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 その後、喧騒が収まって解散ムードが漂う頃になって、ミカちゃんとも会うことができた。


 ミカちゃんは、被害者な上に、それなりの立場な人のため、色々やることがあって身動きが取れなくなっていたのだ。


「それにしても、よく無事だったね。あらかじめ人を配置していたみたいだし、計画が筒抜けだったってこと?」


 私は疑問に思っていたことをミカちゃんに尋ねた。


 炎泉さんが奇襲を仕掛けた割に、その効果が薄かったように感じた。


 それは、ミカちゃんたちが襲撃を予測していたかのように、きっちりとした対応を取ったためである。


「部分的に筒抜けだったといった感じじゃな。わらわには予知能力があるのじゃ。いわゆる予知夢というやつじゃな」


 と、ミカちゃんからサラッと衝撃発言が飛び出す。


 その言葉を聞いたナナちゃんは秒速でミカちゃんに接近。


 密着して肩を抱くと、耳元で囁くように話しかけた。


「予知かぁ、いくらなんでも信じられないなぁ。証明のためにも、近々保護者同伴で公営ギャンブルに行こう」


「明らかに信じ切っておる。あらゆる手段を講じて、しゃぶりつくそうとしているとしか思えない言動じゃ」


 ギャンブルという言葉を聞き、若干引き気味になるミカちゃん。


「い、今のはナナちゃんジョークだと思う」


 これはいけないと、フォローを入れておく。


 いくらお金が好きとはいえ、今のは冗談だよね。


 が、私の言葉を聞いたレイちゃんが、すぐさま口を開いた。


「偏見に満ちた個人情報を語り出すほどにはナナちゃんガチ勢のマオちゃんにしては、確信を持てない雰囲気が出ていますわね」


 ぐ……、そんな風に見られていたのか。


 なんかショックだよ……。


 と、ここまでの会話を聞き、ミカちゃんが苦笑いする。


「残念ながら、この力は多用できないのじゃ。見る未来もこちらから指定できないしの」


「大丈夫。これから二十四時間、競馬場の順位表の前で生活すれば、いけると思うよ」


 ナナちゃんがミカちゃんの両肩をガシッと掴み、熱のこもった言葉で説得するように言う。


「……ナナちゃんジョークの天丼なのか、予知で一山当てるのが諦めきれないのか、どちらか分からない」


 ナナちゃんの顔を見れば、目が¥になっている気がしないでもない……。


「マオちゃんが判断できないということは、五分五分の可能性が大ですわ」


 と、レイちゃんが結論付けた。


 別に私は、ナナちゃんにそこまで詳しいとは思わないんだけどなぁ……。


 などと考えていたら、ミカちゃんの顔が真剣なものに切り替わる。


「……で、そろそろ本題に入ってもいいかの?」


「「「あ、はい」」」


 これ以上の悪乗りはまずいと判断した私たちは、姿勢を正して首肯した。


「予知夢の展開では、わらわが重傷を負い、現場に居合わせたナナちゃんが炎泉と戦うという流れじゃった。その夢の内容に介入したため、実際に起きた結果が多少変化したが、おおむね同じ展開じゃったと言えるの」


「ミカちゃんが怪我したっていうのが、なくなってたね」


 あとは炎泉さんと戦ったのが、私とレイちゃんに変わったことと、霊鎧が出てきたところかな?


「その通り。わらわ自身が負傷するのを全力で回避したのじゃ。とにかく、十家の人間が裏切るというのが信じてもらえなくてのう……。ただの夢と言われ続けて、周りの者を説得するのが一番苦労したのじゃ」


