↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代の天才は異世界で凡人の夢を見る  作者: 福島の星
幼年期 バラッド王国滅亡編
10/19

八話 天才は異世界の闇を見る 前篇

 バラッド王国の首都「ハルボード」は人口百万人ほどの異世界でも大規模な都市の一つである。都市の各所に国家主要な施設が並び、実質的な政治の中心もハルボードに存在する。正にバラッド王国の心臓ともいえる都市だった。


 当然各方面から性別・人種・種族問わず都市への出入りが頻繁に行われ大きなバザールなども点在していて都市は活気に満ち溢れていた。

祐は、屋敷からついてくるレインを伴い屋敷のテラスに居なかったリグルドを探し都市内を回っていた。


「ユウくん! ユウくん! 見て見て美味しそうな鳥が刺さってるよ! いいな~食べたいな~私王宮から頻繁に出かけられないからチャンスを逃しなくないな~食べようよ~ね~ね~ね~!!」


 都市の空気にあてられたのか、いつも以上でテンションMAXのデブ専王女は祐にあからさまに太りそうな脂ぎった串肉をすすめてくる。


「レイン……僕をこれ以上太らせてどうする気なの!? 最近膝も痛くなってきたし本当にダイエットしたいんだけど……」


 まるで初老のような発言を繰りかえす5歳児にレインは微笑し、ただでさえ成長期に入って痩せやすい祐の体を丸いまま維持させるにはどうすべきか考えるのであった。今の光景をモネが見ていれば、天高く親指を上げていたに違いない。


 後は実践あるのみと、何かの計算が終わったような顔でレインは何本かの串肉を大人買いし始める。

完全に魂胆が見え見えな王女に祐は大声で叫ぶ


「レイン! 食べるのは良いけどリグルド兄さんを探すのも手伝ってよ!」

「リグルドさんなら屋敷に戻れば会えるわよ! 急がば回れよユウくん♡」


 現代でも一部の極東でしか使われない――ことわざをさらりと使いこなしレインがさらに多くの食材を購入している姿を見つめ祐は真剣な面持ちでレインに語りかける。


「これ以上家族に心配かけたくないんだよ……リグルド兄さんにもニナにも早く元気になったことを伝えたいんだ……ちょっと先まで探してくるからレインはここで待ってて!」

「え? ユウくん! ち、ちょっと待って! ……私一人じゃこんなに持てないよ!!!」


 レインは慌てて買い物を済ませ叫ぶがすでに祐の姿は人ごみの中に消えており、彼女の悲痛な叫びだけが空しく響くのだった。


 レインを置き去りにした祐は、あまりの人の多さに人を避けるように小さな路地をどんどんと進んでいく今までお祭りのような活気と笑いに溢れた場所から、一気に寒々しい景色へと都市が変貌していた。


「このあたりは人が少ないな……それにガラが悪くなったような……」


 祐の訪れていた区画は所謂(いわゆる)スラム街と呼ばれる場所で、富裕層の人間が間違っても訪れることのない危険な地域へと迷い込んでいた。


「おいおい金持ちそうなぼっちゃんが、こんなところに迷い込んでるぞ!」

「ホントだよ! これはたんまり身代金とれるかもな~ひゃはははは」


 前方から下品な笑い声を発しながら近ずくチンピラに目を向けながら、祐は嘆息(たんそく)していた。天才であるが故(ゆえ)に飛び級を重ねてきた祐は現代でもこの手の輩(やから)には散々からまれた経験があったからだ。昔は法術など使えなかったので自作のスタンガンや化学兵器で鎮圧していたのだが今は法術がある。一瞬モネの怒った顔が浮かぶが、一度こういう輩に甘い顔をすると、とことんつけあがることを理解していた祐は手のひらに光の術法を編み出す。


「ビビッて動けねえみてぇだな! おい豚ぼっちゃん大人しく俺たちについてきな! 痛い目にあいたい変態ちゃんなら付き合ってやってもいいけどよ~ひゃははははは」


 恫喝を繰り返すチンピラAに冷酷な裁きを与えようとした時、横合いから突然手を引かれて思わず振り返る。


「こっちよ!」

「え!? 誰だい君?」

「いいからあいつらから逃げる方が先でしょ!」


 祐より幾分年上な感じのする少女は、祐の手を掴むと近くの路地に飛び込む。


「お? おい待ちやがれ!!! ガキが逃げたぞ! 追え!!」


 まさにテンプレ全開のチンピラに祐は苦笑いするのだが、祐の手を引き逃げる少女は必死だ。捕まれば自分以上にひどい目に合わされる可能性が高い少女がなぜ見ず知らずの自分を助けてくれるのか、まったく理解できない祐だったが状況に流され少女と二人逃亡者となる。


 二人のチンピラ達は逃げられたことに、よほど腹を立てたのか仲間を呼びその数は数十人へと膨れ上がっていた。その中で一人異様な男が混ざっていた。彼には表情がなく、匂いもなく、存在そのものが希薄な男だった。チンピラ達に違和感なく溶け込んでいるように見えるが――異様さが際立っていた。


「困りましたね……あの娘を取り逃がすとは……あの方にも報告しなければなりませんね……」


 男の表情はどこまでも無表情であったが声のトーンはどこか憂鬱な様子でスラム街の奥へと消えていった。それはどこか幻影のようでもあり人間であることを止めてしまった亡霊のような男だった。


次の話は夕方投稿します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。