エピローグⅠ
深い絶望と慟哭を潜り抜けて、勇者は再び召喚される。
ステンドグラスを透かして陽光が差し込む礼拝堂。祭壇に刻まれた魔法陣の上。そこに色とりどりの光と共に、勇者ショウマは召喚された。
だが未だ、ショウマは疑問のただ中にあった。
土下座神の裏切りによる理不尽な死を受け止め切れていなかった。受け止めるには、あまりにも彼のしたことは残酷すぎた。
それでも、自分が死んで回帰したことだけは理解できた。今自分がいる場所が、懐かしい始まりの地点であることを否応なく理解する。
祭壇の上から見える光景は、もはや懐かしさすら覚えるあの日そのもので……
「……え?」
呆然と、ショウマはさらなる疑問に間抜け面を晒した。
死を経て回帰した以上、目の前にいるのは愛したはずのお姫様のはずだった。そうでなければおかしいし、そうでなければおかしいし、そうでなければおかしいおかしいおかしいおかしい!
けれど自分を見つめるそのお姫様は、ここにはいるはずのない少女だった。
神の得意げな嗤い声を、ショウマは聞いた気がした。
「お初にお目にかかります、勇者様」
と、初対面の相手を呼ぶようにショウマを呼んで、ラベンダー色ではなく、銀色の髪を揺らしてお姫様は恭しく頭を下げた。
「わたくしはシャトリア王国第一王女、グローリエ・シャトリアと申します。若輩の身ながら、勇者様の召喚という大儀を果たさせていただきました。このたびはわたくしの声に応えてくださり、感謝の言葉もございません」
「第一、王女? 第二王女じゃなくて?」
「はい。わたくしは第一王女です。上に亡くなった兄がおりますが、シャトリアの姫はわたくしだけですので。不満はあるとは思いますが、盟約に従って我が身を捧げます。ゆえに、どうか。この世界を悪辣なる魔王の手より救って……あの、勇者様? 聞いていますか?」
ショックのあまりその場にへたりこむショウマと、勇者らしからぬ全裸の勇者を訝しげに見つめるグローリエ・シャトリア。
「…………」
儀式に同席したグローリエのメイドが、部屋の隅から怯えたように二人を見つめていた。
【一章 神様の勇者】END
【二章 魔王の勇者】ReSTART
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