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 他に思いつくことがなかった私たちは、ドームの手がかりを求めて、近所に建つ家に向かった。




 といっても、思った以上に近く、歩いてみるとすぐに目的の家に到着する。


 遠くから見ても近くから見ても、何の変哲もない一軒家だ。


 玄関には表札がなく、名前は不明。家の周囲から個人を特定する品は見つけることができなかった。


 レイちゃんが横開きの扉に手をかける。


「閉まっていますわね」


「壊す?」


「任せて」


 私は、霊装を取り出したナナちゃんを手で制し、扉の前に立つ。


 そして、持ち合わせていたピッキングツールを使って手早く開錠した。


 扉を開け、「どうぞ」と皆を中に促す。


 すると、ナナちゃんが明らかにドン引きしていた。


「え……、なんでピッキングとかできるの?」


「なんで、と言われましても……」


 母から教わったわけだが、素直に話しても評価が下がることは避けられない気がする。


「……ふ~ん」


 ナナちゃんが、じっとりとした視線で見つめてくる。


「ま、まあ、中に入ろうか」


「靴を脱いだ方がいいでしょうか」


「何年も放置されているだろうから、土足で行こう」


 と、三人で中へ入る。


 家の中は綺麗に整理されていたが、全体の雰囲気から人が何年も住んでいないことが分かる。


 そんな家の様子を見て、ナナちゃんが疑問顔になった。


「なんか、この家おかしくない?」


「というと?」


「掃討戦があって北海道の人が避難したのって何十年も前だよね? その割に家の中が荒れてないというか……」


「確かに。外の発電機も、まだ使えそうだった」


 そういわれると、全体的に劣化の程度が低い。


 ものによっては使用可能なレベルの範疇だ。


「避難せずに、ずっと生活されていた方が居たのでしょうか?」


「車庫に軽トラもあったから、出来ないこともない……かなあ」


 私は、レイちゃんの疑問に答えるような形で考え込んだ。


 妖怪を退治できる能力があるなら、ここで半自給自足のような生活も出来なくはない。


 生活必需品は凶石を売った金で仕入れ、食材は農地で育てる。


 人数が少なければ、いけそうな気がする。


 私たちがそんな事を話しながら、家の中を見て回っていると、生活臭が濃く感じられる私室のような場所を発見する。


 他の場所は物が少なく、家の持ち主の個性が感じられなかったが、この部屋だけは別だ。


 何かないかと、ゆっくり見て回ると机に写真立てが飾られていた。


 写真には夫婦と思われる男女の姿が映っていた。


 ナナちゃんが写真立てを手にし、じっと見つめる。


「……ここに住んでいた人かな」


「この写真と軽トラのナンバーで誰か分かるでしょうか」


「調べる? でも、怪しいものがあったわけでもないしなぁ……。何年か前まで住んでいた感じがするのは気になるけど」


 写真とナンバーがあるし、特定できそうな気はする。


 だけど、そこまで調べる必要があるだろうか。


 今のところ、ドームの事が分かるような物は出て来ていない。


 不自然な部分はあれど、ドームに繋がる情報は何もないのだ。


「何か凄く気になるんだよね。直感なのかな」


 と、ナナちゃんが言う。


「ナナちゃんが、そこまで気になるのでしたら、わたくしの方で調べてみましょうか」


「うん、お願いできる?」


「承りましたわ」


 ということで、この家の持ち主については、レイちゃんが調査を引き継ぐこととなった。


 依頼終了後、雲上院家の力で調べれば、何か分かるかもしれない。


 これ以上、素人の私たちが調べても何も分かりそうにないし、この辺りが引き際だろう。


「それじゃあ、戻って依頼を再開しようか」


「そうですわね」


「うん。あ、ドームのことはどうしよう……。依頼で報告する?」


 と、ナナちゃんが思い出したように、ドームの扱いについて聞いてきた。


 そういう私も、家の調査に熱中して、すっかり忘れていましたよ。


 う~ん、どうしたものか……。


