エピソード3の第6章 あかね
エピソード3は、エピソード2の途中から分岐する、アナザーワールドです。第5章まではエピソード2と共通です。
吹奏楽部はコンクールが終わり、夏休みの練習も後半はお休み。お家で宿題と受験勉強をする毎日だった。
「お兄ちゃん!ちょっと大変!」
「お姉ちゃんって呼んでよ」
「そんな場合じゃないって!」
妹の能理子が、あわてている。サッカー部の練習で連日登校している。
「あたしの兄ちゃん、女のフリして学校にいるって、夏休みに登校しているうちの学年の部活生で、大騒ぎなの。情報源は、あかね」
「あかねって?」
「知ってるでしょ。吹奏楽部で、お兄ちゃんと一緒の楽器を吹いている子。部長の、亜由子さんだったっけ、会話をきいちゃったらしいよ。あの子、あの楽器で部員がひとりだったから、ファーストをずっと練習してたのに、お兄ちゃんが転校してきて、ファーストを奪われたって、そういう悔しさもあったんじゃないの」
びっくりした。身体が震えてきた。
夏休みが終わって最初に登校日、クラスに入ったとたんに注目を浴びた。
「おまえ、実は男子なんだって!」
「あそこがついてるのか?」
「転校生と思って、あたしたちを騙してたの?」
なにも言い返せなかった。そのまま教室を出て行った。
保護者にもあっという間に話が広がった。学校としても、臨時保護者説明会を開かざるを得なくなった。特に女子生徒のお母さんは、一様に「その子は男子なんでしょ?少なくともトイレや更衣室は分けてくれないと」と、強硬に主張。「なぜ他の生徒を騙すようなことをするんですか?」とも。
あたしは、怖くて学校に行くどころではなかった。
「お兄ちゃんだけじゃないよ。あたしだって辛いのよ。教室でも部活でも、オカマの妹って言われるから」
「お姉ちゃんって...」
「もういや!」
能理子は、あたしなんかよりずっと強くて、たくましい子。家族の悪口を言われても、堂々と学校に通っている。それでもさすがに、妹に悪いことをしているお姉さんのような気がして、申し訳なさを感じる。




