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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
44/97

赤の章 第2節

 

 家族を守りたい。

 いくらその想いが強くとも、実力の差は埋まらない。

 光助の右手に『強力な一撃』が宿っていたとしても、彼の身体能力は、あくまで高校生の平均を上回っているだけ。オリンピックに出ているようなスポーツ選手には、普通に負ける。

 相手は、魔王、堕天使の肩書きを持つルシファーだ。その挙動は、人間を遥かに超える速度を叩き出す。

 光助が決定打を与える一撃を持っていようが、それは当たらなければ意味はない。

 故に、光助は呆気なく負ける。

「がはッ⁉︎」

 ルシファーの拳が、腹に減り込んだ。

 光助が血を吐き、吹き飛ぶ。柱を貫通し、壁に激突する。

 普通の人間なら、すでに死んでいてもおかしくない一撃だった。

 それなのに、光助は立ち上がる。まるで、攻撃など受けていないように。

 ルシファーは、彼の右腕を見た。

 幽かな光が見えた。

「……なるほど。女神の加護か」

 傷の治癒能力もあると予測する。

 右手に冷気を集め、斧を作る。その刃は、斬ると言うより叩き潰すためにあるようで、ほとんど鎚に近い。

 それを担ぎ、半ば地面を滑空するように駆ける。

 狙いは、右腕。肩から切断する。

 光助はそれを見切っていた。

 振り下ろされた斧は、光助に触れることなく地面を砕いた。

 光助が、ルシファーの一撃を躱した。

「ッ」

 ルシファーの表情に、初めて驚きが露わになる。

 光助の身体能力が、ルシファーを超えたわけではない。

 答えは単純。

 弱点の利用。相手が右腕を狙うと判れば、対処できる。あの速度に反応できたのは、ただのマグレだが。

 ルシファーの頬に、光助の右拳が放たれる。

 直撃する。

「うおおおおおぉぉォォォォォォッ‼︎‼︎」

 光助は、自身を鼓舞するように雄叫びを上げ、拳を振り切ってルシファーを吹き飛ばした。

 ルシファーの体は何本かの柱を貫通し、壁を貫通して見えなくなった。

 手応えはあった。

 壁に開いた穴から、白い物体が物凄い勢いで飛び出してくる。

 それが何かを視認する暇もなく、光助は慌てて横へ転がった。

 そこへ、前方からルシファーが跳んでくる。

 斧を振り下ろしくる。

「まず……」

 体勢を立て直す暇がない。

 死を間近に感じた。

 目の前に、大鎌を携えた者の小さな後ろ姿さえ見えた。

「……?」

「何惚けてんだ! 早く逃げろ!」

 その死神は少女らしい。

 というか、光助は彼女を知っていた。

「ライカ?」

 訊くが、首根っこを掴まれグイッと乱暴に引っ張られてしまう。

「ぐぇっ……涼風⁉︎」

 それに、光助の首根っこを掴む金髪少女涼風が、

「涼風⁉︎ じゃないでしょ‼︎ 一緒に来たのに何ワタシの存在を消去しちゃんてんの!」

「悪ぃな。てか、おい! まだ決着が……」

「いいから逃げるの‼︎」

 涼風が咲に触れる。

 景色が変わる。屋敷に戻る。


 魔王様に言いたいことは山ほどあったが、咲と涼風が無事だったのでよしとする。


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