110
◆とある地元霊術師
北海道での生活はとても過酷なものだ。
それは妖怪のせいだ。
どこに行っても妖怪の被害が付きまとう。
非常に深刻な問題なのだが、本州の霊術師から救援は来ない。
掃討作戦の休止が言い渡されているためだ。
だから、地元の霊術師で何とかするしかない。
こんな時、一番頼りになるはずだったのは、北海道で一番の実力を誇る炎泉家だ。
だが、彼らは十家となり、東京から離れることができなくなってしまった。
それ以外の実力者も東京に拠点を移したため、残っているのは大した実力もない者たちばかり。
そう、俺たちだ。
そんなしょぼい実力の持ち主が集まり、今まで何とかやってきた。
その活動を日向と影から支えてきた人物がいる。
雲上院咲耶さんだ。彼女は俺たちの活動を支援するため、惜しげもなく資金を投入。
それだけでなく、自身も前線に立って妖怪と戦い続けた。
俺たちは、雲上院さんを筆頭に一つとなり、じわじわと前線を上げていく。
何年もかけて、ひとつ、またひとつと街を取り戻していく。
妖怪から取り戻した土地には人が戻り、活気が戻ってくる。
そんな光景が俺たちの原動力となり、前へ前へと進んでいく。
わずかな一歩の積み重ねであったが、停滞していないと思えることは希望が潰えていないことを意味した。
そんな中、とうとう雲上院さんが引退を発表した。
といっても、今日明日にでもどうこうなるというわけではなく、数年後の話だ。
引継ぎをし、自分なしでも前線が安定したら後方支援に集中するとのこと。
そこまで来たら、段階的に北海道での活動頻度も減らしていくらしい。
彼女は北海道の出身ではない。それにも関わらず、他の誰よりも北海道奪還に尽力したと言える。
その貢献は計り知れない。
引退は残念だが、年齢も年齢だから文句もない。
むしろ今までありがとうという感謝の気持ちしかない。
後は、地元の人間に任せてくれればいい。
大した実力がない俺でも、何かできることがあるはずだ。
そう思い立ち、最前線の近くへと向かうトラックに乗り込んだ。
そこで、同行する霊術師たちから噂話を聞いた。
なんでも、少人数の霊術師により、大量の妖怪が一瞬で討伐されたらしい。
その話を聞き、俺は違和感を覚えた。
そんな芸当が出来るのは、最低でも四属性、確実に実行できるのは五属性だろう。
だが、そんな高属性の人物が北海道に来るわけがない。
いや、来れるわけがない。
そういった属性数の多い人物はもれなく本州にいる。
現在、協会本部の決定により、本州の高位霊術師が北海道で妖怪を討伐することは、非推奨となっている。
兵力を蓄えるために自粛指示が出ているのだ。
一応、一定の手続きを踏めば北海道での活動が許可されることになってはいる。
だが、誰もやろうとしないのが現状だ。
本州での地位を上げるために単独で北海道に向かって死ぬなんてことは、人材の無駄遣い以外の何物でもない。
そういうこともあって、高位霊術師が北海道へ向かうことは協会からの心証が悪くなる。
当然、十家にも目を付けられることとなる。やっていいことなど、一つもないのだ。
高位霊術師ともなれば、部下を大量に持つ身。
自分の事だけを考えて行動をすれば、結局自身の地位を揺るがすことになる。
そんな危険を冒してまで北海道に来ることなどありえない。
つまり、噂話は嘘。
とはいかないまでも、実際の出来事からは大きく離れている可能性が高い。
色々な話が盛られて雪だるま式に膨らんだだけだろう。
道中は、そんな噂話で盛り上がりつつ、目的地へ向かう。
気が付けば、空が白みだしていた。
もうすぐ夜明けだ。
トラックが止まると同時に、「着いたぞ」と声を掛けられ降車する。
今回の仕事は妖怪討伐ではない。
妖怪から取り戻した住宅街の解体作業の手伝いだ。
綺麗に更地になるまで、どこに妖怪が潜んでいるか分からない。
だから、俺たちも手伝いに参加する。
重機で壊しやすいように、あらかじめ家屋に手を入れるのだ。
「すげえ、これだけの土地を奪還できたのか」
解体作業が進む住宅街を見渡し、声が漏れる。
かなり苦戦を強いられ、一度は撤退したと聞くが、よくやったものだ。
そんなことを考えながら町を見ていると、突然視界が真っ白になった。
次の瞬間、町の一角が消し飛んでいた。
「え」
一瞬の出来事で混乱したが、もう一度よく思い出してみると、光線の様なものが通り過ぎた気がする。
「な、なんだ、今のは……」
「ああ、初めは驚くかもしれないが、そのうち慣れる。ここでは日常風景だからな。あれが通り過ぎる場所は立ち入れないようになってる。間違っても、絶対に近づこうとするなよ」
「お、おう」
なんのことを言っているのか、さっぱり分からなかったが、とりあえず頷いておく。
すると、また視界が真っ白に染まる。
二度目だったためか、今度は分かった。
極大の光線が町を焼いたのだ。
何が起きたかは理解したが、どういう状況なのかは理解できなかった。
俺と同じく今日この場に到着したメンバーは、激しく動揺していた。
が、以前からこの場にいる連中は平然としている。
そのことから、あれが日常風景というのは嘘ではないということが分かる。
どうやら、あの光線は一軒家が多い場所ではなく、マンションやビルが多いところで発生しているようだ。
眼前の出来事が呑み込めず、呆然としている間に朝日がゆっくりと顔を出す。
すると、大半が更地となった町がはっきりと見えるようになった。
つい数日前まで妖怪の巣窟となっていたエリアが、人の住める地に変化していっている。
いつかは、全ての土地を取り返せるかもしれない。
朝日に照らされた土地を見た俺は、知らずにそんな希望を抱いていた。
本日の更新はここまでとなります
お楽しみいただけたなら、幸いです
何より、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
そして、誤字、脱字報告ありがとうございます!
というわけで中学生編、第一部終了となります
中学生編は三部構成となり、二部と三部は一部より少なめの分量です
三部が終了した後は高校生編になります
前作から読んでくださっている方はご存じだと思いますが、前作は三年ほど更新を停止しておりました
その間何をやっていたかというと、本作の執筆です(没も大量にありましたが)
前作の更新を心待ちにしていただいた方には本当に申し訳ございませんでした
もう少し早く再開できる予定だったのですが、苦戦しました
で、何が言いたいかといいますと、現在、取り巻き転生は最終章の調整段階にあります
なんでこんなことを書くかというと、ちゃんと完結することをお知らせしたかったのと、更新停止の退路を断つためです
このまま毎日更新で進行していきます
やはりストック……! ストックはすべてを解決する……!
真緒と礼香は無事死亡フラグを回避できるのか、ラストまで見守っていただけると嬉しく思います
引き続き、本作をよろしくお願いします!
面白い、続きが読みたいと思っていただけたなら、
ブックマークの登録、
ポイント投入欄を☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると、作者の励みになります!
なにとぞ、ご協力お願いします!