「……報告すると、面倒なことになるよね、絶対」


 あんな謎物体、報告すれば大騒ぎ間違いなしだ。


「調査ルートから外れていますし、報告しなくても問題ないといえば問題ないですわね」


 顎に手を添えたレイちゃんが考え込みながら呟く。


 確かに、依頼通りのルートを通過していれば、あのドームを発見することはできない。


 ドームのことを伏せてルート通りに進行したと報告すれば、それ以上は追及されないだろう。


 今回の依頼で重要なことは、無事に達成されることだ。


 ナナちゃんの資格を保持するのが最優先となる。


 そうなると、余計なトラブルの種になるようなものは報告したくない。


 でも、あれの正体が分からないまま放置するのは、いくらなんでもまずい気がする。


「今回の依頼とは切り離して、後から別件で報告できるといいんだけどなぁ」


 もう一度この辺りに来て、偶然見つけたことにでも出来ないだろうか。


「それなら、最近まで人が住んでいた痕跡がある民家を発見したから、再調査したいってことにすればいいんじゃない? で、その時に偶然ドームを見つけたことにすれば、いけそう」


「いいですわね。でも、この家も依頼のルートから外れていますわ。どういう風にこの家を発見して、どういった理由で再調査しようと考えたか説明できないと不審に思われますわ」


「…………野営場所に選んだ場所が、元農地だと気づいて近所に家を発見。興味本位で近づいたら、あんまり荒れてない。扉が偶然開いたので中を見たら、数年前まで住んでいたような感じだから気になったから……とかかなぁ。後は写真とナンバーから身元が分かれば、適当な理由を付けて再調査したいと言えば、なんとかなるかも?」


 三人で話し合い、漠然としたものだがイメージが固まっていく。


「まあ、私たちの親にはドームを先に見つけたことがバレても問題ないんだし、事情を説明して協力してもらおうよ」


 これ以上は良いアイデアも浮かばないだろうと考えた私は、近しい知り合いも巻き込んでぶん投げてしまえばいいと提案した。


 何より、あれだけ怪しいブツなら、誰かが情報を持っているかもしれない。


「そうですわね。私のお父様が白と言えば、多少黒くても白になりますわ」


「さすがレイちゃん、頼りになる」


「それほどでもないですわ」


 私の言葉に、フフンと得意げに胸を逸らすレイちゃん。


「頼りになるし、ありがたいんだけど。ちょっと怖いわ……」


 が、ナナちゃんは若干引き気味だった。


 そんな感じで、大体の方針が決まったところで本来のルートへ戻ることにする。


 その際、一旦洞窟へ入ってドームの画像を記録するのも忘れない。


 依頼達成時に、この画像を見せるつもりはないが、私たちの親に説明する際に必要と判断したためだ。


 ドームの画像を記録した後、山をぐるりと回って自転車を停めてあった場所に戻った私たちは依頼を再開。ゴールへ向けて出発した。


 その後は何事もなく、出発地点に到着。予定よりかなり早く帰って来られた。


 数日ぶりにスタート地点に到着すると、迎えのワゴンが到着していた。


 帰る途中に、無線で戻る日程を伝えておいたためだ。


 ワゴンに乗った私たちは、そのまま霊術師協会に行き、依頼達成を報告。


 あまりに早い帰還に驚いていたが、証拠の品があるため疑われることもなかった。


 記録した映像に関してはその場で早回しを行い、全体をチェック。


 問題なしと判定が出る。


 後は、直接会わなくても確認できることなので、東京に戻って良しと言われた。


 依頼完了の書類もゲットしたので、これで家に帰る準備が整った。


 と思ったら、迎えに来てくれた母から待ったがかかる。


「すまん、こんなに早く帰ってくるとは思っていなくて、予定を入れていたんだ。すぐに済むから寄り道をさせてくれ」


 と言われた。


 結局、計画より五日早い帰還となったわけで、そりゃあそうなってしまうのも頷ける。


 というわけで、私たちは母の用事を済ませるため、自家用機で目的地の青森へと向かうこととなった。




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