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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
43/97

緑の章 第4節

 

 夢を見ていた。

 何年も昔の、懐かしく、心が安らぐ夢。


「何してんだー? 早く登って来いよ」

 高い木の上から、七歳の少年が手を振った。

 少年がいる木は、この森の中でも抜きん出て高い木だ。そこからの景色は、きっと今まで見たことがないくらい素敵なのだろう。

「でも……」

 そんな勇気は、なかった。

 怖い。木に登ったことなどないし、高い所は苦手だ。そこから落ちてしまうと思うと、怖くてたまらない。

 戸惑っていると、少年が木の枝を伝って降りてきた。やや高い位置から飛び降りると、目の前でこちらに背を向けて屈んだ。

「ん」

「?」

「おぶってやるから」

 少年の意図を察して、

「え……私の方が大きいのに、危ないよ」

「咲は軽いから大丈夫だよ。俺を信じて」

 この少年、光助と会ってまだ一ヶ月も経っていない。

 それなのに、何故だか、

「……うん」

 彼のことを信じられた。

 彼の背中に体を預ける。

「よっと……ん。思ってたより重いな」

 失礼な言葉に、頬を膨らませた。

「む……無理しなくても、丘に行けば同じ景色が見られるよ」

「この上からの景色をお前と見たいんだ」

 その言葉に、何て返していいか分からずに黙ってしまった。

 光助が木を登り始める。その最中、咲はずっと目を瞑っていた。

「着いたぞ」

 そう言われ、恐る恐る目を開けると、

「……わぁ」

 眼下に広がる森や湖。上には白い雲が悠々自適に泳ぐ青い空が。丘の上とは、また違った景色が見れた。それに、何故だろう。

 その景色が、いつにも増して素敵に見える。

 光助がゆっくりと慎重に、木の枝に降ろしてくれる。

 枝に腰掛けると、

「どうだ?」

 光助がこちらの顔を覗き込んで、訊いてくる。

「キレイだね」

「だろ。いつも一人で見てたから、退屈でさ。それで咲も一緒に、と思って。後でフレイヤさんも連れて来ようぜ」

「……どうしてお母さんのことフレイヤさんって言うの?」

「俺の本当の母さんじゃないからな」

「……でも、家族だよ」

「本当の家族じゃない。それに……」

 言いかけ、光助は口を噤んで俯いた。

「光助……?」

 そんな彼を見て、咲は心配になる。

 光助は顔を上げると、弱々しく笑って、

「家族だと思いたくないんだ。失くすのが、怖いからさ」

「……そんなの変だよ」

「え?」

「だって、こんな高い所にも平気で登れるのに、どうして怖いの? 私なんかよりも勇気があるのに」

「……それとこれとは、わけが違うんだ。家族は俺のせいで……」

 その時。

 二人の体が、ガクンと上下に揺れた。

 そして、枝が折れる音。

 二人の体が落下を始める。

 悲鳴を上げる暇もなく、地面が近付く。

 咲は恐怖のあまり、目をギュッと瞑った。



「テメェの自分勝手な理由で家族を奪われてたまるかよ‼︎」

 目が開く。

「……こう、すけ……?」

 霞む視界の中で、大きくなった彼の背中を見つけた。


 また、助けてくれるんだ。


















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