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「お前たち! 何をグズグズしている!」
ミューハ国の第三王子サンティトルまたしても苛立ちを隠せずにいた。
「もう三日になる! 黒髪が最初に現れたのは城内だったはずだ! なぜこうも捕まえられずにいる!」
一列に並べられた番兵たちは、サンティトルのいつもの小言だとどこか上の空だ。実際に、隊の指揮をとったことのないサンティトルの言葉を聞く者はあまりいなかった。
それが自分でもわかっているサンティトルは、余計に腹を立てていた。
「国内へ入る黒髪を見た、との目撃情報がありました!」
「なんだと!?」
ざわめくサンティトルと番兵たち。どこからか聞こえたその声を、また違う者が広め、最早誰が最初に言い出したかわからない。
「ええい、うるさい! 黒髪をいち早くボクに差し出せば、褒美を倍にしよう! ただ一人にだけだ! わかったら行け!」
「「「はっ!」」」
褒美を倍、という言葉に釣られてか、先程までとは打って変わって士気を高めた番兵たちは勢いよく玉座の間から駆け出した。
明らかに褒美に釣られている番兵たちを横目に、サンティトルは切なそうな表情を浮かべる。
「ボクには、力がないのか……」
「坊ちゃん」
「そんなことない……いや、ありません。王子」
「ん?」
いつものようにヒージがサンティトルを慰めようとするのを誰かが遮った。
見ると、先程駆け出していった番兵たちと同じ兵服。帽子を深く被っているので、顔がよく見えないが声色から若さを感じ取れる。
「なんだ、お前は……」
「王子のお力は皆わかっております。ただ、今まで日の目を浴びることが出来なかった。強欲な父と兄たちのせいで。違いますか?」
「ぐ……」
「わたくしたちの指揮者は今、サンティトル王子なのです。やっと、やっとです。必ず、王子の望みを叶えてみせましょう」
そう言うと、その番兵は足早にその場から立ち去った。
「ヒージ……良い部下もいるものだ」
「はい、坊ちゃん」
玉座の間から出た番兵は帽子に隠していた長髪を外に出す。
「あっちぃ。この服も帽子も蒸れて嫌なんだよな」
自分がいなくなった場所で、サンティトルとヒージが何やら満足そうに話しているのを確認し、ニヤリと口角を上げた。
「そうそう。まだ、そのままでいてくれないと、こっちも困るからな」




