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異世界から来たガイア 73

第73章


マリク


敵の首都が、挑むように身じろぎもせず、地平線を支配している。


城壁は朝の光を受け止め、幾つもの塔が空を背景にくっきりとそびえ立っている。抵抗する準備は整っている。だが、長くは持たない。神々がお許しくださるなら。


ガイアはあの中にいる。


弱々しい姿など想像しない。俺が思い浮かべるのは、本当の彼女の姿だ。立っている。冷静で、そして美しい。だが今、彼女は極めて危険な状況に置かれている。彼女自身が選んだ役目は、俺たちのために道を切り開くことだ。そうしなければならないから。そして、彼女の計画が俺のものと同じようにうまくいけば、間もなく俺たちはまた一緒になれる。


もう少しだけだ。


目の前では歩兵たちが一定の歩調で前進している。衝突が近づき、矢と投槍の応酬が途切れる。盾を隙間なく並べ、槍を前方へ突き出す。沈黙が、今にも張り裂けそうな弦のように張り詰めていく。


キクが地面に唾を吐き、祈りを呟く。盾を持つことになった兵士は、今朝から一度も祈るのをやめていない。


俺は戦車の縁を強く握る。祈る必要はない。俺は自分の女神を取り戻しに行くのだ。神々が俺を認めてくださっていることは、もう分かっている。


両軍の戦列がぶつかり合う。


轟音は一瞬だった。密集した音が一気に空気を満たす。金属と木がぶつかり、肉体同士が押し合い、怒号と罵声が飛び交う。戦場の中央が内側へと閉じていき、人間を飲み込み始める。


戦いが始まった。


指先に伝わる木の震え。待っていた合図だ。


俺は腕を上げる。「進め、ドゥルハン! イシュダーのために!」腕を振り下ろす。


御者たちの檄に応じ、馬が一斉に駆け出す。車輪が速度を上げ、戦場が広がり、距離が変わり、時間さえ加速していく。


右翼の戦車隊が一斉に動き出し、俺たちの戦車も例外ではない。


キクは、戦車がいつもより重いことなど気にも留めていないようだ。鉄のおかげだ。三人が乗っているというのに、戦車はほとんど揺らがない。


右手では盾が正確に動き、隙を覆い、敵の矢筋を断ち切っている。一矢が跳ね返る。もう一矢が縁に突き刺さり、そのまま用をなさなくなる。


俺は弓を引き、密集しすぎた敵の戦車を狙う。弦を放つ。御者が落ち、戦車が大きくよろめく。敵の戦列が一歩分、開いた。それだけで十分だ。


俺たちの戦車隊と敵の戦車隊の間には、まだ三十歩ほどの距離がある。だが、敵の戦車は次々と俺たちの矢に倒れていく。一方、こちらは盾の守りに頼ることができる。


大地が震える。


一個戦隊が敵陣を切り開くため、その隙間へ向かっていく。自殺に近い行動だ。だが、俺に責任というものがなければ、俺も同じことをしただろう。それだけで戦い全体を決めかねない一手だ。


十歩。


向こうに勝機があるとすれば、この距離を詰めるしかない。


俺は群れに向かって三本の矢を放つ。この距離なら、外すほうが難しい。


戦隊が敵陣へ食い込み、敵の戦列をさらに大きく切り開いていく。何人かが弓を捨て、剣を握ったのが見える。虐殺が始まっている。


「左へ回避!」俺は右翼全体に命じる。戦車同士でぶつかり合う必要はない。まだ少し距離を保ち、敵を疲弊させる。


右翼は命令に従い、敵に盾を向けながら矢を放ち続ける。


「ヴェルティワザを探す!」


「はい、陛下!」キクは右翼の流れに沿って戦車を走らせる。


また一度、乾いた音が響いた。盾が役目を果たしている証拠だ。


敵陣の中で、黒と緑の軍旗が揺れている。


ヴェルティワザが真っ直ぐに進んでくる。配下の兵たちに囲まれている。彼の戦車は進路を変えない。そのまま俺へ向かって加速してくる。周囲を走っている者たちは、おそらく彼の護衛だろう。


好都合だ。奴が死ねば、この戦争はここで終わる。


俺は矢を放つ。だが、仕留めたのは護衛の一人だけだった。男は人の波の中へと姿を消す。


盾の壁が、突進してくる王を覆い隠している。間違いない。奴は俺を狙っている。


結局のところ、奴が死ねばこの戦争は終わる。そして同じように、俺が死んでも終わる。


盾を持った兵士が俺の耳元まで盾を持ち上げ、一矢を防ぐ。


「助かった」俺は呟く。


再び矢を放つ。また一人、護衛が倒れた。


もう一度、ガイアのことを考える。まるで彼女が、俺の放つ矢の一つ一つを導いているようだった。彼女は、ただ救わなければならない誰かではない。それなら、俺は慣れている。彼女は、俺を待っている人なのだ。


