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 ◆狐坂移蔵



 金と時間を使って調査を行った結果、精鋭軍を壊滅させた要注意人物の身元が判明した。


 名前は九白真緒。


 現在は北海道から撤退し、東京で生活している。


 奴は危険だ。あの女の操る霊術は規格外すぎる。


 あの女をこれ以上生存させておくと、各地に住む妖怪の減少に歯止めが利かない。


 そのため、暗殺を決め、計画を練っていた。


 幸い、戦力は揃っている。


 元は、胃根と鬼谷を仕留めた高位霊術師を倒すために準備していたものだ。


 だが、肝心の霊術師を探し出すことが叶わなかった。


 それなら、脅威と判明している九白真緒に全力を注ぐべきだろう。


 情報は手に入ったし、準備は整ったと言える。


 問題はあの女の身辺だ。


 現在、奴は親元を離れ、雲上院礼香という友人と同居していた。


 あの女の家と、友人の家は金持ちらしく、自身の周りに常に護衛を置いていた。


 護衛の実力は相当なもので、迂闊に近づくことができない。


 しかも、家の周りの土地を買い続けており、自宅に接近できない。


 買い増した土地に警備が敷かれ、一般人が立ち入らないため、人にまぎれることができないからだ。


 私有地内でどのような生活を送っているか、視覚的な情報を手に入れるのは不可能に近かった。


 そのせいで、九白真緒の情報を集めるのにも苦労した。


 それに加え、交友関係も厄介だった。


 大半が護衛を付けているような家ばかり。


 これならまだ学校に滞在している間の方が警備が甘い。


 しかし、学校は人が多い。できれば、孤立した状況を狙いたいところだ。


 良いタイミングはないかと、校内で孤立しそうな場所を探す。


 その際、学校の年間予定表を入手した。


 予定表に目を通し、好機となりそうな行事を発見する。


 それは校外行事だ。


 行事に参加するのは、一学年のみ。つまり自動的に人数が減る。


 それに加え、校外へ移動するため警備が薄くなる。


 しかも、少数、もしくは孤立する状況になりやすい。


 暗殺を仕掛けるには、持ってこいの環境である。


 予定表を見ると、直近で外に出る行事は林間学校だった。


 これは狙い目だ。


 街から離れる上に、周囲は障害物にあふれ、身を隠しやすい。


 この状況であれば、最近力に目覚めた個体が使える。


 能力に目覚めなかった個体を囮に使って、標的の気をひけば上手く行くはず。


 ただし、自分は現場には近づかない。


 あの女の気配察知能力は並外れている。


 近くで隠れて様子を窺えば、察知される恐れがある。


 それに加え、配下の攻撃時にノイズになる恐れもあった。


 配下には事前に指示を出し、遠方から様子を窺うことにする。


 これでうまく行くはずだ。



 ◆九白真緒



 入学から、数か月が経過した。


 それまでの間に、日高さん絡みで小さいトラブルは何度か発生した。


 例えば、掃除当番だ。


 掃除のメンバーが瀬荷城宝子たちだったため、当番を押し付けられて一人でやることになってしまっていた。


 私はクラスが違うので手伝いに行くのは不自然になってしまう。


 どうしたものかと迷っていたら、その場を目撃した雲上院派の子たちが手伝ってくれて事なきを得た。


 その後、瀬荷城宝子たちは掃除当番をサボったことを指摘され、指導を受けた。


 それ以降は日高さんが一人で掃除することもなくなった。


 といった感じで、今の所は大きな問題もなく進行している。


 ――そして、とうとう序盤の大型イベント発生時期が近付いてきた。


 それは林間学校だ。


 高校で林間学校があるのは珍しいと思う。


 だけど、快適な環境で育ってきたお金持ちの生徒が大半を占める煌爛学園であれば、そういった行事があるのも頷ける。


 きっと、お坊ちゃんやお嬢様に貴重な経験をしてもらうためなのだろう。


 しかし、今回はそれが仇となる。


 不運にも、そこで拉致事件が起きてしまうのだ。


 マンガの雲上院礼香は、その際、「自分は誘拐されたことがあるから、この程度では動じない」という謎理論を展開していた。


 しかし、傍若無人な行動が災いした結果、醜態をさらすこととなる。


 そして、何やかんやあって、ヒロインとヒーローの仲が深まるという、お約束の展開が発生する。


 というのがマンガでの流れだった。


 が、このイベントは起こさせない。


 発生を未然に防ぐ方向で動く。


 なんせ拉致事件だ。放置して監視するのは危険すぎる。


 倉庫火災イベにギリギリまで介入しなかったのは、霊気の発現の有無を確認するため。


 今回はそういった事は関係ないので、キッチリ対処していく。


 生徒に万が一があってはならないので、完全阻止である。


 私は目を閉じ、記憶しているマンガのシーンを思い出す――。


