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そして、ここまでで二十一位以下のチームは、終了となる。
私たちは一位通過なので余裕の生存だ。
次のホールからは、直線的なコースは減少し、大きく変形したコースが増える。
普通に挑めば、打数を刻む必要が出てくる。
ここからはショットの飛距離だけではなく、プレイの上手さで打数に開きが出てくることになる。
第四ホールは、今までの勢いをそぐような、強烈なヘアピンカーブが中央にあった。
ゲートの位置も直線状にはなく、絶妙にずらされている。
普通に打てば、打数を刻むこと必至のコースとなっていた。
だが、私は――。
「曲がれっ」
――強烈なスピンをかけ、ボールを曲げる。
威力増し増しのボールは、強烈なスピードを保持したまま第一と第二ゲートを通過。
減速しないまま、ヘアピンカーブへ突っ込んでいく。
「せっかくゲートを二つも通過したのに、あれじゃあ威力が強すぎる」
「OBだな」
などというギャラリーの声が聞こえる。
私が打ったボールは、減速せず威力そのままに突き進む。
そして、ボールはコース外に生える大木に命中して跳ね返った。
木に当たった時点で威力が落ちてしまい、それ以降は飛距離が伸びず、第三ゲート手前で落下。うん、狙い通りだ。なかなか良い感じに打てたと思う。
指弾なら、もうちょっとコントロールが利くのだが、フォーゲートだとこの辺が限界だ。
……といった具合に、フィールドにある障害物の跳弾を狙って、曲がりくねったコースも好スコアをキープしたままクリア。
次に打つレイちゃんも、待ち針サイズの霊装を優雅に振るいつつ、ゴリゴリに曲がるショットでコースを攻める。
「だからやり辛いって……」
「まったく困ったものじゃな」
と、愚痴るナナちゃんとミカちゃんも無難にクリア。
個人の成績でみれば、二人とも上位ベストテンに入っているスコアである。
ここまで非常に順調だ。
全員のスコアが安定しているため、二位との差をさらに広げることに成功する。
私たちは一位をキープしたまま、第六ホールを終えた。
ここで十一位以下のチームが敗退となり、残りのチームが第七ホールへ挑むこととなる。
ここまでくると、参加人数がぐっと減ったため、何とも言えない緊張感が出てくる。
私たちはスコアを引き離した状態で一位を守っているが、油断せずに気を引き締めていくべきだろう。
ここから、残された十位以内のチームで、四ホールを戦うことになる。
が、私たちのチーム以外はチーム内の雰囲気に異常が出ていた。
俯いたままブツブツと独り言をいったり、取り乱して口論になったり、完全に集中力が途切れてしまっている。
それに加えて、明らかなモチベーションの低下がみられた。
現スコアでは、私たちが崩れない限り、二位以下が優勝することがほぼ不可能となったからだ。
つまり、こちらは安全策を取って打数を刻む余裕すらある。
スコア、精神面、ともに有利な状況を構築できていた。
逆に言えば、他のチームは勝ち筋が見えない状況となってしまっていた。
これは私たちが何かするまでもなく、自滅する未来もあり得る。
そして、この第七ホールからは、私たちが十番。最後のグループとなる。
つまり、三十三番以下のチームは全て敗退したことになる。
私たちのショットを見た後では、プレイに支障をきたして本来の実力が発揮できなかったのだろう。
ちなみに、私たちの一つ前にあたる九番目のグループが、峰霊中学第一フォーゲート部となった。
順番が回ってくるのを待ちながら観戦していると、苦々しい顔をした第一部のレギュラーたちがこちらを見てくる。
そんな中、炎泉部長がこちらへやって来て、レイちゃんに話しかけた。
「本当に優勝するつもりだったのね……」
「もちろんですわ。ここから先も全力で行かせていただきます」
「受けて立つわ。とても敵いそうにないけど。まさか、ここまでとはね」
部長は自嘲気味に笑って見せると、続けた。
「今日の試合を見ていると、貴方たちが北海道で活躍する姿が容易に想像できてしまう。本当に羨ましいわ」
「お互い、最後まで頑張りましょう」
「そうね。勝負は最後まで何が起こるか分からないもの。諦めるのはまだ早いわね」
レイちゃんの言葉を聞いた炎泉部長は笑顔で応え、元の待機位置へと戻っていった。
部長はどこか清々しい顔をしていたが、合流先の他のレギュラーからは険悪な視線を感じる。
まあ、私たちのせいで大会に参加できるレギュラーの数が減ったのだから仕方ない。
こればっかりは、受け入れるしかないだろう。
そうこうしている間に九番目のチームである第一部のショットが終わり、とうとう私たちの番がやってきた。
だが、様子がおかしい。
私たちが打つ前に、ギャラリーが移動し始めたのだ。
私がティーグラウンドに立つ頃には、人っ子一人いなくなっていた。
もう私たちのプレイに興味がなくなった、ということなのだろうか。
今までと違った雰囲気だが、集中していかないと。
私は気持ちを落ち着かせるため、軽く深呼吸する。
ここまでを振り返ると、第四ホールからは曲線のコースが多かった。
眼前にある第七ホールからは、それにプラスして高低差と池などの障害物が増える。
といっても、ゴルフと違ってバンカーは存在しない。
フォーゲートは二打目以降もティーに載せてショットを打つためだ。
そのため、ゴルフのコースより池が多い。……気を付けないと。
ここからは、更に精密なプレイが要求されることになる。
「それじゃあ、行きますか」
私は、ゲートの位置とコースの高低差を考え、ショットを打った。
第七ホールはゲートの位置がシビアなため、一打で最終ゲートまで狙うことはできない。
ギリギリを攻めて第二ゲートまで潜らせ、第三ゲート手前で落とす狙いだ。
「え」
しかし、私が打ったショットは、第二ゲートのゲートポストに接触してグラウンドに落ちた。
「今、動いたよね……」
明らかにゲートが縮まった。そのせいでボールがゲートポストに接触したのだ。
今の出来事を確認しようと、私はチームメンバーに視線を送る。
すると、皆が一様に頷いた。やはり、おかしい。
「審判、第二ゲートが動いた気がしたんですが」
「今日は気温が高いからな。熱で景色が揺らいだんだろう。次の選手に代わりなさい」
しかし審判は、夏場のアスファルトゆらゆら現象と同じだと片づけた。
いや、そんな感じじゃなかった。もっと機械的かつ正確な動きで縮まったのだ。
このコース、ゲートを連続で通過させようとすると、ゲートポストに近いギリギリの位置を狙って打つ必要がある。
そして、コース設定がシビアなため、自然とボールのルートが絞られる。
つまり、仕掛けがある場所へ打つように意図的に誘導されていたのだ。
しかも、審判がとぼけていることから、私たちのチームだけに行われていることとみるべきだ。
「気を付けて、ギリギリを狙うと跳ね返るようになってる」
「ええ。見ていましたわ」
すれ違いざまに、レイちゃんに報告する。
次に打ったレイちゃんは、私よりボールに回転を加えた。
それにより、ゲートが縮む幅より内側にボールを通すことに成功する。
ナナちゃんと、ミカちゃんは難しいショットは控え、無難に打数を刻むことで対応した。
私とレイちゃんも、二打目以降は慎重なプレイを心掛けた。
結果、トラップに引っかかることはなかったが、二位のチームとのスコア差がほんの少し縮まった。
次いで第八ホール。今回は上り坂のコースとなる。
さっきはゲートの端ギリギリを攻めたので、今回は余裕を持ったコース取りをする。
しかし――。
「はぁ!?」
――今度は、ゲートが地面に沈むように縮んだ。




