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色とりどりの黙示録  作者: owen
第三章 営業妨害者
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緑の章 朝の一杯は効きますね

今回から、物語は章ごとの主人公の主観で書いていきます


途中から文章が変化するのは読む人にとって辛いでしょうが、ご辛抱ください




展開が遅くてすみません

 

 早寝してしまったせいか、目覚めたのは四時半くらいだった。

「……涼風、いないんだっけ」

 光助は…………別の部屋だっけ。

 人の部屋を勝手に歩き回るのは、ちょっと気が引けるな。

 結局、思い至った場所は、リビングだった。


「……あ」

「ん。早いな咲《えみ》」

 カフェインの匂いがすると思ったら、リビングに先客がいた。

 黒希《くろき》はソファに横になっていた。

 彼の寝室ならあるはずだが。

 横になったまま、マグカップに入ったコーヒーを一口飲むと、

「眠れないのか?」

「ううん。昨日は早い時間に寝ちゃったから」

「俺もだ。何か飲むか? 水、ミルク、コーラにオレンジジュース、それとココアとコーヒー、紅茶もある」

 自分でやるよと申し出ようとしたが、何処に何があるのか分からない。

「ココアにしようかな」

 それから数分も経たずに、黒希がココアを持ってきてくれた。

 黒希と向かい合わせの席に座る。

「ありがと」

「熱いから気を付けろよ」

 マグカップを持とうとして、

「あつッ!」

 慌ててテーブルにガシャンと大きな音を立てて置いてしまった。

「おい大丈夫か?」

「う、うん。思ったより熱くて……」

 両手をバダバタと振って熱を冷まそうと試みる。

「ところでさ」

「なに?」

「お前、どうしたってそんな格好してたんだ?」

「え? ワイシャツのこと?」

 上はワイシャツで、ズボンは履いていない。

 涼風曰く、これぞロリっ娘《こ》という要素をより引き立てるアイテムだそう。

 夏だし、涼しくて結構気に入っていた。

 黒希の、その視線を受けるまでは。

「……これ、変かな?」

「変ってそりゃ……お前、アパートでいっつもそんな格好してたのか?」

「ううん。これは涼風に勧められたの」

「バカな妹がご迷惑をおかけしましたすみません」

 軽く頭を下げる黒希。

 謝られた意味がよく解らない。

「これ結構気に入ってるんだけど……」

 顔を上げた黒希は顎に手を当てて、

「すでに洗脳済みか……」

「?」

「何でもない」

 息を吐くように言って、黒希はマグカップをテーブルの上に置いた。クッションを枕に、ソファの上で横になる。

「……黒希」

「んー」

 聞くのやめようかな、と一度考え直して、意を決して口を開いた。

「どうすれば黒希みたいに強くなれるかな」

「……昨日なんかあったな」

 うっ。鋭いな、この人。まぁ、ケーサツっぼい仕事してるからなんだろうけど。

「うん。実は……」


 昨日あったことの要点だけを話した。


 黒希が驚いたのは、

「叶が……?」

 叶が黒希と同じ大鎌を持っていたという話。

「いや、今は……お前はどういうわけか天使に追われてると。心当たりはないのか?」

「私の存在が多くの人を殺すって、ミカエルが言ってた」

「ミカエル……」

 黒希の表情が、少し険しくなった。

「黒希……どうかしたの?」

「……いや。その言葉の真意が何であれ、かなり厄介な事に巻き込まれてたんだな、お前。もしかしてこの世界に逃げてきたのか?」

「一時的な非難として、お母さんがこの世界に飛ばしてくれたの。その時、赤い瞳の少年に協力をお願いしてって言われたんだけど……」

「もう二年も経ったな。どうして言わなかった」

「頼み辛かったし、今は……」

 黒希の頭から爪先まで目を走らせた。

 傷が『視える』。

「いつもボロボロだし」

「……げ。お前、透視とかできんのか?」

 彼が驚くのも無理はない。

 傷は全て、衣服の内側にある。

 普通なら見えない。

 なのに、『視えてしまう』。

 傷だけが、そこにハッキリと視界に映っている。

 指摘されてようやく自覚できた。

「透視はできないけど……どうしてだろ」

「新しい力の発芽か。やれやれ、今度は何処ぞのRPGみたいに伝説の剣を持ってくる奴が出てきてもおかしくないな。そんで、お前はどうするんだ?」

「どうするって?」

「俺は神に狙われてる。お前は天使に狙われてる。お互い指名手配犯ってわけだ。このまま家《ここ》にいたら他の奴を巻き込む事になるな」

「それって……」

「俺はここを出るつもりだ」

「え」

「一緒に行くことはできないが、手助けはぐらいはしてやれる。それと、強くなる方法だが……」

 黒希は目だけをこちらに向けた。

「俺が教えられるのは、何かを殺す方法だけだ。これ、お前が一番嫌ってる行為だろ?」

「……」

 そうだ。

 この人は、今まで多くの命を奪ってきた。

 それも、魂に血の匂いがこびり付くほど沢山の。

 でも、

「今の黒希からは、強い血の匂いはしないよ」

「……そう言ってくれるのは有難いんだが、俺の本質は変わっちゃいない」

 黒希の視線が天井へ向けられる。

「敵は殺す。それが敵である限りは」

 それが彼の信条なのか、全く譲る気はないように感じた。

「……黒希は、すごいね」

「だろ? 俺が上司でよかったな」

 黒希は笑うことなく冗談めかしに言った。

「うん」

 頷いて、熱いココアを飲む。

 程よい甘さだ。

「まぁ、これからについては今日にでもアイツら集めて話し合う予定だ。お前も参加するか?」

「うん。あ、華凪って人も来るの?」

「アイツは無関係だ。参加はさせない」

「……あの人、黒希のお嫁さん?」

「……は?」

 黒希が目を丸くした。

「一緒に暮らしてるって華凪は言ってたから、お嫁さんかなーって」

「お前の脳内はお花畑だなー。嫁じゃねぇよ。ただの家主だ」

「でも、恋人なんでしょ? 十二歳の時に告白したって聞いたけど……」

 華凪が嬉しそうに語っていたのを覚えている。

 夕暮れ時に告白したそうだ。

 黒希の反応はと言うと、今みたいに困惑した表情でいたとか。

 見てみたかったな。

「事実だが、恋人じゃない」

 そして、それからというもの今みたいに恋人関係は断固として否定、もしくは有耶無耶《うやむや》にしているんだとか。

 恋というのは、とても美しいものだとお母さんは話していた。

 それをどうして拒むのだろう?

「あの人、優しいよね。私は好きだな」

「なら、現金《クレジット》付きでくれてやるよ」

「冗談にしても、その言い方は酷いよ」

「……そうだな。全く、良い子ちゃんは冗談が通じなくて困る」

「む」

「早く飲まないと冷めちまうぞ。それともアイスの方がよかったか、お嬢様」

「むぅ……」

 意地の悪い人だ。

 丁度いい温度になったココアを口の中に含む。

「……」

 俺が教えられるのは何かを殺す方法だけ、か。

 ひょっとしたら、命を奪うことも『強さ』なのかもしれない。

 甘いココアに反して、黒希との会話は苦味を帯びていた。

 ………………あ。今の詩みたいだな。

 後で叶に教えなきゃ。










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