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 ◆九白真緒



 一波乱あった入学式を終え、日数経過とともに学校にも慣れてきた頃。


 本日は、採石場ハウスでお茶会だ。


 ここも修業の場として定着した。


 私たちが不在でも、ナナちゃんやミカちゃんが利用に来たりする。


 二人に使用感を聞くと、騒音を気にしなくていいので使いやすいとのこと。


 周囲に何もないので、どれだけ派手にやっても良いのが利用の決め手らしい。


 そして、そんな環境は要人との面会にも都合が良い。


 ミカちゃんと遊ぶときは、採石場ハウスの使用頻度が高くなる傾向にあった。


「……三人で同じ学校に行って、ずるいのじゃ」


 と、ふくれっ面でご立腹のミカちゃん。


 彼女の進学先は霊術師系の学校。


 四柱当主ともなれば、進路も事前に決まっているのは必然。


 そして、個人の好みでの進路変更など叶わない。


 残念だけど、仕方のないことだった。


「それでも、こうやって定期的に会えるんだし、いいじゃん」


 と、ナナちゃんがなだめる。


 今では月に何度かはこうやって、お茶をする環境を構築できるようになった。


 柱の当主であるミカちゃんは、多忙を極める。


 そのため、毎日というわけにはいかないが、それでも定期的に会うことができている。


 ミカちゃんも、なるべく私たちと会おうとスケジュールを調整してくれている。


 気兼ねなく話せるこの場が気に入っているようだ。


「今日は、ちと重たい話があるのじゃ」


 と、前置きの後、ミカちゃんの口から語られたのは、ナナちゃんの事だった。


「他の当主に、ナナちゃんが玄武と契約していたことがバレたのじゃ」


「いつかは来ると思ってたけど、とうとうって感じだね」


 その時が来ることを覚悟していたのか、ナナちゃんにショックは少なそうだった。


「でも、なんでバレたの?」


 と、私は気になったことを尋ねた。


 何がキッカケだったのだろう。


「ナナちゃんが他の霊獣と対面したためじゃ。どうやら気配で分かるらしい」


「なるほど。結界で会った時は当主の人たちだけで、霊獣が同行してなかったもんね」


 そう言えばそうだった、と何かを思い出したようにナナちゃんが呟く。


 最近になって詳細を聞いたが、レイちゃんとナナちゃんは、私のために脱獄犯を捕らえに結界に行っていたらしい。


 二人は、そのことを私に隠していた。


 とはいえ、私もそうじゃないかと思っていた。追及しなかっただけだ。


 その時の参加者は脱獄犯を捕らえただけではなく、結界をも守ったということで周囲から功績をたたえられた。


 その後、ナナちゃんは私たちと一緒に北海道の奪還にも貢献。


 この二つだけで目立ってしまうことは避けられなかった。


 だけど、当時はバタバタしていたので、感謝状の一枚であっさり片づけられた。


 しかし、北海道の状態が安定し活性化した最近になって、急遽式典をやるということが決定。


 そして、ナナちゃんがその式典に招待された際に、霊獣と対面。


 そこで玄武の存在に感づかれてしまったらしい。


「つまり、ここまで隠し通せたのは、わたくしのファインプレーが功を奏したというわけですわね」


「あ、はい」


 得意げに語るレイちゃんとは真逆に、表情が一切なくなった顔で小さく同意するミカちゃん。


「なんで目を逸らしたの? 何かあったわけ?」


 ファインプレーって、一体何をしたのだろう。


 まあ、そのお陰で霊獣との対面を遅らせられたというのであれば、本当に好プレーである。


 と、ここでミカちゃんが咳払いをした。


「と、とにかく、一度話し合いたいと打診を受けた。近々、場を設けるので、参加してほしいのじゃ」


「それって、私たちは同席できないの?」


 できれば、どんな話になるか見届けたい。


 よくない話になるようなら、その場で介入し、ナナちゃんが不利にならないようにしたいところである。


 だけど、私はやらかしてるし、無理だろう。


 なんとかレイちゃんだけでも、一緒に行ってあげられないだろうか。


「難しいかもしれんのう」


「わたくしが言えば、通りますわ」


 否定的なミカちゃんとは裏腹に、絶対の自信を見せるレイちゃん。


 なんで、そんな両極端な反応になるわけ?


 まさか……。


「何か弱みでも握ってるの?」


「弱みではなく、強みですわ。元来動物というものは、強者に従順なもの。力でごり押しすればよいのです」


「何そのゴリラ理論。物理が過ぎるよ」


 誰だ、優雅で美しいレイちゃんに、こんな価値観を植え付けたのは。


 私が見つけ出して、とっちめてやらないと。


「ま、まあ、話だけはしてみるのじゃ……。あまり期待しないで欲しいところではあるが」


 と、歯切れが悪いミカちゃん。


「でもまあ、そろそろ結界の事を話しておかないとまずかったから、丁度よかったかも」


 と、ナナちゃんが、あっけらかんとした口調で重要なことを告げた。


「ということは、結界の崩壊が近いの?」


 それ以外に、話をする理由が思い浮かばない。


 ナナちゃんは、ミカちゃんの使いということで度々結界を様子見に行っていたのだ。


 しかも、そのついでに近くの迷宮を破壊してお金を稼いでいたらしい……。


 移動時の利益を最大化する抜け目のない行動である。


「まだ余裕はあるけど、準備を考えるとギリギリかな」


 ナナちゃんが、肩をすくめながら答える。


 とうとう妖王の復活が間近に迫ったというわけか……。


「準備に関してはお任せを。わたくしの方で手早く済ませられる自信がありますわ」


「今の北海道って妖怪がいないもんね。人の動きだけなら、今からでも十分間に合うんじゃない」


 私は、レイちゃんの言葉に同意する。


 北海道の奪還に成功した今、妖王以外の脅威は存在しない。


 しかも、土地開発は順調であり、道路の整備も落ち着いてきた。


 それだけの下地が整っていれば、雲上院グループの力で迅速な対応が可能だろう。


「その辺りの事も話し合わねばならんのう。次回の会合で話してみるか」


 と、ミカちゃんが話を締めくくったところで、私はふと思い出したことがあった。


「そういえばさ、霊鎧の事件から三年経つけど、ミカちゃんの次の予知ってどうなったの?」


「ああ~、そんなこともあったね」


 と、懐かしい顔になるナナちゃん。


 実際、つい最近の事に思えるが、もう三年前の話になるのだ。


「それが……、見えることは見えたのじゃが、よく分からなかったのじゃ」


 私の問いを受け、その時のことを思い出したミカちゃんは、考え込むように呟いた。


「抽象的な夢だったということですの?」


 分からないという言葉を聞き、レイちゃんが尋ねる。


 映画とかの予知のシーンでは、ダイレクトな映像ではなく、何かを連想させる物や言葉がヒントの様に出るパターンもある。


 今回の予知夢はそういった感じだったのだろうか。


 そう考えていると、ミカちゃんが首を振る。


「いや、画像が不鮮明だったのじゃ。こう、なんというか……、幾重にも夢が重なって、ごちゃごちゃになったというか……。まるで画像を受信できなかったような感じじゃな」


「へぇ、そういうこともあるんだ」


 予知失敗みたいな感じだろうか。




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