 当時のことを思い出したのか、とても疲れた表情となるミカちゃん。


「現実味がない出来事を予知夢で見てしまうと、内容を話しても、ただの夢と思われてしまうってわけか」


 予知夢を見るのはミカちゃん一人。そのうえ証明方法がないのに、話だけで信じてもらわなければならないのだから、結構ハードルが高いよね。


「ここ数日はハラハラしっぱなしだったのじゃぞ? わらわにとってのXデーが近づいているというのに、皆北海道へ行くと言い出すし……」


「それなら話してくれればよかったのに。そしたら、事が終わるまで、どこにも行かなかったよ」


 不機嫌そうなミカちゃんの頬をつつきながら、ナナちゃんが言う。


 私も、「それはそうだね」と賛同した。


「一部の者以外に、能力について口外することは禁じられておるのじゃ。四柱の一族は、それぞれ特殊な力を持つ。中でも当主となった者は、その力が研ぎ澄まされ、より強力なものへと進化するのじゃ。このことは、炎泉も知らなかったじゃろ」


「そういえば……、確かに。今は話していいの?」


 予知という能力の特性上、多くの人に知られるのは、まずい気がする。


 そうなると、こうやって事情を話すのも、よくないのでは……。


「この状況であればOKじゃ。後で、口外しない契約を結んでもらうがの」


「了解。で、予知夢で見た出来事は全て終わったの?」


 まだ続きがあるなら、聞いておきたいところだ。


「うむ。全て終わったのじゃ。次に見られるのは三年後となる。今回は、命の危機を脱することができたので成功といえるじゃろう」


 ミカちゃんが、満足げに何度も頷く。


「え、そんなに先なんだ。もっと頻繁に見られるのかと思ってた」


 意外だ。それでは、ここぞという時に使えないな。


「そう便利なものではない。人知を超えた力を使うわけじゃからの」


「予知があったから、私に付きまとってきたんだね。フォーゲート部に入ったのも、なるべく一緒にいた方がいいと考えてのことか」


 と、ナナちゃんが納得する。


 そういえば、初めのころはミカちゃんがナナちゃんを追いかけまわしてたっけ。


 それも、予知夢に関係する重要人物だったからってわけね。


「その通りじゃ。夢を見ていなければ、フォーゲート部には入らなかったじゃろう。あざむくような真似をしてすまぬ。じゃが、まあ、その……」


 ミカちゃんはナナちゃんに謝罪した後、言葉を続けようとして言いよどむ。


 一旦、深呼吸すると続きを話した。


「……皆と一緒の時間は、……とても楽しかったのじゃ。北海道へ行きたかったのも、自分の身を守るという理由もあったが、一緒に居たいと理由もあったわけで……」


「ま、いいんじゃない」


 ナナちゃんがサラッとした感じで応じる。


 まあ、私も仕方ないと思う。


「話しちゃダメだったわけだしね」


「ええ。わたくしたちは気にしていませんわ」


 と、ミカちゃんに問題ないことを伝える。


「むしろ、お礼が言いたいよね。ミカちゃんのお陰で、団体戦に出場出来たわけだしね」


「その通りですわ。もし四人そろっていなければ、個人戦での優勝しか狙えなかったわけですし」


「うんうん、だから気にしないで」


「ミカちゃん、入部していただき、本当にありがとうございました」


 と、私とレイちゃんはミカちゃんに笑いかける。


 ミカちゃんが入部してくれなくても、部員は四人揃えることができていたかもしれない。


 だけど、彼女以外だと団体戦の優勝は難しかったと思う。


 その場合、随伴免除証は個人戦優勝分の一つしか入手できていなかったはず。


 結果、レイちゃんが免除証ゲットし、ナナちゃんは北海道に行けず、私は不法侵入していたことだろう。


 そうなると、北海道で起きた出来事が大きく変化する。


 その変化した状況というのが、ミカちゃんが見た予知夢の内容に近いのだろう。


 とにかく、こちらからすれば感謝しかないのである。


「皆、ありがとう」


 すると、ミカちゃんが照れくさそうに笑った。


「ということは、競馬場に行くのは三年後ってことね」


「その話はもうよいわ!」


 真剣な顔をしたナナちゃんの呟きに、ミカちゃんがすかさずツッコむ。


 私たちは顔を見合わせ、笑った。


「それじゃあ、まだやることがあるので、行ってくる」


 私たちに事情を話せてスッキリしたのか、ミカちゃんは護衛に連れられて戻っていった。




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