表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/53

令和鬼合戦:運命の交叉~石切の女~

興味をもっていただきありがとうございます。

備前を離れ、新天地へと赴いた次郎。 彼が配属先で出会ったのは、石切一族の娘でした。

鬼の血を隠し、人として生きる次郎。 その魂に刻まれた「飢え」を、彼女の存在が静かに、そして確実に変容させていきます。


 明治の新しい風が吹く東京。

次郎が配属されたのは、各地の犬牙衆から精鋭が集まる「中央警備局」の一角だった。備前の山奥とは違う、馬車の音と瓦斯灯の光に彩られた街並み。次郎はその雑踏の中で、自らの職務に励んでいた。


「……鈴木次郎さんね。あの鈴木鉄斎様の甥っ子ですってね」


 声をかけてきたのは、同じ班に配属された一人の女性だった。

石切いしきり 紗江さえ

代々、忍者として戦ってきた、鬼の研究をしてきた「石切一族」の直系である。彼女の背には、一族の証である大きな解体包丁が括り付けられていた。


「よろしくお願いします。……あの、僕の顔に何かついていますか?」


 次郎が戸惑うのも無理はなかった。紗江は初対面の時から、次郎の顔を、というよりは、その肌の質感や魂脈の揺らぎを、獲物を品定めするような鋭い視線で見つめていたからだ。


「……いいえ。ただ、あなたの魂脈、少し不思議な感じがするわ。……まるで、深い穴の底で何かが眠っているような」


 きれいな人だな……次郎は心臓が跳ね上がるのを感じた。


 それから数ヶ月、二人は任務を共にする中で急速に距離を縮めていった。

石切一族は鬼の捕獲と研究を日常とするため、気配に敏感であり、同時に寛容でもあった。

 ある夜、任務の帰りに二人は隅田川の縁を歩いていた。


「次郎さん。あなたは、自分が何者か怖くなったことはない?」


 紗江の唐突な問いに、次郎は足を止めた。


「……ありますよ。でも、叔父さんが言ってくれたんです。何を食べて、何を愛するかで、人は決まるんだって」

「……さすが鉄斎様ね」


 紗江が次郎の手をそっと握る。

その温もりを感じた瞬間、次郎の中で一年以上沈黙していた「角」の疼きが、快い痺れとなって脳裏を走った。それは破壊の衝動ではなく、ただひたすらに、目の前の女性を守り、生きたいという、人としての渇望だった。


 同じ頃、備前・岡山の鈴木邸。鉄斎は一人、月明かりの下で愛刀を研いでいた。


「……来おったか」


 地中深くから響く、不気味な振動。

次郎を地獄から連れ出して五年。岡山基地の『封印された門』が、呼応するように震え始めていた。


 次郎が備前を離れてから、さらに年月が流れた。

次郎――改め羅門らもんは、石切一族の紗江さえと添い遂げ、二人の子宝に恵まれていた。子供たちは成長し、兄は猿掌衆えんしょうしゅう、妹は特務部隊である雉翼衆チヨクシュウへと配属され、若き忍として頭角を現していた。

 しかし、幸せの絶頂で家族を襲ったのは、不治の病だった。

子供たちの魂脈が原因不明の崩壊を始め、医術を尽くしても「余命幾ばくもない」と宣告される。絶望が家族を覆った。

その時、歴史上ただ一人の未来視の忍術使いが現れ、禁忌の託宣を残し、その後死亡した。


「間もなく、『鬼人王の門』が開く」


 その門は、氷結地獄の安全地帯に位置するが、一度内側から閉じれば、閉じた者は二度と地上へは戻れない。

病に侵され、どのみち死を待つだけの子供たちは、最期の誇りを賭けて志願した。「自分たちが門を閉じ、人柱になる」と。引退していた紗江もまた、母として子供たちの最期を見届けるべく、再び解体包丁を背負い、地獄への同行を決意した。


 討伐隊は、鉄斎総大将と百名の精鋭で構成された。

だが、運命は非情だった。一行が地獄へ降りた直後、勝手に門が閉じた。

 氷結地獄での戦いは凄絶を極めた。

現れた鬼人王との激突。百名いた忍者は瞬く間に削られ、二十名にまで減少する。

大きな犠牲を払いながらなんとか鬼人王を討伐。

快挙に歓声が沸いた。地獄からの出口は完全に消失。残された者たちは、氷の牢獄へと閉じ込められた。

だが、悔いはなかった。鬼人王を倒したのだから鬼も門ももう現れないだろうと誰もが思っていた。


 しかし、悪夢は終わらなかった。

鬼は次々と現れ、食料は尽き、忍たちは生き延びるために鬼を喰らい続けた。その過酷な環境下で、石切家は「蟲使い」の術を研ぎ澄ませ、鬼の力を取り込むことで異常な強さを手に入れていった。

 紗江が視たのは、地獄よりも凄惨な光景だった。

変わり果てた仲間たちが、子供たちを喰い荒らしていたのだ。

 変わり果てた子供たちが羅門の足元で冷たくなっていた。


「……ああ、ああ……っ!」


 悲しいという感情すら、魂脈の熱に焼かれて蒸発していく。

鉄斎は涙を流しながら笑っていた。羅門は泣きながら、己の王座を築いていた。

気がついた時、『鬼』へと変貌しはじめ、生き残っていた忍たちは、自我を失った新種の鬼へと成り果てていた。

一方、鉄斎の心は限界を迎えていた。「永遠に戦いたい」というかつての狂気が、味方すら敵と見なす殺し合いの螺旋へと彼を突き動かす。

 そして、ついに最悪の事態が起きた。

羅門の中で、家族を失った絶望を糧に「角」が突き抜けた。気がついた時、羅門は巨大な『鬼人王』へと変貌していった。

 鉄斎がまだ人としての意識を保っていた一瞬、鬼人王となり先代鬼人王の力を継いだ羅門の思念が頭に流れ込んできた。


(……なぜ人間は、地獄の門を開くのだろうか?)

(鬼と人は大昔に住み分けの協定を結んだはずなのに、なぜ……)


「門を開けているのは……人間の方だったのか……」


 鉄斎は震える手で、この恐るべき真実を誰かに伝えねばならないと、薄れゆく意識の中で強く願った。


第四十八話をお読みいただきありがとうございました!

次郎と紗江。石切と鈴木(鬼)の、呪われた出会い。 この二人の間に宿る命こそが、後に羅夢多へと繋がる「黄金の瞳」の正体となります。

次回、お楽しみに!

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、ぜひ【評価】や【ブックマーク登録】をよろしくお願いいたします!

※AIとの共同執筆作品となります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