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93、ソアラ迷宮6階層の調査へ

「おおっ、お嬢さんは、ビーウルフ族ですな? 私は、エルフィナの街で錬金術師をしているトーマンです。本日はよろしくお願いしますね」


 僕達が、ソアラ迷宮の入り口へ行くと、トーマンさんは、既に待ってくれていた。


「うん、あたしは、セルス村のあーちゃんだよ。トーマンちゃん、よろしくねっ」


「ほっほっ、あーちゃんのように可愛いお嬢さんに、トーマンちゃんと呼ばれるとは、嬉しいですな。そうか、セルス村ということは、あの村長のお姉さんですかな?」


「うん、そうだよっ。双子だけど、あたしの方が先に生まれたから、お姉ちゃんなの」


 ケモ耳の女の子の元気いっぱいな自己紹介に、その場にいたみんなが、癒されている。王都の騎士団の人達も、彼女の幼馴染であるムロさん以外は、メロメロだな。



「かなりの人数で潜るのですな。エドさんのお仲間は、どの方かな?」


 あっ、紹介する方がいいか。


「トーマンさん、ご紹介します。Bランク冒険者はジョーモさんとヤヨイさん、Cランク冒険者はモモさんと僕、Dランク冒険者はアスカさんです。イアンさんはAランク冒険者で、他の人達はイアンさんの護衛で来られています」


 僕は、それぞれ手で指しながら、紹介した。今回は、Sランク冒険者はいないし、ギルド長もいない。でも、王都の騎士団の人達がいるし、イアンさんもいるから大丈夫だろう。


「ご丁寧にありがとうございます。では、案内人はヤヨイさんでしたな? よろしくお願いしますね」


 ギルド長から案内人を頼まれたことを忘れていたのか、ヤヨイさんは慌てているようだ。


「トーマンさん、6階層までは、私が案内しますよ。私は、Aランク冒険者ですからね。迷宮では、人族は、冒険者ランクにより、上下関係が決まります。では、参りましょう」


 イアンさんは、サッと魔力を放った。青い幽霊が先導するみたいだな。


 僕達は、ソアラ迷宮への階段を降りて行った。




 ◇◇◇



「ええっ? あ、すみません。聞いていたのに、私の名前の街があるなんて……」


 宿屋の娘のモモさんが、2階層で驚きの声をあげた。


「モモちゃんみたいに綺麗な街にしたって、ダンジョンコアが言ってたんだよっ。夕焼け空が綺麗だねっ」


「そんなことを? あの壺に入った赤ん坊かな?」


「んとね〜、宿屋に来たのは男の子だよ。ダンジョンコアの本体は、女の子なの」


「へぇ、そうなのね。二人いるのかぁ」


「うん、そうだよ。あっ、間違えた! 男の子が二人いるから、全部で三人だよっ」


 ジョーモさんと並んで一番後ろを歩く僕は、二人の会話を楽しみながら、どんどん進んで行った。ジョーモさんも、ソアラ草原に似た4階層を歩いているときは、あくびをするほどリラックスしていたようだ。


 だが、5階層の密林に入ると、手には剣を握っていた。僕も、装備していた剣を抜く。



「エドさん、一番後ろは、魔物が突進してくることがあるっすよ」


 ジョーモさんは、少し楽しそうな顔をしている。イアンさんが一番前にいるから、王都の騎士団の人達も僕達から離れている。


「はい! 僕も頑張ります」


「ふっ、来るっすよ」


 ジョーモさんの動きに合わせて、僕も、突進してくる魔物を斬っていく。


 人族が食べられる肉だけど、あえて放置した。倒れた魔物を喰う魔物もいるためだ。それに、一定の時間が経てば、迷宮が吸収するから、放っておく方がいいらしい。



「エドさんと共闘するのは、久しぶりっすね」


 余裕があるジョーモさんは、話しながら、空から降って来るような魔物でも、確実に討伐していく。


「はい、しかし、ジョーモさん、僕は必死です」


「そうっすか? 余裕で蹴散らしているように見えるっすよ。最近は俺は、新人冒険者の世話ばかりしていたから、エドさんがいると、楽っすよ」


 ジョーモさんは、嬉しいことを言ってくれる。


「新人冒険者のパーティに加入したんですか?」


「いや、パーティ加入はしてないっす。俺を嫌う奴らの標的にされると困るっすからね」


 そうだった。ジョーモさんは、下位ランクの冒険者パーティに加入して、抜けた後に……抜けたパーティの人達は全滅したんだったよな。


「そうですか。加入しない方が、多くの新人冒険者を助けてあげられますもんね」


 僕は、ジョーモさんが一瞬見せた辛そうな表情には気づかないフリをして、さらりと返した。


 やはり、まだジョーモさんの心の傷は癒えてない。無神経なことを言わないように、気をつけないとな。




 6階層への階段の前で、イアンさん達が待っていた。いよいよだな。


「ここからは、ヤヨイさんが先導してください。私とトーマンさんは、皆さんの状態変化観察に注力します」


 イアンさんにそう言われて、ヤヨイさんはビクッとしている。今日は、派手なメイクをしているが、ガチャ壺から出た口紅は使ってないようだ。


「私が先導? まぁ、いいけど。スライムがたくさんいるだけの花畑だから、何も案内するとこはないけど、まぁ、うん、ついて来て」


 ヤヨイさんは、目立つことが苦手なようだ。僕をスカウトしたときに、僕が彼女と似ていると言っていたのを思い出した。


 追放ざまぁ支援局員になったことで、普通に喋れるようになったけど、根本的な部分は変わらないからな。




 階段を降り始めると、先導していたヤヨイさんが、上がってくる冒険者パーティと、すれ違った。


「階段の右側を通るなよ!」


 うわ、機嫌が悪いな。5人のパーティか。怒鳴った人以外は、不機嫌そうにしているけど、口を開かない。


「迷宮内の階段は、すれ違うときは、左側通行ですよ」


 怒鳴られたヤヨイさんが固まっていたから、イアンさんが上がってきた人達に、そう声をかけた。


「は? 偉そうにすんな! 職員が何をしに来たんだよ」


 イアンさんは、まだ職員だと思われてる。すると、ジョーモさんが、タタッと階段を降りていき、ヤヨイさんの横に立った。


「迷宮内の階段は、左側通行っすよ。それに迷宮内では、冒険者ランクで上下関係が決まるっす。彼は、高位のAランク冒険者っすよ? 俺は、ただのBランクっすけどね。キミ達は、Sランクなんすか?」


 ジョーモさんに強い口調で叱られて、彼らの表情は引きつっていた。だけど謝ることなく、逃げるように階段を駆け上がって行った。


 普通なら、どんなにヤンチャでも、一言くらい謝るよな? 6階層から離れた影響か。



「ジョーモちゃん、カッコいいねっ。でも、あの子たち、ちょっと変だったね」


 ケモ耳の女の子は、僕の方を振り返った。笑顔だけど、少し不安そうな表情に見えた。



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