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――北海道行きが決まった翌日。
「北海道へ行く前にパーティーを開きますわ」
と、レイちゃんが唐突に言い放った。
「いつものやつ?」
いわゆる、パーティーという名の交流会だ。これまでも色んな名目で開いてきた。
「ええ。北海道から帰ってきた後だと、転校手続きなどで忙しくなりそうですし、先に済ませておこうかと思いまして」
「そうだね、しばらく予定が立て込みそうだし、いいと思う」
というわけで、北海道へ行く前にパーティーを開催した。
表向きの名目は、フォーゲートの大会で優勝したので祝勝会となっている。
なので、参加者はレイちゃんにお祝いの品を持参。入場時に挨拶と受け取りを済ませると、本来の目的のために散り散りになっていく。
本当の祝勝会ならレイちゃんを祝い、大会の話で盛り上がるところだろうが、そういった催しは全てカット。少しでも皆の出会いに繋がる時間を増やすためだ。
むしろ、出会いを援護するようなイベントを挟み込んだりしている。
鷹羽アキラの誕生日会から定期的に開催するようになったこのイベントも今回で十回目。
暇を見つけては細かく刻んでやってきたので、かなりの開催数となった
そのお陰で、イベントの進行にも随分と慣れてきた。
十回やって、効果は良好。
カップルになった人たちもいれば、新たな友人関係を構築できた人たちもいる。
この場で新しい交友関係を築くことができた人たちから良い噂を聞いたのか、参加者も回を重ねるごとに増えている。
参加者層も下は小学校高学年、上は高校生と随分幅が出てきた。
また、参加人数の増加に伴い、参加希望者の事前調査をしっかりと行うようになった。
こういった出会いの場にふさわしくない人物、問題を起こしそうな人物はしっかり除外している。
名家やお金持ちの集まりだと、どうしても権力をかさに着て居丈高にふるまう人や、お付き合いを強要してくる人が男女問わず出てくるためだ。
そういったトラブルを回避するため、雲上院の力を使って人選には細心の注意を払っている。
そのせいか、今は雲上院家が主催するサロンみたいな雰囲気を醸し出すようになってきた。
当初は家の縛りがないオープンな出会いの場を提供する位の感覚だったが、どうしてこうなった。
それに加え、パーティーを開催するたびにレイちゃんの評価が上昇している。
自分を祝うイベントなのに一切前に出ず、アシストに徹していることが好感を得ることに繋がっているようだ。
更に、こういったパーティーが催されるようになった経緯を初回から参加している人たちが周囲に広めてくれているのが、相乗効果を生み出している。
レイちゃんが自分の功績を自慢するためのパーティーではなく、そういう名目で人を集めて出会いの場を提供しているということが周知の事実となっているのだ。
パーティー中、私とレイちゃんは、あぶれている人がいないか見回ったり、雰囲気が固い所へ行ってアシストしたりしている。
レイちゃんが大人数担当で、私が少人数担当といった感じだ。
まあ、雰囲気が固いグループに、初対面の私が行っても「あなた、誰?」となってしまうので、自然と役割分担が決まった形だ。
逆にレイちゃんは全ての参加者と、そこそこ面識がある。
他のパーティーやイベントで挨拶を交わしているためだ。
そのため、対面で足踏みすることがない。
また、イベント開催前には参加者全員の資料に目を通している。
そこで、どういったことに興味を持っているかなどのプロフィールを織り交ぜて、グループ内の自己紹介を円滑に進めていく。
アシストが成功し場が温まったと判断すると、次のグループへ移動するといった感じだ。
私はといえば、消極的なタイプの人をそういった場へ誘導する役目だ。
知り合いもおらず一人で参加したはいいものの、どうしたらいいか分からずに乗り遅れて壁際に追いやられた人に話しかける。
そして、名前を聞いてプロフィールを思い出し、相性がよさそうなグループへ誘導する。
もともと、このイベントは将来の相手を見つけるのが目的で始めたが、今となっては同性の友人探しの場としても機能している。
なので、その人のイベント参加の目的を聞き出しつつ、良さそうなグループへ案内していくのだ。
中には、前回のイベントでうまくいかず、カップル不成立となって落ち込んで一人でいる人もいたりする。
そういった人は、私が一対一でフォローする。
話を聞き、元気づける。ただ、その一度で傷心が癒えることはないので、後に二人で遊びに行ったりもした。
なるべくイベントに対して悪いイメージを抱かないよう、メンタルケアに努めたつもりだ。
そういったことを重ねているうちに、励ました人たちが私のことをお姉さまと呼ぶようになってしまった。
相手は同い年か、年上なのに。
……なぜだ。
そしてとうとう、今回のイベントで問題が発生してしまった。
お姉さま呼びの人たちが一つのグループを形成。私を取り囲む状態になってしまったのだ。
「で、これは一体どういうことですの?」
腰に両手を当てた半眼のレイちゃんが私に聞いてくる。
「私にも何が何だか……」
かくいう私は、私をお姉さまと呼ぶ人たちから「あ~ん」を強要され、口を開けて固まっている状態。
見られてはいけないものを見られた気分で、非常に気まずい。
「もう、マオちゃんはしょうがないですわね……。話はイベントが終わった後で聞きます。それと、『あ~ん』もちゃんとやらせてもらいますからね」
そう告げると、やれやれといった表情でレイちゃんは去っていく。
その周囲には、様々な年齢の男女が付き従っていた。
それは、雲上院派と呼ぶにふさわしい集団を形成していた。
マンガの雲上院礼香は、傲慢な性格が災いし周囲には取り巻きが二人のみ。
最上位の家柄でありながら、派閥と呼べるようなものは存在しなかった。
しかし、今のレイちゃんは違う。
己の意図しないところで信用を得て、派閥と呼べる集団が自然発生している。
それも、同性や同年代という括りを飛び越え、幅広い人を集めて。
遠くない未来、ここに参加した人の何割かは雲上院派と呼ばれるようになる気がした。
そんな沢山の人に慕われるレイちゃんの姿を見て、自分の事のように嬉しくなってしまう。
ちなみに、私をお姉さまと呼ぶ人たちは、陰で九白親衛隊とか言われ始めているそうです。
不意打ちのタイミングで、後藤さんが、ぼそっと耳打ちで教えてくれました。
……よし、今聞いたことは忘れて北海道に行こう! そうしよう。




