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エピソード1の第1章 今日から3年生

 今日から中学3年生。最初の登校日。

 あたしは、髪の毛をきちんと整え、校則でばれない程度の軽い化粧をした。そして、セーラー服に、スカート。家を出て、いつもの通学路。学校が近づくにつれ、登校する同級生と多くすれ違う。

 特別親しいお友達も少ないから、声を掛けて挨拶する子は少ない。

 通り過ぎる同級生が、みな、びっくりするように、あたしを見ている。そして慌てて目をそらすような顔も多くみた。

「え、どうしたの?」

 1年生の時に同じクラスだった女子、亜由子が話しかけてきた。実は幼稚園も同じだった。そして吹奏楽部の部長。入学以来一番接点が多い同級生。そして、人なつっこい性格の子。

「どうしたって、あたし、なにか変?」

「変って、そりゃ変よ。どうしてセーラー服着てるの?」

「制服でしょ、なにかおかしい?」

「だってそれって女子の」

「今日からあたし、女子だから。そうか、説明しないといけなかったのかな。学校にはきちんと説明してあるから大丈夫」

「ふうん」


 そうか、今日は、こんな会話があちこちで要るんだろうな。


 あたし、絵理。でも去年まで、英太えいたという名前の男子生徒だった。でも、どこかで身体と心のミスマッチが起こったようだった。「性同一性障害」っていうらしい。専門的なことはよくわからない。でも、中学校に入った頃から、男子の仲間に全く入っていけなかったのを自覚した。男子と話すより、女子と話す方が気楽。そして、自分の身体が、男子っぽく成長していくのに、ついていけなかった。

 思い切って、家の中では、男子でいることをやめた。

 最初は、妹の洋服を借りた。いやがられた。ママの洋服は、サイズが違うので入らなかった。おねだりして、あたし用の、普段着の洋服を買ってもらった。下着も買った。髪の毛も女子っぽくセットしていった。お手洗いも、次第に女子のスタイルでしかできなくなった。妹からはきもいと言われた。でも段々、あきらめられたと思う。次第に、洋服とかアクセサリーとか、ダメだしくらいはしてくれるようになった。妹としては、やりこめているつもりかもしれないけど、あたしは感謝してた。

 でも、家の中だけだった、お友達には話せない。

 春休みに一度、思い切って、女子の洋服で街中に出かけた。偶然、同じ部活の後輩に会った。女子の後輩。「英太先輩ですよね!かわいいですね!似合ってますよ!」思いっきり笑われた。でも踏ん切りが付いた。

 ママはこの間「性同一性障害」について調べてくれていた。あたしもママから薦められ、メンタルクリニックを受診していた。春休みにも、ママと学校に相談していた。4月から女子として登校したいと。考えてみますとは言われた。

 そして始業式。今日から3年生。えっと、学校から正式な返答ってあったっけ?でもここで待ってたら、前に進まない!


 今日は新しいあたしのはじまり。女子の制服で登校する!家の中だけじゃなく、学校でも女子として生きる!そして今、実行している!


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