、明日香は這うように地面を蹴り、倒れている誠司の元へと身を寄せた。

「ごめん……私が遅かったせいで、」

「いや……それよりもあのロスト、強すぎる……俺達じゃ、敵わない……」

 明日香が誠司を抱き起こそうとする前に、ロストが二人の前に立ちはだかる。

 羽を広げ、威嚇のような雄叫びをあげた。

 明日香は誠司の前に出て、庇うような立ち位置に来る。

「明日香……逃げろ……っ」

「駄目! 誠司を置いて行けない!」

 よろよろと立ち上がり、痛めた左腕を伸ばし、弦を引っ張る。誠司と同じように自分も額を切ったのか、視界が少しだけ赤に染まるが、明日香は気にしなかった。

 その明日香の背中に、誠司は既視感を持つ。

 かつての幼かったあの時の背中と重なった。


『私があなたの盾になる!』


 初めて明日香と出会った時の事が、誠司の頭をよぎった。

 ギリギリと引っ張った弦を放ち、光の矢を放とうとしたその時、弓から光が弾け飛び、弓の形が水晶の石に戻ってしまった。明日香の顔に焦りが映る。

「そん、な……っ」

 それと同時に、建物の中から無数のロープがドラゴン目掛けて飛んでいき、拘束した。

 ドラゴンはうめき声をあげて倒れ、その衝撃で地面が揺れる。

 明日香がその衝撃で膝をつきかけたその時、ひとつの人影が飛んできて明日香を支えた。

「夏歩さん……」

「よく頑張ったわ。あとは任せなさい」

 DSIの情報操作班、結城夏歩ゆうき・なつほが二人のそばに駆け寄る。

 誠司も他の職員によって抱きかかえられ、保護される。

 安堵と疲労の中で、明日香の意識は静かに、闇に沈んでいった。

かなり脚色は加えてますが、学生の頃別のクリエイターサイトでここまでの描写は書いた事があります。

ここから先は貯金が無いので少し時間がかかるかもしれません。

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