エピローグ
商業施設の中は買い物客で賑わっていた。
沢山並ぶテナントの一角には、キラキラと輝く天然石が所狭しと並んでいる。
天然石を加工したアクセサリーも店頭に並んでおり、光に当たってキラキラと輝くそれらは自然と目を惹きつける何かがあった。
耳の上で長い髪を二つに結びセーラー服に身を包んだ中学生らしい少女が、その中のひとつである透明で、だけど中が虹色に輝く宝石をじいっと眺めていた。
「沙夜ちゃん、いいの見つかった?」
同じくセーラー服に身を包んだ同い年くらいの少女に声をかけられ、沙夜と呼ばれた少女は宝石から目を離し友人らしき少女に目を向けた。
「うん、これにしようと思うけど、こっちもなんだか気になって」
「ってこれ高っ!? 一万円もするの? お小遣い何ヶ月貯めれば買えるんだ……でも確かに綺麗だね」
友人が値札を見て驚きつつも、その宝石の綺麗さに見合った値段だと渋々納得する。ネックレスに加工されたその宝石の前に『アイリスクォーツ』という商品名が値段と共に書かれていた。
「さっきお店のお姉さんが教えてくれたんだけど、水晶の中にクラッチっていう傷が入るとこんな風に虹色に輝くんだって」
「へえー。傷が入ってるのに割れないってすごいね。硬度が強いのかな?」
「なんか、傷付いても輝くのを忘れないみたいで、良いなあって」
沙夜が微笑みながら、でも、と呟いて小さな買い物かごに入れた薄桃色のブレスレットに視線を落とす。
「これは紅葉ちゃんの言う通り高いから、今回はこれにする」
「そっか。これも可愛いよね。……これ確か恋愛成就に効くって書いてなかったっけ?」
友人、紅葉が軽く首を傾げながらブレスレットを見る。
沙夜の買い物かごに入っていたブレスレットに使われている天然石は、ローズクォーツと言って主に恋愛運の向上、出会いを謳い文句として売られている物だ。
なので大抵想い人がいるとか、好きな人を振り向かせたい等、恋愛関係の願望を持つ人が買っていくのである。
「お姉ちゃんの誕生日プレゼントだよね? お姉ちゃん好きな人がいるの?」
「んーそれは分かんない」
「え、分かんないのにそれにするの?」
「だって可愛いしお姉ちゃんに似合うと思ったから」
「まあ確かに可愛いけど」
沙夜の言い分に紅葉もそういう視点もあるよねと納得する。彼女も父親に渡すプレゼントを決めたとの事で、二人は揃って会計場所に向かった。
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「あ、ごめん私御手洗行ってきていい?」
「分かった、じゃあここで待ってるね」
天然石のお店を出てすぐの所で、紅葉がそう言ってから店のすぐ脇の通路に入っていく。
いくつかソファが並ぶ付近の壁に沙夜は寄りかかり、鞄の中から小さな巾着袋を取り出した。
リラの花が刺繍されたその中に入っていたのは、薄桃色の小さな丸い玉だった。それを親指と人差し指で摘んで目線の高さまで持ってくる。
これは沙夜のコアだった物であり、一度だけ魔法の杖のようなギアに形を変えた物だ。
明日香達のコアのようなヒビは入っていないが、今は光に反射して輝くだけで力は何も感じられない。
だが、沙夜にとって大切な物だった。
「ローズクォーツは、沙夜とお揃いだもんねー」
商業施設を照らす明かりに玉をかざしながら、沙夜は笑みを浮かべてその玉を眺めていた。
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