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この世界での売買はグルトという通貨でやり取りされている。その貨幣はどこで作られ、誰が世界へ渡らせているのかは住人たちではわからなかった。それぞれの国では城で取りまとめ、周辺の小さな町ではそこの長が管理をするのが一般的。
共通するのは、どの国や大陸においても同じ通貨を使うこと。貨幣に刻まれた紋章からは、人々に伝えられている魔法戦線時代には普及していただろうということが、推測できた。
リオが店主と話し終え、レミィと再び店内を見回していたとき、チカチカと眩く光る何かをリオは見つけた。
「なんだこれ……?」
それは雫の形をあしらった首飾りで、その雫型の石が光を発していた。
「あー!」
リオが手に取った首飾りを見てレミィは声を上げた。
「な、なんだよ」
「それ、“ハトレアのしずく”じゃない?」
「“ハトレアのしずく”?」
「うん、えっとね」
そう言うとレミィはひとつの物語を話しはじめた。
──昔、『ハトレア竜』という偉大な竜がいました。
その頃、一番の力を持つハトレア竜は、悪人などの力を欲する者たちに狙われてたくさんの戦いを強いられていました。力を狙われ続けたハトレア竜はとうとう暴走し、ついには天変地異を巻き起こし、荒れ果てた世界へと変えていきます。
ハトレア竜と共に生きる『ハトレア族』はそれを嘆き、共に暮らしていた龍の化身である少年の提案で、その少年の力と、ハトレア竜と心を通わせることの出来た魔法使いの少女の力をもってハトレア竜を封印することにしました。
ハトレア竜はもう二度とハトレア族と大空を飛べないことを哀しみ、大粒の涙を流し消えていきました。
その時の涙が結晶となり、“ハトレアのしずく”として残されました。
「こんな感じの話が、“ハトレアのしずく”の物語。持っている人が危ない時に、心が正しい人だったら助けてくれるんだって」
「へぇ、伝承的なやつか? よく知ってるな」
「えへへ、ルビー先生がたくさん話してくれて……あれ、ルビー先生だったっけ?」
「知るかよ……」
あやふやに話すレミィに、先程まで感心していたリオは呆れ返る。
「そんな伝承、信じるわけじゃないけど……なぁ、これはいくらだ?」
「んん? なんだ兄ちゃん。そんな商品知らないな。そうだな、五十グルトでくれてやる」
「……知らない商品も金取るのか」
リオは剣と首飾り、変装用にローブを購入し、レミィと店を出た。レミィもあれこれ買っているようだが、あまり言及しないことにした。




