表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色とりどりの黙示録  作者: owen
第三章 営業妨害者
97/97

青の章 寝かせてくれない

青の抽象的イメージ


知性 安息 信頼 誠実 忠実 失望




他の色のイメージも後日に

 

 実験テスト四百八十八回目。

「……include」

 《Outsider.Magic》

 次は、取り込んだアウトサイダーの魔術を自分用に変化。

「Compile」

 魔術を自身の魔力炉にリンクさせ、

「Linker」

 実行。

「……」

 目を瞑り、その炎の在り方の明確なイメージを思い浮かべ、一晩通して考えた行程を実践した。

 ゆっくりと目を開ける。

 右手のひらには………………ライターの火程度の大きさしかない火が生じていた。

「……ようやく入り口ですか」

 息を吐くと、気が抜けてしまったようで炎も消えてしまった。

「はぁ……」

 魔術というのは、想像以上に難しい。

 何気なく時計に目を向ける。

 時刻は、もう午前九時になろうとしていた。

 そうしと魔術の鍛錬から気を逸らした途端に、とてつもない疲労感と睡魔に襲われた。

 これはもう、休むしかない。


 浴室から出て、寝床に向かう途中、

『海留ー。いるー?』

 マイクを通した咲の声が、一台のパソコンから聞こえた。

 多数設置された内何台かは、来客があった時に自動で電源がつく仕組みにしている。

 動体感知スキャナのようなものだ。

 ともかく、来客がいる。

 相手をする気力はないのだが、居留守するわけにもいきまい。

 パソコンの前に座り、ハッチ前の監視カメラを起動する。

「……」

 咲の横に、見知らぬ少年がいた。

 敵…………とは考えにくいが、警戒はしておこうか。

 ハッチのロックを解除する。

 咲と彼女の付き添いの少年が梯子で下りてくる。

「彼は?」

「光助。私の家族だよ」

「家族?」

 全く似てないと言えば失礼だろうな。

「よっ。お前が海留か?」

「そうですが」

 コースケとやらが、手を差し出してきた。

「俺は光助だ。よろしくな」

 その手を握り、握手を交わす。

「こちらこそ。それで、貴女が一人でここへ来るとは珍しいですね。何かあったんですか?」

「黒希が病院に来いって」

「彼、入院したんですか?」

「ううん。叶が入院したの」

 それなら、ケータイでも用は済ませるだろうに。何故わざわざ咲を使者として寄越したんだ?

