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 ◆九白弓子



 九白弓子は、自宅でふてくされていた。


 仕事を放りだし、何もしないでゴロゴロしていた。


 原因は、妖王討伐に参加できなかったからだ。


 十家が雲上院家関係者の参加を厳しく取り締まったため、接近さえ許されなかった。


 その結果、何もできなかった。


 妖怪の中で最大の強さを誇ると言われる妖王に、自分たちの力を試したかったが叶わなかったのだ。


 遠くで暴れる妖王を前に、指をくわえて見ている事しかできなかったのである。


 しかも、とどめを娘が刺したと聞き、不機嫌具合もマックスとなってしまう。


 娘に美味しい所を取られてしまった。


 妖王ほどの獲物には滅多にお目に掛かれない。


 次のチャンスは、いつ来るか全く分からないのだ。


 そう思うと何もやる気が無くなり、ゴロゴロから抜け出せなくなってしまう。


 残念でならないが、これ以上ふてくされていても仕方がないか。


 たまった仕事を片付けていこう。


 そう気持ちを切り替えていたら、緊急連絡が入った。


 なんでも娘の通う学校に武装集団が現れたらしい。


 複数のヘリに乗って現れ、全員銃火器で武装。


 組織だった動きで、校内全域の占拠を目的として行動しているとのことだった。


 途端、弓子の落胆していた心に火が付く。


 なんだ、その面白そうな奴らは。


 非常に歯ごたえがありそうだ。


 続報が入るたびに、心の火は勢いを増して燃え盛る。


 とうとう平常の精神状態を超え、眼前にニンジンをぶら下げられた気分にまでなってしまう。


 携帯端末から、どうしますか、と確認がくる。


 弓子の決断は早かった。


 ――行ける奴全員で行く。


 妖王討伐で活躍できなかった鬱憤をここで晴らす。


 弓子は、すぐさま装備を整え、集まった部下の前に立った。


「聞け。パーティーに飛び入り参加だ。場所は煌爛学園。あそこまでなら、身体強化を使って走るのが一番早く着く。全員、全力で行け」


 弓子の号令の元、クシロセキュリティーの社員が駆け出す。


 向かう先は、煌爛学園。


 狙う獲物は、武装集団。


「全員逃すなよ。全部うちの獲物だ」


 弓子は口角を上げて笑うと、駆ける速度を一段上げた。



 ◆とある脱獄犯



 数日前に起きた地震の復旧作業で隙が出来て、脱獄に成功した。


 要約して説明すれば、そうなる。 


 とにかく、逃げ出せた。


 メンバーは六人。これだけいれば、なんとかなる。


 それぞれ得意分野があり、早々に捕まる事態を避けることに成功した。


 逃走に成功して、まだ一日経過していない。


 そのため、報道もされていない。


 しかし、このまま逃げ続けても、いつかは捕まってしまう気がする。


 どうするか悩んだ末、学校を襲うことになった。


 ターゲットは煌爛学園。あそこは生粋の金持ちが集まる場所。


 あそこで適当な生徒を見繕って攫えば、逃走資金を手に入れられる。


 もし失敗しても、あの学校の生徒を人質にすれば凌げる。


 あそこの生徒は有名人の子供ばかり。


 警察が下手をうって、子供が傷つけば大問題になる。


 そういう事情はこちらに有利に働くはずだ。


 幸い、銃の入手にも成功した。


 人数もいるし、これなら何の問題もない。


 俺たちは意気揚々と学園に向かった。


 そして近場で車を止め、侵入を図る。


 すると、突然俺たちの目の前に黒ずくめの戦闘服を着た男たちが大量に現れた。


 走ってきたように見えたが、見間違いだろうか。


 というか、どう見ても同業者だ。


 こっちが先に目を付けたのだから、今回は遠慮してもらいたい。


 俺はそう考えて、そいつらに話しかけた。


「おい、お前ら。ここには俺らが先に来たんだ。悪いが、こういうのは先着順だ。今日は遠慮してくれないか」


 すると、男たちが無言で睨み返してきた。


 そんな中、代表者と思われる人物が前に出て来た。


 そいつは女だった。すげえガタイをしているし、威圧感が半端ない。


 だけど、そんなことでビビってる場合ではない。


 舐められる前に、どちらが上かきっちりさせておかないと。


「おい、聞いてるのか。こっちが先約だ。ここの獲物は俺たちが貰う」


「なんだと、コラア!」


 ――ブチ切れられた。


 代表者の女が話し合いに応じず、俺の襟首を掴んできたのだ。


 見かねた部下の男たちが、代表者の女を止めている。


 説得されて落ち着きを取り戻したのか、女が口を開いた。


「てめえらじゃ分不相応だ。人数も心許ない。ここは私たちに譲れ」


 と、睨みつけてくる。


 く、確かに向こうの方が人数が多いし、武装も充実している。


 成功率が高いのは、確かに向こうだろう。


 だが、こちらも引くわけにはいかない。


 こっちだって捕まるかどうかの瀬戸際なんだ。


「うるせえ! こっちは命がけなんだよ! お前らにその覚悟はないだろうが」


 俺たちは、ここに全てをかけている。


 脱獄犯の寄せ集めとはいえ、気持ちでは負けていない。


 そういった思いのたけをぶつけてやった。


「へぇ、気合いが入ってるじゃねえか。そういう奴は嫌いじゃない。いいだろう、等分だ。獲物は山分け。それで文句ないだろ?」


 と、女が妥協案を提示してきた。


 それなら悪くない。


 二組の犯罪者が同時に誘拐を試みれば注意が分散し、かく乱できる。


 逃走する際も、相手を囮に使えばいい。


 これは単独で行くより、うまくいくかもしれない。


「いいだろう。それでいこう。だが、俺たちの邪魔はするなよ」


 そう言って俺は手を差し出した。


「おうおう、言ってくれるねえ。その威勢の良さだけは評価してやる」


 と、女が応え、手を握り返してきた。


 俺たちは深い握手を交わし、不可侵協定を結んだ。


「で、お前らはどのクラスを襲うんだ? 人質が被ると困るから、その辺りはきっちり確認しておきたいんだが」


 と、俺が尋ねた瞬間、ゴキリという音が聞こえた。


 どこからそんな音が、と一瞬分からなかったが、自分の手から聞こえたのだと分かった。


 女が俺の手を握りつぶしたのだ。


「おい、てめえ。今何つった? もう一遍言ってみろ」


 額が接触するほど顔を近づけた女が聞いてくる。


 焦った俺は何を思ったか、馬鹿正直にもう一度質問を繰り返してしまった。


「いや、だから、襲撃するクラスだよ。同じクラスに行ったら鉢合わせになるだろうが」


 途端、もう一度ゴキリという音が鳴った。


 脂汗が止まらない。


 俺は、女と握手していた手を見た。


 今まで見たことがないくらい細くなっていた。


「おい、こいつら全員拘束しろ。今すぐだ。くそ、余計なところで時間を食った。同時進行で侵入準備を開始するぞ。武装集団が逃げられないように全体を霊装で囲え、ジャミングも忘れるなよ」


 女は俺の腹に一撃を入れながら、そんなことを言っていた。


 次の瞬間、部下の男たちが動き出し、俺の仲間を一瞬で打ち倒していく。


 更には、黒い何かが大量に発生し、学校の壁沿いに展開されていく。


 ……なんだあれは。


 そして、俺は意識を失いそうになって地面に倒れた。


 地面に顔を付けた時、気絶して倒れている仲間たちが見えた。


 ――結局、俺たちは学園に侵入する前に、よくわからない集団にボコられて全員気絶した。




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