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美少女の死体に受肉したけど、嫌われ者だったので正体隠して暗躍する  作者: 中上二等
Re:学園編

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94:解読(後編)

 さて、エメリーヌを学園に侵入させるのが困難だったため、後手に回るのを避けるべく【教化】なしでアルバンのもとに突撃したわけだが。


「〈カアウラスは魔力を喰らう〉〈魔法は効かない〉」


「〈魔法を撃ってはならない〉〈魔力を喰わせてはならない〉」


「〈魔力を断ち、剣によって滅せよ〉」


 ひとまず、アルバンは俺が模写してきた古代文字を読み解いてくれた。彼いわく、言語学としての文法研究は専門外だが、解釈を中心に()えた読解であれば趣味で到達できたと。皇国貴族による歴史改竄の過程で古代文字の用例そのものが貴重なはずだが、趣味で習得してしまうとは恐れ入った。


「これは……いったい。()()()()()? カアウラス神を、滅せよだって?」


 アルバンが以前に見つけた壁画で知りえたのは、〈皇国貴族は罪人である〉ことと〈皇国貴族が責任を果たさなければ世界は破滅する〉ことの二点。突然、自分たちが崇める神の名が出てきたらそりゃ、混乱もする。


「なんだ……とんでもないデタラメの文章じゃないか。まったく意味が分からない。ひょっとするとあのときの壁画も──」


 彼は動揺のふちから這い上がれずにいたが、それはともかく、俺としてもデカいヒントを得た。予測していたことではあるが、カアウラスは魔力を吸収しその身の力としてしまう。


 〈魔力を断ち、剣によって滅せよ〉か。

 ファルマンはどうするつもりなのか。


 魔力を断つというのは難問だ。この世界には魔力がありふれている。まずもって大気に満ち満ちているし、平民にはわずかしかないとはいえ人間はそのほとんどが魔力を持っていて、全身が魔力で構成された魔物などという生命体もいるし、魔法具だって普及している。


 そこらでカアウラスを相手取ったところで手当たり次第に魔力を喰って回復されてしまうというわけだ。それを断つとなると……。

 

 うーん。

 

 パッと思いつくのは、障壁を利用して閉じ込める、とかか。しかしあの巨大触手生命体を中に入れて封じ込めるほど強力な障壁、一個人じゃ大魔法師が逆立ちしたって張れないだろう。


 それこそ大障壁(オルトゥム)のような遺物級の障壁でなければ────。


「…………なるほど」


 これか。

 皇都中心で広大な敷地面積を誇る学園と大聖堂を丸ごと覆う、ドーム状の巨大障壁。


 ファルマンはこれにカアウラスを閉じ込めるつもり……かもしれない。ニルスの《摩転書(まてんしょ)》を用いて連れ込んで、そこからどうやってかカアウラスを討伐する。現実味はある。

 とはいえ魔法を使わずに殺すというのはなかなかに厳しい。この世界における最大火力が魔法だ。剣によって滅せよ、なんて言われたって金属の棒ごときであの巨大触手生命体をどう殺すというのか。


 まぁもしそこがダメでも、閉じ込めてくれるだけでかなり戦いやすくなるのは容易に想像がつく。


 天使の神聖力すらカアウラスは取り込んでしまうようだが、感触としておそらく魔力ほど急激なものではない。ヤツはヘルゴエルの「更新(リセット)」の力を千年かけてじわじわ取り込んだにすぎない。


 もし万が一、殺害そのものが不成功に終わったときは、やはり莫大な量の神聖力でゴリ押して、俺が討伐するしかない。

 俺にはラグナという神聖力の貯蓄庫がある。この世界に降臨して三年あまり、こんな事態に備えて地道に貯金額(ストック)を増やしてきたのだ。


 ラグナという存在が活きる最大の場にして、最期の場になるかもな。


 今の俺はラシェルとラグナの両頭で人間をやっているわけだが、いざというときどちらの肉体を残し本体とするかと言われたら、迷わずラシェルを選ぶ。


 神聖力を受け入れる「器」がラグナとは比較にならないほど大きいのだから当然だ

 それになんだかんだ、公爵令嬢ラシェルに受肉して三年が経った。口調が時々侵食されるくらいには馴染んでいることだしな。


「アルバン先生」


「……あ、あぁ。なんだい?」


「この文章の件は内密に。まぁコレと『罪人』の文章だけでは何が何だかという感じでしょうが。そこの補佐の人にもよく言い含めておいてください」


 俺は立ち上がった。


「でなければ、後悔するでしょうから」


 軽く神聖力を放ち、室内の四方に沿って這わせた。部屋が揺れる。天井と壁に亀裂が入り、窓がガタガタと鳴る。アルバンと補佐官は息を呑んだ。


「お忙しい中、ありがとうございました。非常に助かりました、アルバン先生」


 さて、昼休みの時間を盛大にオーバーし、講義をサボる形になってしまったが……。


 確か、前期演習試験の説明会だったか。


 遅刻扱いだろうが、今からでも講堂に向かうか。

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