 まず初めに、悪役令嬢と同じ班になったヒロインが仕込みくじ引きで負けて、荷物持ちをさせられる。


 更に、嫌がらせで間違った道を教えられて迷ってしまう。


 そこに妖怪が出て逃げた結果、遭難。


 同時刻、教師に連絡が入り、現在地で妖怪の注意報が出ていることを知る。


 慌てて、生徒を確認。ヒロインがいないことに気づく。


 ここでヒーローが自分は霊術師だからと、捜索に志願しヒロインを探しに行く。


 そして、悪役令嬢がヒーローと一緒に居たいという邪な理由で、捜索に無理やり同行。


 その頃、ヒロインは妖怪に追いつかれて戦闘になってしまう。


 そこへ、戦闘の気配を感じ、ヒロインの霊気に気づいたヒーローが合流。妖怪を倒す。


 ただし、ヒロインは慣れない戦闘のせいで疲労状態になってしまう。


 そんな時、林間学校へ押し入って、金持ちの子供を誘拐しようとしていた犯罪者集団と遭遇してしまう。


 犯罪者集団は行動不能のヒロインを人質に取って、同行していたメンバー全員を山小屋に監禁する。


 その後、回復したヒロインとヒーローが霊力を使って、犯罪者集団を拘束。


 そして、そのことを知らせようと宿泊施設へ向かおうとするも、悪役令嬢の思い付きで遭難。


 野外で一泊過ごす結果になるも、なんとか宿泊施設へたどり着き、事件は無事解決。


 ――といった流れだった。


 このイベントで危険なポイントは、大きく三つ。


 ヒロインが遭難する事。


 ヒロインが妖怪と単独で接触する事。


 捜索に行った生徒全員が犯罪者に捕まること。


 この三つだ。


 対策としては、ヒロイン判定となった人物が迷う前に、正しいルートへ誘導。


 妖怪は見つけ次第処理。拉致グループは迎え撃って拘束。


 といったところだろうか。


 イベント再現は、ナナちゃんか日高さん、どちらかがヒロインのポジションになって進行するはず。


 今回は、悪役令嬢の嫌がらせが発端で、トラブルが膨れ上がっていく。


 今日までナナちゃんに、マンガのストーリーに関わるイベントは一切発生していない。


 ここまでの流れを見ると、日高さんを中心に物事が起きている。


 となると、日高さんがヒロインの判定を受けそうな気がする。


 しかし、そうなってくるとマンガとは違う登場人物のため、不確定要素が発生しやすい。


 レイちゃんやナナちゃんに協力してもらえば心強いが、イベント展開がどう転ぶか分からなくなる。


 今回は単独で行動し、どういう展開になるか様子見すべきだろう。


 それに、このイベントに関しては全て先手を取れる。


 それに付け加えて、トラブルが発生するエリアと生徒たちが行動するエリアが離れている。


 完全に分断された状況になるので、上手く立ち回ることが出来れば、誰も妖怪や拉致グループに接触させることなく処理できるはず。


 イベント発生地と生徒の行動場所の距離が開いているので、一人で対応しても問題ないのだ。


 というわけで、行事の前日にレイちゃんとナナちゃんに嘘を交えて事情を話した。


 内容としては、我が家の独自ルートから宿泊施設周辺で妖怪の目撃情報を入手した。


 事前に現地入りしても、群れからはぐれていた個体が当日に迷い込む可能性がある。


 林間学校を楽しみにしている人もいるので、気づかれないように内々で処理してしまうと説明したのだ。


 それを聞いた二人は自分たちも同行すると言ってきたが、それほど大事ではないので、すぐに済ませると説得した。


「それって当日休むってこと?」


 と、ナナちゃんが聞いてくる。


「ううん、途中で抜け出して、すぐ帰ってくるよ」


 私は首を振って否定した。


 本当は休んだ方が余裕を持って対応できるので、そうしたい。


 しかしそうすると、とある問題が発生してしまう。


 ――それは、班決めだ。


 林間学校では四人一組で行動することになる。


 私が休むと、クラス全体の班のメンバー構成に影響が出る。


 それがどういう結果を生み出すか分からない。


 私は日高さんとは違うクラスだが、人数が足りないクラス同士で班を作るとか言い出される可能性も否定できないのだ。


 それなら、班構成を確定させた状態で動いた方が突発的な事故を防げると思ったわけである。


「待ってください。抜け出すといっても、二~三分のことではないのでしょう? 気づかれると、大騒ぎになってしまいますよ」


 ここまでの話を聞き、レイちゃんが疑問を呈する。


 その言葉にナナちゃんも同意を示す。


「だよね。妖怪を探し出して倒すとなると、それなりに時間かかるもん。さすがに誤魔化しきれないよ」


 と、二人から疑問の視線を受ける私。


 しかし、その辺りは対策済みなので問題はない。


「その点については考えていることがあるんだ。これを使ってみようと思うんだけど、どう?」




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