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第1話 幼馴染の告白を断ったら

Xでアンケート?取ったやつ書きました。感想やブクマしていただけると幸いです。それでは第1話スタート!!

「……なあ、琴葉」

「なに? 拓海♡」

「ここ、俺の家じゃないよな?」

「うん。私の家だよ」

「なんで俺はここにいる?」

「だって、拓海が私の告白を断ったから♡」

なんでこんなことになったのか。それは全てあの日から始まった。


俺、柊拓海には、幼馴染がいる。

名前は、水城琴葉。

成績優秀、運動神経抜群、料理もできる、さらには学年でもトップクラスの美人、学校では、男女問わず人気者。

そんな完璧超人が、なぜか俺の家の前で毎朝待っている。

「拓海、おはよ〜!」

「……おはよう」

「今日も眠そうだね。ちゃんと寝た?」

「寝たよ。お前が昨日、夜中までメッセージ送ってこなかったらもっと寝られたけどな」

「えー? だって拓海が全然返信してくれないから」

「寝てたんだよ」

「じゃあ、今度から電話するね」

「やめろ」

そんな会話をしながら、俺たちは並んで学校へ向かう。

その光景は、もうすっかり日常になっていた。

「……なあ、琴葉」

「なに?」

「なんで毎朝、俺の家まで来るんだ?」

「幼馴染だから?」

「理由になってないだろ」

「じゃあ、拓海と一緒にいたいから」

「……」

琴葉は、何のためらいもなくそう言った。

俺は返事に困り、前を向く。

こういうところだ。

琴葉は昔から、俺に対して距離が近い。近すぎる。


俺が風邪を引けば、家まで来て看病する。

俺が昼飯を忘れれば、自分の弁当を分けてくれる。

俺が女子と話していると、なぜかいつも近くにいる。


そして何より――

「拓海」

「ん?」

「今日、放課後空いてる?」

「まあ、特に予定はないけど」

「じゃあ、ちょっと付き合ってほしい場所があるの」

「買い物?」

「ううん」

琴葉は、いつもの笑顔を浮かべた。

ただ、ほんの少しだけ、その笑顔が硬かった。

「大事な話があるの」

「……大事な話?」

「うん」

その瞬間、嫌な予感がした。

…いや。正確には、予感というより、なんとなく分かっていた。


最近の琴葉は、少し変だった。

いつも以上に俺のそばにいる。

いつも以上に俺を見ている。

そして、時々。

何かを決意したような顔をしていた。


放課後。俺は琴葉に連れられて、学校から少し離れた公園に来ていた。

夕暮れの空が、赤く染まっている。

公園にはほとんど人がいない。

「……それで、話って?」

「うん」琴葉は、俺の前に立った。

普段の明るい表情は消えていた。

真剣な顔。

その瞬間、俺の嫌な予感は確信に変わった。

「拓海」

「……」

「私ね」琴葉は一度、深く息を吸った。

「拓海のことが好き」

やっぱりか。

そう思った。

驚きはなかった。

昔から、何度も似たようなことを言われてきたからだ。


『拓海とずっと一緒にいたい』

『拓海のお嫁さんになれたらいいな』

『拓海が他の女の子と付き合ったら嫌だな』


冗談だと思っていた。幼馴染だから。ずっと一緒にいたから。だから、今回もその延長だと思っていた。


でも、

「幼馴染としてじゃない」琴葉は、俺の目をまっすぐ見つめた。

「一人の男の子として。私は、拓海が好き」

夕焼けに照らされた彼女の顔は、今まで見たどんな表情よりも綺麗だった。


だからこそ。

俺は、迷った。

琴葉のことが嫌いなわけじゃない。

むしろ大切だ。

家族みたいな存在。

俺にとって、かけがえのない人。


だけど。

「……ごめん」

俺は、そう言った。

琴葉の表情が、わずかに固まる。

「俺は、琴葉のことをそういう風には見られない」

沈黙。

風が吹き、公園の木々が揺れた。

俺は続ける。

「琴葉のことは大切だ。幼馴染として、これからも一緒にいたいと思ってる」

「……そっか」

「だから――」

「ううん」

琴葉は笑った。

「大丈夫だよ」

「え?」

「拓海がそう思ってるなら、仕方ないもん」

あまりにもあっさりした返事だった。

俺は逆に戸惑った。

「……怒ってないのか?」

「怒る理由なんてないよ」

「でも、告白を断ったんだぞ?」

「うん」

琴葉は笑顔のまま、頷いた。

「だから、これから頑張るね」

「……頑張る?」

「うん」

その言葉の意味を、俺は深く考えなかった。


「これからもよろしくね、拓海」

「ああ。こちらこそ」

俺たちは、いつも通りに別れた。


その日の夜。俺は自分の部屋で、スマホを眺めていた。


琴葉からメッセージが来ている。


『今日はありがとう』

『これからもよろしくね』

『大好きだよ』


最後の一文を見て、俺はため息をついた。

「……切り替え早すぎないか?」

俺は、そのままスマホを置いた。

まさか。

あんなに簡単に諦めるとは思わなかった。


翌朝。

「拓海、おはよう!」

「……おはよう」

いつも通り、琴葉が家の前に立っていた。

俺は少し安心した。

昨日告白を断ったから、気まずくなるかもしれない。

そう思っていたからだ。

「なあ、琴葉」

「なに?」

「昨日のことだけど」

「うん」

