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 ◆とある高位霊術師



 先日、十家から発表があり、規則が変わった。


 具体的には、北海道での活動制限が撤廃されたのだ。


 今まで高位霊術師は、北海道への立ち入りが規制されていた。


 煩雑な手続きを経て申請が通れば活動可能だが、基本は立ち入らないことが推奨されていたのだ。


 それは戦力増強を図るため。


 勝手に突撃して死なれたのでは、いつまで経っても人が揃わない。


 そのため、十家が自粛指示を出したのだ。


 それが何の前触れもなく、急に解除された。


 現在、十家の優先目標は、掃討戦を行った時と同程度に霊術師人口を復活させること。


 しかし、今もその数値には達していない。


 それなのに、北海道へ入ってよいと言うのだ。


 しかも無申請かつ無制限で。


 北海道で専用の手続きをしろとか、何人以上の集団でないと駄目だとか、ここから先は進んではいけないとか、そういった制限が一切ない。


 破格の対応を通り越して、意味不明である。


 十家全員が毒キノコを食って一時的に集団幻覚に見舞われたと説明された方が納得がいくほどの暴挙だ。


 そんな暴挙ともいえる決断を下した理由は、北海道の状況が激変したためである。


 何でも、北海道は現在、妖怪から全体の四分の三の土地の奪還に成功しているというのだ。


 全く情報を収集していなかったので、初めて聞いた時はフェイクニュースを疑った。


 そのため、公式発表を聞くまで信じられなかった。が、事実だった。


 つまり、大半の妖怪は死滅し、危険度が下がったから好きに活動していいという事だ。


 その話を聞いた大半の霊術師たちは戸惑い、様子見に入った。


 そんな中、早々に動き出す霊術師もいた。


 十家と、その直属の霊術師たちだ。


 彼らの行動は、ほとんどの霊術師が周囲の出方を探っている状況だったため、非常に目立った。


 その二つの動きを見た自分はどうしたかといえば、すぐさま北海道へ向かった。


 これはチャンスだ。


 妖怪の数が減った今、容易に手柄を上げることができる。


 権力と金の匂いがプンプンする。


 十家の連中は動き出しはしたが、集団で行動するため、早さが出ない。


 が、俺は一人。誰のことも気にせず、無茶な進行も可能だ。


 俺は北海道に到着後、バイクを調達。


 未踏破エリアと呼ばれた場所を走り、未奪還のエリアを目指した。


 目的地へ向かってバイクを走らせていると、明らかな変化に気づく。


 今までなら一切車が走っていなかったであろうエリアなのに、車の往来が激しい。


 さすがに徒歩で移動している者は見かけないが、人の行き来があるのだ。


 これでは未踏破エリアではなく、未開拓エリアか開拓中エリアとでも呼ぶべきだろう。


 この感じだと、奥地へ進んでも給油が出来るかもしれない。


 そんなことを考えながら、未奪還エリアを目指す。


 そんな中、走行中に見える景色が現地入りする前に予想していたものと大きく違うことに驚く。


 周囲は綺麗に整地され、建設重機が入って工事が行われていた。


 四分の三奪還に成功したと聞いていたので、荒れ地が放置されているのだと思っていたが全然違う。


 奪還後の安全確保も終わり、インフラ整備が始まりつつある。


 これは凄いことだ。実際に見ると、恐ろしい速度で開発が進んでいることが分かる。


 ――数時間後、とうとう最前線のエリアに到達した。


 俺は全体の雰囲気を掴むため、高台にバイクを止め、双眼鏡で眼下を見下ろす。


 しかし、そこには想像していなかった光景が広がっていた。


「なんだ、あれは……」


 同じ戦闘服に身を包んだ霊術師たちが、統率の取れた動きで妖怪と戦っている。


 おそらく、土の霊術で作ったであろう銃眼からひたすら霊気放出を行っていた。


 数分経つと、強烈なサイレンが鳴り響き、撃ち方が交代。


 同じように連射を始める。


 一糸乱れぬ動きで、誰一人として単独行動をしていない。


 手柄を独り占めしようとか、自分が活躍しようとか考えて動いている人間が一人もいないのだ。


「即席の部隊じゃないな。あれが、四分の三を取り返した連中か」


 忘れそうになってしまうが、北海道の奪還は誰かがやったから、四分の三取り戻せたのだ。


 寝ている間に妖精がやってくれたわけでも、自然災害が起きて勝手に妖怪が死滅したわけでもない。


 つまり、目の前の連中が、この短期間で成果を出したというわけだ。


 隙も乱れもない統率された動きを見た俺は息をのむ。


「あそこに行くのか……?」


 たった一人であの場に飛び込み、結果を出せるだろうか。


 いや、違う。それでは駄目だ。


 もし自分が妖怪を討伐するとなれば、あの連中から離れた場所で行わないと成果を出せない。


 そうなると、一度に凄まじい数の妖怪を一人で相手しなければならなくなる。


 そんなことをすれば、勝てる勝てないの前に、退路がなくなってしまう。


 あの人数かつ、統制が取れた動きだからこそ、安定して討伐できているのだ。


 自分一人で、同じようなことを再現することは不可能だろう。


 四分の三奪還できたと言う報せを聞き、浮かれていた。


 ここは北海道。あまりに妖怪の数が多く、立ち入りが禁止されていたエリア。


 今も、その事実は変わっていないのだ。


「帰るか……」


 ここで勇んで結果を出そうとすれば、確実に死ぬ。


 思いとどまるなら、今しかない。


 気分転換にバイクで北海道旅行に来たと思えば、死なずに帰れる。


 何度も考えたが、そういう結論に行きついた。


 奪還で活気づいている今なら、色々なうまい料理にありつけるに違いない。


 撤退を決断した俺は踵を返し、都市部を目指してバイクを発進させた。


 ――そして数日後。


 それは、俺が大盛り海鮮丼と格闘中のことだった。


 何の前触れもなく、急に店内がざわつき始めたのだ。


 さっと様子を窺うと、俺以外の客全員が店内のテレビに釘付けとなっていた。


 何やら、番組を中断して臨時ニュースをやっているようだった。


 画面では、キャスターが大声を張り上げて、とあるニュースを何度も繰り返していた。


 ――北海道、奪還成功。


 それは、北海道の全てのエリアの奪還に成功したという報せだった。




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