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 レビューをいただきました! ありがとうございます!


 


 その行動に、狐坂は不安を覚えた。相手の力を見誤っていないかと。




 そして――。


 狐坂の予感は的中した。


 王は九白真緒に倒された。


 相手をいたぶろうと画策し、初めから全力を出さなかったためだ。


 その結果、九白真緒の攻撃をまともに受けた。


 あの女の反撃を受けて、消し飛んでしまったのだ。


「……あれだけ言ったのに、どうして……」


 塵となって消えていく王を前に、呆然と佇む。


 数秒後、我に返った狐坂は、決死の覚悟で王の凶石を回収し逃げ出した。


 そして、逃げる途中で王の石を食らう。


 すると力が増す。


 王は胃根の遺産を取り込んでいた。


 その分も王の石に上乗せされていたため、更に狐坂の力が増した。


 ただし、いくら力が増強されようとも、過去に移動した際に負った魂の傷までは回復していない。


 寿命は減ったままだ。


 それでも、まだ余裕はある。再度過去に行くことは出来る。


 しかし、過去に移動する前と違うことが起きすぎた。


 問題は時間の経過だ。


 今までと同じ移動距離だけ過去に戻っても、同じ地点にたどり着けない。


 少し時間が進んだ先に戻ることになってしまう。


 それでは、王が復活した後になる。


 前回と同じ時間に着くためには、移動距離を増やす必要があった。


 つまり、命の消耗が増す。


 いや、力が増した分だけ、消耗に耐えられるようになっているかもしれない。


 とにかく、王と霊術師たちの戦闘が始まっている場所に戻っても仕方がない。


 そうなっていては、手が打てない。


 戻るなら、王が目覚める前に戻らないと意味がないのだ。


「……やるしかない」


 できれば、じっくりと計画を練りたいところだ。


 が、今ここで時間を掛ければかけるほど、過去へ戻る移動距離が長くなってしまう。


 自身への負担を少しでも軽くするためには、一刻も早く過去へ戻る必要があった。


「もう一度だ……」


 狐坂は自身の魂を起点に設定。


 現在と、目指すべき過去の自分の座標を線で結ぶ。


 そして、自身への負担増加を承知の上で、再度過去へ戻った。


 ――トンネル状の次元の回廊を抜け、目的地へとたどり着く。


 地面に両の足をつけ、周囲を確認すれば、緊張感と静寂が入り混じった洞窟が見える場所にいた。


 隣に監視タイプの配下がいる。


「……何とか戻って来れたか」


 と、ここで体の異常に気づく。


 二度の時間移動により、予想以上に体へ負担が掛かっていたのだ。


 この二回で、これがどういった力なのかも、より理解が深まった。


 どうやら時間の移動距離より、回数をこなした事の方が負担の増加に繋がっているようだった。


 一番消耗するのは回廊を作成した瞬間。


 同じ回廊を利用する分にはさほどでもないが、新しい回廊を作ると強烈な負荷が生じる。


 といっても、回廊は時間経過で消滅してしまう。長時間の維持は難しかった。


 この調子だと、後二回も過去に戻れば命に関わるだろう。


 できれば、これで決着を付けたい。


 しかし、どうすればいいか分からない。とはいえ、時間がない。


 迷っている暇はないと判断し、王の元へ向かう。


 ――そして、洞窟へ侵入した後、王を連れて胃根の隠し場所へ移動した。


 迫る時間に焦りを覚えたせいか、何の策も思い浮かばなかった狐坂は、王にありのままを話した。


 自分が過去に戻れること。


 見た目は幼いが、強力な霊術師に王が敗れたこと。


 敗因は、見た目で侮り全力を出さなかったためだということ。


 自分に残された命では、やり直しはそう何度もできないということ。


 狐坂の言葉を、王は凶石を食いながら神妙な顔で話を聞いていた。


「にわかには信じられん話だな。だが、嘘を言っている様には見えん」


 こちらの必死さが伝わり、王が一考する。


「いいだろう。全力を出す。どのみち、全て滅ぼすのだ、ためらう必要などどこにもない」


「王よ!」


 狐坂は、王の英断に歓喜する。


 これで何とかなる。


 これで、勝てる。


 狐坂は、心の底から安堵した。


 ――――――しかし、駄目だった。


 眼前で、王が塵となって消えていく。


 今回は油断しなかった。


 初めから全力だった。


 出し惜しみなど、一切なかった。


 しかも、ただの全力ではない。


 胃根の遺産を使って力を増強した状態だ。


 それでも、駄目だった。


 一瞬拮抗した状況になったようにも見えたが、決着が早期に着いたことを考えると、実力差があったのだろう。


 そもそも、前回も今回も、王は九白真緒と一対一で戦っていた。


 周囲に居た九白真緒の仲間は一切手出ししていない。


 前回も今回も、奇襲に近い突然の出来事だったため、仲間たちは咄嗟に反応できなかったのだ。


 つまり、再びやり直して、こちらに有利な展開になったとしても、戦いが長引けば仲間が加勢に入る。


 一対一で圧倒されているのに、それに加えて無傷の仲間が控えているのだ。


 あれでは無理だ。


 どんなことをしようとも、絶対に勝てない。


 狐坂は王の凶石を呆然と見ながら、勝利するのは不可能だと悟った。


(ならば、不意打ちだ!)


