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 マンガ通りに事が進んでいれば、レイちゃんが毒を負うことなんてなかった。


 死の危険は、高校生になるまでなかったはずなのだ。


 それなのに、今は危篤状態で苦しんでいる。


 全ては、私が霊術を教えたせい。


 護身のためにも良いかもしれないと思ったのが間違いだった。


 霊気を発現しなければ、祖母の手伝いがしたいと言い出すこともなかったはず。


 そんな考えが脳裏をよぎる。


 しかし、全ては終わったこと。


 今更、そのことについてこれ以上考えても仕方がない。


 それなら、これから先のことを考えるべきだ。


 今回の失敗は、レイちゃんが中途半端な実力を有してしまったために起きた。


 今の彼女の性格上、そういった点を指摘して行動を自重するように伝えても無駄だろう。


 どれだけ止めても、仲間が困っていれば、きっと助けに行く。


 それはとても尊敬できることだ。


 が、それと同時に今回と同じトラブルを引き起こす可能性をはらんでいる。


 それならば、もっと強くなってもらうしかない。


 どんな障害にも余裕をもって対処できる存在になればいいのだ。


「これはもう、目を覚ましたら猛特訓してもらうしかないね」


 そう呟いた私の眼前には、神殿を想起させる巨大な建造物があった。


 入口には独特な装束を身にまとった警備兵が立っているのが見える。


 ここが目的地。霊獣、鳳凰が住む霊獣大社。


 情報通り、施設は巨大で警備も厳重。


 こんなところへ忍び込むのであれば、事前調査と準備は必須。


 だが、今回はそういったものは一切していない。


 そんな時間はなかったからだ。


 こういったときは出直すのが普通。絶対に無理をしてはいけないと教わってきた。


「出直す時間があれば、そうするんだけどね」


 そう呟いた私は、全身を霊装で覆う。


 黒のヘルメットに、プロテクター付きレーシングスーツを作り出して着装。


 これで、最低限の顔バレ防止になるだろう。


 次に、霊獣大社を取り囲むように霊装を召喚していく。


 まずは絨毯状の霊装で外周を固め、その後、ビル状の霊装を隙間なく生やしていく。


 ものの数秒で、巨大で分厚い黒壁が大社の周囲に展開する形となった。


「何だ、どうなっている!?」


「一体これはなんだ!?」


 黒壁を見て、驚く警備兵たち。


 入口から続々と人が出て来て、私の霊装を見て騒いでいる。


 想定していない出来事が起きて、小規模な混乱を引き起こすことに成功したようだ。


「時間が惜しい。正面突破でいくよ」


 私はそう呟くと、黒壁から探査霊体であるガスマスク集団を百体召喚。


 かなり巨大な霊装を召喚したが、黒壁と私は接触していない。完全に切り離した状態だ。


 コードのようなもので体と繋ぐことも考えたが、動きに支障が出てしまう。


 接触していない霊装から霊術を発動した場合、威力が落ちる。


 稼働時間に余裕を持たせると、呼び出すのは百体が限界だった。


 召喚したガスマスク集団は、一見バラバラに見える行動を取りながら、神殿へ突撃していく。


「敵襲! 敵襲だ!」


「警戒態勢をとれ! 一人も通すな!」


 警備兵が叫び、探査霊体たちを止めようと行動を始める。


 私は、それらに紛れる様にして外壁を飛び越え、大社内部への侵入を開始する。


 壁を飛び越えた先は、和風な建築様式で統一されており、侵入の障害になるようなものは少なく見えた。


 警備は厳重だが、建物の構造が侵入者を退けるものになっていない気がする。


 どちらかというと、荘厳な雰囲気を演出することに全力を注いでいるようだ。


 探査霊体たちが警備の目を引いている間に、一気に深部まで駆け抜け、それらしき部屋の前に到着する。


 そこは、体育館のように広い部屋。


 ここだけ警備が厳重で、全員気絶させるのに苦労した。


 霊獣は大きいと聞いた。眼前の部屋以上に大きい部屋は、この敷地内に存在しない。


「ここで間違いないでしょ」


 私は、力任せに扉を蹴破った。


「誰ダ」


 煌びやかな装飾が施された巨大な部屋の中央には、朱色が眩しい巨大な鳥が鎮座していた。


 あれが鳳凰。視界に入るだけで、強烈なプレッシャーを感じる。


 霊気を持たない一般人なら、対面するだけで気絶するかもしれない。


「言葉が通じるみたいだから、一応お願いしてみるけど。何でもいいから、貴方の素材が欲しいの。後でお礼はするから、少し分けてもらう事ってできない?」


「不敬。半死ニナッテ詫ビヨ」


 鳳凰が微光を放つ両翼を大きく広げ、威嚇の咆哮を轟かせる。


 途端、強烈な霊気が暴風となって吹き荒れ、室内を滅茶苦茶にした。


「交渉決裂だね。しかも敵意むき出しで、やる気満々。仕方ないけど実力行使で行かせてもらうよ」


 相手もやる気みたいだし、遠慮なくいかせてもらおう。


「勝ツ気デイルトハ不遜。万死ニ値ス……」


 私は、鳳凰が喋っている間に一気に接近。あいさつ代わりに飛び後ろ回し蹴りを放つ。


 巨大な体なので、腹に攻撃を当てるには若干飛び上がる必要があったのだ。


 放った蹴りは、鳳凰の腹部に深くめり込んだ。


 蹴り足から肉の抵抗を数瞬感じた後、鳳凰の体が水平方向に吹き飛び、壁を破壊して外へ出た。


 私は鳳凰に二撃目を打ち込むため、追走。


 相手が態勢を立て直す前に、空中で何度も打撃を叩き込む。


 その際、基礎術式による身体強化を発動。


 更に、系統術式の強化の術で身体能力を強め、防御の術で防御力を高めた。


 つまり、基礎術式と、二つの系統術式による三重の身体能力強化となる。


 殴るたびに、ボゴッという聞いたことがない音が鳴るが、お構いなしだ。


 相手は霊獣、どれだけの強さなのか分からない。慢心は隙を生む。


 私は鳳凰が地面へ倒れこんだ後も、追撃を続行した。


 この瞬間に仕留め切るという意志の元、入念かつ執拗に殴り続ける。


「止メヨ……」


 止めない。


「我ノ負ケダ……。羽デモ爪デモ持ッテイケ」


 か細い声でそう言った鳳凰は、泡を吹いて意識を失った。


「それじゃあ、貰っていくね」


 許可を得たと判断し、羽を数本むしる。


 荒っぽく素材採取をしていると、複数の足音がこちらへ近づいてくるのが聞こえた。


「賊がいたぞ!」


「な!? 鳳凰様が!」


 壁を壊した音を聞きつけ、警備兵がじわじわと増えてくる。


「これ以上はまずいか」


 私は鳳凰を持ち上げ、敷地外へ向かって放り投げた。


 そして、私自身は逆方向へと逃走する。


 警備兵たちは、鳳凰と私、どちらを追うかで一瞬迷うような素振りを見せた。


 その隙に一気に敷地内を抜けつつ、探査霊体たちに陽動を任せて脱出。


 外に出て霊装を回収すると、探査術を解き、即座に現場から離脱した。




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