再び弓を引き絞り、ヴェルティワザの頭部へ狙いを定める。放つ。


護衛の一人が盾で俺の矢を受け止めた。くそっ。今日に限って、どうしてそこまで反応が速い。


「マリク!」聞き慣れない声。だが、強いミルワン訛りがある。「お前に決闘を申し込む!」

一騎打ちの挑発だ。


騎兵たちが距離を詰め、俺たちの優位が狭まっていく。


俺は矢を番え、すぐに解き放つ。矢は王の馬の一頭の額に突き刺さった。


鈍い音を立て、盾がさらに二本の矢を防ぐ。


「臆病者!」また同じ声だ。


キクが手綱を引いて戦車を減速させる。「行かないでください、罠です」


「分かっている」俺は再び矢を番え、今度は敵の護衛の兜を射抜いたが、大した痛手にはならない。


「臆病者!」同じ声が響く。「女だけでなく、他にも何かを失うのが怖いのか?!」


ガイア。


「ヴェルティワザ……」俺は呟く。


「マリク」キクが俺の名を呼ぶ。「おやめください」


「行かねばならん、奴が俺に挑んでいるんだ」


「行けば、賭けられているすべてを失うリスクがあります。今や俺たちは敵をハエのように殺しているんですよ」


「俺の名誉が懸かっている」


「それがあなたにとって重要なのは分かっていますが、奴の挑発です。あなたが死ねば奴の勝ちになり、奴もそれを知っているのです」


「兵士たちは、俺が受けることを期待している」


味方も敵も、互いに罵詈雑言を浴びせ合っている。


地面を揺るがす叫び声の中に、俺を臆病者と呼び、イシュダーは自分たちに味方していると主張する声を聞き取る。


「俺たちが勝てば、兵士たちも罵倒のことなどすぐに忘れる」


「その通りです」盾を保持している兵士が頷く。


俺は男に雄弁な睨みを利かせる。


「マリク!」相変わらず例の声だ。「この私、ヴェルティワザ王がお前に一騎打ちを申し込む! 我ら二人きりだ! 我が手の中にイシュダーがあるが如く、必ずやお前を打ち倒してみせる!」


もう十分だ。


戦場の喧騒、双方の罵声や嘲笑、悲鳴が次第に弱まっていく。


全員が、ただ俺の返答を待っている。


キクの言う通りだ、俺には失うものが多すぎる。勝ち目のある戦いを続けるより一騎打ちに応じるほうが遥かに危険だ。「くそっ」俺は呟く。


「行かないでください」


さらなる叫び声。「臆病者! 臆病者!」矢が突き刺さっているにもかかわらず、敵兵たちは俺をあざ笑う。


仮に勝利したとしても、この汚名は残るだろう。ガイアが拐われた時も俺は彼女を守れず、一騎打ちを挑まれた今も身を守ろうとしていない——皇子としてではなく、一人の男として挑まれているというのに。「ヴェルティワザ!」


キクが目を見開いて俺を見る。「まさか、本当に受けるつもりですか?」


「ヴェルティワザ! 戦車から降りて戦え! 俺とお前、二人だけでだ!」挑発に乗るなど愚の骨頂だが、こうするより他ないのだ。


戦場の轟音が収まり、兵士の一人ひとりが何が起ころうとしているのかを見定めようとしている。


王同士の一騎打ちなど極めて稀だ。互いの勇士を立てて戦わせることもあるが、それすら滅多にない。


「全員、止まれ!」ヴェルティワザの声がすべての喧騒を圧する。


「戦闘を止めよ!」俺も命じる。「一騎打ちを受け入れる!」


武器の打ち合いが止み、今や騎兵たちの関心はすべて俺たちに注がれている。


「父上様がこれをお知りになったら……」キクが小声で囁く。


「それより幸運を祈ってくれ」


「勝ち目は見えていましたし、その間にザナンザ様が首都の門に到達して奴の退路を断てたはずです」


「俺が勝てば、その必要もなくなる」


「もしあなたが死んだら、ガイア様は一生あなたを許しませんよ」


「お前には俺の勝利姿が目に浮かばないのか?」俺は大きな楕円形の盾を取り戻し、取っ手を握りしめる。腰には真新しい長大な鉄の剣が収まっている。


「俺は現実主義者なだけです」キクが微笑む。


「いいや、ただの悲観主義者だ」


「たいてい、悲観主義者のほうが正しいんですよ」


「父上は悲観主義に流されて帝国を再興したわけではない。そして俺も、敗北主義的な態度でドゥルハンの皇帝になるつもりはない」


キクはため息をつく。「分かっています。ですがお立場上、慎重さが必要です」


俺の戦車の前では、両陣営の兵士たちが空間を空け始めていた。十歩ほどの広さだ。


二つの騎兵隊は距離を取るように手綱を捌いている。命令など必要なかった。双方とも、再び弓を放つため、あるいは万一の虐殺から逃れるために距離を必要としていたのだ。


俺は戦車から降りる。


俺はここでは死なない。天を仰ぐ。ドゥルハンの神々よ、試練に臨む俺を導き、お守りください。戦車の前を通り過ぎ、馬たちの鼻面を撫でる。そして衆人環視の中、即席の闘技場へと足を踏み入れた。


