63:それぞれに合わせて
「殻付きの大きな海老は、手間でもこうやってこの背わたを取っておくと味が良くなるんだ」
「これって取る方が良かったんですね。私達の国では、みんなそのまま食べてますよ」
「この国でも同じよ。身の味は良いけど、じゃりじゃりしたり、強い臭みがある事が多くて人気がないんだ」
はははは…。背わたを取るのは日本だけなのか?海老の食べてた物まで食べたくないぞ。
「一番下までこの方法でして取れなければ、調理してから背中を開いて取るんだ。
生で開く時は殻を剥いて、背わたに沿って包丁を入れて、ほら。こうやれば取れる」
リラさんと女の子達は、背わたを取る事を知らなかったらしい。いや、知っている人がもしかしたらいないかもしれないって…。
「リラさん、千切りキャベツを教えてあげてもらえますか?」
「良いよ〜。あっちでするね」
3人に話しをし、料理の様子を見て、食べてから考えてもらえないかお願いしてみた。引き受けてくれたら良いな。
◇
「エビフライとサラダ。エビフライはこのタルタルソール付けて。みそ汁。ご飯かパンは好きな方で食べてね。
いただきます」
夜は軽くて良いって事なんだが、早めに食べてしまいたい物の時は豪華になりがちだ。いや、割と朝も夜も昼も…。ヤバい、気を付けよ。
「んんっ!」
「これ、本当に海老?!」
「みそ汁も私達が作ったのとも、出されたどのみそ汁とも違うわ!」
アカザさん達は、今日は全員無言でエビフライに齧り付いている。
ユリシーズさんは私と同じメニュー、刺し身に挑戦しているが…。
「ユリシーズさん、どう?無理しなくて良いからね」
しょう油だけでは生って感じがダイレクト過ぎるかもと、大根おろしも好みでつけてと添えてある。
ちなみにわさびはない。
「…旨い、かも…」
「良かった、口に合うみたいで安心した」
一人に大きな大正海老みたいなのと、車海老みたいなの一尾ずつだ。
それがフライともなると、かなりのボリュームだ。
個人的には刺し身でちょうどくらい、一尾が大きい。
あ、もちろん女の子達三人は、生食にひいている。
「僕、エビフライよりこのタルタルソースが好き!」
「僕はしょう油少しつけたエビフライが美味しい!」
「あたしは黒い岩塩だね」
「紅いのの方が合ってるかなあ?」
「青も緑も、合う」
「え、タルタルソースでしょ?!」
岩塩派が多いな。ちょっと意外。
「タルタルソースと岩塩の交互です」×3
…。なんか変わったのもいるけど、好き好きだからね。
「海老も驚きましたけど、キャベツがふわふわ…!」
「新種とかでしょうか?」
「新種は紫だったから、たぶんこれ普通のキャベツだよお」
「みそ汁も、焼いた海老の頭が入ってて…。本当に香ばしくて美味しい」
3人は隣の国から船でこの国へ来たって。その船賃で無理をして、ほとんどお金を使い果たして。それで狩りで得た獲物を食べて、しばらく食いつないでいたそうだ。
キュアポーションで毒は解毒できたし、ポーションで荒れた胃や内臓も回復してる。そのため、もう普通に過ごせるし食欲もあるって。
◇
「それで、どうかな?」
「はい!やらせて下さい!」×3
「ありがとう。これから宜しくね」
「こちらこそ、宜しくお願いします!」×3
これで人員確保!場所が見付かったら、すぐに始められるだろう。
「それにしても、このキャンピングカーって凄いですね!」
「普通の家より小さいけど、普通の家より過ごしやすいです」
「ツヨシさまの作られる家や、オオシロ方伯さまの作られる移動する家は憧れだよね」
おお!バレてない!というか、キャンピングカーで日本食作ってて気付かない注意力、推察力…。本人達の言うように、冒険者は向かないかもね…。
◇
〘ユウー!〙
〘ただいまー!〙
「お帰り。たくさん食べて来た?」
クーとルーは夕方涼しくなった頃狩りに出かけ、獲物を狩って食べて来るようになった。生まれて初めての夏がお父さんの家だったから、空調が効いていた。そこで大きくなったからか、特に暑さに弱い気がするよ。
〘うん!〙
〘お腹いっぱい!〙
口の回りを拭いてあげてる間、色んな話しをしてくれる。
〘あっ、そうだ!〙
〘今日は獲物持って帰ってきたのー!〙
どさっと大きな獲物が、無限収納から出される。母竜が使っているのを見て、自分たちにも使えないかと練習したそうだ。で、使えたと。
竜もフェンリルも知能が高い。袋や空間に収納するという概念が理解できたので使えるのではないかと思っている。
「クー、ルー、ありがとう。大きな獲物だね。狩りが大変だったでしょ?」
〘平気ー!〙
〘大きくなったもーん!〙
顔を拭き終わり、器にお水を出してあげるとがぶがぶ飲んでいる。
「そうだね、抱っこが重くなったもんな」
自分の縄張りと番を探す旅。その旅に、野生に戻った時のためあまり手をかけないようにしている。抱き上げると換毛期のため、とても毛が付く。
〘抱っこ、久しぶり!〙
〘ルーもなのーっ!〙
〘ガシガシーも〙
〘ガシガシもなのー〙
「そうだね。換毛期で凄いことになってるから、久しぶりにちょっとブラッシングしようか」
「手伝うよ」
「ありがとう。お願いします」
20フィートのコンテナハウスから出て来たユリシーズさんと目が合った。二人並んでクーとルーにブラッシングする。ルーは毛も長いし、ちょっとカールしてるから梳かしにくいが任せよう。
「…なあ、ちょっと聞いて良い?」
「何?」
「今日彼女達に料理教えてたのと、俺やカールが教わったのが内容が違うのはなんで?」
「彼女達に教えてたのは、ある程度料理が出来る人のもっと上手くなる方法。
ユリシーズさんとカールくんは、先ず包丁の扱いと切る事に慣れる事からだからだよ」
ユリシーズさんとカールくんには猫の手で、包丁の使い方は押しながら切るとしか教えていない。
彼女達に教えたのは、生卵を手のひらに包んでるつもりで、包丁の使い方は押しながら切る。視線は包丁より向こう側へと教えた。そっちを見ないと、切りたい厚みに切れないのでけっこう重要。
「なるほど。猫の手っていうのは、包丁が滑りにくくてゆっくり切れる。初めから師匠と同じ方法でしてたら、何回か手を切ったかもな」
「だから先ず、包丁で切る事に慣れるんだよ。猫の手でゆっくり食材切れば、そうそう手は切らないから」
〘二人とも〜っ〙
〘ガシガシ止まってるの〜っ〙
「ごめん、ごめん」
「ルー、悪い」
話しはそこそこに、二人で二匹のブラッシングに専念するのだった。
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