「お見舞いなら、よろしくとお伝えください。僕は遠慮しておきます」

「あ、これからについての話し合いがあるの。お見舞いも兼ねてるけど」

「……」

 これからについてか。

 ………………無視できないな。

「わかりました。叶さんは何故入院を?」

「右腕の骨が折れちゃって……」

 言葉の途中で俯いてしまった咲。

 原因は彼女にあるようだ。

「骨折ですか。仕事で?」

「うん」

 あの女戦士かなえが怪我をするとは、相手は人間ではなかったのだろうか。

「天使と戦ってる最中にな。お、これパソコンじゃねぇか! いいなぁ」

 と、パソコンに興味津々の光助。

「天使……?」

 昨日耳にしたばかりの単語に、目を細めた。

 最近、偶然が重なりすぎている気がする。

 まるで誰かが仕組んでいるようだ。

「……」

 気に入らない。

 誰かの手のひらで踊らされている感覚は嫌いだ。

「……また怖い顔してるよ」

「最近、色々ありましてね」

 加えて酷い眠気に苛まれている。

「海留もなんだ。その悩みも、みんなで頑張って解決しよ?」

 ここまで純粋な子は滅多にいないのではないだろうか。

 しかし。

 咲の善意には悪いが、悩みを共有する気はない。

 自分の問題は自分で解決する。こればっかりは、誰にも介入されたくない。

「では、彼にパソコンを壊される前にここを出ましょうか」

 コースケとやらが弄っているパソコンからピーピーとエラー音が絶えない。

「どうやって消せばいいんだ、これ」

 解らないなら手を離せばいいものを。

「後で僕が処理しますから、手を離してください」

「悪いな」

「……」

 自由な人だ。平気で話しかけてくる辺り、人との接し方に慣れている上、警戒心を全く持っていないように思える。

 そういうところ、黒希に似ていないでもない。

 自分を元テロリストと知っていて尚、平気で背中を預けてくる。

「……」

 まぁ、悪い気はしないが。

「……行きましょうか」

 簡単な身支度を整え、地下いえを出た。



 徒歩で十五分ほど歩いたところに、その病院はあった。

 咲は事前に叶のいる病室を知らされていたので、彼女を先頭に廊下を進んで数分。

「叶、おはよう」

 病室に入って早々、咲が朝の挨拶をする。

 叶は少し嬉しそうに表情を緩ませた。

「おはよ」

「よっ。元気か叶」

 光助まで気軽に声をかけた。

 叶はこちらを見るなり、

「アンタが来るとは思ってなかった」

「僕は貴女が思うほど薄情ではなかった、ということですね。これを機に、僕の印象を改めることだ」

「む……くたばれクソメガネ」

 まるで黒希のような発言をする叶。

「はは。仲良いんだなお前ら」

 光助が笑う。

「リーダーはまだ来てないんですか?」

 ここまでの道すがら、黒希と、あとスズカとやらが来ると咲から聞いている。そのスズカとやらは、なんとあの黒希の妹らしい。

 どんな腹黒女が来るのやら。

「そろそろ来るんじゃないかな」

「全く……マイペースですね」

 光助と咲は空きベッドに腰掛けた。

 ベッドで寝たい気分だが、今眠ってしまっては当分は起きれそうにない。

 日光を浴びれば目が覚めるだろうと思い、窓際に椅子を引きずっていって、そこに腰掛ける。

「何があったんですか?」

「変な奴と戦ってて、それで……」

 そこで光助が、

「天使だよ、天使。わかる? エンジェル」

 しつこいほど天使と連呼する。

「てんし? てんしって、あの? 確かに羽とか見えたけど……」

 戦った本人もわかっていなかったのか、叶はキョトンとしていた。

「天使ですか……」

 改めてその言葉を聞くと、バーナヴァス・ジェイソンのことを思い出した。

 彼が口にした、天使の言語。

 もしかすると彼は………………だとしたらまだ、

「……天使を殺す方法を知っていますか?」

 そう言った瞬間、場の空気が固まった。

「…………なんですか?」

 視線のやり場に困り、馴染みのある叶を見る。

「前言撤回」

 彼女の唇の動きを読み取り、助言を受けた。

「いえ、殺すというのはその……退けるという意味ですよ」

 それから沈黙が数秒続き、なるほどと口を開いた光助が、

「確か、天使から身を隠す魔術があるってフレイヤさんが言ってたな」

「その魔術を教えてもらってもいいですか?」

「悪いけど、知らないんだ」

「咲さんは?」

 首を横に振る咲。彼女も知らないようだ。

 なんとか気不味い空気から脱したが、収穫なし。これなら光助か咲を拷問にかけて無理にでも吐かせた方が効率的だったか。

「海留、ちょっと」

 叶に手招きされ、そちらへ身を寄せる。

「光助と咲に殺すの一言は禁句だ。死とか、それに関連する言葉もダメ。いい?」

「……光助さんは新メンバーなんですか?」

「いや、違うと思うけど……」

「ならどうして気を遣う必要が?」

「アンタねぇ……とにかく、禁句だから」

「はぁ……仕方ありませんね」

 頷いてみたものの、今の脳は本調子ではないためついうっかり口を滑らせてしまうかもしれない。

 黒希が来るまで少しだけ仮眠を………………、

「院内で物を食べるな。つーか、ボロボロこぼしすぎだ」

「うぅ……口の中の水分が消えていく。ねぇねぇお兄ちゃん、さっきの売店でコーラ買ってきてよ」

「人の話を聞け」

「聞いてるもん。無視してるだけだもん」

「くたばれ」

「朝からキツイのかましてくれるねぇ」

 何やら廊下が騒々しくなってきた。

 黒希と、その妹が遅れてやってきたようだ。

 睡魔を抱えたまま話し合いに参加することになってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