「マリク! マリク!」配下の兵たちが俺の名を叫び、鼓舞する。

自由な右腕を空高く突き上げ、歓声を存分に浴びる。勝つために必要なものは、すべて揃っている。


「さあ、ヴェルティワザ! 俺はここで待っているぞ!」


敵陣が俺の前で割れ、武装した男が一人、こちらへ歩み出てくる。俺と同じく顔の露出した兜、胸には青銅板をもう一枚重ねた胸当てを着け、腕甲と脛当てを装備している。片手には青銅の剣、左手には小さな円形の盾。俺のような編み籠ではなく、硬い木で作られた盾のようだ。


防具だけを見れば俺たちはよく似ているが、あいつのほうが少しだけ重装備だ。


「来たぞ! この俺、ヴェルティワザ王が今日お前を殺す!」敵兵が歓声を上げる一方で、俺の兵士たちは奴にブーイングを浴びせる。


体格も俺と似ている。あいつのほうが青銅を多く身に着けている分、動きは少し遅いかもしれない。それに、俺の鎧は大部分が青銅より軽い鉄製だ。なぜムルはもっと早くこの装備を渡してくれなかったのだろう。ならば、持久力と速さで勝負できる。「俺はそうは思わないな。死ぬのはお前だ」人差し指を突きつける。「カラスの餌になるのはな」


「本当に無礼な男だ。俺ならお前に最大限の礼を尽くした葬儀を行い、その灰をお前の父親に送りつけてやる。俺に挑んだ者がどうなるか、その戒めとしてな」


「申し出には感謝するが、遠慮させてもらう」


「なら、豚の餌にしてやってもいいぞ」


「分かっていないようだな」俺は剣を抜く。太陽の光が、磨かれた鉄の眩い刃に反射する。「今日死ぬのはお前だ!」


「ふん」ヴェルティワザが地面に唾を吐く。「それは見てみないと分からんな」盾の陰に身を隠しながら近づいてくる。


俺も真似をする。俺の盾のほうがより広く身体を覆い、剣先を高く掲げて脅威を突きつける。


俺たちの周囲が静まり返る。


互いに相手の周りを回りながら、じっくりと探りを入れ合う。


きっと、なぜ俺の武器や防具の色が違うのか探ろうとしているのだろう。すでに青銅ではないことには気づいているはずだが、当然ながら警戒を解かない。


太陽が正面から目に入り、俺はわずかに目を細める。


ヴェルティワザが飛び出し、俺の右側へ向けて一撃を叩き込んでくる。


盾を伸ばして受け止める。


腕が痺れた。牽制などではなく、重い一撃だった。


奴は盾をぶつけ、俺を押し込もうと迫ってくる。


踏ん張り、盾を傾け、相手の足元を狙って地面すれすれまで振り下ろす。


外れた。


ヴェルティワザが剣を振り上げ、俺の頭めがけて叩き下ろす。


俺は自分の剣の刃でそれを弾き返す。


むき出しの腕の一部が覗いた。


剣を引き戻し、すかさず突き出す。


ヴェルティワザは後退し、腕にわずかな擦り傷を負うだけで難を逃れた。


俺の剣が長くなければ、完全に外れていただろう。見事な戦士だ。間違いなく俺と同格の腕前だ。


「見事だ」そう称えざるを得なかった。


「感謝するよ。なにしろ、イシュダーと床を共にしているのは俺だからな」


何だと! 血が沸騰する。「まさか……手を出したのか?」


「何がおかしい? 今や俺の妾だぞ」


もしガイアに何かされたのなら、彼女は元の世界へ戻れなくなる。そのことを彼女自身がよく分かっているはずだ。体を重ねたというなら、強要したのだ。暴力を使ったのだ。「ガイアがお前なんかに身を委ねるはずがない」俺は唸る。


「お前に何が分かる? 所詮は女だ。女というものは打算的で気まぐれなものさ」


彼女は違う、ガイアは違う。自分が何を冒すことになるか知っているはずだ。手段を探し、死に物狂いで抗って逃れようとしたはずだ。俺は脚に力を込め、突撃に備える。「なら聞かせてもらおうか。どうやって抵抗もさせずに済ませたんだ?」


ヴェルティワザは俺が馬鹿げたことを言ったかのようにあざ笑う。「俺は男で、あいつは女だ。己の分をわきまえ、受け入れただけだろう」


俺は盾の陰に身を隠したまま躍り出ると、剣を突きたてる。


奴はそれを受け止め、俺の左側へ身をかわすと、剣を振り下ろした。


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