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 ◆九白真緒



 試合を観戦しながら待っていると、ついに私たちの順番がやってきた。


 打順は、私、レイちゃん、ナナちゃん、ミカちゃんの順。


 この順番は、対戦相手から妨害が行われると予想して組んだものだ。


 これだけ参加人数が多いと、一属性の私たちに対して、悪意を持つ者が現れると予想した。


 全員スポーツマンシップにあふれる選手だと思いたいが、多くの霊術師が持つ偏見を考慮すると、そうはならないだろうという考えだ。


 そういう者たちは、私たちにだけ手を出し、お偉いさんである四柱当主、鳳宮未花には妨害を行いたくないはず。


 そう考えると、私たちを先頭にしておけば、フィールドや道具への工作は防ぎやすい。


 なんせ、私たちに妨害を仕掛ければ、その影響がミカちゃんにも出てしまうからだ。


 そういったことを考えて打順を決めたため、団体戦のセオリーとは無関係だったりする。


 というわけで、一番の私がティーグラウンドに立つ。


 ここでフォーゲートのルールを軽くおさらいしておく。


 コース上にある第一ゲートから第三ゲートまでボールを潜らせ、最後に的となっているゴールゲートに当てて打数を競う。


 ゲートを潜らせる必要があるので、コースによっては勢いよく球を飛ばせばいいというわけではないのが、このゲームの特徴だ。


 第一ホールは、緩く右にカーブしたロングホール。


 池などの障害もなく、ゲートの位置も素直。


 選手の飛距離が試されるタイプのホールだ。


 こういった感じで、序盤はとにかくロングコースが多い。


 飛距離を出すショットで霊気を消費させ、霊力の低い者をふるいにかける構成となっている。


 まあ、私は霊気の使い過ぎや、スタミナを消費しすぎてバテるということとは無縁。


 構成を考えた人には悪いが、障害として機能しない。


 そういう意味では難易度は低いかもしれない。


「あれか一属性っていうのは」


「ったく、何考えて出場してるんだ」


 と、後ろで待つチームのざわめきが聞こえてくる。


 私はそれを無視し、フォーゲート専用霊装を作り出して手に取った。


「なんだあれ!?」


「どういうつもりだ!」


「ふざけてるのか!?」


 それを見て、小さなざわめきが激しいどよめきに変わる。


 というか、ブーイングに近い。


 まあ、仕方がない。


 なんせ私が作り出した霊装は、待ち針サイズ。


 かなり接近しないと見えないほど小さい霊装だ。


 私たちの次に待っているチームは霊装の小ささに気づいたみたいだけど


 それより後ろのチームは何が起きているのか、今一つ理解していないっぽい。


 無手でボールを打とうとしているように見えたのかもしれない。


「君、そんな大きさの霊装でどうするつもりだ。ふざけているのか?」


 私の霊装を見て、審判が近づいて苦言を呈した。


「問題ありません。これで打ちます。もし、ボールが飛ばなかったとしても、打数をカウントしてもらって構いません」


「……分かった。ある程度打ってボールが動かなかった場合、進行妨害とみなし、そのホールは失格。そして、現ホールで一番打数が高かった者のスコアを三倍にしてチームスコアに加算。そのホールのトータルスコアとして計上する」


「はい。じゃあ、打ちますんで」


 私は審判の説明に同意すると、霊装を構えた。


 それを合図に、審判も定位置に戻る。


 霊術の修業も色々やったけど、結局フォーゲートのショットが一番難しい。


 霊気の繊細なコントロールが求められるため、凄まじい集中が必要となるのだ。


「ほんの少しだけ。一瞬だけ。軽く出す……。行けっ!」


 私は限界まで絞りに絞った霊気を一瞬だけ、針の先から放出。


 すると、線香花火のような火花が飛び散ってボールに当たった。


 霊気を受けたボールは強烈な回転をしながら、グラウンドを飛ぶ。


 ボールは第一、第二ゲートを通過し、勢いそのままに第三も通過。


 最後に最終ゲートのセンターに命中して、グラウンドへ落下した。


 しかし、周囲は静寂が支配したまま。


 皆、無言の状態だ。


 ショットを打つ前まであった、侮蔑的喧騒が戻らない。


 まあ、やることはやったので選手交代だ。


 私はティーグラウンドを降り、レイちゃんと交代する。


「やりましたわね」


「うん、レイちゃんも頑張って」


 と、すれ違いざまに最小限の言葉を交わす。


「……なに、あれ?」


「一体どうなってる?」


「飛距離がおかしいだろ……」


 私たちが交代を終えるころには、ざわめきが戻りつつあった。


 そんな中、レイちゃんがティーグラウンドで霊装を取り出す。


 当然、待ち針サイズだ。


「また!?」


「どうなってるの?」


「まさか全員なのか……?」


 様々な声が飛び交う中、レイちゃんがショットの構えを取ると静寂が戻る。


 そして、打つ。私と同じように一瞬だけ霊気の放出を受けたボールは、ぐんぐん伸びていく。


 ボールは第一から第三ゲートを通過。最後に最終ゲートのセンターにしっかりと命中した。


 ナイスショットである。


「いくらなんでもおかしい! 審判、調べてくれ!」


 ギャラリーが沈黙する中、次のチームの監督と思われる人物が、たまらずといった感じで声を上げた。


 それに同調するように、ひそひそと耳打ちするような小さな声が、そこかしこで聞こえ出す。


「九白、雲上院、こちらに」


 と、審判が集合しているエリアに呼ばれる。


 ショットが不審ということで、ボディチェックや、霊気の放出など一式の検査を受けるはめになってしまう。


 結果は問題なし。当然だ。何も持ち込んでいないしね。


「不正はありません。ご静粛に。調査しましたが、不正な点は一切見られませんでした! ゲームを続行します!」


 審判の代表らしき人が、ギャラリーへ向けて説明する。


 それでも、私たちを疑うような視線は消えなかった。


 だけど、審判のお墨付きがもらったせいか、声に出して抗議する人間はいなくなった。


 チェックされた時はどうなることかと思ったけど、これで試合再開だ。


「あんた達の後だと打ちにくいんだけど……」


「わらわたちは至って普通じゃしのう」


 と、愚痴るナナちゃんとミカちゃん。とは言いつつも、二人とも高スコアをキープ。


 私たちのスコアを足すと、現時点で二位以下を大きく引き離して首位となった。


 試合は問題なく進行し、三ホールを終わった時点で、大きな差を作り出すことに成功した。


 これは良いスタートダッシュを切れたと言えるだろう。




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