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「はははは! どうした! オレの力に手も足も出ないか、ルビー!」
ミゲルが言うや否や、閃光がルビー目掛けて走る。
ルビーは涼しい顔をして乗りこなす箒の軌道を変え、抱き抱えているコロンとともにひょいとその閃光を避けた。
「なぁにが手も足も出ないだよ。目も見えなくなったのか? ミゲル」
「悪あがきが! 現に逃げ惑っているではないか!」
確かに先程から攻撃を仕掛けているのはミゲルのみだ。ルビーはその攻撃からサッと身を交わし、縦横無尽に飛び回り続けている。
魔法陣に捕えられていたこともあり、コロンはかなり自身の力を消耗しているように見えた。
「ルビー! 自分のことは自分でなんとかすル! 降ろセ!」
「んー? こんなところで降ろして、ミゲルが面倒な魔法かけてきたら厄介でしょ。それに? 可愛い子を守ってるって思えてた方がやる気出るし?」
「本当に……気持ち悪イ……ッ」
「はは。本心なのになぁ」
「……ッ」
コロンに悪態を突かれながら、ルビーは一瞬眉を下げた。その反応にコロンは複雑な表情を浮かべる。
「ふふふ。そんな顔しないで? まずはアイツをなんとか……しようかっ」
ルビーが言い終わると同時、箒から飛び降りコロンと共に急降下する。その様子にミゲルは目を見開くも、すぐに笑い出した。
「ふはははは! 血迷ったかルビー! 消えろ!」
その様子を見たミゲルは高らかに笑い、先程と同様の威力で再び閃光を放った。
「甘いよ」
言うが早いか、ルビーはミゲルの背後を陣取り素早く自身の魔法陣を固定する。その魔法陣は、ルビーが縦横無尽に飛び回りながら密かに仕掛けた魔法石からの光で組まれていた。
「何⁉︎」
「……お前はさぁ、本当に前しか見えてないなっ!」
言葉と同時にルビーの魔法陣が眩い光を放つ。
「陣に纏いし紅よ、共に散ろう。コランダム=サークル! 展開!」
ルビーが唱えるとともに、眩い光が意志を持つかのようにミゲルへと伸び、そのままミゲルを捕らえた。
「ぐっ……!」
「さて、愛する弟子と、愛する人を弄ばれて……俺もうはらわたが煮え繰り返りそうなんだよね。このまま締め上げてもいいけど、どうしようかな」
「はっ……何が愛だ、お前にそのような感情、持てると思っているのか」
「本当に……気分を害してくるな、ミゲル」
ルビーの紅い瞳が黒々しく輝く。その光景を遠巻きで見ていたコロンはたじろいだ。その瞳は思い返したくないものを、強制的に脳裏に浮かび上がらせコロンは嗚咽した。
「ルビー、もうやめロ! 詠唱魔法まで使っテ、それじゃ本当に締め上げてしまウッ!」
「いいや。もう……色々聞きたいこともあったけど、全部いいかな。全部、どうでもよくなってきたから」
ふっと笑うルビーは、軽口を叩いてコロンをおちょくっていた先刻までのルビーとは違うものに見えた。
「じゃ、ミゲル。パイによろしく」
「……っ!」
ミゲルを捕らえたままの光がより一層鈍く輝き、そのままミゲルを飲み込もうとした時、
「まってーーーーー!」
「……っ⁉︎」
突然の大声にルビーが一瞬怯んだことで、魔法が解けた。そしてその声の主の方向を見て深くため息をついた。
「……リオくんはどうしたんですか、レミィ」
「あ……えっと、直感で、嫌な予感がしたから、まずこっちを助けにきたの!」
髪を乱しながら杖を握りしめ、困ったように笑うレミィがそこにいた。