「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」琴葉は笑顔で答えた。

「私、拓海に好きになってもらうことにしたから」

「……え?」

「だから、これからもよろしくね」

その時の俺は、まだ知らなかった。

琴葉が何を始めたのか。


そして。

俺の周囲で、何かが少しずつ変わり始めていることを。


学校に着くと、教室に入った瞬間。

「お、拓海!」

友人の佐藤が声をかけてきた。

「お前、琴葉と付き合い始めたんだって?」

「……は?」

「え?」

俺と佐藤は、同時に固まった。

「いや、付き合ってないけど」

「え?」

「昨日告白されたけど、断った」

「……」

佐藤は、しばらく黙った。

「え?」

「だから断ったんだよ」

「……お前、正気?」

「なんでだよ!?」

「いや、だって水城だぞ?」

「それがなんだよ」

「学年一の美人で、成績もよくて、料理もできて、しかもお前のことが好きなんだろ?」

「……」

「なんで断るんだよ!?」

「俺が聞きたい!」

その瞬間。

「拓海くん」

背後から声がした。

振り返ると、琴葉の友達が立っていた。

「琴葉のこと、よろしくね」

「いや、だから付き合ってないって」

「え?」

「昨日断ったんだって」

「……」

彼女は、信じられないものを見るような目で俺を見た。

「拓海くんって、意外と鈍いんだね」

「何が!?」

その後も、次々と人がやってきた。

「拓海、琴葉を泣かせるなよ」

「二人なら絶対お似合いだと思ってた!」

「結婚式には呼んでくれよな!」

「だから付き合ってないって!」

俺は叫び続けた。

しかし、誰も聞いてくれなかった。


昼休み。俺は琴葉を問い詰めた。

「なあ、琴葉」

「なに?」

「なんでみんな、俺たちが付き合ってると思ってるんだ?」

「さあ?」

琴葉は弁当を食べながら、首を傾げた。

「でも、いいんじゃない?」

「よくないだろ!」

「どうして?」

「俺たちは付き合ってない!」

「うん」

「だったら訂正しろよ!」

「……」

琴葉は、箸を置いた。

「拓海」

「…なんだよ」

「私、昨日言ったよね?」

「何を?」

「拓海に好きになってもらうって」

「……」

琴葉は、優しく微笑んだ。

「だから、まずは周りから変えていこうと思って」

「周りから?」

「うん」

「どういう意味だ?」

琴葉は、少しだけ顔を近づけた。

「外堀を埋めるの」

「……は?」

「拓海の周りにいる人たちに、私たちが付き合うのは当然だって思ってもらうの」

「いや、待て」

「そうしたら、拓海もそのうち――」

琴葉は、にっこり笑った。

「私と付き合うのが自然になるでしょ?」

「ならねえよ!?」

俺は思わず立ち上がった。

しかし、


その日の帰り。

「拓海、おかえり〜!」

俺の家のリビングに、琴葉がいた。

「……」

俺は、ゆっくりと玄関の扉を閉めた。

そして、もう一度開けた。

琴葉はまだいた。

「…なんでいる?」

「今日からしばらく、ここでご飯を作ることになったの」

「誰が決めた!?」

「拓海のお母さん」

「母さん!?」

キッチンから母親が顔を出す。

「だって琴葉ちゃんが手伝ってくれるって言うから」

「いや、でも!」

「それに、拓海も琴葉ちゃんと一緒の方が楽しいでしょ?」

「そういう問題じゃ――」

「拓海」

琴葉が、俺の袖を掴んだ。

「今日のご飯、拓海の好きなものばっかりだよ?」

「……」

「一緒に食べよ?」

その笑顔に、俺は何も言えなかった。


夕食後。俺は自分の部屋に戻った。そして、ベッドに倒れ込む。

「……なんなんだよ、今日」

告白を断った。それだけのはずだった。

なのに、

友人たちは全員、琴葉の味方。

母親まで琴葉の味方。

そして、琴葉本人は。

「拓海」部屋のドアが開いた。

「……まだいたのか」

「うん」

琴葉は、当然のように部屋に入ってくる。

「何の用だよ」

「別に?」

「じゃあ帰れ」

「嫌」

「即答かよ」

琴葉は俺のベッドの隣に座った。

そして、俺を見つめる。

「ねえ、拓海」

「なんだよ」

「私のこと、いつ好きになってくれるかな?」

「知らない」

「そっか」琴葉は笑った。

その笑顔は、いつも通りだった。

だから俺は、気にしなかった。

「まあ、気長に待ってくれ」俺がそう言うと

「うん」

琴葉は、嬉しそうに頷いた。

「気長に待つよ」そして、俺の手を握った。

「拓海が私を好きになるまで」

その声は、優しかった。優しすぎた。

俺はまだ知らなかった。

この日から、俺の周りにいる人間が一人ずつ、琴葉の味方になっていくことを。

母親も。

友人も。

学校の先生も。


そして。

俺自身の逃げ道さえも。

すべてが、少しずつ。

少しずつ。

埋められていくことを一。


――この時の俺はまだ知らなかった。

俺が断ったのは、琴葉の告白ではない。


俺の自由そのものだったということを。

今回は回想がメインでした。何故拓海は監禁されたのかそれが今回である程度想像はつくと思います。さて、第2話どうなるのでしょうか。お楽しみに!!

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