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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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18/27

18 おにいはヒモになったの?


 「亨ちゃん、今日ご飯なにー……って、あら」

 ニコニコしながらアイリさんが入ってきた。

 どうやら今日はまだ飲んでないようだ。


 「ちょ、おにい、この美人さん誰!」

 「やだもう、美人だなんてー、すごくいい子ねー」

 まぁ、美人なのは間違いない。頭に『残念』がつくけどな。


 「亨ちゃん、この子は、彼女さん?」

 これは、一度説明した方がいいな。


 アイリさんとエレナさんが座り、対面に環と操が座る。

 アンジュはアイリさんの膝の上だ。

 ちなみに俺は立っている。

 椅子が無かったからな。


 「えっと、こちらは俺の妹の環と操です」

 「あら、妹さん!? どうりで利発そうな子で」

 「いやぁ、それほどでも」

 「この人、人を見る目もあるのね」

 リップサービスだよ。この人の営業成績なめんな。


 「で、こっちが、同居している海道さんで、アイリさん、エレナさん、アンジュちゃんだ」

 ペコリと頭を下げる三人。

 慌てて二人も頭を下げた。


 そして、環が最大の疑問を聞いた。

 「あの、おに……兄とはどういったご関係で?」

 「家族?」

 バカ! 他に言い様あっただろう。


 「ちがっ! その、いろいろあって、家事を手伝う代わりに住まわせてもらってるんだ」

 「あの、こんなこと言うのもなんですけど、うちのお兄ちゃんがそこまで役に立つとは……」

 「ひどっ!」

 環が笑いながら突っ込んだ。笑いながら言ってる時点で同罪だけどな。

 しかし、操は酷いなぁ。

 もう勉強教えてやらないぞ。


 「亨は凄いのよ! わたしに勉強教えてくれるし、家事も完璧だもん」

 そんな目で見るな。

 うちの妹二人の疑うような目が辛い。

 本当のこと言えないしな。


 「アンジュ、おにーちゃ、しゅき!」

 「手……だしたの?」

 「ロリコン」

 「違う」

 「じゃあ、ペド?」

 「やめろ」

 妹からの評価がこんなに低いとは思わなかった。


 そうだ、俺も気になってたんだ。

 「環は俺に何の用だったんだ?」

 「え? あ、ああ……そうそう。お母さんが荷物出したら戻ってきたから、見てきてって」

 「あー……」

 これは俺が悪いな。

 引越し先伝え忘れてたわ。


 「あとで、LINEしとく」

 「いいよ、お母さんどうせ見ないし」

 だよな。じゃなかったからわざわざ環が学校帰りに来ないよな。


 では、もう一つの謎を聞こうか。

 「じゃあ、操はエレナとなんで一緒なんだ?」

 「塾一緒だし」

 「今まで接点あったのか?」

 「あったわよ。まぁ、家に来るの初めてだし」

 初なのか。なんで急に。


 「今まで成績最下位だったのに、模試で一位取ったから、どうしたんだろうって。お兄ちゃん見たら納得した」

 「そ、そうか……」

 エレナ、よく塾やめなかったな。


 「で、なんでお兄ちゃんは、こんな場違いな中で生活してんの?」

 「話すと長くなるが、端折ると、生活能力が無くて、つい住み込みで」

 「住み込みになる理由が分からない」

 「アンジュが気に入っちゃったからよ。あ、わたしもね」

 「「!?」」


 サラッととんでもないこと言うな。

 妹二人がフリーズしてしまった。

 俺とエレナを何回も見る。


 「ねぇ、正直に言って。本当に手、出してないんだよね?」

 「今なら捕まるだけで済むから」

 「人を犯罪者みたいに言うな」


 そもそも、手を出されたのは俺の方なんだよ。

 コロッとこの世から退場しそうになったんだからな。

 でも、よく考えたら、よくそんな相手と一つ屋根の下で暮らしてんな、俺。

 そんなことを考えていたら、アンジュが場の空気を壊してくれた。


 「おなかしゅいたー」

 「あら。じゃあご飯にしましょうか」

 「そうね。あ、食べてく?」

 「じゃ、じゃあ……はい」

 「お兄ちゃんの料理スキルを確認しないといけないしね」

 家でもたまに作ってただろうに。簡単なやつだけど。


 「はあああ? これ、え? これ、おにいが作ったの?」

 「うっま! え、いつの間にこんなにレベルが……」

 居酒屋でバイトしてたからじゃないかな。

 高校の時もファミレスでバイトしてたし。まぁ、あれは温めて出すだけだけど。


 「ほんと、お店の味なのよねー」

 今日は、妹二人がいるからか、お酒は控えている。

 いつまで、その猫かぶりを続けられるか見ものだな。

 エレナは、無言でかっくらっている。

 少しは猫を顔に乗せろ。五匹くらい隙間なく被せるんだぞ。


 そうして、食べ終わると、二人は俺を見た。

 「おにいが心配だから、たまにくるわね」

 「うん。エレナとどこまで進展したか確認しないとだし」

 操は何言ってんだ?


 そんなエレナは、ダラシなく座って、お腹をさすっていた。

 「ふぅ〜〜〜」

 アンジュもお腹いっぱいなのか、船を漕ぎ始めた。


 「あー、ダメダメ。ほら、歯磨きはしないと」

 「んー」

 「嘘でしょ」「マジで?」

 洗面台へアンジュを連れていく時に、二人が疑問を口にしていた。


 アンジュが歯を磨き終えると、体力の限界に達したらしい。

 寝てしまったので、抱きかかえて戻る。


 「まぁ、結婚出来ないよりマシよね」

 「こんなに立派になって……」

 環は未だに苦い顔をしているが、操はハンカチで眦を拭っていた。


 そして、その後帰るということで、送ってくと言ったら、やんわり断られた。

 「いいわよ、駅二つしか離れてないし」

 「そうそう。新婚生活邪魔しちゃ悪いし」

 「新婚じゃないし」


 二人はまだ何か思うところはあるようだが、今日は素直に帰っていった。

 そして、リビングへ戻ると、既にアイリさんは三本程空けていた。

 飲むの早すぎませんかね。

 戻ってきたらどうするつもりだったんですかね。


 「亨……」

 エレナが俺のシャツの裾を引っ張る。

 「どうした?」

 「あ……、や、なんでもない。……今日もご飯美味しかった」

 「そうか」

 「うん。……あ、後で勉強教えて」


 最近は、食後に勉強をするようになった。

 たまに、変な勘違いしたりするが、まぁ、前ほど酷くはない。

 すぐに修正出来てるからな。


 「あ、洗うのも手伝うわよ」

 「そう? じゃあ、洗うからゆすいでくれな」

 「うん!」

 こうして俺の日常は変わらずに続いてくれればいいんだけどな。

 俺はそう願いながら、汚れた食器を水に浸した。


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