 狐坂は、自身の空間移動能力を駆使し、九白真緒の背後を取った。


 今、あの女は王を倒して気が抜けているはず。


 いくら強いとは言っても、これはかわせまい。


 と、頭蓋を突き割る威力の手刀を繰り出す。


 捉えた。そう思った手刀は空を切った。


「何!?」


 絶対の自信を持った一撃が空を切ったことにより、無意識に声が漏れる。


 それと同時に、手刀を放った腕があらぬ方向へ曲がった。


 遅れて、ゴキリという鈍い音が鳴る。反撃を受けたのだ。


 攻撃を受けた方へ視線を向ければ、九白真緒が次撃を繰り出そうとしていた。


 慌てて能力を発動し、離れる。


 ――いや、離れるだけでは駄目だ。


 そう思って、着地後すぐさま遠方へ飛ぶ。


 その判断は間違っていなかった。


 軽く避けて反撃を試みようとした地点は、一瞬遅れて抉れてなくなっていた。


 狐坂の頬を冷や汗が伝う。


 ただ力が強いだけではない。反応速度も一級。


 そうだ、そういう相手だった。


 透明化の奇襲も、遠距離からの狙撃も無効化されたのだ。


 背後に転移して攻撃を仕掛けたところで、通用するはずがなかったのだ。


 これでは本当にどうしようもない。


 今は何とか回避できた。


 こちらの空間移動に面食らい、対応が遅れたためだ。


 だが、あの女なら、あと数度衝突すれば完全に合わせてくる。


 狐坂には、九白真緒に対する嫌な信頼があった。


 無理だ。


 狐坂は、撤退を決断。


 なんとか隙を突いて王の凶石を回収すると、その場を離脱した。


 ――しかし、追撃をかけられた。


 こちらが空間移動をしているのに、常軌を逸した身体能力で追跡してくるのだ。


 振り向けば、あらゆる障害物を消滅させながら、直線距離を高速で進んで来る九白真緒の姿が見えた。


 秒単位で目に見えて差が縮まっていく。


 射程が近づいたのか、奴が霊装を構えた。


 まずい、このままでは殺される……。


 焦った狐坂は移動しながら王の石を食らう。


 ――そして過去へ逃走した。


 回廊に入り、安堵する。ここなら奴も追って来られない。


 途端、胸部に強烈な痛みが走る。


 残すは一回。


 これ以上の時間移動は、死の危険が付きまとう。


 今回を最後にしなければ……。


 幸い、過去に戻ったことで、九白真緒の記憶から自分の事は消えている。


 こうなったら逃げるしかない。王を諦め、遠くへ逃げるしかない。


 しかし、それもうまく行かなかった。


 ――なぜなら、たどり着いた先が違ったためだ。


 負傷し、逃走しながら力を使ったため、座標設定がズレたのだ。


 回廊を出た先には、九白真緒とその仲間たちがいた。


 向こうは、こちらが突然出現したことに戸惑っているようで、動きは緩慢だった。


 それは狐坂も同様だった。


 呆然とし、立ち尽くしてしまう。


 終わった。


 完全な詰みだ。


 これでは王に凶石を贈ることはできない。


 それ以前に、この場から生きて帰ることは叶わない。


 九白真緒に補足された状態では、空間移動能力を使っても追跡される。


 王も、自分もここで死ぬ。


 いや、一つだけ方法がある。


 それは、今すぐここから更に過去へ向かうことだ。


 そうすれば、九白真緒は追ってこれない。


 しかし、それはできない。


 今の時間移動で能力の使用限界を迎えたからだ。


 次に使えば、死ぬ。


 運良く即死しなかったとしても、持って数日だろう。


 全ての可能性が潰えたことを悟った狐坂は絶望した。


 もう、何をやっても無駄。


 何をしても死んでしまう。


 途端、自暴自棄となっていた感情が反転。


 抑えきれない怒りとなって全身を駆け巡った。


「……お前だ。全部、お前のせいだ」


 と、九白真緒を睨む


 とうの本人は、初めて目にしたこちらに戸惑っているようだった。


 が、狐坂の怒りは収まらない。 


 こいつさえいなければ、自分は生き残ることが出来た。


 全て、この女のせいだ。


 そして、強烈な怒りの感情が、ある結論を導き出す。


 この女さえ殺せば、どうとでもなる。


 そうすれば、王が残りを蹴散らす。


 異常な強さを有しているのは、九白真緒だけなのだから。


 今更逃げるくらいなら、この女に一矢報いたい。


 だが、戦っても勝てない。


 もっと弱ければ、勝てたのに……。


 そうだ……。


 と、ここで狐坂は閃いた。


「今のお前には勝てない。絶対にな。だが、子供の時ならどうかな? いや、確実を期して赤子の時を狙う。今のお前の魂を起点に設定した。過去へ追跡し、確実に仕留めてやる」


「何を言っているの?」


 九白真緒は、こちらの言葉の意味が理解できず、首を傾げていた。


 しかし、狐坂はそんな反応を無視し、自分の思考に浸りながら回廊を作成する。


 何度も王の凶石を食らって能力が増強された今なら、長距離の時間移動も可能なはず。


 ただし、自分はこの能力を完全に把握しているとは言い難い。


 それだけの時間を移動すれば、自分がどうなってしまうか分からない。


 残された命で、目的の時間まで辿り着けるかは不確か。


 完全な賭けになる。


 だが、こいつさえ殺せば、後は王が全てを成し遂げてくれる。


 ならば、ただ一つの障害を取り除くべき。


「俺はやり遂げて見せる!」


 そう宣言し、狐坂は次元の回廊へ飛び込んだ。




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