64:雨の日の過ごし方
3人の女の子はカーマさん、アマリアさん、パドマさんと言い、後のためにも積極的に食事の支度を手伝ってもらっている。
メニューはお父さんか私が登録している物から選んでいるのも理由があるよ。
今朝はオムライス、ベーコンたっぷりパスタ、サラダが二種類、じゃがいもの冷製スープとパン。
サラダにトマトを使いたいが、なかなか流通していない理由にふと思い当たった。ここがヨーロッパ風だからだ。
日本ではトマトはほとんどが生で食べる。だが、海外では火を通す事がほとんどだ。つまり、主に栽培、流通している種類が違うと気付いた。
なので生で食べて美味しいトマトが手に入ると、ちょっとテンションが上がる。冷えたトマトって美味しくない?
「はあ、トマト美味しい」
「優さんは生で食べるのが好きな物が多いね」
「好きというか、私の国ではトマトは生で食べるのが普通だったんですよ」
「日本は面白い国だよね」
アカギさんがスライストマトと自家製なんちゃってサワークリームのサラダを突きながらつぶやく。
モッツァレラチーズは探せばあるのかもしれないが、見かけない。それで、なんちゃってサワークリームをモッツァレラチーズの代わりにしてみた。
生クリームにレモン汁を入れ、好みの硬さになるまで混ぜた物だ。生クリームもゼラチンがないと作れないのだが、魔物の牛の牛乳からはゼラチン入れなくても生クリームが作れる。凄く不思議。
キャベツはキャベツで苦労する。あの中心が玉になっているのは、品種改良の結果だ。もともとは、サニーレタスみたいな葉物野菜だった。
こちらではまだサニーレタスみたいなキャベツが主流だが、今は玉のキャベツへの移行期っぽい。旧王都では玉のキャベツも割と手に入るが、地方へ行くと、あるにはあるがあまり見かけなくなる。
味は玉の物の方が知っている味に近いので、どうしても玉の方のキャベツを探してしまう。
なぜこんなにのんびり食材の話しをしてるのかって?
「それにしても、この風雨が3日も続くなんて、ずいぶん珍しいねえ」
「アンとリンは雨だと移動したがらないからね」
アンとリンはアカザさんのパーティーの馬さん達だよ。アークはそこそこの雨なら物ともしないが、アンとリンは割と嫌がる。無理させて進む理由もないので、雨宿りなのだ。
申し訳無さそうに、アカザさんが私を見る。
「気にしないで下さい。天気はどうしようもありませんよ。
私は馬も好きだから、アンとリンの嫌がる事もしたくありませんし」
「そう言ってもらえると気が楽になるね。ありがとう」
◇
さてさて。雨で出来る事が少ないから、朝ごはんが終わると朝のおやつを作り始める。
「この国は南米原産の物が多くて助かる」
目の前にあるのはさつまいも。さつまいももだが普段からよく食べているじゃがいも、トマト、ピーマン、かぼちゃ、とうもろこし、唐辛子。あ、現代のいちごになる、かけ合わせに使ったたいちごもそうだ。
これらは南米原産だ。
キャベツは地中海の方だったかな?これは違うけどね。
原産国のためか種類も多い。品種改良前の物がほとんどだが、探すと現代の物に近い種類もあったりする。
目の前にあるのはさつまいもでも、スイートポテトを作るのに適した品種っぽい種類の物だ。料理に使って、いつもと違ってたんだよね。
何より地球だと南米原産の食料に既に慣れ親しんでいる中世ヨーロッパ風のこの国では、私にとって必要な食材が割とそろいやすいし作った料理も受け入れられやすい。
じゃがいもとかトマトとか。新大陸からヨーロッパに持ち込まれ、長らく観賞用だったりもした歴史がある。食べ方まで伝わらなかった事も大きいらしいけど。
色々助かってる。ありがとう。
「優さん?」
「ごめん、ちょっと色々感謝してた」
みんなには?って顔をされてしまった。気にしない。ばっさり流れを断ってやる。
「さつまいもは…、うん。蒸し上がったね。次はこれを裏漉しして、少し牛乳を足しながら柔らかくしていくよ」
輪切りにした後4等分して、蒸したさつまいもをザルを使って裏漉していく。そのままでもかなり甘かったので、今回は砂糖なし。バターと牛乳だけ入れて作るバージョン。
みんな暇なのか、全員で作っている。
タネは好みの硬さにしてもらうが、捏ねれる硬さでと言ってある。
日本でなら、バニラアイスとレンチンしたさつまいもで作ってはいたが…。どうなるかな?
◇
「アカザさん達の作ったの、ホクホク感が良いな」
「カーマ達のバターの効いたのも美味しいね」
「優さん達の、とっても滑らかで美味しい!」
「さつまいもがお菓子になるなんて不思議!」
「本当に、これはおかずじゃないね。お菓子だね」
オーブンはないのでフライパンで焼き、最後に火魔法で軽く炙って表面に塗った卵黄に焦げ目をつけた。
裏漉しからは3チームに分かれて作ったが、どれも違う感じに仕上がっている。それぞれにとても美味しい。
みんなでスイートポテトを茶菓子に話し込んでいると、すぐにお昼の時間になる。
◇
「こっちからおでんのお好み焼きと、さいの目の山芋のお好み焼きと、ねぎ玉と豚玉。後はみそ汁。
足りなければ、ご飯とパンがあるから言ってね。
いただきます」
お昼は昨日多めに作ったおでんを具にした、お好み焼き色々ですませた。近いうちにお好み焼き食べたいとリクエストがあったので、おでんからのお好み焼き。これが味が染みてて美味しいんだ。
3時のおやつは最近定番の果物。
夜は野菜炒めとご飯に具沢山みそ汁。
カーマさん達にはこの三日間、みっちり料理を教えて過ごした。
料理を手伝ってくれ始めた頃のリラさんのリアクションを踏襲してて、笑いそうになったのはナイショだ。
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